2018.05.06
ポメラニアンとトイプードルに多い脱毛症「毛周期停止(アロペシアX)」の診断・治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
毛周期停止(アロペシアX)は古くから知られた病気ですが、「命に関わらない」という理由で治療が十分に行われていません。
当院でもこういった点は十分に説明しつつ、治療にはかなり積極的に取り組んでいます。
今回紹介するわんちゃんはちょっと特殊な条件で当院を受診された脱毛症のトイプードルの症例です。
【症例】
トイプードル 11歳(初診時) 男の子(去勢済み)
【経過】
〇7才以降での脱毛発症
〇食欲増加・多飲・脱毛を認め、ALPなどの各種検査結果にて「副腎皮質機能亢進症(クッシング)」の診断を受け、トリロスタンにより治療を受けている(約7~8才から)
〇治療を続けるも年々脱毛が進行している
初診時の状態をお見せしたいのですが、手元のデータで見つけることができず・・・
当院受診から2年ほど経過して「脱毛がさらに進行した状態」の写真を飼主さまにいただきましたので紹介します。
当院受診時にはまだあったのですが、そこから脱毛進行は止まらず写真のように胴体の毛はほとんど抜け落ちてしまいました。
ただ治療は継続しつつ、初診時から2年3ヶ月経過したとき、はじめて毛の再生が始まりました。
再生が始まってから約半年、初診時から2年9ヵ月後の状態をみてみましょう。
初診時との比較ではないのですが、脱毛が進行した状態との比較を掲載しておきます。
14歳にしてここまで改善するとは思いませんでした!
さらに、慢性的に悩んでいた痒みも随分と改善しました。
やはりアロペシアは皮膚コンディションの低下を起こしますので、膿皮症や痒みなどの悪化因子になります。
当院では毛を生やすという意味だけに注目するのではなく、アロペシアによって低下した皮膚コンディションの改善を目標に、例え命に関わらなくても治療の意味はあると考えています。
ここで今回の症例を分析してみたいと思います。
当院を受診する前の病院ですでに「副腎皮質機能亢進症(クッシング)」と診断を受け、治療中という状態で当院の初診でした。
当院で考えたのは、
①クッシングは正しい診断か?
②アロペシアがあるのか?
です。
まず①のクッシングの有無ですが、過去の症状と検査結果を聞く限りでは十分にクッシングを支持する内容でしたので、当院で改めて「クッシングではない」とする理由は見つかりませんでした。
ただ、クッシングであればここまで脱毛することもそうないため、②のアロペシアを考慮して「クッシングがあるかどうかはわからないが、アロペシアも存在する」としました。
クッシングがあってもなくてもアロペシアの治療がクッシングの治療と重なるため詰めるのはやめて、治療内容をよりベターなものへと変更していきました。
治療結果としては「2年3ヶ月間は脱毛進行、2年4ヶ月目から発毛」でしたので、反応は非常に遅かったという分析です。
クッシングだけでアロペシアがなければここまで時間がかかることはないと思いますし、クッシングであれば年単位でみると徐々に減るため、脱毛に関してはアロペシアの要素が強かった脱毛疾患と判断できます。
当院受診までが長いアロペシアのわんちゃんほど発毛に時間がかかるため、この症例は発毛までに長くかかったと思われます。
逆にここまで発毛すると「クッシングは本当にあるのか?」という疑問も再び湧いてきますが、ここの判断は非常に難しいと思います。
ポメラニアンやトイプードルの毛周期停止(アロペシアX)の治療についてはデリケートなため色々考えることはあるのですが、当院ではこのように「飼主さまが希望を持つ限りあきらめない」を徹底しています。
ポメラニアン・トイプードルの脱毛疾患「毛周期停止(アロペシアX)」の治療でお困りの方は一度当院までご相談ください。
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