2016.12.16
犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ここ最近は犬の膿皮症の症例報告を連続して掲載しています。
この膿皮症、よく診る皮膚トラブルで、一見治療もシンプルな病気なのですが、原因が多岐にわたるため、時に治りにくいことがあるのです。
診断名もただしく、基礎疾患の評価も十分、各種検査もして治療方針をくみたてている・・・・・・・けれど治らない、そんなことが「よく」起こります。
今回紹介する症例も過去の治療に「何がおかしいのか?」と思うほどなのですが、実は誰も知らないわずかなズレが原因で治っていなかったわんちゃんです。
【症例】
ヨークシャテリア 推定9~10歳 男の子(未去勢)
【症歴】
〇皮膚病は1年以上前から、飼主さまが代わっていからこの1年ずっと他病院で治療を継続している
〇過去1年、この湿疹が消えたことが1度もない
〇診断名は「膿皮症」
〇培養感受性試験から効果のある抗生物質の選択
〇血液検査による甲状腺機能低下症の診断&投薬治療
〇食事療法(アミノ酸療法食)
まずは初診時の状態です。
以前の動物病院では
・細菌培養感受性試験による抗生物質の選択
・ステロイドは併用せず
・甲状腺検査により甲状腺機能低下症の診断を下し、甲状腺ホルモン剤の投与
・アレルゲンにならないアミノ酸系療法食のみでの食事管理を指示
となっていました。
教科書的にはまったく問題ありません。
ここから当院の治療方針に従い、初診時から4週間後と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
湿疹は1つも残らず綺麗になりました。
痒みの症状も完全に消失しました。
当院での診断および検査についてですが、
・膿皮症の診断名は同じ
・感受性試験の結果も一緒
・甲状腺機能の再検査も一緒
・その他特筆すべき基礎疾患なし(ニキビダニ、クッシングなど)
でした。
「ではなぜ今まで1年治らなかったものが治ったのか?」
当院を受診されている飼主さまは知っています。
教科書に書かれていない驚きの「なぜ膿皮症になるのか?」です。
よくブログで教科書で治るなら誰も苦労しないと書きますが、これが典型例ですね。
今回の症例も今まで書いてきたことと同じことですが、「膿皮症が起きる原因を追究しないと、治療法があってても次から次に新しい湿疹はできる」なんですね。
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