2016.12.03
名古屋・愛知で犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
膿皮症、とても多い病気ですね。
シンプルなんですが、とても治りにくいケースも多々あり、「膿皮症が治らない」という理由で当院を受診される方も多いです。
それらのわんちゃんの多くが「診断は間違っていない」・・・でも、治ってないという状態です。
治らないには治らないなりの理由があり、膿皮症になるにはなるなりの理由があります。
そこを追求すれば、膿皮症のほとんとがコントロール可能になります。
前回そんな「膿皮症が治らない」として甲状腺機能低下症の症例報告を行いました。
今回もその甲状腺機能低下症の続きです。
【症例】
MIX 6歳1ヵ月 男の子(去勢済み)
【経過】
〇1~2年前から発症
〇過去に2件の動物病院を受診し、抗生物質とステロイドを処方され、一時的に改善したが再発
〇夏前からさらに悪化
それでは、初診時の状態です。
つづいて、頚部です。
同じく頚部の拡大です。
つづいて、前胸部です。
同じく左の脇です。
すぐとなりの肘の内側です。
つづいて、腹部~内股です。
同じく左の内股です。
この初診時から2ヶ月後の状態を比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗になりました。
湿疹がない、痒みがないだけでなく、フワフワ&サラサラに復活です。
そしてとても元気になっています。
甲状腺機能低下症は非常に有名ですが、診断しにくいいくつかの要因があります。
〇飼主さまがほぼ気づかない
動物病院に来院されるにはそれなりの理由があると思うのですが、甲状腺機能低下症の場合は病気に直結する症状で来院されることがあまりありません。
わかりやすい例でいうと、糖尿病であれば「よく食べるのにやせる。よく水をのむ、オシッコも多い」、心臓疾患であれば「咳をする。呼吸がおかしい」、膀胱炎であれば「血尿」といったような関連性ですが、甲状腺機能低下症の場合はそういった主訴が多くないのです。
〇特徴的な症状(所見)がない、または顕著な特徴が出ないことが多い
教科書的には脱毛、表情、脂漏・・・といった特徴的な症状を書いているのですが、教科書にのるような脱毛になっている甲状腺機能低下症のわんちゃんがどれだけいるのか?と考えるとほんの一部です。
また表情についても、特徴的な表情をするのはほんのわずか、脂漏も甲状腺機能低下症以外でも多くみとめられるため、直結するような症状ではありません。
〇検査結果が必ずしも正確とは限らない
ユーサイロイドシックと呼ばれる状態があり、「本当は甲状腺は正常なのに、異常値がでる」というのが頻繁に起こります。
評価に悩む症例もなくはありません。
〇皮膚病の中で甲状腺機能低下症は多いわけではない
今回の連続報告はちょうど同じ週に来院されたように、当院では頻繁に診断する機会があるのですが、一般診療の中ではたまにみるくらいだと思いますので、「皮膚病があるから甲状腺検査しましょう」ではないと思います。
〇検査が高い
病気が少ないとしても、検査が安ければ、それこそ100円で検査できるならすべてのわんちゃんに行えば発見が遅れることも少なくなるのですが、安くない・・・いやむしろ高いほうの検査です。
検査に踏み切るには踏み切るなりの理由がなければ実施しづらいというのはなくはありません。
とはいっても甲状腺機能低下症があって皮膚病になっている場合、甲状腺を避けて改善はありませんので、どこかでラインを引いて実施しておきたい検査です。
具体的には、
毛並みが悪い
脂漏がある
皮膚病の治りが悪い、再発が多い
・・・ですが、難しいですね。
たとえば「毛並みの悪さ」、どう評価するのか?
毛の質はわんちゃんによって違いますし、そのわんちゃんの昔の状態もわかりません。
毛の数も100→10になれば判りやすいのですが、100が70や50くらいのこともあるので脱毛といいきれないことも多々あります。
ということで「普段からよく診る」につきると思います。
数多く診ていれば、病気のわんちゃんがきたときに「おかしい」という違和感を感じます。
治りの悪いさもどうようで、「この治療だったら治るべきなのになぜ治らない?」という違和感が検査のタイミングだと思います。
それでも病気は文字では表せないのが現実ですね。
まとめようにもまとまらない、「教科書では治らない」ですね。
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