2017.12.17
柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが使えるようになって1年が経過し、症例報告のほとんどにアポキルが処方されているにもかかわらず改善がなく、タイトルが「アポキルが効かない」とワンパターンになってしまうのが最近の悩みの種です。
根本的解決にならないのですが、最後に「痒い理由」とつけて無理やり新しいタイトルにしてみました。
さて、今日紹介するのは「本日、12月16日に初診で来院された柴犬の皮膚病の症例」です。
もちろん検査結果は出揃っておらず、投薬治療もはじまったばかりです。
治療後の写真はありませんが、初診時の状態を紹介します。
【症例】
柴犬
【経過】
〇半年以上前から全身の痒み
〇アポキル1日2回服用していても痒みが改善しない
〇抗生物質1日2回服用中
〇食材をかえて何種類も食事療法を行ったが、改善しない
それでは初診時の状態を紹介します。
まずは正面から。
続いて、顔の左側から。
続いて、顔の右側から。
続いて、頚部とその拡大。
続いて、左前腕の尾側から。
続いて、右前腕の内側とその拡大。
続いて、左前腕の内側。
続いて、胸部とその拡大。
続いて、腹部とその拡大。
続いて、身体左側と腹部側面の拡大。
最後に後ろ側と大腿尾側の拡大。
アポキル0.45mg/kgを1日2回服用していても痒みの改善がないわんちゃんです。
念のためを含め、除外しておきたい疾患の検査を行いましたが、注目すべきメインターゲット(原因)は1つと考えています。
サブの原因は2つありますが、メイン1つの治療を徹底して行えばサブの原因2種はさほど目立たなくなると思います。
その他の特別な疾患が隠れていなければ、1ヵ月後くらいから治療結果がでて、3ヵ月後にはアポキルに頼らなくていいくらい十分な結果がでると思われます。
影響を受けるとすれば、このあとくるであろう発情でしょうか。
発情ばかりはなんともできないため、万が一治療期間に重なれば「やむをえなかった」となります。
なお診断は、問診時に抱っこされている柴ちゃんを見た一瞬でほぼ判定可能です。
参考までに今回の皮膚病はスキンケアとサプリメントではさすがに改善しません。
次回の症例報告は、今回とほぼ同じ柴犬の症例報告(治療後比較あり)の予定です。
傷だらけの状態で来院されましたが、アポキルもいらないくらい綺麗に改善した症例です。
投稿者:
2017.10.02
柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚病治療専門病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日紹介するのはここ最近の中で最も「会心」だった症例です。
【症例】
柴犬 4歳 去勢オス
【経過】
〇1才のころから皮膚病
〇最初は季節性の痒み発症であったが、この2年は通年性
〇シクロスポリンで改善なし
〇アポキルでも改善なし
〇シクロスポリン+アポキルの同時併用3ヶ月でも改善なし
〇最近はステロイドでも改善なし
〇食事療法は、低アレルゲン、アトピーフード、グレインフリーと変えるも改善なし
さて、初診時の状態です。
正面全体から。
続いて、右側面から。
続いて、顔~頚部(右)。
同じく頚部の右、拡大。
同じく右頚部、さらに拡大。
頚部、正面から。
同じく頚部正面、拡大。
続いて、前胸部。
続いて、右前肢の屈曲部(肘)。
続いて、右前腕内側。
続いて、右前肢外側。
続いて、右胸部側面。
続いて、右肩の側面拡大。
右胸部側面の拡大。
同じく右胸部側面の拡大2箇所目。
同じく右胸部側面、3箇所目。
続いて、右腹部側面。
続いて、右後肢膝~カカトの側面。
続いて、左側面。
左側面をやや斜め後ろから。
右側面の炎症部位の拡大。
右腹部側面の拡大。
続いて、右後肢側面。
かなり重度ですが、この見た目は特徴的なので診断は一瞬です。
万が一のことを考えて、似ている疾患を除外するためにいくつか検査をしますが、頭の中で答えは決まっています。
綺麗に治るまでの軌跡を描いてからゆっくり検査、説明をします。
※検査結果は確認のためで、治療方針を立てるためではありません。
それでは初診時からちょうど12週間後との比較です。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
参考までに
〇甲状腺機能低下症はなし
〇ステロイドの副作用でもない
〇疥癬でもない
〇アポキルは効かない
〇上記の写真で紹介した病変に、抗生物質を必要とするものはない
当院でも初診時に「アポキル」を処方しましたが効果はゼロで、飼主さまから「痒みはまったくかわらない」といわれました。
もちろん現状でアポキルがほとんど効かないだろうというのはわかってたのですが、「副作用はほとんどないし、多少効果があればOK」というつもりで処方しています。
それだけではなく2回目~7回目までの再診時もずっと「よくならない。かわらず痒い」といわれ続けており、9週間後の7回目の再診時でも「痒みはあまり変わらず、元々を10とすると今8くらい」という低調な評価でした。
ただ!改善する自信があったので「治療方針は変えません。よくなります。」と言い続けて初診時の診断は変えませんでした。
そしていよいよ12週間後の8回目の診察時、飼主さまにはじめてうれしい言葉が・・・
「おかげさまで随分良くなりました。散歩でも『別人みたい!』と声をかえてもらえました♪」
痒みも足先をちょっとなめる、口を時々掻く・・・というくらいです。
毛並みも非常によく、ツヤツヤです。
柴犬のこのタイプの皮膚炎はときどき診る事があり、だいたいアトピー、アレルギーといわれて難治性皮膚病になっています。
「アトピーではない」「アレルギーではない」と言うことは難しいのですが、「アトピー」「アレルギー」といっていると絶対治りません。
このタイプはアポキル単独では改善しませんし、食事療法なんてほぼ無意味ですし、スキンケアで改善するわけでもありません。
あることをし続けなければ結果がでません。
結果がでるまでの数ヶ月も痒みが続くのですが、飼主さまの「痒みが改善しない」という返事に対して、自信をもって「このままでよくなります。」とブレずに継続する力が必要です。
この「痒いといわれてもブレない」というのがかなり難しいと思います。
もう1点、これが難しいといわれる理由は「教科書に掲載されていない」ということでしょうか。
また、セミナーで解説されているのも聞いたことがありません。
近い記載はわずかにあるのですが、おそらく誰も気づいていないのが現状です。
当院と皮膚科に関する診療提携を行っている病院の先生には詳しく解説する予定です。
今回の症例でも初診時の診極めで、治療方針を変更することなく改善することができました。
投稿者:
2017.09.09
柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の皮膚病といえば、痒みが強く、独特の体質・性格のためか治療が難しく、難治性皮膚病になりやすい犬種の1つです。
当院にも多くの柴犬が来院されており、過去にもたくさん症例報告してきましたが、中にはノーマルなアプローチでは全く改善しない特殊な症例もいます。
今回は柴犬の中でもそんなイレギュラーな症例を紹介します。
【症例】
柴犬 2歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇2年前から痒みがある
〇痒みの部位:全身痒いが、最も痒みが強いのは耳
〇過去の投薬歴:減感作療法(1週間に1回の頻度で計6回の注射を行った)、内服薬は抗生剤(ラリキシン)と抗ヒスタミン剤を服用していた。
それでは、全体からみていきましょう。
柴犬の皮膚病の特徴である目の周りの脱毛や、色素沈着がほとんどありません。
この時点で「え?難治性???」と感じる先生は多いかと思います。
続いて、飼主さまが「痒みがつよい」と感じている頚部です。
そして最も痒みが強いという耳ですが、まずは後ろからみてみましょう。
後頭部。
同じく、左耳の拡大。
同じく、右耳の拡大。
実はここで治療での問題があります。
①アポキルで痒みは抑えられない
②ステロイド・抗生物質・抗真菌剤が含有された合剤点耳薬で耳の痒みは抑えられない(そもそも耳垢も、炎症もない)
一般的な痒み全般を抑えることができるアポキルがほとんど効果を示さないことがわかっています。
また、耳は赤くなく、耳垢もなく、これも一般的な治療法である点耳薬がほぼ効果なしという判定です。
さて、どうするべきか?
それでは、この初診時から1年後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると拡大してみることができます。
薄かった毛も多くなり、フワフワになっています。
肝心な痒みも大きくおさえることができ、「過去最高のコンディション」になっています。
今回の治療には3つのお薬を併用しました。
3つのうち1つは「単独服用では効果がないアポキル」ですが、残り2つが治療成績を左右する重要なものです。
この体質を初診時に判断できることが「初診時の診極め」です。
当院では皮膚科のない個人動物病院向けに、オリジナル商品の提供を含めた「初診時の診極め」に関するサポートを行っています。
業務提携にご興味のある方は専用フォームからお問い合わせください。
※比較に1年という時間がかかったのは理由があります。
初期のもっと早い時期に痒みのコントロールができましたが、飼主さまの治療縮小のリクエストにより一旦フェードアウトして、痒みの再発後に再治療に入りました。
そのため被毛の再生に時間がかかり、比較写真が1年後になっています。
投稿者:
2017.07.26
犬の皮膚病の中でも痒み治療に特化した動物病院【四季の森どうぶつクリニック】の平川です。
以前にも何度かブログで紹介しましたが、今年から皮膚科のない動物病院向けに、スキンケア・サプリメントなどの共同開発・研究を中心に診療提携をはじめました。
そして今年の1月に最初の取り組みとして、静岡市のあん動物病院で難治性症例の診療サポートを行い、順調にいい結果がでましたので、ここでご紹介したいと思います。
【症例】
柴犬 4歳
【経過】 ※かかりつけ動物病院の先生からいたたいだメール内容をご紹介します。
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4歳の柴犬で、1歳くらいから全身の痒みを発症。
当院だけでなく、他院にも受診しており、過去には(当院と他院の治療内容を合わせて)
ステロイド(内服・コルタバンス)
シクロスポリン(半年以上継続)
インタードッグ(EODで半年以上)
ブラベクトによる試験的駆虫
IgE リンパ球検査済
などを経て、今はアポキルを当院で内服しています。
BIDでアポキルを飲むとある程度は効くけど、写真のレベルであり痒みは抑えきれない。
目の周りは、アポキル飲んでからましになった。
ステロイド1mg/kgの方がよく効く。
フードはアレルギーに配慮したフードを2社くらい使ったが、フードを変えて痒みが変わった実感はなし。
どの会社のフードかは、飼い主さんが記憶していない。
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そのときにいただいた写真を紹介します。
この4枚を送っていただきました。
投薬内容など少し追加の情報をいただいたのが、以下の通りです。
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ステロイドは、過去1年間で
2016年4月にEODで5㎎(0.6㎎/㎏)16日間(8回)
5月~7月に5㎎錠 頓服として10錠/月 処方
7月後半からはアポキルへ
コルタバンスは、2014年10月に1度処方したのみ
アポキルを飲み始めてから、顔周りの痒みはだいぶましで発毛も良好。
2016年10月くらいは、SIDで大丈夫と言っていたが、現状BIDでもかなりかじっているのか、発毛はみられない
10月末に一度、足裏の炎症がひどくなったため、1週間だけプレドニゾロンに変更。
10㎎3日間と5㎎4日間。
そしたら、痒みがぴたっと止まったとのこと。
現在、アポキルは3.6㎎錠 SID~BID (0.42㎎/㎏)
背中の痒みはなし
耳は先日の診察で左耳がかゆいとのことで来院。
左のみ強い発赤が出ていて、オスルニアを点耳→本日2回目の予定
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この時点でほぼ答えはでてゴールまでの治療の道筋はついています。
そして平成29年1月31日、かかりつけの先生の都合と飼主さまの都合を合わせて「1回限りの現地診療」をさせていただき、方向性・処方をお伝えして当院の診療は終了としました。
そこから約5ヵ月半後の7月19日の状態を先生からいただくことができたので、ご紹介します。
状態には非常によくて、過去最高の毛並みに戻ったそうです♪
参考までにアポキルは1日1回でコントロールできているということでした。
冬に1日2回でも痒くて毛並みも悪かったのが、この真夏に1日1回で過去最高のコンディションという変化です。
最初に提案した方向性のまま、ここまでいい結果がでて本当によかったと思います。
今回は飼主さまの通院都合などもあり、若干時間がかかりましたが、スムーズにいけば2ヶ月あればここまで到達できるでしょう。
今の皮膚科の最大の悩みである「アポキルが効かない痒みをどうすればいいか?」のポイントの一つはここにあります。
投稿者:
2017.06.22
柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
先日待合室でまっている柴犬をみて違和感を覚えました・・・
「誰だろう?診たことあったかな?」
この違和感の原因はそのあとの診察で解決できました。
今日はそんな症例報告です。
【症例】
柴犬 4歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇去年の夏からつづく痒みを伴う皮膚病
〇冬もよくならず、春から脱毛が進む
〇痒みの部位:頚部、お腹、四肢端
〇過去の投薬歴:痒み止め
まずは顔の左側から。
続いて、頚部。
同じく、頚部のやや左から。
続いて、右前腕。
続いて、身体の左側。
同じく、左側の胸部拡大。
続いて、身体の右側。
同じく左側、腹部の拡大。
続いて、前胸部。
続いて、腹部。
続いて、内股~後肢。
続いて、左後肢の側面から。
それでは、この初診時から7週間後の状態と比較してみてみましょう。
※画像をクリックすると、拡大してみることができます。
まさに「見違えるように」とはこのことですね。
毛並みはほぼ元に戻りましたし、肝心な痒みも元の10分の1までへりました。
もちろん初診時に「まずよくなる」と思ってアプローチしましたが、たった7週間でここまでよくなるとは思いませんでした(笑)
診たのは初診と再診2回の合計3回でここまでよくなるとは・・・自分でもちょっとびっくりしました。
先週の北海道往診から1週間たっても疲れがとれない僕にはまぶしく見えるこの回復力・・・・これが世に言う「若さ」というものでしょうか(笑)
治療のポイントは特になく、診た瞬間に治療方針は決定です。
初診時から治療方針の変更はありませんでした。
投稿者:
2017.06.19
柴犬の皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日は当院のシャンプーに切り替えたという飼主さまから、「すごくよかった!私の手までしっとりツヤツヤ!人用のも出して!」って喜んでいただけました。
もちろんリップサービスもあってちょっと盛ったお言葉かもしれませんが、素直にうれしいです!
そのわんちゃんの症例報告も時期に行いたいと思います。
さて、今日の症例報告は以前紹介した柴犬の続きです。
このわんちゃんにさらに1ヵ月後、つい先日の来院のときの様子です。
【症例】
柴犬 4才 去勢雄
初診の状態については以前のブログを参考にしていただき、今回は比較のみです。
※写真をクリックすると大きくなります。
一部左右逆の写真での比較ですが、基本左右対称性の皮膚病でしたので、ご容赦ください。
以前よりさらに「フワフワになった!」とおっしゃっていただけました。
痒みも元々の10分の1、アポキルを増やすことなく痒みを抑え、きれいな毛並みになりました。
梅雨・夏を迎えますが、アポキルを1日1回より少なくしていきます。
基本は気温と湿度が高くなるこの時期には痒みがぶり返しやすく、減らすどころではないことが多いのですが、この柴犬のタイプであればアポキル以外の違う目線から診ることでアポキルを減らすことが可能となります。
このようにアポキルは服用すれば同じ結果がでるというわけではなく、症例の病態をよく把握して出すことで大きな差をつけることができます。
柴犬の痒みを伴うアトピーなどの皮膚用治療でお悩みの方は、一度当院を受診してみてください。
近日中に、別の柴犬の驚きの症例をご紹介しようと思います。
※自分でも写真みくらべてびっくりしましたので、ぜひチェックしてください。
投稿者:
2017.05.20
柴犬の皮膚病治療に力をいれている、皮膚科専門動物病院の四季の森どうぶつクリニックです。
随分と暑くなってきましたね♪
昨年、皮膚科の画期的な新薬「アポキル」が発売されて、そろそろ1年が経とうとしています。
1年前に使い始めたときは「先生!うちの子に何を使ったの!(笑)」と言われるほどの劇的な治療効果に驚き、同時に「自分の仕事は無くなるのではないか!?」と恐怖さえ抱いたことを覚えています。
・・・・・・あれから約1年、そんなアポキルをもってしても、当院を受診される飼主さまは減りませんでした。
変わったのは、
「アポキルを飲んでいるのによくならない」
「アポキルが効かなかったらしょうがない、と言われた」
と頻繁に聞くようになったことでしょうか。
しかし当院では「アポキルが効かなければ次はない」というような最終兵器とは思っていません。
アポキルが効きにくい症例は珍しくないのですが、本当の意味で効かないわけではありません。
効かないには効かないなりの理由があり、「効かせる」ことができるのです。
今日はそんな「ある工夫でアポキルを効かせた」症例報告です。
【症例】
柴犬 4歳 去勢雄
【病歴】
〇生後6ヶ月から続く、季節性のない通年性の痒み
〇当院で4件目の受診
それでは初診時の状態です。
まずは顔の側面から。
つづいて、体幹の側面(右側)です。
腹~胸部の側面の毛をかきあげて、どれほど掻いて毛がなくなっているかを撮影してみると、
地肌がみえているため、かなり強く掻いているのがわかります。
続いて、後足側面です。
こういったわんちゃんにアポキルを処方すると・・・
※写真をクリックすると拡大してみることができます。
随分とよくなります。
しかし・・・
十分に効かない部位が残っているのがわかります。
アポキルを毎日3ヶ月以上服用しても「痒みが強い」という症状のままです。
実は原因はわかっています。
そのため「〇〇〇すれば効くようになりますよ!」とあることをします。
すると、4週間後・・・
かきむしっていたのが随分と落ち着き、掻き壊すこともなくなってきました。
アポキルの投与量や、投与回数は一切変更せず痒みの改善が認められました。
今回の治療症例のポイントは、
①アポキルの投与により痒みが激減した部位は確かにある(顔)
②アポキルでまったく効いていない部位もある(胸・お腹)
③アポキルが効かないわけではない(顔は効いている)
④痒みのすべてが1つの原因で起きているとは限らない
⑤別の問題点が隠されていることに気づかなければいけない
⑥アポキルの量や回数の問題ではない
でしょうか。
そして最も大事なことは、「診た瞬間に、アポキルが効くけど、アポキルだけでは無理。工夫が必要。」と判断できることですね。
※では今回の症例でなぜ3ヶ月やらなかったのか?ですが、実はこのわんちゃんの痒みは再発です。
初回の治療ではアポキルと工夫の治療をやって効いたのですが、飼主さまの強い強い希望で工夫治療は終了になりました。
「再発しますよ」とはお伝えしたのですが、やはり「完治した」と思うほどの結果でしたので、終了になってしまうことはゼロではありません。
そして再発時の初期治療にはその工夫は含まれず、しばらく苦戦し・・・・という流れでした。
しかし今回の件により、飼主さまにも「本当に何が必要になっているのか」はよく伝わったかと思います。
そういう意味では「小出しにする」という治療プランは価値があると思います。
※※※※※※※※※
当院では今年から新しい活動として、専門分野を持たない個人動物病院向けに診療サポートを行っています。
スキンケア商品、サプリメントの共用や、症例報告からの治療成績向上を目的としています。
業務提携にご興味のある方はお問い合わせください。
四季の森どうぶつクリニック
平川
投稿者:
2017.01.13
犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回は柴犬の痒みを伴う皮膚病の症例報告ですが、典型的ではなく少し変化のあるタイプの難治性皮膚炎の治療症例です。
【症例】
柴犬 3歳 男の子(去勢済み)
【症歴】
〇かかりつけ動物病院で、抗生物質・抗ヒスタミン剤・ステロイドを併用するも改善なく当院受診
それでは初診時の状態です。
続いて、右前腕です。
続いて、左前腕です。
同じく左前腕の外側です。
写真を撮影するのを忘れていたため、10ヵ月後とやや比較時間があいていますが、治療後の状態と比較してみましょう。
※クリックすると写真を大きくすることができます。
柴犬の典型的な皮膚病に見えなくもないのですが、少しだけ違うタイプです。
柴犬ならこう!というアプローチもあるのですが、今回のような少し異なるタイプのわんちゃんにはその子に合わせた治療プランが必要です。
今回の柴犬には、他の柴犬では通常行わないあることを併用しています。
飼主さまにもその効果を実感していただいているので、2年近く経過した今でもこの「他の柴犬ではほとんどやらない治療」を継続しています。
こういったわずかな体質の差は検査や数値ではあらわせないため、わんちゃんの体質に合った治療方針を組み合わせるにはいかに皮膚を正確に把握できるか、だと思います。
投稿者:
2016.10.28
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今日は肌寒い一日でしたね。
今日は以前から紹介しているリアルタイム診療です。
初診時の紹介 → リアルタイム診療①
2回目の診察 → リアルタイム診療②
そして本日10月28日が3回目の診察でしたので、早速報告します。
まずは初診時の状態です。
ここから3週間後の本日です。
色素沈着が強いのと、被毛の改善がまだまだですのでわかりにくいかもしれませんが、飼い主さまには劇的な改善といえます。
痒みの改善はもちろんですが、少しずつ被毛の再生し、皮膚も柔らかく、フケ・臭いも劇的に減っています。
ここまでは急性期に改善に必要なことを最優先に行いました。
この後はもっと踏み込んだ攻めの診療が必要になります。
今日までの短期的な改善に必要な治療内容と、根本的な治療はまた異なるということです。
何度もお伝えしていますが、最速の改善のために必要な治療が確定診断と根本治療とは関係ないことも多々あります。
初診時に「最優先の治療」と「確定診断と根本治療」が異なることに気づいていないと美しい治療結果は得ることができません。
ここが「皮膚病は教科書を読んでいても治らない」というところの所以ですね。
次回の報告はしばらく先になります。
投稿者:
2016.10.14
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
最近は涼しいより、肌寒さを感じることもあり、今年は秋の深まりが早いような気がしますね。
さて、今日は先週来院しリアルタイム診療として紹介した柴犬のわんちゃんお2回目の診察でした。
先週紹介した初診時の状態 → 【柴犬の皮膚科診療】リアルタイム診療記録①
まずは初診時の状態です。
初診時からちょうど1週間後、比較してみましょう。
まだ1週間ですのでよくみると改善というレベルですが、痒みは半分にまでへりました。
臭い、フケも少なくなり、皮膚の触った感じもやわらかくなっています。
予測どおり、このまま今の治療を継続していけば一定のラインまで改善すると思います。
確定診断はまだ十分ではなく、今後も検査を一つずつ積み重ねて確定していく予定です。
要するに、「治療は検査結果がなくても進められる」であり、「診断名と治療方針が必ずしもつながるわけではない」です。
以外かもしれませんが、こういうった症例では「検査結果にかかわらず、初期に必要な治療は決まっている」なんですね。
ただ基礎疾患を無視しては本当の改善は見込めませんので、検査を無視して治療をつづけるのはよくないと思います。
治療をしつつ、基礎疾患にアプローチしていくことが重要です。
投稿者: