症例別

パグの皮膚病~脂漏性皮膚炎の治療方針~

2015.08.26

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

今日はいつもと違った症例報告を行います。

どう違うのか?

それは「まだ治療が終わっていない症例」です。

来院したばかりで、2~3ヵ月後を目標に改善を目指していきます。

症例はパグ、初診時の状態をみてみましょう。

顔を左側から。

下顎~頚部です。

胸部です。

右前肢とその拡大です。

両後肢です。

甲の部分の拡大です。

左の後肢を外側から。

獣医師としては初診時に何を考えるか?

大きく2つ、診極めることが重要です。

1つは、初診時に鑑別診断としてどのような病名・病態を候補にし、優先すべき検査が何かを判断することです。

2つ目は同時に治療方針が何か、検査結果の如何にかかわらず初診時に想定できていることです。

検査結果が予測不可能な結果であることはほぼないため、検査結果で初診時の想定した治療内容が考え直されるようなことはほぼほぼありません。

1ヶ月後には臨床症状(痒み・フケ)の改善と皮膚機能の正常化が認められ、3ヵ月後にはパグらしい雰囲気になっていると思います。

四季の森どうぶつクリニック
平川将人

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【皮膚科専門外来】フレンチブルドッグの脂漏性皮膚炎

2015.03.21

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

今回はフレンチブルドッグの症例報告です。

【症例】

 フレンチブルドッグ 9歳 男の子

【過去の病歴】

 〇6年前から皮膚病

 〇当院治療前に免疫抑制剤を約3ヶ月使用したが改善なし

それでは初診時の状態をみてみましょう。
※一部画像をクリックすることで大きくすることができます。

まずは全体です。

続いて、顔を正面から拡大します。

同じく顔のシワの拡大です。

同じく顔の左側、シワの拡大です。

続いて、右耳。

同じく右耳の拡大です。

続いて、下顎~頚部です。

同じく下顎の拡大です。

同じく頚部の拡大です。

続いて、右前肢です。

同じく右前肢のワキに近い部分の拡大。

同じく右前腕の拡大です。

続いて、腹部とその拡大です。

ここから治療2ヵ月後です。

画像をクリックすることで拡大することができます。

非常に綺麗になりました。

フレンチブルドッグの症例の中ではかなり重度のため集中的な院内薬浴を4回実施したことに加え、全身的な薬物療法(お薬を飲むこと)も併用しました。

このようなタイプでは皮膚のコンディションを改善することが何より重要になるため、スキンケアを集中的に行う必要があります。

当院では医学的な治療を含めたメディカルスキンケアを院内で行っておりましたが、かねてから要望があった「遠方のため当院を受診できない飼主さまが自宅でもできるスキンケア」にも対応することにしました。

すべての皮膚病がスキンケアで改善するわけではありませんが、適切な基礎疾患の診断と医療とともに併用することで治療成績の向上に役立つと考えています。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【パグの皮膚科専門外来】皮膚バリア機能改善

2014.10.31

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。

秋もまだ半ばですが、もう冬が目の前に来たような肌寒さを感じますね。

当院では仕事のピークが春の4~5月と、秋の10月の2回あるのですが、今年もその2度目のピークがちょうど終わりようやく一安心です。

この先は来春まで穏やかな日々が続くと思うのですが、前回のブログに書いたように次のシーズンに向けて新しい取り組みをしているので、有意義な半年にしたいと思います。

そんな最近の僕を元気にしてくれたのはノーベル賞を受賞した天野氏のあるインタビューで「どれだけ失敗しても、寝て朝おきると新しいアイデアが浮かび、「今日はうまくいきそう」と思ってやっていた」という内容の言葉です。

レベルは違いますが、以前できなかったことをできるようにするために・・・のエネルギーになりますね!

では今日はパグの症例報告です。

【症例】

 パグ 5歳 女の子(避妊手術済)

【病歴】

 〇2年前からワキ、お腹の赤みと痒み
 〇冬より夏が悪化しやすい
 〇今年の6月からさらに悪化し、今が最も悪い
 〇背中には皮膚病はでない
 〇抗生物質+抗真菌剤を服用し、改善がないためさらに抗生物質を1種類追加併用するも改善なし

それでは初診時の状態です。

この状態は来院そのままの状態で、バリカンでカットなどは行っていません。

初診時から3ヶ月弱の治療後との比較をみてみましょう。

※すべてクリックすると画像を大きくしてみることができます。

このタイプもパグに多い難治性皮膚疾患の一つですね。

院内薬浴を併用することで著しい改善が認められます。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【シーズーの皮膚科専門外来】検査と治療の同時進行

2014.10.13

☆シーズーの難治性皮膚病症例報告☆

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。

当院を受診するわんちゃんで圧倒的に多いのがフレンチ・ブルドッグ、柴犬、そしてシーズーです。

それぞれ独特の体質があり、犬種によって診療スタイルを変えているのですが「シーズー=〇〇〇」という型にはまった診療をしているわけではありません。

確かにシーズーが10件来院したら7~8件は典型的な病態であることは事実ですが、時にそうでない疾患もあります。

今回はそんな「シーズーだからといってすべてが同じとは限らない」という症例報告です。

【症例】

  シーズー

【経過】

 〇数年前から内股・四肢を中心に痒みを伴う皮膚病。
 〇梅雨~夏が最も悪化し、冬はそれほど悪くない
 〇今年の冬から頭、首など全身の悪化

初診時の状態と、病変部を正確に把握するためと治療のために全身カット後の状態をみてみましょう。

まずは全体から。

正面からみると一見重症の皮膚疾患にはみえませんね。

右腕をみてみましょう。

同じく右前腕の拡大。

そして右前肢甲の拡大。

続いて、左前肢とその拡大。

続いて、背中の全体。

頭部の背側面。


※画像をクリックすると大きくすることができます。

胸部背側の脱毛部位の拡大です(被毛をカットしたわけではありません)。

最後に内股。

病変部を正確に評価するためと、治療のため全身のカットを行いました。


※画像をクリックすると大きくすることができます。

ここから5週間後の状態を比較してみましょう。


※画像をクリックすると大きくすることができます。


※画像をクリックすると大きくすることができます。


※画像をクリックすると大きくすることができます。


※画像をクリックすると大きくすることができます。


※画像をクリックすると大きくすることができます。


※画像をクリックすると大きくすることができます。


※画像をクリックすると大きくすることができます。

実はこのシーズー、非常に複雑な病態(病気の原因)をもっています。

まずは数年前から抱えている慢性、再発性の皮膚病です。

もちろんその時点で診ていたわけではないので予測に過ぎませんが、おそらく当院でよく紹介している脂漏性マラセチア性皮膚炎が内股・四肢を中心に認められたのだと思います。

またアトピー性皮膚炎が悪化因子としてあってもおかしくありません。

脂漏性マラセチア性皮膚炎や、アトピーがあると梅雨~夏が最も悪化しますので、去年まではそうだったのだと思います。

では当院を受診するきっかけになった今年の冬から悪化したこの皮膚病はというと、顕著な悪化が頭部・頚部・背中に認められました。

これは非常に特徴的な病変(見た目)なのですが、毛包虫(ニキビダニ)という病気です。

・・・と、ここまでは当院を受診する前の病院で診断がついていました。

にもかかわらずなぜ当院を受診するほどの難治性になってしまった理由はなぜなのか?も問題なのですが、もう一つ考えるべきことがあります。

『なぜ毛包虫が発症したのか?』

治療も大事ですが、個人的に今回の症例で重要なポイントの1つはここです。

これもおそらくですが、去年までは毛包虫はなかったと思われます。

シーズーは毛包虫の好発犬種であることはよくしられていますが、中高齢から発症についてはそれまでなかった基礎疾患があるのでは?と考えた方がいいでしょう。

甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症(クッシング)の有無はチェックしていきます。

  ※ここから先は専門用語が頻繁にでてくるため、ご注意ください。

まず甲状腺機能低下症の判定のために甲状腺ホルモン濃度を測定します。

同時に副腎皮質機能亢進症(クッシング)の評価のために、腹部超音波画像検査で副腎サイズ測定と尿検査「尿コルチゾール/クレアチニン比」を測定します。

また甲状腺機能はユーサイロイドで誤診が多くなるため、超音波画像で甲状腺も一緒にみておくとよりベターだと思います。
※甲状腺を超音波で評価するにはリニアプローブが必要になります。

ACTH刺激試験について、これは好みで別れるとは思いますが、個人的には偽陽性・偽陰性も多く、信頼性が低い検査であるため、画像と尿検査の結果をみてからの方がいいと思います。
※同時にしても悪いことではありませんが、そう急ぐ必要性はないです。「急ぐ必要性はない」という理由はこの後の説明で伝わると思います。

「尿コルチゾール/尿クレアチニン比測定」は回り道のような気もするかもしれませんが、もし尿コルチゾール/尿クレアチニン比でクッシングを否定することができれば判定に悩む検査を行う必要性もなくなります(ACTHの疑陽性を排除できる)し、甲状腺の数値の信頼性も高くなります。
※甲状腺機能が正常であってもクッシングがあることで甲状腺ホルモン濃度が下がることが多いため。

もちろん診た目が皮膚の石灰化や脱毛症など、「いかにもクッシング」であれば初診時にACTH刺激試験から入りますが、今回のような「いかにもクッシング・・・とまではいかない症例」では初診時でなくてもいいと思っています。

現に今回の症例では

①甲状腺ホルモン濃度が明らかに低かったためユーサイロイドの可能性を考えつつも投薬治療開始
②尿コルチゾール/尿クレアチニン比が8を超えていたためACTH刺激試験を実施
③ACTHのPost値は13と明らかに正常値であったが、信頼性は低いためLDDS試験を実施
④LDDS試験では4時間後、8時間後ともに抑制されていなかったため副腎皮質機能亢進症と診断

となったのですが、この④のLDDSの検査結果が出揃い『副腎皮質機能亢進症』と確定できたのは、この治療後を撮影した5週間後でもあります。

要するに副腎皮質機能亢進症の判定ができなくともここまでの治療結果はだせるため、初診時にACTHが最優先だったか?というと個人的には皮膚コンディションをある程度改善してからの方が誤診につながらなくていいのでは?と思っています。
※ここまで悪化した皮膚コンディションでは、体調もベストではないため、初診時にACTH刺激試験を行っても検査結果に影響がでることも考慮して。

そして今回の症例に限らずACTH刺激試験を行う時の注意点ですが、ACTH刺激試験でクッシングを否定することは非常難しいため「クッシングかどうか?」のための検査として用いては誤診につながると思います。

あくまで「さまざな条件(症状・皮膚所見・一般血液検査・尿検査)でクッシングが疑わしいため、確定のためにACTH刺激試験を行い、異常値であればもちろん確定。もし正常値であればLDDS試験を行い偽陰性を拾う。」と考えていた方がいいと思います。

LDDS試験もまた先生によって見解が分かれるのですが、ACTH刺激試験の黒だけがクッシングであれば絶対治せない症例がでてくると思います。

それを「クッシングとは言えない『クッシング風の皮膚病』で内分泌疾患としては認められない」であればそれは学術的・教科書的であって医療ではない・・・と思っています。

クッシングの診断では今でも悩むことが多いため、5年後には違うことを話しているかもしれませんけどね(苦笑)

・・・で、一つ残っていることがありますよね?

そう、内股の皮膚病です。

実はこれはまだ改善していません。(多少は改善しています。)

理由はこの内股はニキビダニでもクッシングでもなく、元々あった脂漏性マラセチア性皮膚炎(または+アトピー)だからです。
※さらなる悪化の要因にはなっていますが、クッシングになる以前から認められています。

そこで必要になってくるのが・・・・・・・もちろん当院の薬浴です。

ところでこの5週間で薬浴していないか?といえば実は2回実施しています。

でもそれは毛包虫対策の薬浴で、脂漏性マラセチア性皮膚炎のための薬浴ではありません。

薬浴内容は診断名や皮膚コンディションで異なるため、それぞれに適した薬浴内容となっています。

この5週目の撮影後に行った3回目の薬浴は毛包虫対策の薬浴ではなく脂漏性マラセチア性皮膚炎のための薬浴としました。

おそらく次回には随分と改善しているでしょう。

最後まで読んでくださった方、お疲れ様でした。


四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

初診時に描く道Ⅲ

2014.09.22

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。

前々回にチャイニーズ・クレステッドドッグの症例報告で「検査結果が出揃っていない初診時に、病態(診断名)と治療方針をどこまで的確に予測できるか?」というテーマで解説してみました。

そして前回はアメリカン・コッカー・スパニエルの実際の症例を紹介し、「一部未確定要素が残りつつも、いかに治療方針を初診時に組み立てるか?」というテーマにチャレンジしてみました

簡単に言えば「診断名があってこその治療方針」は当然なのですが、時に検査結果が出揃うために時間がかかることもあれば、中には白黒はっきりつかないグレーゾーンの検査結果で悩むこともあり・・・必ずしも教科書的な診断名の枠組みに当てはまらない症例もいるわけで、そういうときにどうするのか?・・・例え検査結果が出揃っていなくても、確定診断を得ることができなくても治療結果を引き出すことはできないのか?です。

さて、5年前から繰り返す皮膚病、3年前から悪化して一度も改善することなく通年性の皮膚病となっていたA・コッカーの症症例に戻りましょう。

前回初診時の情報を掲載したので、今日は早速治療から3週間後をみてみましょう。

それぞれ画像をクリックすると拡大することができます。

頚部も改善しているのですが、いい写真がなくまた別の機会に掲載しようと思います。

まだ治療中ではありますが、3年間改善がなかった皮膚が見違えるように綺麗になってきています。

腹部超音波画像検査で副腎が約8mm、尿コルチゾール・尿クレアチニン比が7.8と高値を示しているため副腎皮質機能亢進症の疑いも残っていますが、まだACTH検査・LDDS検査は行っておらず今後行う予定です。

そのためまだ確定診断はついておらず、なぜ全身性の通年性の皮膚疾患になったのか?という答えはでていません。

ですが、ある程度の絞り込むことでも診療方針を立て、改善へのストーリーを描くことは可能です。

原因がわかってこその治療方針というのが基本であることに変わりはないのですが、皮膚科の場合は原因を追究することと治すことがそこまで関係がないこともあります。

そのため「確定診断⇒治療法の選択」という教科書的な考えにとらわれた診療だけでは不十分な場合もあります。

では、この症例で各種検査結果から何を考えていくべきか?

それはまた次回♪

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

初診時に描く道Ⅱ

2014.09.20

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。

前回のチャイニーズ・クレステッドドッグの症例報告記事では「検査結果が出揃っていない初診時に、病態(診断名)と治療方針をどこまで的確に予測できるか?」というテーマで解説してみました。

普段から「診極め」、「初診時に的確な病態把握を」と意識しているため、診断名をつけることは非常に重要だと考えています。

・・・が!

教科書的な枠組みの診断名こそがすべてか?といわれると、医療はそうではないと考えています。

おおげさかもしれないですが、生命の神秘という言葉もあるなかで人が考えた枠組みにすべて綺麗に分類される・・・なんてありえないと思います。

実際すべての病気が既存の検査法だけで診断名がつくわけではなく、「教科書に記載されている条件を満たさない症例」も数多くあります。

そのため医療は診断至上主義ではなく、未確定要素を含みながらも治療を組み立てることもとても重要だと考えています。

今回はそんな「一部未確定要素が残りつつも、いかに治療方針を初診時に組み立てるか?」というテーマで実際の治療症例を解説していきます。

【症例】

 アメリカン・コッカー・スパニエル 約10歳 女の子(避妊手術済み)

【経過】

 〇1~2才まではまったく皮膚トラブルなし
 〇5才ごろから痒みを伴う皮膚病
 〇毎年夏になるとかゆがり、冬はトラブルない
 〇3年前から頚部がべたつくようになり、1年を通して皮膚病がでるようになった
 〇べたつきは頚部にはじまり、今ではワキ・四肢全体に広がっている

初診時の状態をみてみましょう。

まずは頚部から。

続いて、右前肢。

同じく右前肢の肘内側の拡大。

同じく右前肢の手首内側付近の拡大。

同じく右前肢の甲の部分です。

続いて、右後肢の内股の状態です。

今回は右側のみを掲載していますが、すべて左右対称に病変が存在します。

何をかんがえるか?

まずはカルテの情報では約10才、コッカー・・・

コッカーといえば脂漏が起きやすい犬種で、非常に難治性になりやすい体質を持っていると評価できます。

続いて年齢は約10才ということで高齢期の入り口ですが、初発は5歳のため高齢期の発症とは言えません。

次に考えるのは5歳のときの皮膚病と今の皮膚病が同じかどうかを考えるのですが、おそらく違うのではないかと考えました。

そう考える理由は2つ、1つ目は当初明確な季節性があったにもかかわらずこの3年は明らかな通年性で1度もよくなったことがないと飼主さまがおっしゃっていたためです。

もう一つは病変部、高齢期にかけて明らかな拡大・悪化が認められているためです。

5歳からの季節性の痒みであればアトピーなどを疑いますが、中高齢期での悪化は内分泌疾患を疑うべきです。

続いて痒みのある部位ですが、耳、口唇、頚部、四肢を中心に痒みが認められました。

この「季節性」、「耳・口唇・頚部・四肢」という条件でもやはりアトピーを含めたアレルギー疾患を疑います。

また、写真は掲載していませんが、背中には多量のフケを認めました。

以上のカルテ情報、飼い主さまからのお話、病変部から

 〇最初の発症はアトピーの疑い
 〇中高齢期での悪化は内分泌疾患の併発を疑う

と考えました。

必要な検査は

 一般皮膚検査
 細菌培養・感受性検査
 一般血液検査
 内分泌血液検査
 超音波画像検査
 尿検査

です。

ここで内分泌疾患について、具体的に何を考えるべきか?

一般的には甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症です。

実はもう一つ考えてもいいものがあるのですが、そこはあえて伏せておきます。

上記の2つの内分泌疾患のうち、甲状腺機能低下症は初診時に血液検査(場合によって超音波画像検査追加)で判定できます。

では副腎皮質機能亢進症は初診時に行うか?というと、現状では最優先で行うほど典型例ではないため、腹部超音波画像検査と尿検査を先に行うことにしました。

副腎皮質機能亢進症の血液検査は時間がかかること、コストも高め、判定も難しいため、「疑いが高い場合にのみ実施する」とした方がいいため、回り道のように感じることもありますが、腹部超音波と尿検査を優先します。

ではこの2つの検査で何かわかるか?

超音波画像検査では副腎サイズ、形がわかります。

副腎皮質機能亢進症ではサイズが大きく、中には形が変わっていることもあります。

また尿検査では「副腎皮質機能亢進症の可能性はない」という結果がでることもあるため、無駄な検査を初期に除外することも可能です。

参考までにこのコッカーの副腎サイズは約8mm、尿検査で尿コルチゾール・尿クレアチニン比は7.8と副腎皮質機能亢進症の疑いが高い・・・・という判定でした。

ではこの時点で続いてACTH試験、判定がグレーであればさらに追加でLDDS試験を行うべきか・・・?

行ってもいいと思うのですが、そこまでしなければ治療方針が一切立てられないか?、副腎疾患の有無の前に改善させることができる治療方針がないのか?・・・そんなことありません。

これらの検査結果が出揃う前から、むしろ初診時でも治療方針は立てることが可能です。

何も検査結果がでていなくてもほぼストーリーは描くことが可能です。

そして内分泌疾患の判定がすべて終わる前であっても改善は十分可能です。

それでは治療開始から3週間後、

それは次回に♪

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【チワワの皮膚科専門外来】脂漏性マラセチア性皮膚炎

2014.09.13

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。

今年の上半期は移転準備を理由に症例報告に手をつけていなかったのですが、最近気持ちを切り替えて取り組むようになり、少しばかり自分にスイッチが入ったような気がします。

何でも治せます!なんていえませんが、美しくアグレッシブに攻める診療をお魅せできればと思います。

今回もチワワですが、前回の症例報告でチワワにはいくつかパターンがあるというお話しをしました。

「脱毛」、「アレルギー」、そして「脂漏」です。

脂漏にも大きく2パターンあるのですが、そのうちの1つを紹介します。

【症例】

 チワワ  7歳  男の子

【経過】

 〇3年前から皮膚病、1年通して発症している。
 〇季節性があり夏が最も悪い
 〇過去に抗生物質、シャンプーを処方されたが改善なし

初診時の状態をみてみましょう。

まずは頚部から。

同じく頚部の拡大です。

続いて、頚部のやや下の全胸部~前肢です。

続いて右前腕とその拡大。

続いて、左前腕とその拡大です。

続いて、腹部。

続いて、右内股と膝部分の拡大です。

この初診時から6週間後の状態と比較しています(治療は5週間です)。

それぞれ画像をクリックすると拡大してみることができます。

まずは頚部と、その拡大です。

続いて、前胸部~前肢。

続いて、右前肢とその拡大。

続いて、左前肢。

初診時と角度が若干かわっていますが、内股です。

※後肢の拡大がありませんが、治療後の撮影を忘れてしまいました。しかし同様に改善しています。

スキンケアのため部分的に被毛をカットしているため短くなっていますが、皮膚のコンディションが正常に戻っているのがわかると思います。

このタイプは初診時に治療の方向性を明確にすることが可能であり、この最速の治療結果にはスキンケアが最も重要です。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師 平川将人

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【名古屋・愛知の皮膚科専門外来】柴犬のスキンケア療法

2014.02.18

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

柴犬の難治性皮膚疾患(当院受診前に治療歴があり改善しなかった症例)をまとめるために、さまざまなタイプの症例を紹介しています。

今回紹介する症例は今までの治療症例とは少し異質なものですが、「これだけ重症の皮膚病でも治る余地がある」と思っていただきたくて紹介します。

【症例】

 柴犬 7歳 女の子(避妊手術済)

【過去の病歴】

 〇4年前から通年性(1年中)の皮膚病
 〇現在が最も悪い状態
 〇最初の2年は近医(A動物病院)にてステロイドを使用しながら痒みを抑えていた
 〇2年前に漢方療法を行う皮膚科動物病院(B動物病院)へ転院し、抗生物質・甲状腺モルモン剤・漢方薬など2年間服用
 〇偽妊娠になりやすいことから、同じB動物病院で避妊手術(卵巣摘出)を受ける
 〇B動物病院で漢方成分の入ったシャンプー(商品名なし)を使用

それでは初診時の状態をみてみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。

まずは、顔の左側から。

同じく目の下、頬の拡大です。

同じく左側、口唇~頚部にかけての拡大です。

続いて、頚部左側です。

続いて、頚部~左前肢肩付近です。

続いて、頚部。

同じく頚部の拡大です。

続いて、頚部~前胸部です、

続いて、右前肢内側、拡大をあわせています。

続いて、身体右側、ワキ~胸部側面です。

続いて、腹側全体です。

同じく、腹側の胸部拡大です。

続いて、右後肢の足首~甲の拡大です。

最後に尾側、会陰部周囲です。

この初診時から2カ月半後の状態と比較してみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

初診時は過去に例がないほど重度の皮膚の肥厚、脂漏が認められました。

そしていつも通り初診時に数パターンの診断・治療方針を想定しましたが、最優先で疑ったのは「アトピー+ホルモン異常」でした。

ただ、でてきた検査結果は「アトピーはない、甲状腺も異常なし、クッシングの可能性も低い」という想定と異なるもので若干違和感を感じましたが、スキンケア療法に非常にいい反応がありました。

通常柴犬の皮膚病に院内で行うスキンケアを行うことはありませんが、今回の症例は初診時に「原因のいかんに関わらずスキンケアを併用しなければ改善はないだろう。むしろ原因のいかんに関わらずスキンケアでかなり改善させることができる。」と判断したため、改善に関しては当然の結果だと考えています。

ただ想定と異なる検査結果に感じた違和感が本当なのかを確認するために、いくつか詳しい検査を追加で受けていただいた結果、確信に近い検査結果を得ることができました。

しかし今回当院が下した診断は本来起こるべきではないことを前提にした診断名であるため、当院での診断をより確実に確定するために大学病院を受診することになっています。

今回の症例は治療を行いながら複雑な心境でした。

考えられる原因が原因なだけに、なぜこの子がこんなつらい思いをしなければいけないのか、と診察のたびに胸が痛みました。

そして「獣医師として代わりに責任持って診断・治療する」と思いました。

もちろん当院を受診される全ての診察に全力を!という想いを込めていますが、この子のスキンケア時には全スタッフがいつも以上に想いをこめていたと思います。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】ステロイドの使い方

2014.02.13

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

難治性皮膚病になりやすい犬種として有名な「柴犬」ですが、なぜ柴犬の皮膚病は治しにくいのでしょうか?

この1~2年ほど柴犬の皮膚病を診ながらやはり他の犬種とは違った診方をしなければいけないと感じるようになりましたので、一度HPでまとめてみようと思います。

柴犬の症例を複数紹介しながら、柴犬の皮膚病をまとめなおそうと思います。

【症例】

 柴犬 7歳 女の子

【病歴】

 〇4年ほどまえから痒みを伴う全身の皮膚病
 〇1件目の動物病院で3~3年半、その大半をステロイドで痒みを抑えていた
 〇ステロイド依存から皮膚科のある動物病院へ転院
 〇2件目の動物病院では減感作療法(週1回注射)を5カ月継続するも改善なく、全身の悪化が認められた

それでは初診時の状態をみてみましょう。

まずは全体。

続いて、顔。

同じく顔の左側から。

同じく顔の右側から。

続いて、下顎。

続いて、四肢端。

続いて、後肢の膝~足首。

初診時から4週間後の状態と比較してみましょう。


※クリックすると画像が拡大できます。


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※画像をクリックすると拡大できます。

完治ではありませんが、痒み・皮膚コンディション・被毛ともに綺麗に再生してきました。

「ステロイドに副作用はない」とはいいませんが「ステロイドは皮膚病を悪化させる」とも言いません。

ステロイドは皮膚科診療においてなくてはならない薬の一つで、使いこなしてこそ皮膚科診療だと考えています。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【犬の皮膚科専門外来】シーズーのマラセチア性皮膚炎

2014.01.19

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

今日は、ここ最近の中でも最も「必ず美しく治す」と強く意識した症例の1例です。

【症例】

 シーズー 5歳10カ月 女の子

【病歴】
 〇~2歳までは皮膚病なし
 〇3年前から痒みを伴う皮膚病を発症し、年々悪化している
 〇2年前からは皮膚科のある動物病院で『漢方』を含めた4種類の内服を継続しているが、改善なし

それでは初診時の状態を見てみましょう。

まずは正面から。

続いて、右側面。


※画像をクリックすると大きくなります。

続いて、頚部とその拡大2枚です。

続いて、顔・頚部を右側面から見てみます。

続いて胸~前胸部、ワキです。

続いて、右胸側面です。

続いて、右前肢です。

この右前肢の被毛をカットして、皮膚の状態を詳しく見てみましょう。

続いて、腹部を診てみましょう。

続いて、右後肢を外側(3枚)、内側1枚)見てみましょう。

この右後肢の被毛をカットして皮膚の状態を詳しくみてみましょう。

それでは初診時から約7カ月後の状態を比較してみましょう。

まずは右側面全体から。


※クリックすると画像が大きくなります。

続いて、頚部とその拡大です。


※画像をクリックすると大きくできます。


※画像をクリックすると大きくなります。

続いて、右顔~頚部とその拡大です。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。

続いて、右胸側面の比較をみてみましょう。


※画像をクリックすると大きくなります。

続いて、胸部~前胸部、ワキの比較です。


※画像をクリックすると大きくなります。

続いて、右前腕の比較です。


※画像をクリックすると大きくなります。

皮膚が正常機能を取り戻した結果、非常に綺麗な被毛になっていることを証明するために、飼主さまの許可を得てカットさせていただけたので、あえてこの写真の状態からバリカンでカットした後の皮膚コンディションの比較もご覧ください。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。

続いて、腹部の比較です。

続いて、右後肢の比較をご覧ください。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。

この右後肢も飼主さまにご協力いただきバリカンで被毛をカットし、皮膚のコンディションの比較をみてみましょう。


※画像をクリックすると大きくなります。


※画像をクリックすると大きくなります。

非常に綺麗になりました。
被毛が再生した、というレベルではなく皮膚そのものが正常な機能を取り戻し、美しい被毛をつくりだしています。
飼主さまも「被毛が長くなるのが早くなった」といいますから、いかに過去の状態が異常だったのか、そして皮膚が正常に戻ろうとする力をうしなっていなかったかがわかると思います。
当院のスキンケアは本来備わっている「皮膚を正常に保とうとする力」で足りない部分をサポートしているだけです。

7カ月間、欠かすことなく週1回の院内薬浴(スキンケア)を受けていただきました。

色々な意味で大変だったと思うのですが、僕からも「徹底的に綺麗に治したいので、週1回を続けさせてください。」とお願いし、ここまで到達することができたと考えています。このレベルまで治療ができたのも飼主さまのご協力があってこそですので、本当に感謝の気持ちで一杯です。

シーズーは難治性の皮膚病になりやすいと言われており、この症例がまさに典型的な症状といえます。

 〇脂漏症
 〇アレルギー
 〇遺伝、体質
 〇マラセチア
 〇シーズーだから
 〇治らない
 〇シャンプーしかない

当院に来院される飼主さまの多くがこういった説明で諦めていた時期もあったと聞きます。
しかし、ここまで重症でも改善させる方法はあります。今のところ当院の薬浴(スキンケア)で継続治療して改善がなかったこのタイプのシーズーはいません。きっとこれからもこのタイプで改善できない症例はいないと思っています。
※シーズーの皮膚病がすべてこのタイプではありません。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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