2017.07.01
当院は「かゆみ」を主とした皮膚病治療に力を入れている皮膚科動物病院ですが、ポメラニアンやトイプードルの脱毛症の患者さまも非常に多く来院されています。
今回はその「痒み」と「脱毛症」の両方をかかえたポメラニアンの症例報告です。
【症例】
ポメラニアン 2歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇去年の6月のカット以降、毛がはえてこない
〇去年の9月頃から脱毛が進む
〇腹部側面、かかとを昔よりなめる(心因性?)
〇かかりつけの病院にてレーザー+抗炎症薬+サプリメント(R&U、栄養剤)
まずは全体からみていきましょう。
続いて、頚部。
続いて右前腕。
同じく、右前腕側面。
続いて、左前腕。
同じく左前腕側面。
続いて、身体の右側。
同じく、身体の右側の頸部~胸部の拡大。
続いて、身体の左側。
続いて、身体の左側の頸部~胸部の拡大。
ポメラニアンやトイプードルに多い脱毛症アロペシアX(毛周期停止)の特徴をもっています。
ただ「脱毛」しか症状がない通常のアロペシアXとことなり、今回は「痒み」という症状もかなり強くでています。
痒みが強い部分は腹部側面(色素沈着が強い部位)、手首のあたりです。
アロペシア単独であれば顔・四肢の脱毛はほとんどないため、手首の脱毛は「アロペシアX」の症状とはいえません。
それでは、この初診時から9週間後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると、拡大してみることができます。
まだ被毛は短めですが、かなりの改善がみとめられました。
毛の数としては80%以上の改善と判断しています。
それでは簡単な解説です。
今回は通常のアロペシアXとは異なります。
理由は「アロペシアX」だけでは起こらない痒み、特に手首の痒みがその特徴を表しています。
そのため今回は脱毛症に対するアプローチと、痒みに対するアプローチの両方を行いました。
では本来の脱毛症ではおこらない「痒み」に対してどのようなアプローチを行ったか?というと、もちろん最初は「アポキル」です。
アポキルは、副作用が非常に少なく、飲みやすく、痒み全般をかなりの精度でおさえてくれる非常にいいお薬です。
しかし今回は処方する時点で「効きが悪い」という前提で処方しました。
もちろん「効けばOK」という期待もありましたが、「効かなければ次は〇〇〇」という次のプランを用意して、あえて最初にアポキルを選択しました。
アポキルの効果はというと、やはり「痒みはまったく改善なし」という効果なしの治療結果でした。
もちろん想定範囲内ですので、アポキルの処方は終了し、予定通り次に考えていたサプリメントを処方しました。
「痒み止めのアポキルを撤回して、次に出すのがサプリメント?」と思われるかもしれませんが、この症例の最大の見せ場はここです。
すると痒みもほとんど収まり、上の写真の通り舐めすぎていた手首の脱毛部位も綺麗な被毛が再生しています。
この流れであればもうお分かりだと思いますが、サプリメントは当院のオリジナルサプリメント、ヒーリングケアLFプラスです。
たかがサプリメントですが、されどサプリメントです。
的確な診断があれば、サプリメントはお薬を超える改善を示すことすらあります。
今回も初診時に「これはLFプラスで改善するだろうな」と判断してあえて「アポキル→LFプラス」という処方の流れをつくりました。
当院では医療を提供するクリニックでもあるのですが、医療だけではないサプリメントの重要性もお伝えできればとも考えています。
脱毛症を治すサプリメントではないのですが、痒み・舐め癖の治療選択肢としてヒーリングケアLFプラスは非常におすすめできます。
当院のオンラインショップで購入することが可能です。
投稿者:
2017.03.25
愛知・名古屋で犬の皮膚病治療のみを行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
春になりましたが、まだ少し寒さを感じます。
一時期ストレスから口内炎・吹き出物が多発し、寝不足も重なって絶不調でしたが、今はいいスパイラルに入り絶好調です♪
今日紹介するのは脱毛症のわんちゃんです。
普段は「痒みを伴う皮膚病」を診る機会が圧倒的なのですが、今回は「痒みを伴わない脱毛症」です。
【症例】
犬 シェルティ
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは全体像です。
綺麗な毛並みで、一見脱毛症があるようにはみえません。
今回の病変は1箇所だけ・・・
この左耳の裏側の脱毛です。
脱毛している部分と、正常な被毛がある境の部位を拡大してみましょう。
白くめくれたようなフケが大量に付着しています。
診断はここで決まります。
初診時から約2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗な毛並みが再生しました。
このタイプは「完治」といえます。
原因は非常にシンプルで、「ステロイド外用薬の塗りすぎによる副作用」です。
当院としては「脱ステロイド」を正義の御旗のように謳うことはなく、積極的にステロイドを使う方なのですが、「使いこなすこと」がとても大事だと考えています。
ステロイドを使いこなすというのは、ステロイドを使っていいシーンと使わない方がいいシーンの診極めであり、使うべきときにしっかりと使う、使ってはいけないシーンを間違えないことです。
そして「使いすぎに早く気づくこと」、ですね。
今回のわんちゃんがステロイドを使うキッカケになった皮膚病をみていないため、「使うべきだったのかどうか?」に関してはわからないのですが、使いすぎに気づかなかったのが原因だと思います。
投稿者:
2017.02.25
ポメラニアンやトイプードルに非常に多いアロペシアX(毛周期停止)の治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
この1年、アロペシアXのポメラニアン、トイプードルのわんちゃんの受診が非常に増えてきています。
以前は数ヶ月に1件程度だったのですが、この1年は月1件以上のペースで来院されています。
アロペシアXの治療は非常にデリケートのため、「生える・生えない」だけではないさまざまな視点から診ることが必要ですが、当院では選択肢の1つとして積極的な治療を提案しています。
※治療しない選択肢も同時に提案します。
今日はそんなアロペシアXに関する症例報告です。
【症例】
トイプードル 6歳10か月 男の子(去勢済み)
【症歴】
〇2歳から毛が薄くなり、「アロペシアXの疑い」の仮診断
〇遠方の病院を受診し、投薬治療により発毛を認める
〇再び脱毛がはじまったが、以前の動物病院が閉院したことで当院受診
まずは初診時の状態をみてみましょう。
続いて、頚部。
続いて胸~腹部。
続いて、身体側面。
続いて、背中。
最後に後ろから。
それでは初診時から14週間後(治療期間12週間)の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
部分的に薄い部位も残っていますが、正常の70%くらいまで改善しています。
また、「脱毛の進行とともに生えている毛が薄くなってしまった」ということでしたが、元々の「濃い毛」が再生してきました。
今回の症例のポイントはいくつかあります。
①2才のころの脱毛はアロペシアXだったのか?
②一旦改善したが、そのときの処方内容はなんだったのか?
③初診時に何を疑ったのか?
④初診時に何を検査したのか?
⑤当院で行った12週間の投薬治療は何か?
⑥今後は?
です。
ではまず①の「2才の脱毛はアロペシアXだったのか?」について。
正直なところわかりません。
ですがアロペシアXの可能性が高いのでは?と思っています。
では②の「一旦改善したときの処方内容は?」です。
残念ながら色々なお薬を混ぜて処方されていたようで、飼主さまもわからないということでした。
今となっては確定できないことですが、有名な動物病院でもあったので、「おそらくこんな処方だったのでは?」とイメージするものはなくはありません。
では③の「初診時に何を疑ったのか?」です。
もちろんアロペシアXを疑います。
そして同時に甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症も十分に疑うべきです。
では④の「初診時に何の検査をしたか?」です。
甲状腺と副腎の評価を行いました。
では⑤の「12週間の投薬治療」についてです。
実は、
甲状腺ホルモン剤を処方しました。
もちろん甲状腺ホルモン濃度が明らかに低下していたためです。
しかし皮膚科や内分泌疾患の著名な先生たちはこのように注意されます。
『アロペシアXの症例に甲状腺ホルモン濃度測定を行い、ホルモン濃度のわずかな低下を甲状腺機能低下症と誤診して、長期間甲状腺ホルモン剤を処方されて脱毛したままの症例をみますが、いくら処方しても毛は生えませんからね。あれはユーサイロイド(偽甲状腺機能低下症)です。注意しましょう』
※偽甲状腺機能低下症・・・甲状腺ホルモン濃度は甲状腺機能低下症でなくとも下がる場合もあり、検査結果で「本当は甲状腺機能が正常であるのに、その他の要因でホルモン濃度が低下した状態であり、投薬の必要はない」
皮膚科や内分泌セミナーで「陥りがちな誤診」としてよくある話なのは重々承知した上で、飼主さまにも同様の説明した上で治療方針を決定しました。
最後に⑥、「今後は?」です。
確かに一気に被毛の再生が認められましたので、「甲状腺機能低下症の診断&治療があっている」という見方もできます。
しかし個人的にはアロペシアを強く疑い、今回の甲状腺の内服治療も「3~6ヶ月で改善がなければアロペシアXと考えましょう」として処方したので、正直なところ「生えたんだ!?」とちょっと驚きでした。
そして確かに生えたのですが、「アロペシアXではない」とまではいえません。
甲状腺機能低下症+アロペシアXの可能性もありますし、アロペシアX単独の可能性もなきにしもあらずです。
まだ3ヶ月なのでどちらともいえないでしょう。
被毛がほぼ100%まで改善し、それがずっと続けば甲状腺機能低下症単独を考えますし、今後再び脱毛がはじまればアロペシアXを疑うべきだと思っています。
診断・治療は時に紙一重です。
検査結果、一時的な治療結果ともに信用しすぎず、常に1歩さがって全体を見渡しておく必要がります。
また報告する機会を作りたいと考えています。
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2017.02.06
フレンチブルドッグの湿疹・膿皮症・アトピーなどの皮膚病治療に力をいれている動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
診療でよく実感することですが、「医療に魔法はない」です。
もちろん劇的な改善で、「うちの子に何をやったんですか!?」と喜んでいただくことは少なくないのですが、それでも医療に魔法はないのです。
大事なことの一つはピンポイントの診断・治療、そしてそれらを適切に生み合わせることです。
【症例】
フレンチ・ブルドッグ 11歳3ヶ月 女の子(避妊済み)
【症歴】
〇3ヶ月前から皮膚病
〇かかりつけ動物病院で治療するも改善なし
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは顔から。
続いて、頚部。
つづいて、前胸部。
続いて、左前肢(肩付近~前腕にかけて正面から撮影)。
続いて、右前肢の外側面。
続いて、左前肢先端です。
続いて、右側面の胸部付近。
続いて、右側面腹部~大腿部。
それでは初診時から9週間後の状態と比較してみてみましょう。
※写真をクリックすると大きくみることができます。
まだ治療途中ですが、出血・傷はもちろん、湿疹もほとんど消失しました。
ここまで到達すればもう安心です。
あとは「もっとよくなる」、そして「再発させない」が重要です。
もう一度フワフワ&サラサラの被毛に回復させ、お薬がなくても再発もない状態へ導きます。
今回の症例をスキンケアとサプリメントのみで改善させるのはさすがに無理なのですが、治療と「再発防止」として重要なのがスキンケアとサプリメントです。
投稿者:
2017.02.05
ダックスフンドのアトピー・アレルギー性皮膚炎、湿疹や脱毛疾患の治療に力を入れている動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日は、以前紹介したことのあるミニチュア・ダックスフンドの慢性皮膚疾患のその後の経過を紹介します。
以前の記事 ⇒ 【ダックスの皮膚病治療】治療の差は?隠された問題は?
上記の記事では、初診時からわずか2週間で皮膚炎・痒みといった問題点が改善されたところまで紹介しました。
ただ同時に「隠された問題点」があり、別次元でもっとよくなることをお伝えしました。
初診時から2週間で実施しなかったアプローチを3週目から行い、予測どおりの改善を導き出すことができましたので、改めて紹介します。
新しいアプローチから約2ヵ月半後、初診時から3ヵ月後の状態をみてみましょう。
左側にある比較写真は初診時ではなく、初診時からよくなった2週間後の状態との比較です。
※1枚だけ初診時との比較になっています。
※画像をクリックすると大きくみることができます。
まずは頚部から。
つづいて、胸部です。
続いて、腹部。
続いて、右前腕、そして左前腕です。
続いて、後肢です。
※この後肢のみ、初診時との比較です。
続いて、左耳、そして右耳です。
非常に毛並みが綺麗になりましたね!
それでは振り返って、「初診時に何を診極める必要があったのか?」・・・
1つ目は、何より重症なのは主症状でもある「痒み」の改善、すなわち表面上の皮膚炎のコントロールです。
フケ・皮脂、湿疹、炎症、皮膚の肥厚などの改善が急務です。
これらの症状を最短で改善するには何を行えばいいのか?、検査結果のいかんにかかわらず初診時に把握しておかなければいけません。
2つ目は「皮膚炎以外に何が隠れているのか?」です。
ただ、この「皮膚炎以外の隠された疾患」ですが、この疾患への治療なく2週間の治療結果はでたのですから、結果としても「基礎疾患へのアプローチはなくとも改善は可能」ということになります。
それでもこの基礎疾患があったがためにここまで重症化したのも事実のため、初期の治療で症状が緩和でき次第、次の治療にシフトしていくのがベストでしょう。
初診時にこの隠された疾患を診極めつつ、あとから追加しても十分に改善するという診通しをたてておくのも重要なポイントだったと思います。
今回の症例でも初診時、再診時に院内で薬浴を行いました。
スキンケア、体質管理のサプリメントも重要なケアと考えています。
投稿者:
2016.11.19
痒みを伴う皮膚病治療を専門に行う四季の森どうぶつクリニックです。
みなさん、こんにちは。
先日は神戸から、今日は神奈川県からの来院がありましたが、昔から診ているわんちゃんもいます。
今日はそんな子犬のころからみている子の症例報告です。
【症例】
ポメラニアン
【経過】
〇少しずつ毛が薄くなっている
〇サプリメントで反応がなかったため、本腰いれて治療スタート
では、スタート時点から。
なにせ元々当院でずっと診ているわんちゃんでしたので、進行しきった末期ではないのですが、ポメラニアンに多発する脱毛症「アロペシアX」の典型症例といえます。
治療スタートして9ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
随分とフワフワになってきましたね!
※実はこの写真比較は1ヶ月前で、つい先日にまた来院されたのですが、全身モコモコになっていました♪
ポメラニアンの脱毛症のアロペシアX(毛周期停止、ポメハゲ)で発毛が認められるかどうかについては「やってみないとわからない」というのが基本ですが、もう10症例以上連続で著しい改善が認められています。
最後に生えなかった症例がいつだったか覚えていないくらいです。
治療にあまり関係ないお話ですが、実はこのわんちゃんと昔から縁がありました。
僕が買い物でとあるペットショップに行ったとき、たまたまそのお店に入ったばかりのこの子がいて・・・・・・一目ぼれ!
かわいすぎて抱っこ&写真撮影まで・・・・・・(笑)
で、次にお店にいったときにはもう新しいおうちに迎えられた後で、・・・・・・しばらくしたら当院にやってきました!(診察は麻衣子先生担当)
そんなこんなで途中から、
「あれ?脱毛(アロペシア)しそうな雰囲気?」
「あ、薄くなってる・・・」
「やっぱり薄いよね」
という流れで治療にいたりました。
前回紹介したわんちゃんも子犬のころから当院にかかっているわんちゃんだったのですが、こんなこともあるものです。
ただいくら診断が早くても、発毛にかかる時間は個体差が大きいですね。
今回は全身モコモコになるのに10ヶ月かかりました。
発毛を信じて10ヶ月継続するにも、獣医師側の経験・判断、そして飼主さまとの信頼関係が必要です。
いい結果がでて非常によかったと思います。
投稿者:
2016.10.06
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
この数年、積極的に取り組んでいる脱毛(アロペシアX、毛周期停止)治療ですが、年々治療成績が高くなっています。
以前は「生えるかどうか・・・」というものでしたが、この2年は「ポメラニアンの脱毛で改善しなかった症例はいない」というくらい改善しています。
※毛周期停止、アロペシアX・・・ポメラニアン、トイプードルにときどき認められる難治性脱毛症です。
【症例】
ポメラニアン
治療スタート時点の写真です。
約半年後の治療後と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
今回のわんちゃんは脱毛がはじまってまだ比較的経度、かつ時間経過も短い状態からの治療スタートです。
というのも、今回のわんちゃんは当院に子犬のころから通院していたわんちゃんで、かなり早い段階で「近いうちにアロペシアになるだろう」と予測して飼い主さまにもお伝えできていました。
そのため確定診断も早く、治療もかなり初期のうちに開始することができ、結果的にはこれだけ十分な治療結果をだすことができたのだと思います。
投稿者:
2016.10.06
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今日はトイプードルの代表的な脱毛症、アロペシアX(毛周期停止)の治療症例報告です。
実は昨年にも紹介したわんちゃんですが、その後の経過です。
【症例】
トイプードル 5歳 女の子(避妊済み)
【経過】
〇2年前からの脱毛
それでは初診時の状態です。
去年の記事では「あと半年後には・・・」とかきましたが、実際はあれから1年です。
※写真をクリックすると拡大してみることができます。
かなり時間がかかっていますし、まだまだ少ない部分もあるのですが、これでも随分と改善してきました。
そもそもアロペシアX(毛周期停止)は治療困難な病気の一つで、さまざまな治療方針がありますが、簡単に生える治療はありません。
その中でここ数年は治療成績が高くなってきて、かなりの確立で被毛の再生ができるようになってきたのですが・・・やはり脱毛症の中でもアロペシアXは治療成績が読めない部分がありますね。
今回も比較的初期に「おっ!いけるか!?」と思ったのが昨年の10月だったのですが、そこから低迷期に入り・・・・・・・・この3ヶ月くらいでようやく生えてきました。
初診時が昨年の夏なので、1年かけてようやくです。
このアロペシアXという脱毛症は古くからポメラニアンで時々発症する有名な病気で、最近ではトイプードルでも発症しやすい脱毛症です。
治療の必要性については人それぞれ意見があると思うのですが、個人的には
「ここ(当院)で治療しなければこの子の毛並みが戻るチャンスは2度とない。自分がやらねば誰がやる?」
という最後のクリニックの使命感で治療の希望に全力でこたえるようにしています。
僕も加齢とともに薄くなったら全力で抵抗する予定です(笑)
投稿者:
2016.10.02
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
看護師の協力を得れるようになってから症例報告が随分と楽になっています♪
今回は今まで掲載しなかったような症例も紹介しようと思います。
症例はチワワちゃん、耳の脱毛です。
元々通院されていたわんちゃんなので、初診ではありませんが「トラブルに気づいた最初の診察のとき」を紹介します。
特徴は耳の脱毛、特に辺縁でフケを伴って束になって抜け落ちます。
めずらしい皮膚病ではなく、結構よくあります。
診たことない先生はいないと思います。
進行すると激しい症状がでることもあるのですが、多くのわんちゃんで無症状ですし、「これが原因!」と特定することも困難なため、個人的には「攻め込みにくい皮膚病の一つ」でした・・・(苦笑)
長年しっくりくる「上手な治し方」を掴みきれていなかったのですが、最近は発症の原因を推測できるようになったり、治療成績も随分と高くなりなんとなく掴めた気がしています。
では、治療後と比較してみましょう。
おおよそ2~3ヶ月で改善が認められます。
最近治療したわんちゃんはみな予測どおりに改善したので、知り合いの先生にもコツを伝えてみました。
投稿者:
2016.09.16
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
四六時中お話している「初診時の診極め」ですが、実は現代医学で重要視される「根拠」とは正反対にあるものです。
日常の診療でよくあるパターンですが、診た瞬間「きっとこうだろうな」という経験からの判断に対して、初診時には検査結果が出揃っていないこともあるため客観的な根拠がないこともあります。。
もちろん初診時に顕微鏡検査や一部の血液検査、画像診断などでの総合評価が加わっての判断のため、後日出揃う検査結果をみて想定外の「こんな結果がでるとは・・・」ということはほぼ皆無です。
しかし時に出揃った検査結果が予想通りではなく、診断名に悩むこともあります。
それは「診極め」に問題がある・・・という意味ではなく、「診極め」と「根拠となるべき検査結果」がリンクしないときです。
今日はそんな症例報告です。
【症例】
9歳 紀州犬 男の子(去勢済み)
【病歴】
〇3ヶ月前からお腹の脱毛、背中の脱毛と広がってきた
初診時の状態、症状は背中のみになっています。
診た目の診断面は「感染症」、この判断で間違いではないですが、ポイントは基礎疾患の評価です。
高齢期になり、フケを伴う円形脱毛症が複数・・・・・疑うべきは「内分泌疾患」です。
初診時の「診極め」は
〇感染症は内服&スキンケアで改善可能
〇基礎疾患に内分泌疾患として候補は2疾患、甲状腺疾患または副腎疾患のどちらかがあるはず!
です。
検査結果は・・・・
〇一般&生化学検査は甲状腺疾患・副腎疾患の両方を示唆
〇エコーは副腎疾患の可能性を残す
〇ホルモン測定では、副腎検査が正常値、甲状腺検査のみの異常値
副腎疾患の検査精度はあまり高くなく、正直なところ検査結果より自分の判断が正しいことの方が圧倒的に多いのですが・・・
実際の治療レベルとしては、
〇甲状腺疾患の治療薬は、万が一副腎疾患だったとしても副作用はまずないだろう
〇副腎疾患の治療薬は、万が一副腎疾患でなければ使うべきではないし、副作用が起きたら大変
のため、自分の判断は一旦保留としました。
ということで、初期治療は「まず甲状腺疾患の投薬治療を試験的に開始、ただし副腎疾患であれば改善しないためあくまで試験的治療である」としました。
しかし初診時から6ヶ月後、感染は完全に治ったにもかかわらず、被毛の再生は若干あるものの、十分とはいえませんでした。
そこで飼主さまとよくよく相談して、検査結果上では副腎疾患を確定する結果はなかったのですが、投薬治療を副腎疾患へシフトすることにしました。
それから2ヶ月・・・・
※クリックすると拡大することができます。
フワフワにもどってきました!
この時代の医療は難しいですね。
個人的に重要視している経験は根拠にならず、必要な根拠は検査結果(データ)です。
しかし検査の正確さは100%に遠く及びません。
そのため最後の最後の判断は検査結果に頼りきらずに、たとえ検査結果がそろわなくても、検査結果を否定する医療であっても経験を優先すべきと日々感じています。
時代はAI(人工知能)にシフトする方向でもう変わることはありませんが、AIがこの難問をどうクリアするのか見物ですね♪
投稿者: