2016.08.29
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
夜は随分と涼しくなりましたね♪
先日のブログで「チワワの皮膚病治療の進め方(初診時)」を掲載しました。
本日はその続きです。
改めて全体像を紹介します。
治療は2つに分かれます。
まず1つめは「痒みのコントロール」です。
9日後の状態と比較しましょう。
最もひどかった首の傷をみていただきたいと思います。
治療前の痒みレベルを10として、9日後は「4」まで改善しました。
傷も消失しました。
しかしまだ全体的に皮膚・毛並みで正常になったという感じはありませんね(まだ9日ですから)。
もう一押し、痒みの治療に集中していきます。
その後次の治療ステップに入ります。
そこから2~3ヶ月できっと変わると予測しています。
投稿者:
2016.08.21
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
お盆休みも終わり、夏も終盤ですがまだまだ暑い時期が続いていますね。
今日は昨日初診で来院されたチワワの皮膚病を紹介します。
【症例】
チワワ 約3歳 女の子(未避妊)
【病歴】
〇2年前の保護引取り時から継続する慢性皮膚病
〇通年性の痒み
〇ステロイドで痒みの改善があるが、服用をやめると痒みがぶり返す
初診時の状態です。
慢性的な痒みを伴う皮膚病で、フケ・皮脂が多く、独特の臭いもあるため、パッと見た目で「チワワの慢性皮膚炎のよくあるパターン」に見えます。
きっとその判定で間違いないと思うのですが、このわんちゃんには「チワワによくある皮膚炎」意外にもう一つ隠れた基礎疾患があると予測しています。
アトピー、アレルギー系の治療やスキンケアだけでは改善しない基礎疾患です。
初診時の診極めで重要なのはそこまで想定してこの後の治療方針を立てることだと思います。
まずは1ヶ月で痒みの改善を、そしてそのあと3ヶ月で毛並みの改善を目指します。
投稿者:
2016.05.17
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
昨日非常にうれしい連絡がありました♪
GWの東京遠隔診療で診察したシーズーのわんちゃんの飼主さまから、
「痒みは気にならない程度です。(以前は寝ていても突然起きてガシガシ噛んだり舐めたり、足でボリボリ掻いてました)今はないです。
炎症は赤い所はないです。(以前赤く(かさぶたの様なフケ?)腫れぼったかった足の関節(踵?)が薄いピンク色程度になりました。(かさぶたなし)
シャンプーして4日目ですが、匂いは気になりません。
べたつきも気になりません。(毛並みもいい状態)
フケはほとんど落ちなくなり、目の上、喉 お腹 手足 フケかさぶたほとんどない状態です」
というご連絡をいただきました。
事前の問診で「2次医療施設で長期間、さまざまな治療を受けてきました」という経過があったため、少し心配でしたが、予測通りのいい反応が10日間という非常に短期間で得られたことで本当に一安心です。
ですが、何度もお話するように、すべてが遠隔診療の対象になるわけではありません。
その疾患の一つに、ポメラニアンやトイプードルに多い脱毛症「アロペシアX(毛周期停止)」という疾患があります。
当院のブログでも何度も取り上げてきた疾患ですが、今日は少し前にも紹介したわんちゃんのその後を紹介しようと思います。
以前の紹介記事 ⇒ ポメラニアンの脱毛症「毛周期停止」「アロペシアX」の治療
まずは初診時の写真を改めてご紹介します。
初診時から約2.5ヶ月後をみてみましょう。
本来あるべき毛並みの80~90%は改善したと評価できます。
それに伴い湿疹もほぼ消失し、皮膚コンディションそのものが改善したということも言えると思います。
ポメラニアンやトイプードルに多い「アロペシアX」「毛周期停止」という脱毛症ですが、必ずしも同様の治療成績がだせるわけではありません。
「やってみないとわからない」というものですが、この2~3年は以前よりも随分と治療成績があがってきました。
しかし同時に「それでも改善しないわんちゃんもいる」のは事実で、事前に予測することもできません。
そのため最近は新しい治療に取り組み始めました。
おそらくいい反応が得られるのではないか・・・と予想しています。
1~3ヵ月後にまたお知らせができるように取り組んでみようと思います。
投稿者:
2016.04.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
寒くなったり、雨上がりに夏のような暑さを感じたり、風が強かったり・・・季節の変わり目を実感しますね。
今日はベネッセの犬の気持ちの雑誌に掲載されたわんちゃんの症例報告です。
【症例】 ポメラニアン
【経過】 全身の脱毛で治療を行うも改善がない
去年の2月に途中経過を掲載しましたので、その続きです。
この脱毛症は「毛周期停止」といい、かつては「アロペシアX」とよばれていたり、ポメラニアンに特に多いため「ポメハゲ」ともいわれていた非常に有名な脱毛症です。
積極的な治療をしなければ改善しないことが多く、いかに適切に診断し、積極的な治療をするかが治療のポイントになります。
初診時の状態をみてみましょう。
まずは顔を正面から。
続いて、脱毛がでやすい頚部です。
続いて胸部。
続いて、この脱毛症の特徴的な胸部~頚部の脱毛です。
最後に大腿部、尾側からみた写真です。
それでは治療後の写真です。
まずは頚部。
続いて、胸部。
続いて側面。
最後に大腿部です。
フワフワの美しい被毛が再生しました。
そしてタイトルにあるとおり、ベネッセの犬の気持ちの雑誌5月号に掲載されています。
獣医師として来院された飼主さまのリクエストに応えることは当然でもありますが、「飼主さまの笑顔」につながる仕事ができたことは何より獣医師冥利につきるなと改めて感じることができました。
投稿者:
2016.03.28
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今日はFNSうたの春まつりをみながらブログを書いています。
この時期ですので卒業に関連した内容なのですが、みなさまは卒業式に何か思い出は残っていますか?
僕は卒業式の日に女の子に第2ボタンを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もらわれたこともないので、いい思い出は何もないです(笑)
さ、そんなさみしい思い出話は早々にやめて、数ヶ月お休みしていた症例報告にきりかえましょう。
日々同じような診察をしているようで、新しい発見が次から次にみつかるのが診療最前線なのですが、つい先日も新しい発見がありました。
今回紹介するのははるか昔から有名な病気、「ポメハゲ」「アロペシアX」「毛周期停止」の名前で呼ばれる脱毛症の治療です。
まずは初診時の正面・・・は向いていませんが、実はこの脱毛症は「かわいい子に多い」というのが定説になっています。
バンザイの姿勢で、胸のあたりをみてみましょう。
大きな湿疹がたくさん認められます。
続いて、腹部です。
同じく大きな湿疹が数多く認められます。
続いて、側面。
この疾患に特有の脱毛が認められますね。
この湿疹が全身に無数にあります。
最後に背中を上からです。
重度ではありませんが、典型的なアロペシアXです。
その診断を下して治療開始からわずか4週間後をみてみましょう。
まずは胸とお腹です。
湿疹は非常に綺麗になっています。
胸の辺りはすでに新しい被毛が再生しており、数ヵ月後にはフワフワになっているのが予想できます。
続いて、側面です。
アロペシアで脱毛が進行しやすい頚部の側面を拡大してみます。
同じくアロペシアXで脱毛が早期から認められる胸部側面です。
当院の治療の中で湿疹が治るのは当然として、「治し難い脱毛症」で早くも被毛の再生が認められています。
個人的にはこんなに早くの再生があるのは初めてなので、ちょっと驚きました。
多くの疾患で「おおよそ〇ヶ月でよくなるでしょう」が予測できる中で、この脱毛症だけは被毛の再生時期を予測することが難しいです。
中には半年以上かかることもあります。
今回のポメちゃんはかなり早い時期での再生が認められたと思います。
このアロペシアXの脱毛症の治療にはさまざまな考え方があり、「命に関わらないため治療の必要性はない」とされがちですが、個人的には病気の1つとして積極的な治療は選択肢の1つだと思います。
その理由は今回の症例の膿皮症です。
この膿皮症、おそらくアロペシアが原因で起きています。
ポメラニアンは本来ではそうそう難治性の膿皮症になることはないのですが、「アロペシアがゆえに膿皮症が治らない」となる症例が少なくありません。
従来では「アロペシアは毛が生えないだけ」とされていましたが、「皮膚コンディションが低下する病気」として捉えて治療が必要だと思います。
投稿者:
2015.11.07
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
あっ・・・・・という間に1週間が経ちました。
明日は下町ロケット、前回以上に手に汗握る展開になりそうで麻衣子先生と一緒に楽しみにしています!
さて、今日はいつもの症例とはちょっと違った雰囲気の症例を紹介します。
症例はミニチュアダックスフンド、痒みを主訴に来院されました。
もちろん痒みの治療を行って、100%とはいえなくもそこそこのレベルまで改善しました・・・・が、
比較的短期間で再発する、または当初の予想以上の治療継続が必要という状態が続きました。
そこで元々気になっていた「脱毛症」を再評価することに・・・
この脱毛症、受診当初から認められたのですが、飼主さまからの主訴になかった(こういうものと思っていたそうです)ので痒みの治療を最優先にして、脱毛症は後からやりましょうという流れにしていました。
しかし再発頻度も気になったため、脱毛症が関係しているのでは?と疑い、脱毛症の治療を始めました。
その前後を紹介します。
え?脱毛症??
そんな感じがしますよね。
でもこれは初診時の時点で主訴になくても「脱毛がある」と把握しておかなければいけません。
もちろんこの脱毛症は「美容上の問題で、治療の必要はない」といわれていますが、それは教科書上の話です。
証明はされていませんが、この脱毛症はただ毛が少なくなるだけで美容状の問題だけではなく、皮膚コンディションの低下を引き起こすものと考えていて、理論上のそうですがいずれそれを実証されるレポートがでると確信しています。
では、治療後の状態をみてみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
一見「首から毛が生えた」「耳の飾り毛が増えた」だけ・・に見えますが、重要なのはそこではありません。
この治療により全身の皮膚コンディションが改善し、痒みの治療成績が改善し、ほとんど投薬治療が必要いらないレベルに到達しました。
何がいいたいのかというと、
「現在の動物医療ではこの脱毛症が『美容上の問題であり、治療するかしないかは飼主の希望に沿う』と定義されていることにより、疾患としての治療の意味が過小評価され皮膚病全体の治療成績低下の要因になっている。」
ということです。
あともう一つは、
本当は「被毛を含めた皮膚に影響を及ぼす疾患であり、皮膚コンディションの低下および脱毛を引き起こす疾患」であるにも関わらず、脱毛症という名前にまどわされ「毛が抜けるだけの病気」と獣医師が誤解していることです。
そのため想像以上に見落とされている可能性が高いです。
はい、僕も過去10年間ほとんどアプローチしていませんでした。
そしてたくさん見過ごしていたと思います。
中には明らかな脱毛症が認められず、皮膚コンディションの低下・毛質の変化だけという症例もかなりいます。
教科書的な診断名の「脱毛」という命名がよくないのだと思います。
脱毛であり、美容上の問題であり、治療はしなくてもQOL(生活の質)には影響ない・・・・・
教科書にそうかかれてしまうと軽視されるのも仕方ないで、今後の改善を期待しましょう。
「教科書では病気は治らない」というのが僕の口癖なのですが、やはり本を読むだけでなく、皮膚をよく診ること・・・これに尽きます。
投稿者:
2015.10.23
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
秋が深まっているのですが、晴れた日の日中の車の中はまだまだ暑さも感じますね。
では今日は当院の症例報告にはあまり出てこない「脱毛症」についてです。
脱毛症と一言にいっても原因はさまざまなのですが、一般的に治療成績がでにくい脱毛症として「毛周期停止(少し前までアロペシアX)」という病気があります。
今回はそのアロペシアXの中でもさらに「治療反応が悪い」と評されているトイプードルのアロペシアの症例を紹介します。
地肌も見えますし、横から背中のラインがすけてみえるほど被毛が薄いのがわかります。
治療開始から2ヵ月後です。
非常に綺麗な被毛が再生してきました。
まだ局所ですが、まずこれでうまくいくと思います。
治療成績がでにくいアロペシアXですが、最近はかなり治療成績が高くなってきました。
選択肢としてはかなり積極的な治療と、やや消極的な治療の2パターンあるのですが、ある組み合わせの相性がいいことに最近気づきました。
根拠はないんですけど、いけそうな感触です。
半年後にはいい結果がだせていると思います。
投稿者:
2015.10.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
昨日から始まった下町ロケットはご覧になった方はいらっしゃいますか?
当日のCMで初めてしったのですが、引き込まれるように見入ってしまいました。
ああいうドラマをみると雑草魂に火がついて脳内アドレナリンが噴出してやる気になります!
中2病の素因がある証拠ですね(笑)
さて、今日は以前紹介したシーズーの経過を紹介します。
第1回 ⇒ 初診時の診極め (初診時平成27年8月31日)
第2回 ⇒ 初診時の診極めⅡ
症例の詳細はまだ書いていませんが、シンプルに紹介すると「過剰なステロイド投与による皮膚病の悪化」です。
そして今日は3週間後ぶりの再診でしたので、紹介します。
まだ治療途中ですが、皮膚のコンディションが非常によくなってきました。
被毛も再生していきます。
あと1~2ヶ月あれば随分とシーズーらしい毛並みにもどっていると思います。
投稿者:
2015.09.18
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
ようやく晴れました!
日中やや暑く感じましたが、今年最後の夏日だったようですね。
さて、少しタイムラグが生じてしまいましたが、先日ご紹介したシーズーの症例の経過を紹介します。
初診時から2週間後の状態です。
まだ被毛の再生がないため、よくわからないかもしれませんが、肝心の痒みはほどんと改善させることができました。
元々ステロイドを服用し続けても痒みを十分に押さえきれておらず、写真のようなステロイドの副作用とも考えられる脱毛症に陥っていたのですが、当院ではステロイドを服用させずに痒みを抑えることができました。
こういった症例は診断名も重要ですが、同時進行で改善させることも大事です。
診断は治療しながら徐々にしていきます。
1~2ヵ月後くらいにほぼ確定診断ができると思います。
被毛の再生は半年後を予定しています。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者:
2015.09.01
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今日は晴れたり大雨だったり・・・天候の急変が多い1日でしたね。
最近はかなりこまめにブログを書いていますので、ぜひ以前の記事もみてください。
さて、今日は「名前は知っているけど診断し難い&治し難い」という皮膚病です。
症例はトイ・プードルです。
痒みとして目立つ部位の一つは背中です。
少しわかり難いので、赤い枠で記します。
拡大してみましょう。
この部位だけ被毛が短くなっているのがわかると思います。
何度もかじることでその部位だけ毛が短くなっています(毛が抜けているわけではない)。
続いて、右側です。
同じように赤い枠で記します。
2箇所をそれぞれ拡大しましょう。
続いて、左側です。
少し拡大してみます。
痒い部位を記してみます。
それでは初診時から1ヵ月後です。
それぞれ画像をクリックすると拡大することができます。
痒みもほとんどなくなり、均一な毛並みにもどっています。
さて、初診時に僕が下した答えは・・・・・・・・・・・「心因性皮膚病」です。
心因性皮膚病、これは精神的な問題で痒み行動を引き起こすという皮膚病です。
アレルギーでもなく、菌でもなく、寄生虫でもなく、ホルモン疾患でもありません。
客観的な検査方法もなく、明確な診断基準もありません。
また、心因性にはホルモン疾患、寄生虫疾患、細菌性皮膚炎などのように、皮膚そのもに特徴的な診た目があるわけでもありません。
典型的な場所であればまだわかりやすいこともなるのですが、今回の症例は典型的な場所ではありませんでした。
ではどのように診断するのか?
基本的なことですが、話を聞く、わんちゃんの行動をよくみる、皮膚をよくみる・・・・・たったこれだけです。
診察室に入り話をききながら、わんちゃんの動作を見る、皮膚をみる・・・15分くらいあれば頭の中には「心因性」という言葉が最上位にきます。
あとはその他の疾患を除外しながらアプローチします。
実は心因性皮膚病を診断するために、あと一つ大事なポイントがあります。
それは検査でも、診た目でもなく・・・・・・積極的な診療をしていくとだんだんとつかめてくることです。
逆に消極的な診療ばかりしていると、なんとなく診落とされがちで「癖?」とされていたりします。
「アグレッシブに美しく」
皮膚病は初診時の診極めが最も重要で、今回も確信をもってアプローチできました。
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