2018.03.02
ヨーキー(ヨークシャー・テリア)のアトピー・アレルギー・心因性(精神的・癖)による痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院の症例報告にヨーキーが多いというわけではありませんが、ヨーキーも難治性皮膚病がおきやすい傾向があります。
シーズー、ブルドッグ犬種、柴犬ほどではない理由としては登録頭数のわりに発生が多くないのと、最大のポイントは「これぞヨーキーの典型的皮膚病!」というパターンがないことですね。
今回紹介するのはそんな典型的ではない独特なバランスの皮膚病で、複雑な病態が絡んでいる皮膚病です。
【症例】
ヨークシャー・テリア 8歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇2年前から皮膚病
〇四肢(特に前肢)をかむ、耳をかく、口唇をかく ※胴体は異常なし
〇エリザベスカラーを1年以上常時装着していて、外すと手に傷ができるほど噛むため外すことができない
〇アポキルを6カ月1日1回服用しているが、アポキルを服用していてもエリザベスカラーが外せない
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは右耳から。
続いて、左耳。
続いて口唇を右、左の順番で。
続いて、前肢とその拡大です。
それでは初診時から8か月後の状態と比較してみましょう。
一見よくみないと難しいですが、初診時は手が腫れて大きく、皮膚がゴワゴワと固くなっており、深いシワが刻まれています。
口唇は激しい皮膚炎とフケ・カサブタの付着がありましたが、今はかなり改善しています。
耳も慢性炎症により肥厚していたのが、ほぼ正常に近づいています。
一番治療が難しかった手の改善ですが、なにせかなりの慢性経過だったため今でも変形の跡が残っています。
大きな治療効果は2点、
①エリザベスカラーを外すことができ、今はカラーのない生活が保てている
②アポキルは2日に1回まで減らすことができている
この2点はかなり大きな改善と評価できると思います。
今回の診断は最低2つ、
①アトピー性皮膚炎 → アポキルが効く
②心因性掻痒症 → ヒーリングケアLFプラスを併用する
アポキルとヒーリングケアLFプラスだけでの治療結果ではないのですが、方向性はこの2点です。
もう2点あるのではないかと思うのですが、そこはまだグレーの状態で今後検討課題としています。
治療比較写真が8か月となっており随分と時間がかかりましたが、治療による改善効果は比較的早く1カ月以内にカラーを外すことができました。
8か月の時間については、極めて重度&慢性の肥厚が改善するのにどうしても時間が必要だったというだけで、初診時に伝えた診断および治療内容に変更なく継続治療のみでここまで到達できた症例です。
なお四肢端の痒みの原因と治療方針、耳&口唇の原因と治療方針は半分似ていますが、半分ことなります。
この皮膚病の全体を1つの病気として捉えると「カラーが外せない」という結果になります。
部位ごとに原因の配分がことなり、治療の力を入れ方が異なることを把握する必要があります。
今回の症例に限らずですが、ポイントとして心因性掻痒症の診断と治療を的確に行うことができれば、皮膚病の治療成績は格段に向上します。
※心因性というのは「精神的な」というニュアンスでもよくて、簡単な言葉では「癖」とも言い表すことができます。「癖」という一言で簡単に片づけられないほどの皮膚病になるのであればやはり治療がおすすめです。
この心因性掻痒症で難しいのは3つ、①診断、②インフォームド、③治療です。
難しい理由は、
①検査ができず、客観的根拠がない
②心因性をどう飼主さまに伝えるか、「なるほど」と思う説明ができるか?
この①と②もかなり難しいのですが、③の治療も相当難しいです。
心因性については一度しっかりとまとめて、みなさまが読める原稿に仕上げよう思っています。
今回の症例でも併用しているヒーリングケアLFプラスですが、オンラインショップでもお買い求めいただけます。
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