2017.05.20
柴犬の皮膚病治療に力をいれている、皮膚科専門動物病院の四季の森どうぶつクリニックです。
随分と暑くなってきましたね♪
昨年、皮膚科の画期的な新薬「アポキル」が発売されて、そろそろ1年が経とうとしています。
1年前に使い始めたときは「先生!うちの子に何を使ったの!(笑)」と言われるほどの劇的な治療効果に驚き、同時に「自分の仕事は無くなるのではないか!?」と恐怖さえ抱いたことを覚えています。
・・・・・・あれから約1年、そんなアポキルをもってしても、当院を受診される飼主さまは減りませんでした。
変わったのは、
「アポキルを飲んでいるのによくならない」
「アポキルが効かなかったらしょうがない、と言われた」
と頻繁に聞くようになったことでしょうか。
しかし当院では「アポキルが効かなければ次はない」というような最終兵器とは思っていません。
アポキルが効きにくい症例は珍しくないのですが、本当の意味で効かないわけではありません。
効かないには効かないなりの理由があり、「効かせる」ことができるのです。
今日はそんな「ある工夫でアポキルを効かせた」症例報告です。
【症例】
柴犬 4歳 去勢雄
【病歴】
〇生後6ヶ月から続く、季節性のない通年性の痒み
〇当院で4件目の受診
それでは初診時の状態です。
まずは顔の側面から。
つづいて、体幹の側面(右側)です。
腹~胸部の側面の毛をかきあげて、どれほど掻いて毛がなくなっているかを撮影してみると、
地肌がみえているため、かなり強く掻いているのがわかります。
続いて、後足側面です。
こういったわんちゃんにアポキルを処方すると・・・
※写真をクリックすると拡大してみることができます。
随分とよくなります。
しかし・・・
十分に効かない部位が残っているのがわかります。
アポキルを毎日3ヶ月以上服用しても「痒みが強い」という症状のままです。
実は原因はわかっています。
そのため「〇〇〇すれば効くようになりますよ!」とあることをします。
すると、4週間後・・・
かきむしっていたのが随分と落ち着き、掻き壊すこともなくなってきました。
アポキルの投与量や、投与回数は一切変更せず痒みの改善が認められました。
今回の治療症例のポイントは、
①アポキルの投与により痒みが激減した部位は確かにある(顔)
②アポキルでまったく効いていない部位もある(胸・お腹)
③アポキルが効かないわけではない(顔は効いている)
④痒みのすべてが1つの原因で起きているとは限らない
⑤別の問題点が隠されていることに気づかなければいけない
⑥アポキルの量や回数の問題ではない
でしょうか。
そして最も大事なことは、「診た瞬間に、アポキルが効くけど、アポキルだけでは無理。工夫が必要。」と判断できることですね。
※では今回の症例でなぜ3ヶ月やらなかったのか?ですが、実はこのわんちゃんの痒みは再発です。
初回の治療ではアポキルと工夫の治療をやって効いたのですが、飼主さまの強い強い希望で工夫治療は終了になりました。
「再発しますよ」とはお伝えしたのですが、やはり「完治した」と思うほどの結果でしたので、終了になってしまうことはゼロではありません。
そして再発時の初期治療にはその工夫は含まれず、しばらく苦戦し・・・・という流れでした。
しかし今回の件により、飼主さまにも「本当に何が必要になっているのか」はよく伝わったかと思います。
そういう意味では「小出しにする」という治療プランは価値があると思います。
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当院では今年から新しい活動として、専門分野を持たない個人動物病院向けに診療サポートを行っています。
スキンケア商品、サプリメントの共用や、症例報告からの治療成績向上を目的としています。
業務提携にご興味のある方はお問い合わせください。
四季の森どうぶつクリニック
平川
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