2015.10.10
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
深まる秋の夜長に虫の音を聞きながら・・・・・といえばお洒落なはじまりですが、最近寒いので窓をしめているためあまり聞こえません(笑)
それでは先日のブログ、時には診極めの甘さも~診・誤る~の続きです。
まずは初診時の状態です。
タイトルにも「診極めの甘さ」と書きましたが、わずか1ヶ月でここまで改善しました。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
顔の痒みのコントロール、数年ぶりの顔の被毛の再生、四肢端の痒みコントロール、胸部皮膚炎の改善・・・
こうみるといつも通り初診時の判断に大きなミスはなかったようにみえなくもありませんが、問題はここからです。
初診から2ヵ月を越えたころから背中の痒みと脱毛が・・・
これは自然と毛がぬけているのではなく、痒みで噛んだり掻いたりすることで毛並みが悪くなっています。
胸の拡大です。
続いて、右大腿部の尾側と、その拡大です。
ニキビのように膿をもった湿疹がみとめられます。
確かに初診時にはなかったので、一概に初診時の判断が間違っていたとまでは思わないのですが、なにせここから苦戦しました。
初診時に3ヶ月時点で苦戦していることなんて想定していなかったため、そういった意味で「想定外」でした。
このように一見改善したようで、あとから苦戦するようなことは稀なのですが、皮膚病が常に1つの原因、病態からきているとはかぎりませんので、こういうときは「一から再スタート」です。
具体的には「過去の自己否定」、初診時に自分が下した診断すら自ら否定して捨て去ることが必要です。
それができなければ過去にとらわれたまま前にすすめません。
次回も続きます。
投稿者:
2015.10.09
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
晴れた日も随分と涼しく、夜は冷えるようになりましたね。
さて、今日はいつもと違った症例報告をします。
この1~2年は「診極め」という言葉を使い、初診時にいかに治療方針・ゴールまでの軌跡を描くか・・・と書いてきました。
確かに十中八九、初診時の想定どおりにすすみますが、実はすべての症例で「診極め」ができているわけではありません。
時に「判断できない」ということもあるのはまだよしとして、中には「診誤る」ことも稀にあります。
今回はそんな「初診時に診誤った症例」を紹介します。
初診時の状態、まずはお顔から。
続いて頚部です。
続いて、胸部とその拡大です。
続いて前肢端です。
過去に数年間、何件もの動物病院でさまざまな治療を受けられていたのですが、詳細は次回に。
この初診の状態から1年。
1年間まったく改善がなかったわけではないのですが、少しずつ、少しずつ、修正に修正を重ねてさまざまなチャレンジもして・・・
結局のところ初診時に描いた軌跡とは異なるアプローチに落ち着きましたので、初診時の診立てが悪かったということになります。
自分の診極めの甘さの反省もそうですが、1年間もの長い期間治療の機会を与えてくださった飼主さまに感謝です。
次回は改善をご紹介します。
投稿者:
2015.09.07
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
最近は雨が続いていますね。
今日は先週に紹介したポメラニアンの症例の続きです。
8月31日の初診時の状態を当日紹介し「何をすべきか」とお話したので、今日2回目の再診時の状況を紹介します。
【症例】
ポメラニアン 1歳半 男の子
【病歴】
〇2ヶ月前から痒みを伴う皮膚病
〇抗生物質、ステロイド(0.5mg/kg)を継続するも改善せず
〇食事療法(アミノペプチド)継続中
まずは初診時の状態です。
痒みの強い頚部の状態です。
わかりにくいため、毛をかきわけてみましょう。
こういったときはしっかりと病変部を確認するため、そして治療のためにも毛をカットした方がいいです。
頚部のやや右側の拡大です。
続いて、右上腕~方にかけての拡大。
頚部の左側の拡大です。
続いて、頚部を右側から。
上の写真の拡大です。
続いて、左後ろ足の内側(膝の内側)。
上の写真の拡大です。
前回の記事でこう記しました。
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今日最優先で行うべき治療法は?
そして今後予測される治療方針は?
すべて初診時に判定可能です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そこから1週間後の今日を比較してみましょう。
写真をクリックを拡大してみることができます。
初診時に行った検査は2回目の本日お伝えしました。
きれいに改善させてから原因を伝えるというなんとも不思議な流れですが、当院ではめずらしくありません。
よく「検査してみないと原因わからないですよね?」と飼主さまからいわれますが、今回のように「原因が特定されていなくても治療法はわかる」ということは珍しくありません。
むしろ初診時に治療法がわからなければ、検査してもわからないとすら思います。
初診時には「原因を追究する」とともに、「治療法を導くこと」がとても重要です。
当院の初診を受けられる方には今回同様に、初診時に「必要な治療はこうでしょう!」とお伝えするようにしています。
投稿者:
2015.08.31
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
本日は前回の記事に引き続き、2回目のブログ更新です。
今日は皮膚科の初診が4件あり、1件を先ほどの記事で紹介しました。
今回は2件目の紹介です。
先ほどの中高齢のわんちゃんと異なり、まだ1歳半の若いポメラニアンです。
2ヶ月間抗生物質とステロイドを服用してきましたが、痒みが改善しないということで受診されました。
被毛を書き分け撮影してみましたが、若干わかりにくいところですね。
病変を正確に把握するためには思い切ってカットすることも重要です。
まずは頚部を中心に。
頚部中心の拡大です。
続いて、右前肢のワキ~肩のあたりの拡大です。
続いて、頚部の右側面から。
右側面の拡大部分です。
ラストは左後肢の膝から下の部位(内側)、とその拡大写真です。
2ヶ月のうち半分以上の日数で0.5mg/kgのステロイドを服用しても痒みが止まりませんでした。
今日最優先で行うべき治療法は?
そして今後予測される治療方針は?
すべて初診時に判定可能です。
投稿者:
2015.08.25
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
休診日にあわせて胃腸風邪でダウン・・・・・まさに休息日となりました。
「めずらしく・・・」とでもいえれば仕事の疲れ?などいえるのですが、年に何度も熱を出すので基本的にちょっと病弱?
しかし食欲もしっかりあるせいか麻衣子先生もそんなに心配してくれません(涙)
休診日明けには元気になっているでしょう!
さて、最近ちょっと怠っていた症例報告です。
最近のマイブームは「いかに薬をつかわずに治すか?」です。
もちろん使用するのは当院にしかないスキンケア&サプリメントです。
何度もいうように医療を超えるわけではありませんし、万能ではないため、「優先順位は何か?」を診極める必要性がありますが・・・・・10中8,9はずしません。
先日来院されたわんちゃんでも診た瞬間「いける」と判断できたので、あえて初回に投薬治療を選択せずに治療スタートしました。
症例はフレンチブルドッグです。
初診時の状態をみてみましょう。
右のワキです。
大腿部の尾側からの写真です。
その拡大、左大腿部です。
同じく右大腿部です。
ここの状態から12日後の状態をみてみましょう。
写真をクリックすると拡大してみることができます。
右のワキ。
次は大腿部を尾側からみた写真です。
たった12日でここまで綺麗になりました。
診断名は細菌性皮膚炎、「膿皮症」です。
一般的な治療法としては「抗生物質の服用」ですが、今回の症例ではあえて処方しませんでした。
それは「スキンケアとサプリメントでいける!」と確信があったからです。
フレンチブルドッグの皮膚病には非常に特徴があります。
その一つがこの湿疹、細菌性皮膚炎「膿皮症」です。
皮膚で細菌が増えることで湿疹ができます。
治療で抗生物質を選択する理由は「抗生物質が皮膚に到達して、皮膚で増えている細菌を抑えることができるから」です。
しかし多くの症例で「再発」が認められます。
抗生物質は治療法として最適か?????
毎回お話していますが、もうみなさんおわかりですよね?
抗生物質では何か足りません。
そう、「なぜ皮膚で細菌が増えたのか?」をまったく無視したのが抗生物質での治療です。
抗生物質は増えた菌を抑えます。
確かにこの症例に抗生物質を処方すれば、同じような改善があったと思われます。
でも細菌が増える原因はまったく考慮されていません。
それに比べて当院のスキンケア&サプリメントは皮膚を正常化するために必要なケアができるように設計されています。
重症化している症例ではどうしても投薬治療を最優先性にするため、スキンケアとサプリメントは「補助と再発予防に」という目的で後から使いますが、本当はこの程度の皮膚病なら治してしまうほどの力があると実感しています。
基本はフレンチブルドッグ、イングリッシュブルドッグ、シーズーをメインにしていますが、当院ではトイプードル、チワワ、ヨーキーなどさまざまな犬種でも使用しています。
皮膚トラブルでお困りの方はぜひご利用ください。
すでに当院で通院されている倍以上の方が、オンラインショップで継続使用されています。
また、当院では遠方の方のために「遠隔診療」にも取り組んでいます。
遠隔診療とは、1回目の初回に実際の診察を行い、2回目以降を写真とメールで継続治療する診療です。
スキンケアとサプリメントが万能ではないため、医療とセットにすることが最も重要と考えています。
すでに石川県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県と遠方からの遠隔診療を行っています。
すべての皮膚疾患が遠隔診療の対象になるわけではありませんが、シーズ、ブルドッグ犬種(フレンチブルドッグ、イングリッシュブルドッグ)を中心に、HPに掲載されているような典型的な症例では十分にコントロールすることが可能ではないかと考えています。
その他犬種としては、トイプードルの脂漏性疾患も遠隔診療でいい結果がでています。
ご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者:
2015.05.22
フレンチブルドッグの繰り返す膿皮症の根本的な治療に力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
なぜフレンチブルドッグは皮膚病になるのか?
なぜフレンチブルドッグの皮膚病は再発しやすいのか?
なぜフレンチブルドッグの皮膚病は難治性なのか?
今回紹介するのは「治療」という側面よりもさらに「根本的に皮膚病にさせない」という新しい取り組みです。
【症例】
フレンチブルドッグ 3歳 去勢雄
【病歴】
〇3年前から全身に湿疹ができる。
〇診断名は「膿皮症」
〇やや少ない季節もあるが、1年中湿疹がある
〇3年間湿疹に対してさまざまな治療をしてきた
【過去の検査&治療歴】
当院受診までに行った治療や検査などです。
〇抗生物質・・・過去に持続型注射薬を含め5種類服用(同時ではなく、変更しながら)
〇シャンプー・・・セラミドシャンプー、角質溶解系シャンプー
〇抗ヒスタミン剤
〇サプリメント・・・セラミド系、脂肪酸系などさまざま
〇食事療法・・・複数の食事療法にチャレンジ
〇免疫抑制剤
〇減感作療法(注射薬)
〇外用薬・・・ステロイド系、セラミド系など
〇アレルギー皮内反応検査、食物アレルギー検査(2回)
犬の皮膚病治療の選択肢でほぼすべてが含まれるような過去3年間といえます。
それでは初診時の状態をみてみましょう。
※写真をクリックすると拡大できる写真もあります。
診た目も、検査結果も診断は「細菌性皮膚炎、膿皮症」と呼ばれるものです。
フレンチブルドッグで最も多く、診断は難しくないのですが再発が多くコントロールしにくい傾向にある皮膚病です。
それでは初診時から4週間後の状態と比較してみてみましょう。
処方は当院が開発したオリジナルのサプリメントと、同じく当院が開発したクレンジングオイル、シャンプー、ローションのスキンケアのみとしました。
内服薬は一切使わず、食事療法などの指示もせず「今まで通り」としました。
写真をクリックすると拡大してみることができます。
※赤い三角は主な湿疹がある部位を示しています。
湿疹がゼロではありませんが、劇的に改善しています。
皮膚に残っているくすんでいる部分は、湿疹が改善したあとにのこる色素沈着で時間とともに薄くなっていきます。
今回の症例のポイントは「診極め」です。
何を診極めるのか?
それはフレンチブルドッグがなぜ皮膚病になりやすく、再発しやすいのか?・・・・・と、この重症かつ難治性の皮膚病に必要なものが何かの優先順位をつけることです。
この優先順位ですが、過去・現在の動物医療では抗生物質を服用することがファーストチョイス(第一選択)です。
これは個人的も同様で、今でも変わることはありません。
ですがそれは「治療」としてで、「なぜこの皮膚病になっているのか?」に対する治療ではありません。
予測ではありますが、今回の症例に適切な抗生物質を処方すれば同じような改善があったのではないかと思いますが、高い確率で服用をやめれば再発したと思います。
だとすればそれは湿疹を診ているのであって、動物の身体を診ているとはいえない・・・と考えています。
「診極め」とは、改善方法を知っていることではなく、「なぜこうなったのか?次こうさせないためには?」を含めた部分を初診時に判定することです。
今回は初診時にいくつか検査も行いましたが、検査結果を見ることなく「まずはこのスキンケアとサプリメントのみ」とし、個人的には「まずこれでいけるだろう」という確信をもってチャレンジしました。
再発防止のメインはサプリメントで、スキンケアは症状にあわせて行うように指導しています。
再発がなければこまめなシャンプーもなくなり、飼主さまにとっても随分とケアの負担が少なくなると思います。
投稿者:
2015.02.24
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
つい先日まで1ヶ月以上放置していたブログですが、今日2回目の更新です♪
今回は再発しやすい皮膚病の中でも最も多い、細菌性の湿疹「膿皮症」についてです。
治療すれば改善するけど、治療をやめると再発する皮膚病・・・悩んでいる方は非常に多いと思います(僕もずっと悩んでいました)。
シンプルな治療方針としては「適切な抗生物質を服用し、適切なシャンプー療法を実施する」ですが、これだけで治るのではあれば誰も困りません。
もちろん耐性菌への対策としての感受性試験だけでなく、アレルギーやホルモン疾患などの基礎疾患が存在することがあるため、
・犬アトピー性皮膚炎の管理
・食事療法
・甲状腺機能低下症などの内分泌疾患の評価および治療
なども重要です。
ですが、できうる客観的な検査法を実施してもこれらの明確な診断名に当てはまらない「皮膚病になりやすい、再発しやすい体質」ということもあります。
それが「体質だから・・・」となるのですが、明確な診断名がなければ改善方法がないわけではありません。
今回はアトピーもない、食事療法も実施して、内分泌疾患もない、シャンプーもしっかりしている・・・・・にも関わらず湿疹が再発する症例についてです。
【症例】
犬 フレンチ・ブルドッグ
【病歴】
〇痒み(顔・耳・四肢端・体幹)を伴う皮膚病
〇ステロイドを服用することで痒みを止めていた
〇ステロイドをやめると身体を傷つけるほど掻いてしまう
【初診時の状態】
上の写真は、ステロイドの副作用で被毛が少なくなっています。
上の写真の円形のフケが細菌感染を起こしている湿疹です。
このタイプにステロイドの使用は治療が難しくなるため、個人的には使用せずに治療を行います。
治療後は、
ステロイドを中止し、適切な抗生物質とシャンプー療法、食事療法で湿疹をコントロールすれば被毛もきれいに再生してきます。
ただし、今回の症例はここではおわりません。
抗生物質の服用を中止すると・・・
湿疹が再発します。
再び抗生物質を服用することで、
綺麗に改善します。
しかし、抗生物質の服用を中止すると1ヶ月たたないうちに必ず再発するのです。
湿疹ができる ⇒ 抗生物質を服用(1~1.5ヶ月) ⇒ 湿疹消失 ⇒ 抗生物質終了
⇒ 1ヶ月ただずに湿疹再発 ⇒ 抗生物質再開(1~1.5ヶ月) ⇒ 湿疹消失 ⇒ 抗生物質終了
⇒ 1ヶ月たたずに湿疹再発 ⇒ 抗生物質再開・・・・・・・・・・
最も皮膚病になりにくい冬に湿疹が少ない(ゼロではない)時期があったため、抗生物質の再投与を先送りして耐えた時期もありますが、身体に湿疹がない状態をみることはほぼできませんでした。
お恥ずかしい話ですが、今回の症例ではこの状態で1年半以上経過しました。
おそらく日数として半分を超える期間で抗生物質を服用していたと思います。
そして昨年の閃き、ここから治療方針が大きくかわりました。
あの治療症例からさらに工夫を重ね、2年目が終わろうとする今回の症例でも治療チャレンジすることに!
すると・・・
抗生物質を服用していないにもかかわらず湿疹がない!!
去年の時点はまだドキドキしていましたが、もう今年に入ってからは確信があったので、今回の症例に対しては「絶対にうまくいく!」と自信がありました。
幸い今は最も湿疹ができにくい冬という条件もあるかもしれませんが(それでも去年の冬は湿疹あり)、もう今までのように抗生物質に頼るようなことはないと思います。
昨年「この冬のうちに磨き上げてみなさまの元へお届けできるようにします」とお話しましたが、そろそろ実現しそうです。
あとほんのわずかな微調整、今治療チャレンジしている柴犬でいい結果がでれば最終決定にしたいと思っています。
ここからは少しマニアックな話になりますが・・・
そもそも細菌が原因となっておきる湿疹『膿皮症』の細菌ですが、元々皮膚の表面にいる常在菌(みんなの皮膚の上にいる菌)です。
他のわんちゃんからもらった菌が原因ではありませんし、どこからか拾ってきたものでもありませんし、皮膚病が治ったあとにも皮膚に残っていますし、皮膚病になったことがないわんちゃんの皮膚にもいます。
※まれにそうでない菌の皮膚病もありますが、非常に少ないです。
そしてこの皮膚病の現在の主流の治療が「菌を抑えるために、抗菌剤を服用する。」「菌を抑えるため殺菌剤の外用を塗布する。」となっているのですが、何か違和感を感じませんか?
そう、「なぜ菌が増えたのか?」についての対策が抜けているのです。
菌を抑える抗生物質も菌を抑える殺菌外用薬も「皮膚で菌が増えた原因」を治療しているわけではありません。
僕も過去、現在、そしてこれからの未来もこの抗菌剤と殺菌外用薬を使用し続けるため、間違った治療アプローチとは考えていませんが、「殺菌」という治療だけでは本当の意味で治療とはいえない・・・・・ずっとそう考えていました。
でも「なぜ増えたのか?」がわからず何年も経ちました。
去年から紹介しているこの閃きのアプローチですが、
〇抗菌剤のように皮膚に到達して菌を抑える効果はありません。
〇殺菌外用薬のように皮膚に直接塗布するものでもありません。
皮膚にはまったく届かないところからアプローチしています。
「なぜ増えたのか?」を説明する明確な答えが1つだけではないとは思いますが、治療結果をみると今まで足りなかったピースの1
つであると思います。
遠くて診察が受けられない飼主さまにお届けできるようにしますので、準備が出来次第このブログ、そしてホームページでご案内します。
予定は3月末か、4月中です。
投稿者:
2014.10.09
☆ヨーキーの皮膚病治療症例報告『7年間で5件目の動物病院』
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。
今回は症例報告としては少し珍しいヨークシャー・テリアの症例報告です。
珍しいというのは、「ヨーキーは皮膚病になりにくい」という意味ではなく、「難治性になりにくい」と考えてもらってもいいと思います。
ときにこじれて重症化してしまうのですが、やはりそこは「難知性になりにくい」であって意外と簡単に改善することもできます。
今回はそんな『重度の慢性皮膚病だか、難治性ではない』症例報告です。
【症例】
ヨークシャー・テリア 7歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇生後1歳未満から慢性、継続的な痒みを伴う皮膚炎
〇過去の治療は、ステロイド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、甲状腺ホルモン剤、漢方薬、食事療法・・・・etc
〇大きな要因として「飼主への依存心が強く、精神的なものからくる痒み」と診断
〇当院で5件目の動物病院受診
それでは、初診時の状態をみてみましょう。
まずは、顔から。
続いて、頚部をやや右側からみてみます。
続いて、胸部~脇です。
最後に四肢、右前と左前です。
症状は『痒み』、非常に強い痒みです。
四肢端を噛む動作が強く、散歩中も歩かないほどずっと噛んでいるようです。
もちろん四肢端はバリカンでカットしたわけでもなく、噛むこと被毛が常にちぎれてほとんどない状態です。
胸部~ワキは後ろ足で強く掻くため、傷になってかさぶたもついています。
口周りと目の周りをこすりつけるため、顔全体の毛も非常に少なくなっています。
この初診時からちょうど1ヵ月後です。
部分的にわずかな赤み、痒みが残っていますが、ほとんどの痒みが改善できました。
まだ1ヶ月ですので、被毛の回復は途中ですがあと2~3ヶ月後には何事もなかったかのようなヨーキーになるでしょう。
当院を受診するきっかけの一つは、HPかブログで報告したわんちゃんだそうです。
同じ犬種の似ている皮膚病というわけではなく、以前長く通院していた動物病院の待合室でよく一緒になっていたようで、その子が当院で非常に綺麗に治っていることに気づいたそうです。
今回は過去の経過が非常に複雑で、さまざまな病院で多くの治療&検査を受けられていました。
では診断が非常に困難だったのか?といえばそういうわけではありません。
毎回お話していますが、ほとんど疾患は一通り眺めて飼主さまから過去の情報を聞くと頭の中できれいにまとめることができます。
今回も同様で、一通り眺めてお話うかがって15分後には僕の中では「まずこうだろう」というある程度の方向性が決まっていました。
あとは各種検査結果で抑えるべきポイントを抑えていきます。
それでは過去の治療法との比較やポイントについて。
※質問があったため、後日編集・追加しました。
Q1.精神的な要因はあるのか?
A.『ない』という診断はありませんが、この痒みのメインが心因性ということはないと判断しました。方向性として優先順位の高いものから治療し、残った症状に心因性が考えられならばアプローチをするという方針にしました。そしてこの1ヶ月で心因性に対するアプローチはしておりません。
Q2.ステロイドについては?
A.過去にステロイドを継続的に使用した期間があったようですが、幸い一つ前の動物病院でステロイドが処方されていなかったため、ステロイド皮膚症ではありませんでした。もちろん当院治療のこの1ヶ月でステロイド内服は1度も処方していません。ステロイド不可という症例ではないと考えていますが、もし治療初期から服用した場合はここまで早く皮膚が綺麗になることはなかったのではないかと考えています。
Q3.処方した内服薬は?
A.抗生物質と抗ヒスタミン剤の2種類のみです。
Q4.食物アレルギーは?
A.「ない」とはいえないが、食物アレルギー対策だけで治る病態ではないと判断しました。現在も食事療法は重要と考え、体質に合うものを探しています。(まだ固定できていません)
Q5.院内薬浴(スキンケア)を行ったか?
A.今回は1度も実施していません。
Q6.甲状腺機能低下症は認められたか?
A.一つ前の動物病院でも検査で否定され、当院での血液検査結果&超音波画像診断でも甲状腺機能低下症を疑う所見は認められませんでした。
Q7.副腎皮質機能亢進症は認められたか?
A.尿コルチゾール/尿クレアチニン比で除外されました。超音波画像診断でも疑う所見はありませんでした。
Q8.寄生虫疾患は?
A.ニキビダニ(毛包虫)は認められませんでした。疥癬も認められませんでしたが、除外のためセラメクチン投与を行いました。個人的には疥癬でもないと考えています。
飼主さまからのお話では「おもちゃを引っ張り出してきて遊ぶようになった」、「元気すぎて困る」、「足をかんで歩かなかった散歩も普通に歩いてできるようになった」、「数年ぶりに足先に毛がはえてきた」、「夜グッスリ眠れるようになった」・・・ととてもよろこんでいただけました。
また少し興味深かったのが、「散歩のたびに小石を加えて、ハウスまでもってかえりかじって食べて・・・を繰り返していたのが、一切なくなった」ということを聞くことができました。
おそらく痒みのイライラからくる行動異常だと思うのですが、痒みがいかに犬のストレスになるのかがわかるお話ですね。
また機会があればその後も紹介しようと思います。
投稿者:
2014.02.01
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
さて、今日はフレンチブルドッグの難治性皮膚疾患についてです。
「痒みが強く、なかなか治らない」と当院の皮膚科診療を受診される中でも多くを占めるのがこのフレンチブルドッグですが、今回紹介する症例はそんなフレンチブルドッグの難治性になり易い典型的な皮膚疾患の1つです。
【症例】
フレンチブルドッグ 3歳10カ月 女の子
【過去の病歴】
〇生後1歳前からお腹の湿疹の再発を繰り返す
〇2歳ごろまでは、抗生物質と痒み止めの2種類で改善していた
〇但し、内服をやめるとすぐに再発する
〇この1年は赤い湿疹だけでなく、皮膚がめくれるような脱毛が全身に広がる
〇痒みは非常に強い(頚部、ワキ、腕、お腹~お尻、顔、耳、四肢端)
※痒みがないところはない
さて、初診時の状態です。
まずは顔正面から。
つづいて、右の顔の拡大です。
これでは皮膚病のようにみえないかもしれませんが、非常に痒い部位の一つです。
細かい白いフケがあり、べたつきが認められます。
続いて、左耳です。
続いて、左半身です。
病変を分かり易くみるため、斜め後ろからみてみましょう。
斜め後ろからみると、病変の数が多いことがわかりやすくなると思います。
その一つを拡大してみましょう。
同じように右半身をみてみましょう。
続いて、四肢端ですが四肢に同じ病変が認められるため1つだけみてみましょう。
この指の間をそれぞれ拡大してみましょう。
続いて、足の裏です。
続いて、胸部(腹側)です。
続いて腹部です。
同じく、腹部の病変部がある拡大です。
左内股の拡大です。
最後に、左内股の拡大です。
これが難治性皮膚疾患のフレンチブルドッグの典型の1つです。
さて、ここから治療後の状態と比較してみましょう。
赤みが少ないのでわかりにくいかもしれませんが、毛並みが綺麗になっていることが皮膚コンディションが改善している証拠です。
続いて、左耳です。
続いて、左右から状態です。
続いて、四肢端の比較です。
続いて、胸~腹部~内股です。
この比較写真に要した治療機関はわずか6週間です。
ただ完治ではなく、今でも継続治療を行っています。
大事なことはフレンチブルドッグを知ることです。
教科書的に診断名を当てはめて、治療を選択しても治らないこともめずらしくありません。
それは「木を見て森を見ず」と同じことで、本質的なところの評価が不十分といえます。
やはりフレンチブルドッグには他犬種にはない独特の体質があるため、それにあった病変の診方、治療選択肢があります。
フレンチブルドッグの体質をよく知る
これに尽きます。
投稿者:
2014.01.11
2014年 謹賀新年
それでは、今年最初の症例報告です。
前回紹介したシェルティと同じ犬種ですが、同じ時期に来院された別のシェルティの慢性皮膚炎の治療症例を紹介します。
【症例】
7歳 シェルティ 女の子
【病歴】
〇3歳のころから背中に痒みと痂皮・脱毛を伴う皮膚病で治療を継続している
〇初回は抗生物質、抗ヒスタミン剤、ステロイド、抗真菌剤で治癒したが、2年前からは少しずつ悪化して今に至る
〇最近は痒みが強く、よく眠れない
それでは症例をみてみましょう。
病変はまず左右の口唇の脱毛と痒みから。
若干わかりにくいかもしれませんが、口唇周囲に炎症・脱毛が認められます。
続いて背中全体です。
本来であれば立派な被毛で地肌が見えることはないのですが、脱毛が多く地肌が見えています。
この背中を拡大してみてみましょう。
では、続いて腹部です。
この腹部を拡大してみてみましょう。
続いて、四肢端の病変ですが、四肢すべてに同様の病変が認められたため、右前肢のみ掲載します。
それではこの指間を広げてみてみましょう。
※クリックするこどで拡大できます。
その他、両耳の外耳炎も併発しており、ほぼ全身に強い皮膚炎、痒みが認められました。
それでは、この状態から2カ月半後と比較してみましょう。
まずは右口唇から。
※クリックすると大きくなります。
ほぼ100%に近い毛並みまで回復したと思われます。
では拡大してみていきましょう。
※クリックすると拡大できます。
同じく背中の拡大です。
被毛をかき分けても綺麗で密な被毛が十分に回復してきました。
続いて、腹部です。
※クリックすると拡大してみることができます。
上記で拡大した病変部と同じ部位を比較してみましょう。
最期に、右前肢端です。
同じく指の間をみてみましょう。
意外と治療が難しいのがこの指の間の皮膚炎かもしれませんね。
全身でもほぼ痒みがなく、そして元気にもなりました。
今回の症例の治療で大事なことは、この病変をみて病気のメカニズムを2つ考えなければいけないことです。
すべての病変部が同じ治療で改善するわけではありません。
そのことを初回にお伝えし、順に治療をステップアップしていくことで、スムーズな診療を行うことができます。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者: