2015.05.22
フレンチブルドッグの繰り返す膿皮症の根本的な治療に力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
なぜフレンチブルドッグは皮膚病になるのか?
なぜフレンチブルドッグの皮膚病は再発しやすいのか?
なぜフレンチブルドッグの皮膚病は難治性なのか?
今回紹介するのは「治療」という側面よりもさらに「根本的に皮膚病にさせない」という新しい取り組みです。
【症例】
フレンチブルドッグ 3歳 去勢雄
【病歴】
〇3年前から全身に湿疹ができる。
〇診断名は「膿皮症」
〇やや少ない季節もあるが、1年中湿疹がある
〇3年間湿疹に対してさまざまな治療をしてきた
【過去の検査&治療歴】
当院受診までに行った治療や検査などです。
〇抗生物質・・・過去に持続型注射薬を含め5種類服用(同時ではなく、変更しながら)
〇シャンプー・・・セラミドシャンプー、角質溶解系シャンプー
〇抗ヒスタミン剤
〇サプリメント・・・セラミド系、脂肪酸系などさまざま
〇食事療法・・・複数の食事療法にチャレンジ
〇免疫抑制剤
〇減感作療法(注射薬)
〇外用薬・・・ステロイド系、セラミド系など
〇アレルギー皮内反応検査、食物アレルギー検査(2回)
犬の皮膚病治療の選択肢でほぼすべてが含まれるような過去3年間といえます。
それでは初診時の状態をみてみましょう。
※写真をクリックすると拡大できる写真もあります。
診た目も、検査結果も診断は「細菌性皮膚炎、膿皮症」と呼ばれるものです。
フレンチブルドッグで最も多く、診断は難しくないのですが再発が多くコントロールしにくい傾向にある皮膚病です。
それでは初診時から4週間後の状態と比較してみてみましょう。
処方は当院が開発したオリジナルのサプリメントと、同じく当院が開発したクレンジングオイル、シャンプー、ローションのスキンケアのみとしました。
内服薬は一切使わず、食事療法などの指示もせず「今まで通り」としました。
写真をクリックすると拡大してみることができます。
※赤い三角は主な湿疹がある部位を示しています。
湿疹がゼロではありませんが、劇的に改善しています。
皮膚に残っているくすんでいる部分は、湿疹が改善したあとにのこる色素沈着で時間とともに薄くなっていきます。
今回の症例のポイントは「診極め」です。
何を診極めるのか?
それはフレンチブルドッグがなぜ皮膚病になりやすく、再発しやすいのか?・・・・・と、この重症かつ難治性の皮膚病に必要なものが何かの優先順位をつけることです。
この優先順位ですが、過去・現在の動物医療では抗生物質を服用することがファーストチョイス(第一選択)です。
これは個人的も同様で、今でも変わることはありません。
ですがそれは「治療」としてで、「なぜこの皮膚病になっているのか?」に対する治療ではありません。
予測ではありますが、今回の症例に適切な抗生物質を処方すれば同じような改善があったのではないかと思いますが、高い確率で服用をやめれば再発したと思います。
だとすればそれは湿疹を診ているのであって、動物の身体を診ているとはいえない・・・と考えています。
「診極め」とは、改善方法を知っていることではなく、「なぜこうなったのか?次こうさせないためには?」を含めた部分を初診時に判定することです。
今回は初診時にいくつか検査も行いましたが、検査結果を見ることなく「まずはこのスキンケアとサプリメントのみ」とし、個人的には「まずこれでいけるだろう」という確信をもってチャレンジしました。
再発防止のメインはサプリメントで、スキンケアは症状にあわせて行うように指導しています。
再発がなければこまめなシャンプーもなくなり、飼主さまにとっても随分とケアの負担が少なくなると思います。
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