2017.10.02
柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚病治療専門病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日紹介するのはここ最近の中で最も「会心」だった症例です。
【症例】
柴犬 4歳 去勢オス
【経過】
〇1才のころから皮膚病
〇最初は季節性の痒み発症であったが、この2年は通年性
〇シクロスポリンで改善なし
〇アポキルでも改善なし
〇シクロスポリン+アポキルの同時併用3ヶ月でも改善なし
〇最近はステロイドでも改善なし
〇食事療法は、低アレルゲン、アトピーフード、グレインフリーと変えるも改善なし
さて、初診時の状態です。
正面全体から。
続いて、右側面から。
続いて、顔~頚部(右)。
同じく頚部の右、拡大。
同じく右頚部、さらに拡大。
頚部、正面から。
同じく頚部正面、拡大。
続いて、前胸部。
続いて、右前肢の屈曲部(肘)。
続いて、右前腕内側。
続いて、右前肢外側。
続いて、右胸部側面。
続いて、右肩の側面拡大。
右胸部側面の拡大。
同じく右胸部側面の拡大2箇所目。
同じく右胸部側面、3箇所目。
続いて、右腹部側面。
続いて、右後肢膝~カカトの側面。
続いて、左側面。
左側面をやや斜め後ろから。
右側面の炎症部位の拡大。
右腹部側面の拡大。
続いて、右後肢側面。
かなり重度ですが、この見た目は特徴的なので診断は一瞬です。
万が一のことを考えて、似ている疾患を除外するためにいくつか検査をしますが、頭の中で答えは決まっています。
綺麗に治るまでの軌跡を描いてからゆっくり検査、説明をします。
※検査結果は確認のためで、治療方針を立てるためではありません。
それでは初診時からちょうど12週間後との比較です。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
参考までに
〇甲状腺機能低下症はなし
〇ステロイドの副作用でもない
〇疥癬でもない
〇アポキルは効かない
〇上記の写真で紹介した病変に、抗生物質を必要とするものはない
当院でも初診時に「アポキル」を処方しましたが効果はゼロで、飼主さまから「痒みはまったくかわらない」といわれました。
もちろん現状でアポキルがほとんど効かないだろうというのはわかってたのですが、「副作用はほとんどないし、多少効果があればOK」というつもりで処方しています。
それだけではなく2回目~7回目までの再診時もずっと「よくならない。かわらず痒い」といわれ続けており、9週間後の7回目の再診時でも「痒みはあまり変わらず、元々を10とすると今8くらい」という低調な評価でした。
ただ!改善する自信があったので「治療方針は変えません。よくなります。」と言い続けて初診時の診断は変えませんでした。
そしていよいよ12週間後の8回目の診察時、飼主さまにはじめてうれしい言葉が・・・
「おかげさまで随分良くなりました。散歩でも『別人みたい!』と声をかえてもらえました♪」
痒みも足先をちょっとなめる、口を時々掻く・・・というくらいです。
毛並みも非常によく、ツヤツヤです。
柴犬のこのタイプの皮膚炎はときどき診る事があり、だいたいアトピー、アレルギーといわれて難治性皮膚病になっています。
「アトピーではない」「アレルギーではない」と言うことは難しいのですが、「アトピー」「アレルギー」といっていると絶対治りません。
このタイプはアポキル単独では改善しませんし、食事療法なんてほぼ無意味ですし、スキンケアで改善するわけでもありません。
あることをし続けなければ結果がでません。
結果がでるまでの数ヶ月も痒みが続くのですが、飼主さまの「痒みが改善しない」という返事に対して、自信をもって「このままでよくなります。」とブレずに継続する力が必要です。
この「痒いといわれてもブレない」というのがかなり難しいと思います。
もう1点、これが難しいといわれる理由は「教科書に掲載されていない」ということでしょうか。
また、セミナーで解説されているのも聞いたことがありません。
近い記載はわずかにあるのですが、おそらく誰も気づいていないのが現状です。
当院と皮膚科に関する診療提携を行っている病院の先生には詳しく解説する予定です。
今回の症例でも初診時の診極めで、治療方針を変更することなく改善することができました。
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