柴犬の症例報告

皮膚病の新薬「アポキル」で治らない?効くのか効かないのか?

2016.10.01

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。

※2017年6月追記
このページを読まれる方が非常に多く、いかにアポキルが多く処方されているか、そして飼主さまが期待した改善が得られないことに悩んでいるかがわかりました。
ブログ本文は過去のままですが、最下部に最近のアポキルの使い方を考えて作成した症例リンクを複数記載しています。
ご興味のある方は最後までお読みいただき、リンクもぜひご覧ください。

今年の夏に、「アポキル」という皮膚病治療薬として非常に新しいお薬がでました。

痒みを緩和させるための画期的なお薬で、非常にいいお薬のため当院でもよく使うのですが、どんな皮膚トラブルにも効く万能薬ではありません。

そのため発売前から予測していたのですが、早速「(他院で)アポキルを処方され飲んでいるのによくならない」という電話がかかってくるようになりました。

今日は少しめずらしい関西圏からの来院で、「アポキルでも改善しない」という主訴の転院症例報告です。

【症例】

 柴犬 8歳 女の子

【病歴】

 〇5年前からずっと皮膚病
 〇免疫抑制剤で多少改善
 〇この夏からアポキル1日2回服用開始したが、効果を感じられない

初診時の状態から。

柴犬の皮膚病として、「よくある典型的なパターン」といえると思います。

この初診から1ヵ月後の状態と比較してみましょう。

写真をクリックすると拡大してみることができます。

非常に綺麗になりました。

もちろん肝心の痒みも元々の10分の1まで落ちついてコントロールできています。

「アポキルを1日2回服用しているのに痒みが減らない」という主訴に対して、当院がアポキルをどうしたか?

実は、初診時から1日1回で継続処方しています。

アポキルだけにフォーカスを絞って考える点は2つ、

 ①この症例にアポキルは効果的かどうか?

  ②アポキルでなければ改善しない症例かどうか?

現実として「1日2回服用していたのに、効果がなかった」という状態で来院されているので、

アポキルが痒みを抑えなかったようにみえなくもないのですが、実は効果はあるのです。

正確な表現としては「効果はあるはず」がよりベターで、詳細に説明するなら

「アポキルを治療の柱にする判断は十分正しいが、その他の治療方針が不十分がゆえに効果がみられなかった」

と考えています。

アポキルが効かないのではなくて、アポキル以外の必要な治療に気づかなかったことがポイントになっています。

このアポキルがその他の薬でも同様のことが言えます。

実際にこのわんちゃんは以前に免疫抑制剤をつかっていますが抑えきれず、アポキルに変更になったという経過をたどっています。

今回は当院でもアポキルを選択しましたが、例えアポキルがなかった半年前であったとしても、今回の症例を「痒み10分の1」にすることは可能です。

ということで、①と②の結論・・・①は効果的、②は「そんなことはない」です。

医療に魔法の万能薬はありませんので、大事なことは「いいお薬を出す」ではなくて「使うシーンを診極めて処方する」、いい武器は使いこなしてこそですね。

2017年6月3日 追記

アポキルが発売されて約1年、当院には「アポキルを使っているのに痒い」という飼主さまばかりが来院されるようになりました。
症例報告でもアポキルについてなるべく書くようにしています。
以下にリンクを張っていますので、参考にしてください。

【痒み専門外来】アポキルは効く?効かない?

【フレブルの皮膚科専門外来】アポキルを減らしたい

【皮膚科専門外来】アポキルが効かない次の選択肢

【差のつく皮膚病治療】フレブルとアポキルと+?

【皮膚科】アポキルは効く?効かない?~薬の使い方~

【柴犬の皮膚病治療】アポキルが効かない?

アポキルの効果判定【ウェスティの皮膚病治療】

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科診療】3つの病気に診断5分と治療3ヶ月の判断

2016.08.04

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

今年度に入り症例をまとめる時間がほとんど作れなくなったため、新入社員に症例報告を手伝ってもらうことにしました。

写真の取り込み、フォルダー分け、写真加工、ブログへのUP作業・・・・・・・これがなくなるだけでも随分と楽!

では、早速症例報告です。

【症例】

 4歳 柴犬 メス(避妊済み)

【経過】

 〇3年前から痒み発症、アトピーの疑い
 〇口唇、お腹、四肢端、耳、頚部、脇の痒み
 〇毛並みが悪いのがこの数年続いている
 〇過去の治療は抗生物質、痒みに応じたステロイド

それでは初診時の状態です。

まずは正面から。

頚部、とその拡大。

続いて胸部。

続いて腹部。

続いて大腿部を後ろから。

最後に尾を側面から。

初診時に3つの異なる問題点と対策をあげて、3ヶ月というプランを作って・・・3ヵ月後と比較してみましょう。

※写真をクリックすると拡大してみることができます。

すべて初診時の想定通り、綺麗になりました。

ポイントは3つのトラブルを初診時に診極めることです。

「腹部の皮膚炎」

「顔・頚部・四肢端・耳の痒み」

「毛並みの悪さ」

この3つの異常に気づくこと、3つの異常の原因が異なること、それぞれに治療が必要であること・・・・・そして何よりこれらを初診時に診て瞬間的に頭の中で判断できることです。

※判断は瞬間ですが、説明には1時間近くかけてます。

こういった診察ではよく「治療は検査結果がでてからですよね?」と聞かれますが、実はほとんど初診時から治療スタートです。

検査は必須ですが、検査結果で治療方針がブレることはほとんどありません。

1週間後、2週間後、4週間後、2ヵ月後・・・で多少変更することはあっても、それは初診時に想定している範囲内ばかりです。

近いうちに「検査結果で治療方針に悩む症例」を紹介しようと思いますが、基本は初診時にほぼ治療方針は決定できます。

当院には遠方から通院される方もめずらしくないのですが、今回はまた一段と遠くからの通院で、なんと静岡県(東京より)からの受診でした。

今でも継続的に通っていただいています。

ご夫婦での通院だったのですが、3ヶ月の時点で奥様から「すばらしい!先生の言うとおりちょうど3ヶ月でした!」、「こんなにフワフワになったのは3年ぶり!」と言っていただけてうれしかったです。

さらにご主人には

「先生がうれしそうに見てくれるから、その笑顔をみるためにこっちも診せにきたくなる」

とおしゃっていただけました。

あまりにのうれしさに言葉を失い、一瞬おくれて「ありがとうございます」としか言葉がでませんでした。

心では泣いてました(笑)

時代はモノもサービスも「ネットから」が常識になりつつあり、今後その流れが止まることもないのですが、本当は顔をみて話をして提供するのが一番なんだろうな~と心から思います。

ということで、僕はネットを使って色々サービス提供をしていますが、サービスを受ける側の顧客としてはできるだけネットは使わないように心がけています(笑)

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

皮膚科診療 in 東京(神奈川・埼玉・千葉)

2016.04.01

こんんちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

新年度になりましたね♪

今年は去年の続きですが、東京に行く頻度を増やしていこうと考えています。

昨年2回東京に行きましたが、今年は5月からスタートします。

   平成28年 皮膚科診療(関東:東京・神奈川・埼玉・千葉)

   【日時】 平成28年5月5日(木)

   【場所】 東京都葛飾区動物病院
         ※東京駅から公共交通機関と徒歩で30分以内
           詳細は申し込み後の入金確認後にお知らせします。

   【対象】 痒みを伴う皮膚病

        犬種:ブルドッグ犬種(フレンチブルドッグの皮膚病、イングリッシュブルドッグの皮膚病)

            シーズーの皮膚病

            ※その他トイプードル、チワワ、柴犬などはご相談ください。

遠隔診療についてはメリット&デメリットの両方がありますが、参考例として直接診療後に遠隔診療で継続しているわんちゃんを紹介します。

   柴犬の遠隔診療  平成27年11月5日に紹介した柴犬の皮膚病

この柴ちゃんの飼主さまは遠方に住まいのため、メールと写真で行う遠隔診療で継続治療しています。

先日(3月19日)に送っていただいた写真があるので、ご紹介します。

今までの皮膚病が嘘のようですね。

こちらの飼主さまからは、近所の人から

「一瞬、前の犬は、亡くなって、新しい犬だと、思ったー!」

といわれたそうで、多くの人から驚かれているそうです。

今まで遠くから来院されているわんちゃんの改善後は受診が遠のいてしまい、「その後の経過はわからない」が通常だったのですが、遠隔診療をすることで再発を抑えてこういったうれしい言葉もいただくことができるようになりました。

獣医師として「仕事していてよかったな~」と感慨深いものもあります。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

今だからこそできる・・・皮膚炎が再発する理由は?

2015.11.17

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

お久しぶりです。

つい最近のブログで「10月はブログを過去最高ペースで更新しました!」とお話していたばかりですが、また再発しました・・・

「燃え尽き症候群」

当院は春から夏にかけて忙しくなり、10月にピークがくるため自然と「10月までがんばろう!」と意識してしまうせいか、10月が終わるとスイッチきれてしまいます。

そう去年も、一昨年も11月は燃え尽きてました。

大好きな下町ロケットをみてもブログを書く気力が湧かず・・・(笑)

ですが、「追い込んでこそいい仕事ができる」が持論ですので、気持ちを入れ替えてがんばります。

今回は当院を受診されたのが2年くらい前からなのですが、治るのが遅く、再発しやすい柴犬の治療症例を紹介します。

ポイントは

 〇痒みトラブルが多い
 〇診断名は膿皮症(抗生物質に反応する)
 〇血液検査などで主要な内分泌疾患は除外
 〇アレルゲン特異的IgE検査で異常なし
 〇毛並みが悪い

当院が移転する前から受診歴があるため、約2年前くらいの初診時の様子からみてみましょう。

柴犬で起きやすい口唇の皮膚炎が認められます。

続いて、体幹の毛並みをかきわけてみてみます。

柴犬の本来の毛並みは「地肌が見えない」ですので、全体的に被毛が少なく、毛並みが悪いという状態です。

問題としては2つ、「投薬治療で改善するが、再発が多い」、そして「毛並みが悪い」です。

1~2年前までは湿疹・痒みを改善させることはできるのですが、この「なぜ毛並みが悪いのか?なぜ再発するのか?」を明確にして改善させることができませんでした。

そして再発のため9月に来院されました。

そのときの状態です。

以前は湿疹を抑える治療しかできませんでしたが、今は違います。

「なぜ皮膚炎になるのか?なぜ毛並みが悪いのか?」を含めたアプローチができます。

飼主さまに「これ、最近になって原因がわかりました。昔はできませんでしたが、今なら新しい治療ができます。今回はフワフワにしてみせますよ!」とお伝えして・・・・・・1ヵ月半後です。

毛を掻き分けても地肌がみえないほどフワフワです。

もちろん皮膚コンディションも最高に良い状態がキープできています。

柴といえばアレルギー、特にアトピーが圧倒的に多いのが事実ですが、これをアレルギーと診断しては迷走してしまいます。

おそらくですが、アレルギーと考えてステロイド系を使用すると迷走の原因になると思われます。

今回の診断と治療は教科書には掲載されていません。

そもそも教科書にすべて答えが掲載されていれば、世の中のほとんどすべての皮膚疾患がどこの病院でも適切に治療ができるはずです。

そうでない理由は・・・・・・・・

病気を教科書の情報だけで分類してはいけないということです。

医療は5感すべてを使った感覚と、創造性が最も重要だと思っています。

なので教科書はたま~にしか読みません(笑)

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】脱カラー&脱洋服

2015.11.05

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

さて、今日は久しぶりに柴犬の皮膚病治療の

紹介をします。

常にエリザベスカラーと、洋服を着て傷を防止している柴犬のわんちゃんです。

まずは初診時の状態、まずは顔からみてみましょう。

続いて、頚部です。

つづいて、全体の右側です。

同じく右側の拡大、ちょうど胸の側面です。

続いて、背中(腰背部)です。

同じく、背中の拡大をやや斜めから。

今回の柴犬の皮膚病治療にはいつもよりも少し制限がありました。

それは、非常に遠方からの来院でしたので、通院間隔は極力長くする必要がありました。

こまめに診れないということは、治療の修正をするチャンスが少ないということで、もし判断や選択にミスやズレがあった場合にいたずらに時間だけが過ぎてしまう・・・という不安もあります。

ですが、そこは「初診時の診極め」です。

初診時に2ヶ月、3ヶ月後までの道を描きます。

初診時、再診、再診の3回の診察した後の状態(4回目の診察時)をみましょう。

普段は初診時の写真と並べますが、今回は並べる必要性すらないので全体像で掲載します。

初診時からわずか2ヵ月後、カラーもありませんし、洋服もありません。

痒みは10分の1まで減少しています。

初診時に描いた道筋どおり、一寸の狂いすらなく2ヶ月でたどり着きました。

ポイントは「柴犬を知る」ですね。

柴犬がどういう体質か、十分に把握することが重要です。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

皮膚科診療で従順になった柴犬

2015.10.22

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

今朝は出勤時にベルトをつけるのを忘れてしまい、ベルトをしていなくてもズボンの違和感がない(=体重が増えた)ことにショックを覚えつつ、お昼にケンタッキーにいき「またやってもうた・・・」と明日につながらない反省をしました(笑)

さて、今日は「従順になった柴犬」の報告です。

いえ、決して問題行動のわんちゃんに行動療法を行ったわけではありません。

あれこれ説明せず、写真をみてみましょう。

毎年皮膚病になる柴犬ちゃんで、今年は半年前からエリザベスカラーがないと血だらけになるまで掻いてしまうまで悪化したということで来院されました。

もちろん来院時もカラーがはずせず、自宅でも散歩中でも常時エリザベスカラーを装着しています。

柴犬に多いタイプの皮膚炎ですね。

この初診時から3週間後です。

※画像をクリックすると拡大してみることができます。

痒みは10分の1、もちろんエリザベスカラーは完全に外すことができ、普通のわんちゃんらしい生活ができています。

飼主さまから「とても従順になりました♪」を喜んでいただきました。

やはりエリザベスカラーはわんちゃんにとって予想以上に強いストレスになっているため、カラーは必ず外さなくてはいけません。

いえ、基本は「痒みのためにカラーをつけてはいけない」というスタンスが必要で、やむを得ず装着する場合は「責任もって必ず外すこと」を自分に課さなければいけないと考えています。

カラーを外す自信なくしてつけてはわんちゃんにツライ思いをさせてしまうかもしれません。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【名古屋・愛知の皮膚科専門外来】柴犬のスキンケア療法

2014.02.18

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

柴犬の難治性皮膚疾患(当院受診前に治療歴があり改善しなかった症例)をまとめるために、さまざまなタイプの症例を紹介しています。

今回紹介する症例は今までの治療症例とは少し異質なものですが、「これだけ重症の皮膚病でも治る余地がある」と思っていただきたくて紹介します。

【症例】

 柴犬 7歳 女の子(避妊手術済)

【過去の病歴】

 〇4年前から通年性(1年中)の皮膚病
 〇現在が最も悪い状態
 〇最初の2年は近医(A動物病院)にてステロイドを使用しながら痒みを抑えていた
 〇2年前に漢方療法を行う皮膚科動物病院(B動物病院)へ転院し、抗生物質・甲状腺モルモン剤・漢方薬など2年間服用
 〇偽妊娠になりやすいことから、同じB動物病院で避妊手術(卵巣摘出)を受ける
 〇B動物病院で漢方成分の入ったシャンプー(商品名なし)を使用

それでは初診時の状態をみてみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。

まずは、顔の左側から。

同じく目の下、頬の拡大です。

同じく左側、口唇~頚部にかけての拡大です。

続いて、頚部左側です。

続いて、頚部~左前肢肩付近です。

続いて、頚部。

同じく頚部の拡大です。

続いて、頚部~前胸部です、

続いて、右前肢内側、拡大をあわせています。

続いて、身体右側、ワキ~胸部側面です。

続いて、腹側全体です。

同じく、腹側の胸部拡大です。

続いて、右後肢の足首~甲の拡大です。

最後に尾側、会陰部周囲です。

この初診時から2カ月半後の状態と比較してみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

初診時は過去に例がないほど重度の皮膚の肥厚、脂漏が認められました。

そしていつも通り初診時に数パターンの診断・治療方針を想定しましたが、最優先で疑ったのは「アトピー+ホルモン異常」でした。

ただ、でてきた検査結果は「アトピーはない、甲状腺も異常なし、クッシングの可能性も低い」という想定と異なるもので若干違和感を感じましたが、スキンケア療法に非常にいい反応がありました。

通常柴犬の皮膚病に院内で行うスキンケアを行うことはありませんが、今回の症例は初診時に「原因のいかんに関わらずスキンケアを併用しなければ改善はないだろう。むしろ原因のいかんに関わらずスキンケアでかなり改善させることができる。」と判断したため、改善に関しては当然の結果だと考えています。

ただ想定と異なる検査結果に感じた違和感が本当なのかを確認するために、いくつか詳しい検査を追加で受けていただいた結果、確信に近い検査結果を得ることができました。

しかし今回当院が下した診断は本来起こるべきではないことを前提にした診断名であるため、当院での診断をより確実に確定するために大学病院を受診することになっています。

今回の症例は治療を行いながら複雑な心境でした。

考えられる原因が原因なだけに、なぜこの子がこんなつらい思いをしなければいけないのか、と診察のたびに胸が痛みました。

そして「獣医師として代わりに責任持って診断・治療する」と思いました。

もちろん当院を受診される全ての診察に全力を!という想いを込めていますが、この子のスキンケア時には全スタッフがいつも以上に想いをこめていたと思います。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】外科手術を要する治療方針

2014.02.18

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

柴犬の皮膚病と一言にいっても、その診断名・治療方針はさまざまです。

今回は皮膚科疾患の中ではそう多くありませんが、外科手術を行い改善させた症例を紹介します。

【症例】

 柴犬 9歳 男の子

【病歴】

 〇1歳未満から発症、顔周囲から全身へ拡大
 〇夏が最も悪くなり、冬には改善していた
 〇当院受診前の冬は改善なく、悪い状態のまま
 〇過去に4つの動物病院を受診したが、改善なく当院受診

初診時の状態を見てみましょう。

まずは全体、常にエリザベスカラーを装着していました。

続いて、顔の正面、左右からです。

続いて、背側全体と頚部、胸背部、腰背部の拡大です。

続いて、右からの側面です。

続いて、胸部全体と左脇の拡大です。

続いて、右前肢外側から。

最後に右後肢外側から。

それでは約3ヶ月後の状態と比較してみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


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※画像をクリックすると拡大できます。


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※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

非常に長期に渡り重度の皮膚病があったことと、この疾患特有の毛根への強いダメージがあったため、一部(目・肢端)に再生が不十分なところもありますが、エリザベスカラーも完全にはずすことができ、90%以上の部位で柴犬らしい綺麗な毛並みが再生しています。

一見、柴犬に多く認められる典型的な犬アトピー性皮膚炎の重症化のようにみえます。ただ純粋な犬アトピー性皮膚炎だけではこのような状態にはなりにくいため、何か別の基礎疾患があると考えました。

実際にこの基礎疾患に外科的アプローチをしたのは初診時から6週間後ですが、そこから格段に治療成績が向上していったことを考慮するとやはり外科手術がターニングポイントになったと思われます。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】柴犬を知る

2014.02.17

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

今日の柴犬の皮膚科症例です。

【症例】

 柴犬 2歳 女の子

【病歴】

 〇生後6カ月の頃から前肢の外側をよく噛むようになり、被毛が薄くなっていった。
 〇近医にて抗生物質と痒み止め(ステロイド)を処方され、あまり効いていないように見えたが痒みがあったため約1年間継続して服用
 〇1年経過し、セカンドオピニオンで2件目の動物病院を受診したところ、肝臓数値が高くなっていたためステロイドを中止
 〇痒みが強く、アレルギー検査・外用ステロイドスプレー、療法食、手作り食を試すも改善なく悪化

それでは初診時の状態を見てみましょう。

まずは全体から。

続いて、顔。

わかりにくいかもしれませんが、毛穴を中心とした脱毛、毛穴~鼻上にかけて皮膚炎がみとめられます。

続いて、左前肢の外側から。

ここもわかりにくかもしれませんが、被毛が薄く、短くなり、地肌が見えています。

続いて、右前肢。

これはちょっとわかりやすいと思いますが、左前肢と同じく被毛が短くなっています。

わかりやすいように黄色の線で噛んでいるところを示してみます。

続いて、左後肢です。

これも柴犬の被毛を見慣れていないと、病変としてみえないかもしれませんが、膝の周囲を噛んで被毛が短くなっています。

脱毛しているわけではありません。

黄色い線で噛んでいる範囲を示してみます。

上の写真と見比べてみるとわかるかと思います。

続いて、右後肢です。

ここも左後肢と同じく脱毛ではなく、噛んで被毛が短くなっています。

黄色の線で囲ってみます。

今回の症例は初診時におそらく「〇〇〇による皮膚病」と仮診断し、初診時の診断に沿って治療を行いましたが、中々いい治療結果には結び付きませんでした。

通常であれば1~3ヶ月後にはほぼ綺麗になっているのですが、今回は5カ月を超えた時点でも悪化が認められました。

自分自身の中でも「自分の治療の限界なのか?」と悩みましたが、色々な治療法をさせていただく機会をいただくことができましたので、色々な攻め方をして、最終的にこの悪化後に変更した治療内容でいい結果を出すことができました。

上記の悪化したときから2カ月半後の状態と比べて見てみましょう。


※画像をクリックすると拡大します。


※画像をクリックすると拡大できます。


画像をクリックすると拡大できます。


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※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

痒がらないわけではありませんが、傷をつけるようなこともなく、被毛も綺麗に再生してきました。

この時点で初診時から8カ月経過していました。

正直、自分自身の未熟さを認め、大学病院を紹介するべきか・・・と悩みましたが、結果がついてきていない中でも新しい治療の選択肢を受け入れてくださった飼主さまの対応に本当に感謝しています。

「ここでは治らない」と判定されていてもおかしくない状況でしたので、最も頑張ってくださった飼主さまのおかげという以外ありません。

ただ診断名としては最後まで変更なく、今でもその診断として間違っていないと思っています。

それでも後半の2カ月半の治療の選択肢をもっと早くに提示することがでいなかった自分の非力・未熟なところは反省すべきで、今後に生かしていきたいと思います。

今回の症例を8カ月間治療させていただけたことで、、「柴犬の皮膚病を診る」という点においても新しい世界へ入ったような気がしました。

何度もお話しておきますが、チャンスを与えてくださった飼主さまに感謝しております。


当院の皮膚科専門外来を受診された飼主さまには、初診時にそのわんちゃんの皮膚病と同じように見える治療症例の写真を複数お見せするようにしています。

年間を通すと柴犬だけで何十頭と初診を診させて頂き、そのほぼすべてを画像データで残していますので、この数年は例外なく「うちの子とそっくり・・・」と思える症例を、しかも複数例お見せできています。

ここで症例報告をご覧になっている柴犬の飼主さまもきっと「うちの子と一緒」と思っている治療症例がいるのではないでしょうか。

そしてここの多くの治療症例をみながら「ほとんど同じに見える」、「柴犬には柴犬特有の同じ病気になりやすいのではないか?」、または「柴犬の皮膚病に特別効果のある薬があるのではないか?」と思う方もいるのではないでしょうか?

しかし答えは違います。

今回の症例を含め最近の6症例だけをピックアップしても、診断名と治療内容が一緒の症例は2症例のみです。他の4症例はそれぞれ異なる診断と治療を行っています。

このあとさらに2~3症例は紹介しようと考えていますが、それぞれ診断名・治療内容が少しずつ異なります。

柴犬を診るのが非常に難しい理由が少しずつ伝わってきているでしょうか?

また最後にまとめさせていただきます。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】柴を診極める

2014.02.16

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

3年ほど前から『皮膚を丁寧に診る』だけではなく『犬種別に診る』皮膚科診療を意識するようになりました。

まずその犬種の体質をよく知ること、個人的に最重要犬種として挙げたのがシーズー・フレンチブルドッグ、そして柴犬です。

シーズーは当院のメディカルスキンケアで3~4年前からほぼ治療法を確立することができ、フレンチブルドッグもその延長のスキンケアで多くを改善できるようになりました。

そして最後に、何か掴みかけた感触程度ですがこの1年で柴犬を診れるようになった気がしています。

そこで柴犬の皮膚病をまとめようと連続で症例報告を作成しています。

【症例】

 柴犬 10歳 男の子

【病歴】

 〇約5年前から強い痒みを伴う皮膚病
 〇1件目動物病院はステロイドを使わない方針で当初インターフェロン、食事療法、免疫抑制剤(2年間)、抗真菌剤を使用するが改善せず、最終的にステロイドを試すも内服をやめるとすぐに強い痒みが再発する
 〇2件目動物病院ではアレルギー検査とホルモン検査を受け、ステロイドと精神安定を期待したサプリメント
   時に抗生物質、抗ヒスタミン剤、甲状腺ホルモン剤、外用薬なども使用するが改善なし
 〇最終的にエリザベスカラーを常時装着しなければいけない状態まで悪化

初診時の状態をみてみましょう。

まずは顔の左側から。

続いて、下顎~頚部。

続いて、身体の右側から。

胸部、右側から。

続いて、右前肢の肩~上腕。

同じく右前肢の手根~肢端。

続いて、頚部~前胸部。

続いて、腹部全体。

それでは3カ月半後の状態と比較してみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


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※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

短期間で非常に綺麗に改善することができました。

エリザベスカラーも外し、わんちゃんらしい日常生活を送ることもできるようになりました。

強い痒みから解放されたのか、思い返せばイライラしていたのもなくなり、穏やかになったと喜んでいただけました。

さて、過去の治療と何が違うのか?

診断名、治療内容については来院された方にのみお話していますので、ここでは詳しく解説できませんが、皮膚病で困っている柴犬の飼主さまは気になると思いますので、それぞれのお薬について少し説明をしておきたいと思います。

①インターフェロン
 これは犬アトピー性皮膚炎の治療の選択肢ですので、アトピーと診断して使用したのだと思います。アトピー治療としての改善率も極端に高いわけではないのでインターフェロン単独での治療は中々難しいのが現状です。そのためインターフェロンで改善がないからインターフェロンが効かなかったと判定することはできず、治療の優先順位を間違えたがゆえに効果あるべきものも効果を示せなかったということも考えられます。決して効果を期待できないないわけではないので、個人的には多剤との併用などは十分に生かせるのではないかと考えています。

②免疫抑制剤
 動物用免疫抑制剤は同じく犬アトピー性皮膚炎に非常に効果があり、症状の改善に役に立つと思います。ネックは非常に高額な医療費がかかることでしょうか。このお薬を2年間毎日服用させ続けた飼主さまの努力にはまさに血のにじむ想いだったと思われます。

③抗ヒスタミン剤
 同じく犬アトピー性皮膚炎に使用します。単独での使用では痒みを抑える作用が弱いため、個人的には予防的な抗アレルギー剤と考え、ステロイドやインターフェロンとよく併用するようにしています。

④抗生物質
 皮膚炎の原因に細菌が関与していることが多いため、皮膚科診療では非常に重要で、当院でもよく使用します。

⑤甲状腺ホルモン剤
 甲状腺機能低下症が皮膚機能低下を引き起こし、難治性皮膚疾患の原因となるため甲状腺機能低下症の症例には生涯投与が必要になります。当院でもよく診断する疾患の一つです。

⑥抗真菌剤
 マラセチア性皮膚炎や糸状菌が関与した真菌性皮膚疾患に使用します。当院でもよく使用する薬剤の一つです。

⑦サプリメント
 今回は抗不安効果のあるサプリメントですが、当院でも心因性の痒みに対してよく使用します。

⑧ステロイド
 ステロイドは極力使わない、脱ステロイドという言葉がありますが、個人的にはステロイドは「使うべき」か「使ってはいけない」のどちらかで極力使わないや脱ステロイドという考え方ではステロイドを必要とする皮膚疾患を治すことは難しいと考えています。

⑨食事療法
 これも非常に重要ですね。当院でも食事療法だけで治るとはいいませんが、治療成績が向上するのでおすすめしています。

皮膚科診療で登場する大半の治療法が登場したと思います。

おそらく2件の動物病院では柴犬に多いアレルギー性皮膚炎(特に犬アトピー性皮膚炎)を疑って治療したと思われます。

参考までに当院で使用した薬は最大で4種類、改善を確認しながら少しずつ減らしていきました。

この治療の選択の違い「診極める」で、病態を的確に把握し、適切な診断名と治療法を選択すれば極めて稀な疾患を除き、特別な魔法の薬などなく治すことができると考えています。

最も陥り易いミスは「豊かな経験に基づいた先入観」です。

確かに豊かな経験は診療における重要な武器の一つですが、先入観は紙一重で引き返せない迷走に入ることすらあります。

僕もどうしても一瞬の診た目である程度絞り込んでしまいます。

診極めの中に豊かな経験は非常に重要だと思いますが、同時に先入観を捨て常に「もう一人の獣医師」を自分の中に作り出し、自分を疑うことを忘れないことも重要かと思います。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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