2018.07.19
トイプードルのアトピー・マラセチア・脂漏性皮膚炎などの痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
トイプードルは遺伝的にアトピーと脂漏がセットで起きやすい傾向があります。
この脂漏に対してどうアプローチするのか、そして脂漏が起きている理由がアレルギーなのかどうか?が治療成功のポイントだと思います。
【症例】
トイプードル 12歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇5歳まではまったく異常がなかった
〇4年前から痒み
〇お腹をかく&なめる、四肢端をなめるなど
〇全身がベタベタして、シャンプー後もべたつく
それでは初診時の状態です。
まずは頚部とその拡大です。
続いて、腹部とその拡大です。
続いて、背中とその拡大です。
初診時と1週間後に院内薬浴を実施し、初診時から3週間後の状態と比較してみます。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
痒み・皮膚炎・ベタツキ・フケほとんど抑えることができました。
飼主さまからは「劇的によくなった。掻いているのをみたことがない。」という改善です。
こういったタイプの脂漏性マラセチア性皮膚炎の場合によく陥ってしまう落とし穴について解説します。
落とし穴①「こまめにシャンプーするしかない」
たしかにシャンプーすると脂っぽいのは和らぐのですが、それは一瞬だけです。
2~3日で元にもどりますし、シャンプーし続けたらよくなるものでもないため「エンドレス」です。
改善を実感することは難しいと思います。
どうして皮脂が多いのか?に向き合う必要性があります。
落とし穴②アポキルが効かなければ他に方法がない
今の皮膚科の課題の1つだと思いますが、「痒み=アポキル」という依存のようなものがあります。
毎回書いている通りアポキルは非常に使いやすいので「とりあえずアポキル」でも問題はないのですが、アポキルで改善がなければどうするのか?を考えながら処方する必要があります。
もちろんアポキルで改善がないときに、「アポキルが効かないのか?」「アポキル以外のアプローチが足りないから効かないようにみえるのか」の2つを区別できなければいけません。
前者(アポキルが効かない)であればアポキルは不要ですし、後者であればアポキルを使いながら別の治療プランを足していけばいいのです。
この2点の落とし穴に落ちないためには次の視点を持つ必要があります。
視点①なぜ脂っぽくなるのか?
脂漏の原因が簡単にわかれば誰も苦労しないのですが、特異体質でない限りだいたいわかります。
発症年齢などを考えて、アトピーなどの免疫異常を考えます。
ここで「アレルギー」と考えてしまうと迷走の原因になるため、アレルギーという概念に縛られない方がいいです。
もちろん内服治療としてアポキルはありですし、場合によってステロイド系もOKですし、シクロスポリンという手もあります。
視点②アトピー・免疫異常の改善には?
症状を抑えるために①の投薬治療は非常に有効ですが、将来的には投薬治療を減らすための他のアプローチを併用します。
具体的には免疫異常の根本である腸管免疫に注目し、当院が開発したサプリメント「スキンケアECプラス」が非常にいいです。
長期的にみると投薬治療が随分とへります。
当院で治療している脂漏症のほとんどが1年単位で皮脂がでにくく、投薬治療がへるという結果につながっています。
症状を緩和させる投薬治療も有効ですが、体質改善のためのサプリメントも同時進行で併用していくことが改善の実感には重要だと思います。
今回紹介したわんちゃんのケアには適切な診断治療と、当院で開発したスキンケア&サプリメントが非常に有効です。
投稿者:
2018.06.30
チワワ・トイプードルに多い「皮膚が脂っぽい」「フケがでる」など痒みを伴う脂漏性&アトピー性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
梅雨も終わり夏の始まりですね。
気温・湿度の影響で皮膚トラブルも増える傾向があるため、シャンプーを含めたスキンケアには力を入れていかなけばいけません。
それでは今日の症例報告です。
【症例】
トイプードル×チワワ 3歳半 女の子
【経過】
〇8か月前から続く痒み
〇冬での改善はなく、通年性(疑い)
〇4か月漢方治療をしたものの、悪化を認める
〇当院で3件目動物病院
〇痒みは、頚をかく、前肢なめる、後肢(スネ~甲)の痒み
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは全体。
続いて、頚部とその拡大。
続いて、右前肢です。
続いて、左前肢です。
続いて、胸部とわきの拡大です。
全体的に皮脂が多くべたついており、慢性的な皮膚炎により皮膚が硬く分厚くなっています。
初診から時に薬浴して3週間後の2回目の再診時のときとの比較をみてみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
初診時の薬浴前に毛をカットした影響で被皮が少なくみえますが、
①皮脂がほとんどない(サラサラ&臭い無し)
②皮膚がやわらかくなっている
③皮膚炎がほとんどない
④色素沈着の減少
が認められています。
もちろん肝心の痒みもほとんど解消されました。
トイプードルとチワワには遺伝的に「アトピー」と「脂漏」が出やすい傾向があります。
こういった症例ではスキンケア&投薬治療をメインとして、再発防止(体質改善)のためにサプリメントという3つのアプローチが効果的です。
今回の皮膚科診療でのポイントとしては「治療効果の予測」かと思います。
病気に対するアプローチ方法にはさまざまな考え方があるため、治療に正解はないのですが「痒みを確実、かつ最短で抑える治療法」を提案できたことではないかと思います。
医療にはインフォームドコンセントという言葉があり、丁寧な説明をして治療プランのいいところ・悪いところの説明の上で飼主さまに同意・選択してもらうことがいいとされていて、飼主さまが治療法を選ぶことがいいような風潮がありますが、「こうしたら確実によくなりますよ」というベストを選択してもらうことも適切なインフォームドコンセントだと思います。
そのため「やりたいこと、やりたくないことなど拘りがあれば希望をききますが、『おまかせ』がベストです」と伝えることが多いです。
今回は過去の東洋医学とは正反対の西洋医学でのアプローチで、飼主さまの不安もあったかと思いますが、医療には「経験」が非常に重要なため「おまかせ」が一番いい選択肢だと思います。
投稿者:
2018.06.05
トイプードルに多くみられるアロペシアX(毛周期停止)、アトピー・アレルギー、癖やストレスなど精神的な要因を含ん心因性の痒い皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
トイプードルは皮膚病が多いわけではないと思うのですが、トイプードルがゆえの遺伝的体質から難治性の皮膚病になってしまうことがあります。
「難治性」と一言にいっても色々とあるのですが、本当の意味で治りが悪いことはほとんどありません。
多くは典型的な体質のため、1つずつ的確なアプローチをしていくと非常に綺麗に改善します。
「よくならない」ということで当院を受診する飼主さまから過去の治療歴を伺うと、このアプローチで躓く「陥りやすいポイント」が見えてきます。
〇アポキル
アポキルを使って痒みが止まらないと次の選択肢がない
〇抗生物質
抗生物質で改善が認められないときに「ずっと同じものを服用し続ける」「効かないため抗生物質を処方しない」「抗生物質を変更しつづける」
〇食事療法
食物アレルギーを疑い魚、ポテト、動物性蛋白なし、アミノ酸系・・・・色々試す
こういった点は陥りがちなポイントで、迷走する原因になります。
アポキルが効かないときはアポキルが効く痒みとは異なる痒み原因へのアプローチを考えるとうまくいきます。
抗生物質が効かないときは「抗生物質が効く病変なのか再検討」「抗生物質が効くのか検査」「そもそも菌が増える理由はどこにあるのか?」を考えていくとうまくいきます。
食事療法は「そもそも食物アレルギーなのか?」から考えていく必要があります。
要するに皮膚病が治らない原因は1つではなく複数、同時にすべてへのアプローチがそろわないと改善しないこともあります。
今回紹介する症例は、そんなわずかなズレの積み重ねでよって難治性になっていた症例です。
【症例】
トイプードル 4歳半 男の子
【経過】
〇4ヶ月前から皮膚トラブル(痒み&脱毛)
〇手舐め、足舐め、口唇をかく、繰り返す背中の湿疹
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは顔の正面。
続いて、口唇(左)です。
続いて、右側。
続いて、頚部です。
続いて、胸部とその拡大です。
続いて、腹部です。
続いて、背中とその拡大です。
続いて、側面とその拡大です。
初診時から約3ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗に改善しました。
改善点①毛並み
全体的に薄毛でしたが、フワフワの状態にもどっています。
トイプードルの薄毛ではアロペシアX(毛周期停止)か、その他のホルモン異常かいくつかありますので各種検査が必要です。
時に難しい判断になる検査結果となり悩むことはありますが、それなりのアプローチ方法がありますので改善の余地は高いと考えています。
改善点②湿疹
特に薄毛の部分(胴体)に全体的に認められた湿疹(膿皮症)ですが、抗生物質をやめてもほぼコントロールできています。
※現在初診から半年以上経過しましたが、湿疹の再発はほぼなし
改善点③脂漏
口唇、四肢を中心に「かひ」を認めましたが、綺麗な状態を保っています。
改善点④手舐め・足舐め・痒み
基本はアトピーでいいのですが、アトピー単独であれば過去のシクロスポリンやステロイドで十分に緩和できていたはずです。
改善できなかった理由は心因性なのですが、心因性だけで痒かったわけではないため、アトピー対策と心因性対策の両方を行えばバランスが取れます。
しつこい手舐め・足舐めは心因性へのアプローチにより改善しました。
トイプードルは他の犬種に比較して薬の反応が非常にいいタイプの子が多いので、アプローチ方法さえ間違わなければかなりの確率で治療成績がよくなります。
トイプードルの皮膚病治療でお困りの方は当院を受診してみてください。
なお今回のトイプードルのアトピー、脂漏、心因性、湿疹には当院が開発したスキンケア&サプリメントは非常に効果的です。
当院が開発したスキンケア&サプリメントは以下のオンラインショップからお買い求めいただけます。
脱毛はスキンケア&サプリメントでは改善せず、アトピー・脂漏・湿疹の治療成績にも関わりますので、必ず適切な投薬治療を併用しましょう。
投稿者:
2018.06.04
トイプードルのアトピー・アレルギーなど、アポキルが効かない痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院の高い治療成績を支えるの特徴の1つは「心因性の診断と治療」と考えています。
というのも心因性は数値化できる検査がないため、今の皮膚科診療から置き去りにされており、治療成績に差が出る原因疾患の一つになっています。
逆にいうと、この心因性掻痒症に取り組むことで治療成績は飛躍的に向上します。
今日紹介する症例はそんな典型的な心因性掻痒症のトイプードルのわんちゃんです。
【症例】
トイプードル 4歳半 女の子
【経過】
〇1歳のころから痒み発症
〇季節性はない
〇ステロイドは少しだけ効果あり
〇シクロスポリンによる改善効果はなかった
〇一番痒みは足の裏を舐める(手舐め、足舐め)、2番目は腕を噛む&舐める
〇鼻回りの痒み、目の痒み、耳はたまに
〇背中も噛む
〇食物アレルギー対策として病院療法食での食事療法継続中
それでは初診時の状態をみてみましょう。
続いて、頚部~前肢です。
続いて、右前肢の腕の内側です。
続いて、左前肢の腕の内側です。
続いて、右前肢端です。
続いて、右前肢端です。
続いて、背中です。
同じく背中のよく噛んでいる部位の拡大です。
続いて、後足の裏、左右です。
それでは初診時から約2か月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
この写真では大きな変化がないように見えますね。
続いて、右前肢です。
元々赤みがつよくなかっためこの右前肢も変化はわかりにくいかもしれません。
続いて左前肢です。
この左前肢は赤みもなくなり、毛並みもよくなったのがわかると思います。
続いて、背中のその拡大です。
写真ではわかりにくいですが、噛みちぎって毛並みがわるかったものがきれいになりました。
もちろん背中の痒みはゼロになりました。
最後に両後肢に裏です。
綺麗に改善しました。
当院の症例の中では「見た目は重症ではない」のですが、ステロイドや免疫抑制剤を使用して改善しないというのは難治性の部類に入ると思います。
心因性の搔痒にはステロイド、アポキル、免疫抑制剤(シクロスポリン)といった一般的な皮膚科の治療薬での反応が悪く、心因性への直接的な投薬治療をしなければ改善しないままです。
もちろん心因性の痒みだけしかないわけではないため、治療は複数のアプローチを併用は必要です。
肝心の心因性に対する治療ですが、一つは当院が開発したリラックス系(心因性・癖対策)のサプリメント、ヒーリングケアLFプラスです。
初診時にアポキルとこのヒーリングケアLFプラスを処方しただけですが、2回目の診察までには痒みの大半は消失していました。
そしてアポキルとヒーリングケアLFプラスの2つで抑え切れなかった痒みに追加(初診時にすでに伝えていた予定通り)の処方を行い、ほぼすべての痒みが消失しています。
当院の症例報告で時々でてくるこのヒーリングケアLFプラスですが、アポキルとの相性が非常にいいです。
特にトイプードル、マルチーズ、ヨーキー、ポメラニアン、シーズー、チワワなどの小型犬腫の手舐め・足舐め・腕噛み・腰噛みにはかなり効果的です。
アポキルが多少きくけど、残った痒みに何かプラスというときにお勧めです。
このヒーリングケアLFプラスにはアトピーやアレルギーの緩和、免疫系への強化というメリットもあるため、毎日使うことでアポキルを減らすことができるわんちゃんはかなりいるのではないかと思います。
今回紹介したトイプードルのわんちゃんでもアポキルを併用しましたが、今は週2~3回の頓服的服用でほぼ痒みは落ち着いています。
適切な診断・投薬治療の上での使用をお勧めしていますので、お困りの方はぜひ当院を受診してください。
紹介したヒーリングケアLFプラスは当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
投稿者:
2018.05.11
ポメラニアンやトイプードルに多い脱毛症「毛周期停止(アロペシアX)」の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
かつてはポメラニアンに圧倒的に多く「ポメハゲ」といわれていたこともあるアロペシアX(今では毛周期停止)についてです。
この毛周期停止(アロペシアX)ですが、「命に関わらないため無治療」という選択肢が浸透していることと、細かい原因が分かっていない、確実な治療方法の解明が不十分ということもあり、今の皮膚科医療ではあまり治療に力が入れられていません。
治療に関してはさまざまな価値観があることを十分に考えつつですが、当院ではかなり積極的に治療を行っています。
今回は近畿から来院されているトイプードルの毛周期停止(アロペシアX)の症例です。
実は大分前にも一度掲載しています。
まずはそのときのブログを紹介しますので、ぜひ目を通してください。
1回目の症例報告 平成29年2月25日 アロペシアXと診断されたトイプードルの脱毛症
このブログの後半でも解説した通りですが、その後順調に発毛し続け・・・とはいかず、急に脱毛が再発し初診時よりさらに毛が少なくなってしまいました。
もちろん想定がいではなく、初診時の想定の範囲内でしたので、改めて治療方針を組み直しました。
それが平成29年5月、当初の予定通り毛周期停止(アロペシアX)に対する積極的な治療に切り替えました。
まずは初診時の状態を改めてみてみましょう。
まずは症例の正面から。
続いて、頚部です。
続いて、胸部です。
続いて、腹部です。
続いて、右側面全体です。
この右側面の胸部拡大です。
同じく右側面の腰~大腿部の拡大です。
続いて、左側面とその拡大(胸部・腰背部)です。
続いて、背中全体です。
最後に、大腿部尾側です。
この初診時から1年半後、治療方針変更から11ヵ月後のつい先月の状態との比較をみてみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
非常に美しい被毛が再生してきました。
この症例を解説していきます。
まず1点目、検査結果が甲状腺ホルモン濃度の低下(検出限界未満)があったことから仮診断した「甲状腺機能低下症」についてです。
この脱毛が甲状腺機能低下症によるものであれば、甲状腺ホルモン製剤の投与だけで完全によくなると考えています。
予測通りとはいえ結果的に一時的な発毛しかなかったため、この症例の脱毛は甲状腺機能低下症によるものではなかったと考えるのがベターと思います。
ただ「甲状腺機能低下症ではない」とまではいえませんし、ユーサイロイドの可能性もありますので、しばらく甲状腺に関してはグレーのままです。
今後は白黒はっきりつけてみたいな、とは思います。
続いて2点目、甲状腺ホルモン製剤による発毛について。
完全に発毛しなかったとはいえ、一時的にはかなり発毛が認められました。
これは甲状腺ホルモン製剤が発毛を促したことを示唆しています。
甲状腺機能低下症ではない健康なわんちゃんが甲状腺ホルモン剤を服用することはリスクがあるため安易に服用すべきではないのが医療ですが、モニターしながら治療の1つに入れ込むのは選択肢の1つだと思います。
最後に3つ目、アロペシアXへの積極的な治療について。
治療から11ヶ月という長い期間をおいての発毛でしたが、だいたいアロペシアXの治療結果は1年前後かかるため、今回の症例の脱毛もアロペシアXによるものだったと考えられます。
大事なことは甲状腺ホルモン濃度の低下をみて「甲状腺機能低下症」を最終診断とせず、初診時の目でみた第一印象(先入観)を検査結果より重要視することです。
検査が100%であれば検査前提ですすめればいいのですが、検査はときに関係ないことをさも関係しているかのような誤解をさせますので、自分の眼を信じる方がいいこともあります。
木をみて森をみずにならないよう、常に「この検査結果はこの症例の本当の姿を評価しているのか?」を診極めなければいけません。
獣医師は検査をするのが仕事ではなく、検査結果を予測して適切に治療に生かすことが仕事です。
今回は近畿からの通院でしたが、一度も欠かすことなく1年半継続して治療を続けた飼主さまには本当に感謝です。
ご期待に沿うことができて本当にうれしく思います。
この毛周期停止(アロペシアX)の治療ですが、当院ではしっかりとした診断と説明の上で積極的な治療も提供しています。
お困りの方は一度当院受診をご検討ください。
投稿者:
2018.05.06
ポメラニアンとトイプードルに多い脱毛症「毛周期停止(アロペシアX)」の診断・治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
毛周期停止(アロペシアX)は古くから知られた病気ですが、「命に関わらない」という理由で治療が十分に行われていません。
当院でもこういった点は十分に説明しつつ、治療にはかなり積極的に取り組んでいます。
今回紹介するわんちゃんはちょっと特殊な条件で当院を受診された脱毛症のトイプードルの症例です。
【症例】
トイプードル 11歳(初診時) 男の子(去勢済み)
【経過】
〇7才以降での脱毛発症
〇食欲増加・多飲・脱毛を認め、ALPなどの各種検査結果にて「副腎皮質機能亢進症(クッシング)」の診断を受け、トリロスタンにより治療を受けている(約7~8才から)
〇治療を続けるも年々脱毛が進行している
初診時の状態をお見せしたいのですが、手元のデータで見つけることができず・・・
当院受診から2年ほど経過して「脱毛がさらに進行した状態」の写真を飼主さまにいただきましたので紹介します。
当院受診時にはまだあったのですが、そこから脱毛進行は止まらず写真のように胴体の毛はほとんど抜け落ちてしまいました。
ただ治療は継続しつつ、初診時から2年3ヶ月経過したとき、はじめて毛の再生が始まりました。
再生が始まってから約半年、初診時から2年9ヵ月後の状態をみてみましょう。
初診時との比較ではないのですが、脱毛が進行した状態との比較を掲載しておきます。
14歳にしてここまで改善するとは思いませんでした!
さらに、慢性的に悩んでいた痒みも随分と改善しました。
やはりアロペシアは皮膚コンディションの低下を起こしますので、膿皮症や痒みなどの悪化因子になります。
当院では毛を生やすという意味だけに注目するのではなく、アロペシアによって低下した皮膚コンディションの改善を目標に、例え命に関わらなくても治療の意味はあると考えています。
ここで今回の症例を分析してみたいと思います。
当院を受診する前の病院ですでに「副腎皮質機能亢進症(クッシング)」と診断を受け、治療中という状態で当院の初診でした。
当院で考えたのは、
①クッシングは正しい診断か?
②アロペシアがあるのか?
です。
まず①のクッシングの有無ですが、過去の症状と検査結果を聞く限りでは十分にクッシングを支持する内容でしたので、当院で改めて「クッシングではない」とする理由は見つかりませんでした。
ただ、クッシングであればここまで脱毛することもそうないため、②のアロペシアを考慮して「クッシングがあるかどうかはわからないが、アロペシアも存在する」としました。
クッシングがあってもなくてもアロペシアの治療がクッシングの治療と重なるため詰めるのはやめて、治療内容をよりベターなものへと変更していきました。
治療結果としては「2年3ヶ月間は脱毛進行、2年4ヶ月目から発毛」でしたので、反応は非常に遅かったという分析です。
クッシングだけでアロペシアがなければここまで時間がかかることはないと思いますし、クッシングであれば年単位でみると徐々に減るため、脱毛に関してはアロペシアの要素が強かった脱毛疾患と判断できます。
当院受診までが長いアロペシアのわんちゃんほど発毛に時間がかかるため、この症例は発毛までに長くかかったと思われます。
逆にここまで発毛すると「クッシングは本当にあるのか?」という疑問も再び湧いてきますが、ここの判断は非常に難しいと思います。
ポメラニアンやトイプードルの毛周期停止(アロペシアX)の治療についてはデリケートなため色々考えることはあるのですが、当院ではこのように「飼主さまが希望を持つ限りあきらめない」を徹底しています。
ポメラニアン・トイプードルの脱毛疾患「毛周期停止(アロペシアX)」の治療でお困りの方は一度当院までご相談ください。
投稿者:
2017.11.27
トイプードルのアトピー・アレルギーなど、手舐め・足舐めの治療で高い治療成績を残している四季の森どうぶつクリニックです。
先日は脂漏性マラセチア性皮膚炎のトイプードルを紹介しましたが、今日は異なるタイプの症例報告です。
トイプードルはシーズーやフレンチブルドッグよりも多彩な表現形をもった遺伝的素因をもっていますので、「トイプードルのどのタイプか?」を診極めなければいけません。
今日紹介するタイプもかなり非常に多く、世間では難治性皮膚炎であてはまる症例です。
【症例】
6歳 トイプードル 女の子(避妊手術済み)
【経過】
〇1年前からつづくかゆみ・赤み・脱毛
〇足先の痒み、口唇の痒み
〇手作り食事療法で改善しない
〇皮膚科を受診するも「特に問題ない」で治療プランは提案されず
それでは初診時の状態です。
まずは口唇です。
続いて前肢端。
この初診時から7週間後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
赤み・フケもなくなり、毛並みもよくなりました。
肝心の痒みもほぼなし、手をなめなくなったということです。
症状の改善に7週間かかったわけではなく、症状は治療8日後の2回目の診察時にはほぼ消失していました。
現在は痒み止めのアポキルを半分に減らしても全くぶりかえすことがなく、頓服服用という治療レベルに到達しました。
今回の症例の治療で非常に有効だったのが当院のサプリメント「ヒーリングケアLFプラス」です。
トイプードルやシーズー、チワワ、ポメラニアン、ヨーキー、ダックスフンドなどの犬種と特に相性がいいです。
このヒーリングケアLFプラスは当院オンラインショップでお買い求めいただけます。
また提携している以下の動物病院でも診察の上、処方を受けることが可能です。
京都市 よこた動物診療室
静岡市 あん動物病院
投稿者:
2017.11.26
トイプードルのアトピー・アレルギーや脂漏症の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
この1週間は大阪の学会参加、京都での遠隔診療と仕事を詰め込みすぎてブログ更新が滞ってしまいました。
遠隔診療については色々報告したいこともあるので、また改めて記事にしたいと思います。
今日はトイプードルの皮膚病治療の症例報告です。
【症例】
4歳 トイプードル
【経過】
〇1年前から継続する痒み
それでは初診時の状態です。
薬浴治療のために初診時に毛をカットしたため、全身カット後の状態を紹介します。
まずは全体像。
続いて、頸部とその拡大。
続いて、右前肢。
続いて、左前肢。
続いて、胸~腹部。
続いて、右膝の内側の拡大。
続いて、左内股の拡大。
脛~カカトの拡大。
それでは初診時から6週間後の状態と比較してみましょう。
もちろん毛が生えていますが、毛並みのよさ、そして毛をかきわけた皮膚コンディションの比較に注目してください。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
臭い、フケ、痒みともにほぼパーフェクトの改善が認められました。
トイプードルの皮膚病がみなこのタイプではありませんが、トイプードルの体質の1つとして非常に多い典型例といえます。
治療は非常に簡単でシンプルなアプローチで、投薬治療・スキンケア・サプリメントです。
スキンケアで重要なのはオイルとシャンプー、長期的な体質改善のためにはサプリメントがかなり効果的だと実感しています。
今日紹介したわんちゃんもすでに治療経過半年ほどすぎていますが、投薬治療を減らしつつもぶり返しにくい体質になっています。
当院で開発したスキンケア商品とサプリメントはオンラインショップでもお買い求めいただけます。
院内での薬浴で短期間で改善しますが、メールと写真で継続治療する遠隔診療でも十分改善できるタイプです。
お困りのわんちゃんはご相談ください。
なお、アレルゲン対策としての食事療法は行っておりません。
投稿者:
2017.10.14
トイプードルの痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ちょうど1ヶ月前にトイプードルの皮膚病で「以前の病院で原因不明と言われた」というわんちゃんについて記事を書きました。
「治療後にこれだけよくなりました」ではなく、「今日来院されて、今日から治療します」という症例紹介でした。
9月15日にUPしたブログ記事 【0.1秒の診極め】原因不明の痒み
心因性と診断し、2週間後、4週間後(先日)と受診していただき、予測通りの改善をみとめましたので治療後を紹介します。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
局所であるため、その拡大も比較して見ましょう。
右半身の大腿部外側にも同じような病変がありましたので、その比較も紹介します。
ガジガジとかじっていたため、局所的に毛がなくなっていましたが、4週間でほぼ100%の毛並みに戻りました。
前回の記事で書いたように診断は「心因性の痒み」です。
診断のための有効な検査は一切無く、「経験」だけです。
今回治療比較が4週間後の写真になっていますが、2週間後はどうだったのか?というと、ここが意外と興味深いポイントです。
実は2週間後の時点で飼主さまはこうおっしゃっていました。
「特にかわらず痒そう」
ただ、僕の診た目での診断は
「よくなってます。診断は心因性、方向性は変えず1種類お薬を増やしましょう」
でした。
その次の3回目の診察が上の写真の通りで、明らかな改善が認められています。
ポイントは3つ、
①初診時の診断
原因が心因性の場合、その他の治療アプローチでの改善はほぼ見込めません。治療方針のブレをさけるためにも初診時に把握するのがベストです。
②押し切る治療方針
飼主さまの見ていることと、獣医師が診察で診なければいけないポイントが必ずしも一致するとは限りません。そして治療方針が合っていることと、飼主さまの評価がリンクするとも限りません。
飼主さまの「よくなっていない」という判断は一つの評価として受け止めますが、診るべきポイントを押さえると「改善している」と評価することは可能です。ブレてはいけません。
③微調整の手段を準備しておくこと
今回は初診時にすでに「再診時に改善が不十分だったときの次のプラン」を用意していました。その改善のための治療プランが初診時の治療アプローチの変更ではなく、「追加治療」であることが初診時にわかっていることがとても重要です。
基本的で簡単なようですが、本当はかなり大変です。
それでは今回の治療で必須のサプリメントを紹介します。
です。
トイプードル、シーズー、ヨークシャーテリア、ダックスなどのわんちゃんで非常によく使っています。
こちらの商品は以下のオンラインショップからお買い求めいただけます。
投稿者:
2017.09.15
トイプードルの痒みの診断・治療に力を入れている犬の皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日紹介するのは本日来院されたばかりのわんちゃんのため、治療後の比較写真はありません。
実際よくなるかどうかは別ですが、診断が非常に早かったのでご紹介しようと思います。
【症例】
トイプードル 1歳弱 女の子
【経過】
〇3ヶ月前から繰り返すかゆみ
〇他院受診するも「原因不明」
〇抗生物質とステロイドで緩和されるも、投薬中止でぶり返す
〇処方&再発を繰り返したため、原因追及のために当院受診
それでは今日の初診の状態を紹介します。
一見普通のトイプードルちゃんですね。
早速痒みがでている部位をみてみましょう。
この上の写真では主に3つの部位が痒みをだしています。
2箇所は腹部の側面、脱毛している?ようにみえる部位です。
拡大してみましょう。
上の写真で2箇所脱毛してる?ようにみえる場所がわかりますか?
そのうちの1箇所を拡大してみましょう。
かなり集中的にかじっているため、地肌がみえています。
もう1箇所は右後ろ足の側面、太もも~膝~アキレス付近を広範囲にかじっています。
拡大してみましょう。
見慣れていないとわかりにくいですが、まわりの毛よりもみじかくなっているため、相当は範囲をかじっているのがわかります。
それでは反対の右半身をみてみましょう。
左半身と異なり、最近になって1箇所痒がるようになったそうです。
まずは痒みの強い左半身の2箇所の病変部と同じような部位を拡大してみましょう。
まったく何もありません。
それでは右半身の痒みが強い部位を拡大してみましょう。
ここだけ集中的にかじっているのがわかります。
一応顕微鏡で菌がいないか、寄生虫がいないか・・・とみますが、実は検査をするころには診断は決まっていました。
そう、「心因性」です。
心因性の診断を下すポイントになったのは各種検査ではなく、診察室でわんちゃんに近づいたときに見せたわずかなリアクションがきっかけです。
その0.1秒ほどのわずかなリアクションで「あ、この子の性格は心因性の掻痒を引き起こすタイプだ」と確信できました。
もちろん皮膚をよくみることでも心因性の特徴が数多くでていますので、診断は非常に簡単です。
カルテ情報をみて、飼主さまからお話をきいて、わんちゃんをチラッとみて・・・心因性の診断はここでほぼきまります。
簡単とはいいましたが、心因性の診断には根拠がありません。
あえていうなら「根拠は経験値」、検査がないがゆえに経験で判断するしかありません。
正しいかどうかの判定は難しいのですが、きっと改善すると思います。
参考までにこういった症例には3つほどの治療プランを提案するのですが、そのうちの1つが最も重要なヒーリングケアLFプラスです。
あと2種類は症状にあわせて併用しながらコントロールしていきます。
トイプードルやシーズーには非常に相性がいいため、きっといい結果がでると思います。
オンラインショップでお買い求めできますので、同じような症状の方はぜひお試しください。
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