2017.01.27
フレンチブルドッグの皮膚病治療に力をいれて、関東(東京・千葉・埼玉・神奈川)で遠隔診療を行っている四季の森どうぶつクリニックです。
当院ではメールと写真で継続治療を行う遠隔診療を行っています。
遠隔診療のポイントは、
①直接診るのは1回だけ(初診)
②継続治療はメールと写真のみ
この2点です。
そう、治療方針は1回診ただけですべてを把握しなければいけません。
治療の反応も想定外があってはいけないのです。
ただでさえ治りにくいのに、そんなことが可能なのか?
ということで、昨年の治療成績を紹介します。
今日紹介するわんちゃんは、茨城県にお住まいで、なんと愛知県から茨城県のご自宅まで往診に伺った治療症例です。
まずは飼主さまからいただたメールで送っていただいた写真から紹介します。
続いて、頭の上の湿疹です。
続いて、右わき~肘~腕の内側の湿疹です。
続いて、内股~陰部周囲の湿疹。
そして治療後、飼主さまからいただいたお写真を紹介します。
治療に要した期間は2ヶ月です。
まずは顔のシワの状態です。
続いて、頭の上の湿疹があった部位の治療後です。
続いて、ワキ~肘にかけてです。
続いて、内股の状態です。
最後に指の間の皮膚炎です。
随分ときれいに改善したといえます。
1回の診療で立てた治療方針ですが、ほぼ想定通りに目標ラインまで導くことができたと思います。
診療で最も大事にしている一つ「診極め」ですね。
当院では東京・神奈川・埼玉・千葉といった関東からの受診や、大阪・京都・兵庫からの来院も多く、こういった遠隔診療で高い治療成績をだしています。
すべての症例が適応になるわけでもないのですが、かなり高い確率で改善を導くことができますので、皮膚病に悩まれている方は一度ご相談ください。
もちろん、今回の症例でもスキンケアとサプリメントは重要なポイントになっています。
投稿者:
2017.01.21
ミニチュアダックスのアトピー・アレルギー・膿皮症の治療に力を入れて、体質に合わせた治療を行う皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院を受診されるわんちゃんのほとんどが「痒み」を主訴に来院されます。
もちろん治療の評価ポイントは「痒みが改善されたか?」が最重要ポイントになってくるのですが、当院の皮膚科診療はそれだけでは終わりません。
問題は「なぜ難治性皮膚病になるのか?」「なぜ皮膚が弱いのか?」ですので、もっと先まで踏み込む必要があります。
今回紹介する難治性皮膚病のミニチュアダックスは、そんな「なぜ治りにくかったのか?」まで踏み込んで劇的に改善した治療症例です。
【症例】
M・ダックス 11歳10ヶ月 女の子(避妊済み)
【症歴】
〇5年前から痒みを伴う皮膚病発症
〇過去に3件の動物病院を受診するも改善なし
それでは初診時の状態です。
まずは全体像から。
続いて、頚部です。
続いて、身体側面です。
同じく側面の拡大です。
続いて、背中全体です。
続いて、腹部全体です。
続いて、左前肢端です。
同じく左前肢端の指の間です。
続いて、尾とその拡大です。
続いて、大腿部尾側からです。
ミニチュアダックスフンドの皮膚病では典型的なタイプ・・・にみえますので、一見珍しくはみえませんが、ここまで重症化するダックスは多くはありません。
初診時の写真として、身体全体を紹介しましたが、痒み・皮膚炎が認められるのは一部で四肢端・下腹部・太ももくらいでした。
上にはその他の部位として、頚部、背中、側面も詳しく掲載しましたが、特別な痒みは認められませんでしたし、飼主さまから特別気になる症状はない部位でした。。
しかし初診時にこうして写真を残しているには理由があり、初診時に「ここが大事!」と認識して記録に残しています。
今回は第一段階としてまず痒みの改善を導き、第二段階として「皮膚をよくする」という2段階で治療を行いました。
治療後の比較です。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
頚部
側面。
側面の拡大。
腹部。
続いて、左前肢端。
同じく左前肢の指間。
続いて、尾とその拡大。
続いて、大腿部尾側。
四肢端の痒み・皮膚炎・フケの改善はもちろん、全身の毛並みが非常によくなりましたね。
スムースダックスがロングヘアダックスになったような劇的な改善といえます。
今回の表面上の診断名は「犬アトピー性皮膚炎」と「膿皮症」です。
そのための初期の治療はこの2疾患に対する投薬治療がメインです。
ですが、同時に「なぜここまで犬アトピー性皮膚炎が治り難く、重度になっていたのか?」の原因も考えなければいけませんし、そのヒントは身体全体に現れています。
飼主さまの主訴にある痒みだけではない、隠された病気こそが重症化の要因になっていますので、その部分にアプローチすることで、アトピーの治療成績もよくなりますし、膿皮症の再発もへります。
実際にこの症例では膿皮症の再発が劇的に減っています。
このまま継続治療をしていればもう初診時のような悪化になることはないでしょう。
治療は症状を改善するだけなく、なぜこうなったのか?再発させないためには?と考えてこそだと思います。
投稿者:
2016.12.16
犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ここ最近は犬の膿皮症の症例報告を連続して掲載しています。
この膿皮症、よく診る皮膚トラブルで、一見治療もシンプルな病気なのですが、原因が多岐にわたるため、時に治りにくいことがあるのです。
診断名もただしく、基礎疾患の評価も十分、各種検査もして治療方針をくみたてている・・・・・・・けれど治らない、そんなことが「よく」起こります。
今回紹介する症例も過去の治療に「何がおかしいのか?」と思うほどなのですが、実は誰も知らないわずかなズレが原因で治っていなかったわんちゃんです。
【症例】
ヨークシャテリア 推定9~10歳 男の子(未去勢)
【症歴】
〇皮膚病は1年以上前から、飼主さまが代わっていからこの1年ずっと他病院で治療を継続している
〇過去1年、この湿疹が消えたことが1度もない
〇診断名は「膿皮症」
〇培養感受性試験から効果のある抗生物質の選択
〇血液検査による甲状腺機能低下症の診断&投薬治療
〇食事療法(アミノ酸療法食)
まずは初診時の状態です。
以前の動物病院では
・細菌培養感受性試験による抗生物質の選択
・ステロイドは併用せず
・甲状腺検査により甲状腺機能低下症の診断を下し、甲状腺ホルモン剤の投与
・アレルゲンにならないアミノ酸系療法食のみでの食事管理を指示
となっていました。
教科書的にはまったく問題ありません。
ここから当院の治療方針に従い、初診時から4週間後と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
湿疹は1つも残らず綺麗になりました。
痒みの症状も完全に消失しました。
当院での診断および検査についてですが、
・膿皮症の診断名は同じ
・感受性試験の結果も一緒
・甲状腺機能の再検査も一緒
・その他特筆すべき基礎疾患なし(ニキビダニ、クッシングなど)
でした。
「ではなぜ今まで1年治らなかったものが治ったのか?」
当院を受診されている飼主さまは知っています。
教科書に書かれていない驚きの「なぜ膿皮症になるのか?」です。
よくブログで教科書で治るなら誰も苦労しないと書きますが、これが典型例ですね。
今回の症例も今まで書いてきたことと同じことですが、「膿皮症が起きる原因を追究しないと、治療法があってても次から次に新しい湿疹はできる」なんですね。
投稿者:
2016.12.15
フレンチ・ブルドッグの皮膚病治療に力を入れて取り組んでいる動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
随分と寒くなり、皮膚が弱いわんちゃんにとってもすごしやすい季節になったのではないでしょうか。
当院でも10月をピークにようやく落ち着いてきました。
このあと3ヶ月は平和な季節で、ちょっと肩の力が抜けています。
今日は当院の受診のなかでも最も多い「フレンチ・ブルドッグの典型的な皮膚病、膿皮症」の症例報告です。
【症例】
フレンチ・ブルドック 4歳 女の子(未避妊)
【症歴】
〇今年の8月から湿疹がでてきた
〇抗生物質を服用するも新しい湿疹が繰り返しできる
初診時の状態です。
それでは1ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗になりました。
何が違うか、「できてしまった湿疹を綺麗に治す」だけでなく「新しい湿疹をつくらせない」です。
この2点、似ているようでまったく異なります。
この違いを理解してアプローチしなければ膿皮症のコントロールとはいえません。
このわんちゃんも、過去の治療内容が悪かったわけではありません。
過去の治療歴も「培養・感受性検査」、「抗生物質を服用」、「シャンプー」と、教科書に書かれている抑えるべき点を抑えていました。
確かに湿疹は治っていくのですが、新しい湿疹が次から次にできるんですね。
以前のブログでも書いたことがありますが、抗生物質は湿疹を治すことはできても、「湿疹ができる理由を治すことはできない」なんですね。
そもそも「なぜ皮膚の表面で、正常な常在菌が膿皮症を起こすのか」を考えて、そこにアプローチできなければ繰り返すことを防ぐことはできません。
投稿者:
2016.12.03
名古屋・愛知で犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
膿皮症、とても多い病気ですね。
シンプルなんですが、とても治りにくいケースも多々あり、「膿皮症が治らない」という理由で当院を受診される方も多いです。
それらのわんちゃんの多くが「診断は間違っていない」・・・でも、治ってないという状態です。
治らないには治らないなりの理由があり、膿皮症になるにはなるなりの理由があります。
そこを追求すれば、膿皮症のほとんとがコントロール可能になります。
前回そんな「膿皮症が治らない」として甲状腺機能低下症の症例報告を行いました。
今回もその甲状腺機能低下症の続きです。
【症例】
MIX 6歳1ヵ月 男の子(去勢済み)
【経過】
〇1~2年前から発症
〇過去に2件の動物病院を受診し、抗生物質とステロイドを処方され、一時的に改善したが再発
〇夏前からさらに悪化
それでは、初診時の状態です。
つづいて、頚部です。
同じく頚部の拡大です。
つづいて、前胸部です。
同じく左の脇です。
すぐとなりの肘の内側です。
つづいて、腹部~内股です。
同じく左の内股です。
この初診時から2ヶ月後の状態を比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗になりました。
湿疹がない、痒みがないだけでなく、フワフワ&サラサラに復活です。
そしてとても元気になっています。
甲状腺機能低下症は非常に有名ですが、診断しにくいいくつかの要因があります。
〇飼主さまがほぼ気づかない
動物病院に来院されるにはそれなりの理由があると思うのですが、甲状腺機能低下症の場合は病気に直結する症状で来院されることがあまりありません。
わかりやすい例でいうと、糖尿病であれば「よく食べるのにやせる。よく水をのむ、オシッコも多い」、心臓疾患であれば「咳をする。呼吸がおかしい」、膀胱炎であれば「血尿」といったような関連性ですが、甲状腺機能低下症の場合はそういった主訴が多くないのです。
〇特徴的な症状(所見)がない、または顕著な特徴が出ないことが多い
教科書的には脱毛、表情、脂漏・・・といった特徴的な症状を書いているのですが、教科書にのるような脱毛になっている甲状腺機能低下症のわんちゃんがどれだけいるのか?と考えるとほんの一部です。
また表情についても、特徴的な表情をするのはほんのわずか、脂漏も甲状腺機能低下症以外でも多くみとめられるため、直結するような症状ではありません。
〇検査結果が必ずしも正確とは限らない
ユーサイロイドシックと呼ばれる状態があり、「本当は甲状腺は正常なのに、異常値がでる」というのが頻繁に起こります。
評価に悩む症例もなくはありません。
〇皮膚病の中で甲状腺機能低下症は多いわけではない
今回の連続報告はちょうど同じ週に来院されたように、当院では頻繁に診断する機会があるのですが、一般診療の中ではたまにみるくらいだと思いますので、「皮膚病があるから甲状腺検査しましょう」ではないと思います。
〇検査が高い
病気が少ないとしても、検査が安ければ、それこそ100円で検査できるならすべてのわんちゃんに行えば発見が遅れることも少なくなるのですが、安くない・・・いやむしろ高いほうの検査です。
検査に踏み切るには踏み切るなりの理由がなければ実施しづらいというのはなくはありません。
とはいっても甲状腺機能低下症があって皮膚病になっている場合、甲状腺を避けて改善はありませんので、どこかでラインを引いて実施しておきたい検査です。
具体的には、
毛並みが悪い
脂漏がある
皮膚病の治りが悪い、再発が多い
・・・ですが、難しいですね。
たとえば「毛並みの悪さ」、どう評価するのか?
毛の質はわんちゃんによって違いますし、そのわんちゃんの昔の状態もわかりません。
毛の数も100→10になれば判りやすいのですが、100が70や50くらいのこともあるので脱毛といいきれないことも多々あります。
ということで「普段からよく診る」につきると思います。
数多く診ていれば、病気のわんちゃんがきたときに「おかしい」という違和感を感じます。
治りの悪いさもどうようで、「この治療だったら治るべきなのになぜ治らない?」という違和感が検査のタイミングだと思います。
それでも病気は文字では表せないのが現実ですね。
まとめようにもまとまらない、「教科書では治らない」ですね。
投稿者:
2016.11.29
皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
11月は残り2日ありますが、当院の診療日はもう終わりましたので気持ちでは今年もいよいよあと1ヶ月、そろそろ1年を振り返るような時期になりました。
社会人になると1年はあっという間ですね!
今日の治療症例ですが、めずらしく「診断名」も紹介しようと思います。
【症例】
マルチーズ 7歳 男の子(去勢手術済み)
【症歴】
〇最初の発症は1年前、背中に湿疹
〇過去に6件の動物病院を受診するも改善なし
〇シャンプーして数日で油っぽくなる
それでは初診時の状態です。
まずは正面から。
続いて頚部の背側やや左から。
続いて、背中の拡大。
それでは、治療後との比較です。
湿疹が治っただけでなく、毛並みもよくなり、油っぽさもなくなりました。
以前はシャンプーして数日でべったりとしていたのですが、以前のようにサラサラをキープできるようになったということです。
肝心の診断名は、「甲状腺機能低下症による膿皮症」です。
教科書で甲状腺機能低下症について調べると
「膿皮症になりやすい」
と書かれています。
また、膿皮症について調べると
「甲状腺機能低下症が原因になっていることも」
と書かれています。
油っぽいため脂漏について調べると、
「甲状腺機能低下症が原因になっていることも」
と書かれています。
膿皮症の診断は間違いではありません。
抗生物質を使うことも正しいです。
耐性菌を疑って培養検査を行うことも正しいです。
スキンケアも重要ですので、シャンプー療法も適切な判断です。
・・・しかしこれだけでは治らないのも事実です。
1つ1つが正しいことと実際に治ることは別ですので、すべてにアプローチしなければいい結果は得られません。
足りないアプローチはひとつ、「なぜ膿皮症になったのか?」を考えることです。
「木をみて森をみず」という言葉があるように、目の前にみつけたわかりやすい診断名でとどまらず、全体を見渡すことが重要です。
うまく行かなければ1歩、2歩ひいて・・・ときにはスタートラインまで戻って全体を見渡し、仕切りなおすことも重要です。
と、書いてみると簡単なようにみえるかもしれませんが、1件1件診療の背景は異なりますので正直難しいこともあります!
それは膿皮症が100件来院しても、甲状腺機能低下症を併発しているわんちゃんはおそらく1件いるかどうか・・・ですので、全頭に疑いをかけるわけにはいかないのが現状です。
治りにくい場合や、脂漏、毛並み・・・などさまざまなことを考慮して疑っていく病気です。
ただ、問診と視診で10分あれば第一候補に入る疾患でもあるので、特徴を掴めば診断は限りなく早くなります。
ということで次回の症例報告も同じ甲状腺機能低下症の予定です。
投稿者:
2016.11.09
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今日は風が強く、秋の深まりというより冬でしたね。
先日開催した東京の皮膚科診療でも色々と報告したことがあるのですが、まずはこの夏の症例をまとめていこうと思います。
【症例】
フレンチブルドッグ
長期にわかって湿疹と痒みで悩まされてきたわんちゃんです。
まずは初診の状態をみてみましょう。
頚部からです。
身体の側面です。
身体の右半身を斜め後ろからみることで、湿疹がわかりやすいです。
右腕の内側~脇のです。
右前肢の外側~右肩です。
治療後と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
側面です。
右腕~脇です。
左腕~脇です。
非常に綺麗に改善しました。
肝心な痒みも随分と抑えられています。
このタイプであれはサプリメントが非常に有効で、スキンケアと組み合わせることで随分と改善できるのではと考えています、
短期間で治療するには投薬治療を併用していいと思いますが、大事なことは治療だけではなく「なぜ皮膚病になったのか?治りにくいのか?なぜ再発するのか?」まで考えてアルプローチすることだと思います。
投稿者:
2016.03.28
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今日はFNSうたの春まつりをみながらブログを書いています。
この時期ですので卒業に関連した内容なのですが、みなさまは卒業式に何か思い出は残っていますか?
僕は卒業式の日に女の子に第2ボタンを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もらわれたこともないので、いい思い出は何もないです(笑)
さ、そんなさみしい思い出話は早々にやめて、数ヶ月お休みしていた症例報告にきりかえましょう。
日々同じような診察をしているようで、新しい発見が次から次にみつかるのが診療最前線なのですが、つい先日も新しい発見がありました。
今回紹介するのははるか昔から有名な病気、「ポメハゲ」「アロペシアX」「毛周期停止」の名前で呼ばれる脱毛症の治療です。
まずは初診時の正面・・・は向いていませんが、実はこの脱毛症は「かわいい子に多い」というのが定説になっています。
バンザイの姿勢で、胸のあたりをみてみましょう。
大きな湿疹がたくさん認められます。
続いて、腹部です。
同じく大きな湿疹が数多く認められます。
続いて、側面。
この疾患に特有の脱毛が認められますね。
この湿疹が全身に無数にあります。
最後に背中を上からです。
重度ではありませんが、典型的なアロペシアXです。
その診断を下して治療開始からわずか4週間後をみてみましょう。
まずは胸とお腹です。
湿疹は非常に綺麗になっています。
胸の辺りはすでに新しい被毛が再生しており、数ヵ月後にはフワフワになっているのが予想できます。
続いて、側面です。
アロペシアで脱毛が進行しやすい頚部の側面を拡大してみます。
同じくアロペシアXで脱毛が早期から認められる胸部側面です。
当院の治療の中で湿疹が治るのは当然として、「治し難い脱毛症」で早くも被毛の再生が認められています。
個人的にはこんなに早くの再生があるのは初めてなので、ちょっと驚きました。
多くの疾患で「おおよそ〇ヶ月でよくなるでしょう」が予測できる中で、この脱毛症だけは被毛の再生時期を予測することが難しいです。
中には半年以上かかることもあります。
今回のポメちゃんはかなり早い時期での再生が認められたと思います。
このアロペシアXの脱毛症の治療にはさまざまな考え方があり、「命に関わらないため治療の必要性はない」とされがちですが、個人的には病気の1つとして積極的な治療は選択肢の1つだと思います。
その理由は今回の症例の膿皮症です。
この膿皮症、おそらくアロペシアが原因で起きています。
ポメラニアンは本来ではそうそう難治性の膿皮症になることはないのですが、「アロペシアがゆえに膿皮症が治らない」となる症例が少なくありません。
従来では「アロペシアは毛が生えないだけ」とされていましたが、「皮膚コンディションが低下する病気」として捉えて治療が必要だと思います。
投稿者:
2015.11.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今年も学会&セミナーシーズンがやってきました。
今週末は大阪での大きな学会「動物臨床医学研究会 年次大会」に参加し、29日、12月6日、12月13日はすべて名古屋でのセミナー参加です。
2015年のアップデートもラストスパートです♪
では、今日は恒例の「診極め」の症例報告です。
ちょうど1ヶ月前の10月17日に来院されたわんちゃんをその日のうちに紹介しました。
診た当日のブログで「1~2ヵ月後には綺麗になる」とお伝えして、今日がちょうど1ヵ月後の再診でしたので比較を紹介したいと思います。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
毛並みは非常に綺麗になりました。
以前の記事を読んでいただきたいのですが、このわんちゃんは2年間ずっとステロイドを投薬していました。
診断名は細菌性膿皮症であり、一般的にはステロイドではなく抗生物質での治療が必要な病気です。
そのため初診時はそのステロイドを止めることができるのか?という検査を行いました。
シンプルに休薬せず、検査を行った理由は「長期間ステロイドを服用していると、急に休薬することで命に関わる体調不良に陥ることがあるから」です。
予測どおり検査結果から「急な休薬はできない」と判断されたため、、初診時から2~3週間かけて徐々に減量してステロイドをゼロにしました。
そして一般的に治療の最優先事項である「抗生物質」は・・・・・・・・・・処方していません。
では何をしたかというと・・・・もちろん当院のスキンケア&サプリメントです。
メディケア スキンクリーニングオイル
メディケア シャンプー
メディケア ローション
スキンケアECプラス(サプリメント)
初診時だけ院内薬浴をしたのですが、オイルクレンジング後の湿疹をみてみましょう。
診た目が痛々しいくらいですが、スキンケアではここまでする必要性があります。
またスキンケアも非常に重要ですが、この湿疹を根本的にコントロールするにはサプリメントが最も重要だと考えています。
初診時の時点で即ステロイドを休薬できればもう1~2週間早く改善したと思うのですが、ステロイドを服用していても1ヶ月でここまで綺麗にすることができます。
参考までに皮膚全体のトラブルが改善しているわけではありません。
ステロイドを休薬したことで数日前から顔・四肢端・耳の痒みが認められるようになりましたが、これも想定の範囲内で初診時に「おそらく顔・四肢端の痒みがでるでしょう」とお伝えしていました。
もちろん今日からこの顔・四肢端・耳の治療が始めています。
皮膚の診断名と治療が1つであることはあまりありません。
病変に応じて治療方針を変えることが重要です。
顔・耳・四肢端すべて、おそらく2~4週間後には綺麗になっているでしょう。
投稿者:
2015.10.11
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
雲ひとつない青空が広がりましたね♪
ここ2回紹介しているヨーキーの症例は初診時から1ヶ月でとてもよくなりましたが、その後想定外の悪化が認められたため、さまざまな修正を加えて1年かけて改善した症例です。
そのためには初診時の判断と1ヶ月で改善した治療内容すら一旦撤回しなければいけませんでした。
※僕もすっかり忘れていたのですが、1年前の初診から1ヵ月後の時点で「随分とよくなりました!」とブログを書いていました。
1年前は治療1ヶ月で随分とよくなり、違和感を感じることなく「このままいける!」と考えていました。お恥ずかしい限りです。
今回の第1回目ブログ ⇒ 診極めの甘さ
第2回目ブログ ⇒ 診極めの甘さ2
治療から2~3ヵ月後から認められた予想外の皮膚トラブルにより治療方針の変更を繰り返して1年後・・・
顔・頚部・前胸部・四肢端までは初診時の判断と1ヵ月後の状態のまま、特に治療を変更することなくさらに改善しています。
問題は治療後2~3ヵ月後から認められた体幹の痒み&湿疹&脱毛です。
まずは体幹、左からと背中から。
続いて腹部~胸部の中間くらい(臍の側面)
続いて、右大腿部尾側です。
その拡大、膿を含んだ湿疹があります。
さまざまな治療を行い・・・
現在は非常によい状態をコントロールできるようになりました。
通常は2~3ヶ月で一つの区切りですが、今回の症例はまさに1年かけてここまでたどりつきました。
最初の1ヶ月の治療内容と現在の治療内容が異なっている点ですが、初診時の想定範囲外でしたので、診極めが甘かったかなと反省です。
最終的な治療内容は「免疫抑制剤」「外用薬」・・・と「〇〇〇」です。
あと、外科手術も効果的だったと思います。
やはり病変の出方がおかしいとは思いました。
一般的には「背中だけ」や「お腹だけ」という分布になるのですが、下半身だけ・・・というのは通常ありません。
この写真です。
下半身だけの痒みを伴う皮膚病は非常に少ないので、「いつもと違う何か」を探さなければいけません。
皮膚トラブルの原因が常に1つとは限りませんので、複数の要因を想定するのも大事ですね。
個人的にもとてもいい勉強になりました。
投稿者: