2022.11.21
こんにちは、わんちゃんの皮膚科専門の動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回はヨークシャーテリアの子の症例です。
【症例】
ヨークシャーテリア 10歳7ヶ月 男の子(去勢済)
【経過】
〇2年以上前から痒みが続いている
〇手の甲~指、踵、四肢をビショビショに濡れるまで舐める、噛む
〇脇、首を掻いてしまう
〇アポキルを飲んでも効かなかった
それでは初診時の様子をご覧下さい。
こちらは首の写真です。
こちらは胸、脇の写真です。
こちらはお腹の写真です。
最後は右前肢の写真です。
それでは初診時の様子と比べてみましょう。
治療前後で比べていただくと赤みもしっかり無なくなり、脂漏症のベタベタも綺麗になりました。
ヨークシャーテリアの脂漏症は難治性のため、特殊&積極的な投薬治療が必要です。
東海地方にお住いの方は当院へ、
関東地方にお住いの方は東京サテライトへの受診をオススメします。
受診が難しく、ホームケアでアプローチする場合は、
・食事療法
・スキンケア
・免疫:スキンケアECプラス
・心因性:パーソナルPⅡ+
・毛並み異常:アロペシアGR+
がお勧めてす。
当院オリジナルのサプリメントとスキンケア製品は、当院ホームページのオンラインショップからご覧いただけます。
この子のようにわんちゃんの皮膚病でお困りの方は是非当院までご連絡下さい。
尚、関東にお住まいの方は、東京サテライトにて当院獣医師が初診をさせていただき、継続治療をオンライン診療で行う遠隔診療も行っています。
※症状によってはできないこともございます。
詳しくは東京サテライトのご案内をご覧下さい。
インスタグラムでも症例や動画を配信しています。
ブログと違う症例もありますので、ぜひご覧ください。
【症例報告制作者】看護師 佐野
投稿者:
2018.07.20
再発を繰り返す細菌性皮膚炎「膿皮症」の根本的治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
四季の森どうぶつクリニックでこだわっている診療の一つに膿皮症の再発予防というものがあります。
抗生物質&スキンケア(シャンプー)でよくするのは当たりまえとして、抗生物質をやめても再発させないということにこだわっています。
ただ膿皮症の原因はいろいろあって、今の皮膚科医療でわかっていない原因・治療もたくさんあります。
※原因&治療法が全てわかっていたら今の時点で世の中から膿皮症は消えています。わかっていないことがあるから治っていないのです。
が、しかし!
わかっていないとはいえ、「おそらく〇〇〇をすれば再発しないではないか?」と考えていることがあります。
この「〇〇〇をすれば膿皮症は再発しないのではないか?」を既存の検査で証明することはできないのですが、この予測は経験でほぼ裏付けられつつあるのが当院の皮膚科診療です。
1つが何年も前から紹介している「スキンケアECプラス」、このスキンケアECプラスが効くかどうかは検査ではわかりませんが、年齢・犬種・経過・診た目などの条件などと何より僕の直感(経験)で8~9割判断できます。
そして最近2つ目、同じく検査ではわからないのですが、「〇〇〇をすれば再発しない」というタイプの新しい疾患を診極めることができるようになりました。
今回はそんな「膿皮症の原因が、スキンケアECプラスで解決するものではなくて、〇〇〇〇異常によるもの」と判断できた症例です。
【症例】
ヨークシャー・テリア 12歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇7歳のころから繰り返す膿皮症
〇以前は血便が出やすかったが、乳酸菌のサプリメントでお腹の調子はよい
まずは初診時の状態からみてみましょう。
湿疹が出やすいのは腹部です。
同じく腹部の拡大です。
つづいて、内股の拡大です。
それでは初診時から3週間後の状態をみてみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
湿疹はすべてきれいになりました。
ただ問題はここからです。
抗生物質を使って湿疹を消すのはそんなに難しいことではありません。
この5年間でつづけた湿疹を「再発させないためにどうすればいいのか?」が大事だと思います。
完全にきえたのですが、「再発させないためにアプローチしませんか?」と提案しました。
そのアプローチから3か月後の状態と比較してみましょう。
※写真左のBeforeは湿疹がなくなったときをBeforeとしました。
湿疹がないのは当然ですが、皮膚コンディションが劇的によくなりました!
カサカサ感がなくしっとりして、毛並みも非常によくなっています。
パーフェクトですね。
飼主さまも湿疹が出ないだけでなく、「皮膚がよくなった!」と実感していただけています。
参考でにここまで要した診察は合計3回、1回目が初診、2回目「湿疹が治っている」、3回目が「再発なく皮膚・毛並みがよくなっている」という流れです。
初診時に検査結果をみることなく治せる方法と、再発させない方法をイメージできることが大事ですね。
今回の症例ではスキンケアECプラスは使用しませんでしたが、オーソドックスな膿皮症には当院のスキンケア&サプリメントがお勧めです。
以下のオンラインショップよりお買い求めいただけます。
治療成績向上のために当院が開発しましたので、的確な診断があればこれほど役に立つスキンケアとサプリメントはありません。
投稿者:
2018.06.15
犬のブツブツ・湿疹「細菌性膿皮症」の治療および再発防止に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
犬の皮膚病で最も症例数の多い「膿皮症」ですが、シンプルなのにとても奥が深い病気です。
個人的には「人間の風邪」と同じレベルで、「治せるけど、二度とさせない方法はない」のため、いかに再発を減らすか?がポイントです。
【症例】
ヨークシャーテリア 6歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇1年前から湿疹が治らない
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは内股、左の内股に2~3この湿疹が認められます。
続いて、背中です。
毛をかき分けないとわかりませんが、円形の湿疹が無数に認めらます。
約1か月後の状態を比較してみましょう。
湿疹はゼロになりました。
これだけきれいになったのは1年ぶりということだそうです。
こういった膿皮症の場合は、2つゴールを設定します。
1つ目 「湿疹をゼロにする」
2つ目 「再発させない」
今回はまだ1つ目ですが、治療成績向上と2つ目の再発予防のために、初診時から当院が膿皮症治療のために開発したサプリメント「スキンケアECプラス」を併用しています。
特別な基礎疾患がないことを条件にですが、繰り返す膿皮症に対してはスキンケア&サプリメントが非常に有効なため、当院が開発した膿皮症ケアセットで取り組むといいと考えています。
当院が開発したスキンケア商品とサプリメントは以下のオンラインショップからお買い求めいただけます。
多くの方が「スキンケア」にこだわりがちですが、一番大事なのはサプリメント「スキンケアECプラス」です。
スキンケアは起きてしまった細菌感染を早めに抑え込むには非常に大事ですが、膿皮症の原因を直接抑え込むのは限界があります。
季節(梅雨~夏)による湿疹を予防する効果はかなり高いと思いますので、季節性であればスキンケアメインでもいいかと思います。
「細菌性の膿皮症」と一言にいっても、その原因と対策は症例によってかなり異なるため、獣医師による的確な判断とアドバイスが必要です。
投稿者:
2018.03.02
ヨーキー(ヨークシャー・テリア)のアトピー・アレルギー・心因性(精神的・癖)による痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院の症例報告にヨーキーが多いというわけではありませんが、ヨーキーも難治性皮膚病がおきやすい傾向があります。
シーズー、ブルドッグ犬種、柴犬ほどではない理由としては登録頭数のわりに発生が多くないのと、最大のポイントは「これぞヨーキーの典型的皮膚病!」というパターンがないことですね。
今回紹介するのはそんな典型的ではない独特なバランスの皮膚病で、複雑な病態が絡んでいる皮膚病です。
【症例】
ヨークシャー・テリア 8歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇2年前から皮膚病
〇四肢(特に前肢)をかむ、耳をかく、口唇をかく ※胴体は異常なし
〇エリザベスカラーを1年以上常時装着していて、外すと手に傷ができるほど噛むため外すことができない
〇アポキルを6カ月1日1回服用しているが、アポキルを服用していてもエリザベスカラーが外せない
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは右耳から。
続いて、左耳。
続いて口唇を右、左の順番で。
続いて、前肢とその拡大です。
それでは初診時から8か月後の状態と比較してみましょう。
一見よくみないと難しいですが、初診時は手が腫れて大きく、皮膚がゴワゴワと固くなっており、深いシワが刻まれています。
口唇は激しい皮膚炎とフケ・カサブタの付着がありましたが、今はかなり改善しています。
耳も慢性炎症により肥厚していたのが、ほぼ正常に近づいています。
一番治療が難しかった手の改善ですが、なにせかなりの慢性経過だったため今でも変形の跡が残っています。
大きな治療効果は2点、
①エリザベスカラーを外すことができ、今はカラーのない生活が保てている
②アポキルは2日に1回まで減らすことができている
この2点はかなり大きな改善と評価できると思います。
今回の診断は最低2つ、
①アトピー性皮膚炎 → アポキルが効く
②心因性掻痒症 → ヒーリングケアLFプラスを併用する
アポキルとヒーリングケアLFプラスだけでの治療結果ではないのですが、方向性はこの2点です。
もう2点あるのではないかと思うのですが、そこはまだグレーの状態で今後検討課題としています。
治療比較写真が8か月となっており随分と時間がかかりましたが、治療による改善効果は比較的早く1カ月以内にカラーを外すことができました。
8か月の時間については、極めて重度&慢性の肥厚が改善するのにどうしても時間が必要だったというだけで、初診時に伝えた診断および治療内容に変更なく継続治療のみでここまで到達できた症例です。
なお四肢端の痒みの原因と治療方針、耳&口唇の原因と治療方針は半分似ていますが、半分ことなります。
この皮膚病の全体を1つの病気として捉えると「カラーが外せない」という結果になります。
部位ごとに原因の配分がことなり、治療の力を入れ方が異なることを把握する必要があります。
今回の症例に限らずですが、ポイントとして心因性掻痒症の診断と治療を的確に行うことができれば、皮膚病の治療成績は格段に向上します。
※心因性というのは「精神的な」というニュアンスでもよくて、簡単な言葉では「癖」とも言い表すことができます。「癖」という一言で簡単に片づけられないほどの皮膚病になるのであればやはり治療がおすすめです。
この心因性掻痒症で難しいのは3つ、①診断、②インフォームド、③治療です。
難しい理由は、
①検査ができず、客観的根拠がない
②心因性をどう飼主さまに伝えるか、「なるほど」と思う説明ができるか?
この①と②もかなり難しいのですが、③の治療も相当難しいです。
心因性については一度しっかりとまとめて、みなさまが読める原稿に仕上げよう思っています。
今回の症例でも併用しているヒーリングケアLFプラスですが、オンラインショップでもお買い求めいただけます。
投稿者:
2016.12.16
犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ここ最近は犬の膿皮症の症例報告を連続して掲載しています。
この膿皮症、よく診る皮膚トラブルで、一見治療もシンプルな病気なのですが、原因が多岐にわたるため、時に治りにくいことがあるのです。
診断名もただしく、基礎疾患の評価も十分、各種検査もして治療方針をくみたてている・・・・・・・けれど治らない、そんなことが「よく」起こります。
今回紹介する症例も過去の治療に「何がおかしいのか?」と思うほどなのですが、実は誰も知らないわずかなズレが原因で治っていなかったわんちゃんです。
【症例】
ヨークシャテリア 推定9~10歳 男の子(未去勢)
【症歴】
〇皮膚病は1年以上前から、飼主さまが代わっていからこの1年ずっと他病院で治療を継続している
〇過去1年、この湿疹が消えたことが1度もない
〇診断名は「膿皮症」
〇培養感受性試験から効果のある抗生物質の選択
〇血液検査による甲状腺機能低下症の診断&投薬治療
〇食事療法(アミノ酸療法食)
まずは初診時の状態です。
以前の動物病院では
・細菌培養感受性試験による抗生物質の選択
・ステロイドは併用せず
・甲状腺検査により甲状腺機能低下症の診断を下し、甲状腺ホルモン剤の投与
・アレルゲンにならないアミノ酸系療法食のみでの食事管理を指示
となっていました。
教科書的にはまったく問題ありません。
ここから当院の治療方針に従い、初診時から4週間後と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
湿疹は1つも残らず綺麗になりました。
痒みの症状も完全に消失しました。
当院での診断および検査についてですが、
・膿皮症の診断名は同じ
・感受性試験の結果も一緒
・甲状腺機能の再検査も一緒
・その他特筆すべき基礎疾患なし(ニキビダニ、クッシングなど)
でした。
「ではなぜ今まで1年治らなかったものが治ったのか?」
当院を受診されている飼主さまは知っています。
教科書に書かれていない驚きの「なぜ膿皮症になるのか?」です。
よくブログで教科書で治るなら誰も苦労しないと書きますが、これが典型例ですね。
今回の症例も今まで書いてきたことと同じことですが、「膿皮症が起きる原因を追究しないと、治療法があってても次から次に新しい湿疹はできる」なんですね。
投稿者:
2016.08.29
こんにちは、メディカルスキンケアセンター(四季の森どうぶつクリニック)の平川です。
まだまだ日中は日差しも強く暑いですが、夜は随分と涼しくなってきましたね♪
それでは症例報告です。
【症例】
ヨークシャー・テリア 6歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇3年前から通年性の痒みを伴う重度の皮膚病
〇月2回の薬浴、注射、免疫抑制剤、ステロイド、抗生物質・・・
〇当院で4件目の動物病院受診
初診時の状態とあわせてわかりやすいように、被毛のカットを行いました。
重症の慢性皮膚病で、痛々しいです。
初診時から約3ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると拡大してみることができます。
局所的に治りにくい部分も残っているのですが、全体でみると随分と綺麗になりました。
痒みは当院受診前の最もわるいときを10とすると、1くらいまで減ってきたということです。
こういった症例にはお薬が必要不可欠ですが、お薬以外でもスキンケアとしてオイルクレンジングとシャンプーで過剰な皮脂を落としきることが重要です。
投稿者:
2015.10.11
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
雲ひとつない青空が広がりましたね♪
ここ2回紹介しているヨーキーの症例は初診時から1ヶ月でとてもよくなりましたが、その後想定外の悪化が認められたため、さまざまな修正を加えて1年かけて改善した症例です。
そのためには初診時の判断と1ヶ月で改善した治療内容すら一旦撤回しなければいけませんでした。
※僕もすっかり忘れていたのですが、1年前の初診から1ヵ月後の時点で「随分とよくなりました!」とブログを書いていました。
1年前は治療1ヶ月で随分とよくなり、違和感を感じることなく「このままいける!」と考えていました。お恥ずかしい限りです。
今回の第1回目ブログ ⇒ 診極めの甘さ
第2回目ブログ ⇒ 診極めの甘さ2
治療から2~3ヵ月後から認められた予想外の皮膚トラブルにより治療方針の変更を繰り返して1年後・・・
顔・頚部・前胸部・四肢端までは初診時の判断と1ヵ月後の状態のまま、特に治療を変更することなくさらに改善しています。
問題は治療後2~3ヵ月後から認められた体幹の痒み&湿疹&脱毛です。
まずは体幹、左からと背中から。
続いて腹部~胸部の中間くらい(臍の側面)
続いて、右大腿部尾側です。
その拡大、膿を含んだ湿疹があります。
さまざまな治療を行い・・・
現在は非常によい状態をコントロールできるようになりました。
通常は2~3ヶ月で一つの区切りですが、今回の症例はまさに1年かけてここまでたどりつきました。
最初の1ヶ月の治療内容と現在の治療内容が異なっている点ですが、初診時の想定範囲外でしたので、診極めが甘かったかなと反省です。
最終的な治療内容は「免疫抑制剤」「外用薬」・・・と「〇〇〇」です。
あと、外科手術も効果的だったと思います。
やはり病変の出方がおかしいとは思いました。
一般的には「背中だけ」や「お腹だけ」という分布になるのですが、下半身だけ・・・というのは通常ありません。
この写真です。
下半身だけの痒みを伴う皮膚病は非常に少ないので、「いつもと違う何か」を探さなければいけません。
皮膚トラブルの原因が常に1つとは限りませんので、複数の要因を想定するのも大事ですね。
個人的にもとてもいい勉強になりました。
投稿者:
2015.10.10
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
深まる秋の夜長に虫の音を聞きながら・・・・・といえばお洒落なはじまりですが、最近寒いので窓をしめているためあまり聞こえません(笑)
それでは先日のブログ、時には診極めの甘さも~診・誤る~の続きです。
まずは初診時の状態です。
タイトルにも「診極めの甘さ」と書きましたが、わずか1ヶ月でここまで改善しました。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
顔の痒みのコントロール、数年ぶりの顔の被毛の再生、四肢端の痒みコントロール、胸部皮膚炎の改善・・・
こうみるといつも通り初診時の判断に大きなミスはなかったようにみえなくもありませんが、問題はここからです。
初診から2ヵ月を越えたころから背中の痒みと脱毛が・・・
これは自然と毛がぬけているのではなく、痒みで噛んだり掻いたりすることで毛並みが悪くなっています。
胸の拡大です。
続いて、右大腿部の尾側と、その拡大です。
ニキビのように膿をもった湿疹がみとめられます。
確かに初診時にはなかったので、一概に初診時の判断が間違っていたとまでは思わないのですが、なにせここから苦戦しました。
初診時に3ヶ月時点で苦戦していることなんて想定していなかったため、そういった意味で「想定外」でした。
このように一見改善したようで、あとから苦戦するようなことは稀なのですが、皮膚病が常に1つの原因、病態からきているとはかぎりませんので、こういうときは「一から再スタート」です。
具体的には「過去の自己否定」、初診時に自分が下した診断すら自ら否定して捨て去ることが必要です。
それができなければ過去にとらわれたまま前にすすめません。
次回も続きます。
投稿者:
2015.10.09
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
晴れた日も随分と涼しく、夜は冷えるようになりましたね。
さて、今日はいつもと違った症例報告をします。
この1~2年は「診極め」という言葉を使い、初診時にいかに治療方針・ゴールまでの軌跡を描くか・・・と書いてきました。
確かに十中八九、初診時の想定どおりにすすみますが、実はすべての症例で「診極め」ができているわけではありません。
時に「判断できない」ということもあるのはまだよしとして、中には「診誤る」ことも稀にあります。
今回はそんな「初診時に診誤った症例」を紹介します。
初診時の状態、まずはお顔から。
続いて頚部です。
続いて、胸部とその拡大です。
続いて前肢端です。
過去に数年間、何件もの動物病院でさまざまな治療を受けられていたのですが、詳細は次回に。
この初診の状態から1年。
1年間まったく改善がなかったわけではないのですが、少しずつ、少しずつ、修正に修正を重ねてさまざまなチャレンジもして・・・
結局のところ初診時に描いた軌跡とは異なるアプローチに落ち着きましたので、初診時の診立てが悪かったということになります。
自分の診極めの甘さの反省もそうですが、1年間もの長い期間治療の機会を与えてくださった飼主さまに感謝です。
次回は改善をご紹介します。
投稿者:
2014.10.09
☆ヨーキーの皮膚病治療症例報告『7年間で5件目の動物病院』
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。
今回は症例報告としては少し珍しいヨークシャー・テリアの症例報告です。
珍しいというのは、「ヨーキーは皮膚病になりにくい」という意味ではなく、「難治性になりにくい」と考えてもらってもいいと思います。
ときにこじれて重症化してしまうのですが、やはりそこは「難知性になりにくい」であって意外と簡単に改善することもできます。
今回はそんな『重度の慢性皮膚病だか、難治性ではない』症例報告です。
【症例】
ヨークシャー・テリア 7歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇生後1歳未満から慢性、継続的な痒みを伴う皮膚炎
〇過去の治療は、ステロイド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、甲状腺ホルモン剤、漢方薬、食事療法・・・・etc
〇大きな要因として「飼主への依存心が強く、精神的なものからくる痒み」と診断
〇当院で5件目の動物病院受診
それでは、初診時の状態をみてみましょう。
まずは、顔から。
続いて、頚部をやや右側からみてみます。
続いて、胸部~脇です。
最後に四肢、右前と左前です。
症状は『痒み』、非常に強い痒みです。
四肢端を噛む動作が強く、散歩中も歩かないほどずっと噛んでいるようです。
もちろん四肢端はバリカンでカットしたわけでもなく、噛むこと被毛が常にちぎれてほとんどない状態です。
胸部~ワキは後ろ足で強く掻くため、傷になってかさぶたもついています。
口周りと目の周りをこすりつけるため、顔全体の毛も非常に少なくなっています。
この初診時からちょうど1ヵ月後です。
部分的にわずかな赤み、痒みが残っていますが、ほとんどの痒みが改善できました。
まだ1ヶ月ですので、被毛の回復は途中ですがあと2~3ヶ月後には何事もなかったかのようなヨーキーになるでしょう。
当院を受診するきっかけの一つは、HPかブログで報告したわんちゃんだそうです。
同じ犬種の似ている皮膚病というわけではなく、以前長く通院していた動物病院の待合室でよく一緒になっていたようで、その子が当院で非常に綺麗に治っていることに気づいたそうです。
今回は過去の経過が非常に複雑で、さまざまな病院で多くの治療&検査を受けられていました。
では診断が非常に困難だったのか?といえばそういうわけではありません。
毎回お話していますが、ほとんど疾患は一通り眺めて飼主さまから過去の情報を聞くと頭の中できれいにまとめることができます。
今回も同様で、一通り眺めてお話うかがって15分後には僕の中では「まずこうだろう」というある程度の方向性が決まっていました。
あとは各種検査結果で抑えるべきポイントを抑えていきます。
それでは過去の治療法との比較やポイントについて。
※質問があったため、後日編集・追加しました。
Q1.精神的な要因はあるのか?
A.『ない』という診断はありませんが、この痒みのメインが心因性ということはないと判断しました。方向性として優先順位の高いものから治療し、残った症状に心因性が考えられならばアプローチをするという方針にしました。そしてこの1ヶ月で心因性に対するアプローチはしておりません。
Q2.ステロイドについては?
A.過去にステロイドを継続的に使用した期間があったようですが、幸い一つ前の動物病院でステロイドが処方されていなかったため、ステロイド皮膚症ではありませんでした。もちろん当院治療のこの1ヶ月でステロイド内服は1度も処方していません。ステロイド不可という症例ではないと考えていますが、もし治療初期から服用した場合はここまで早く皮膚が綺麗になることはなかったのではないかと考えています。
Q3.処方した内服薬は?
A.抗生物質と抗ヒスタミン剤の2種類のみです。
Q4.食物アレルギーは?
A.「ない」とはいえないが、食物アレルギー対策だけで治る病態ではないと判断しました。現在も食事療法は重要と考え、体質に合うものを探しています。(まだ固定できていません)
Q5.院内薬浴(スキンケア)を行ったか?
A.今回は1度も実施していません。
Q6.甲状腺機能低下症は認められたか?
A.一つ前の動物病院でも検査で否定され、当院での血液検査結果&超音波画像診断でも甲状腺機能低下症を疑う所見は認められませんでした。
Q7.副腎皮質機能亢進症は認められたか?
A.尿コルチゾール/尿クレアチニン比で除外されました。超音波画像診断でも疑う所見はありませんでした。
Q8.寄生虫疾患は?
A.ニキビダニ(毛包虫)は認められませんでした。疥癬も認められませんでしたが、除外のためセラメクチン投与を行いました。個人的には疥癬でもないと考えています。
飼主さまからのお話では「おもちゃを引っ張り出してきて遊ぶようになった」、「元気すぎて困る」、「足をかんで歩かなかった散歩も普通に歩いてできるようになった」、「数年ぶりに足先に毛がはえてきた」、「夜グッスリ眠れるようになった」・・・ととてもよろこんでいただけました。
また少し興味深かったのが、「散歩のたびに小石を加えて、ハウスまでもってかえりかじって食べて・・・を繰り返していたのが、一切なくなった」ということを聞くことができました。
おそらく痒みのイライラからくる行動異常だと思うのですが、痒みがいかに犬のストレスになるのかがわかるお話ですね。
また機会があればその後も紹介しようと思います。
投稿者: