2015.09.08
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
随分と涼しくなっているのですが、雨が続いているせいか湿疹に悩まされるわんちゃんが多いですね。
今日は湿疹の話ではありませんが、同じく気温・湿度が高い時期に悪化しやすい脂漏性皮膚炎のわんちゃんの紹介です。
8月26日に掲載したパグの脂漏性皮膚炎の症例のその後です。
【症例】
パグ 約5歳 男の子(去勢済み)
【病歴】
〇生後6ヶ月すぎからの皮膚病
〇季節性の悪化あり
〇食事療法で改善なし
〇免疫抑制剤は嘔吐する
〇アレルギー検査済み
では初診時の状態です。
前回の記事は初診のあとに作成し、このようにまとめました。
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獣医師としては初診時に何を考えるか?
大きく2つ、診極めることが重要です。
1つは、初診時に鑑別診断としてどのような病名・病態を候補にし、優先すべき検査が何かを判断することです。
2つ目は同時に治療方針が何か、検査結果の如何にかかわらず初診時に想定できていることです。
検査結果が予測不可能な結果であることはほぼないため、検査結果で初診時の想定した治療内容が考え直されるようなことはほぼほぼありません。
1ヶ月後には臨床症状(痒み・フケ)の改善と皮膚機能の正常化が認められ、3ヵ月後にはパグらしい雰囲気になっていると思います。
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この初診からわずか3週間後の状態を比較してみましょう。
画像をクリックすると拡大してみることができます。
ほとんどの痒みは改善しました。
フケ・臭いも90%以上改善しています。
皮膚もやわらかく、しっとり肌に再生しています。
あと1~2ヶ月後にはふわふわの被毛が再生していると思います。
このわんちゃんも検査結果は2回目の再診時、4回目の再診時にわけて説明し、皮膚がきれいに改善したところでようやく確定診断となりました。
大事なのは初診時に何を選択するのか?
必要な検査の選択、そして治療法の選択、ほとんどの症例で初診時に診極めことが可能です。
検査結果を想定しながら初診時から積極的な治療法を選択することができれば、わずか3週間で見間違えるほど改善することができます。
投稿者:
2015.08.26
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今日はいつもと違った症例報告を行います。
どう違うのか?
それは「まだ治療が終わっていない症例」です。
来院したばかりで、2~3ヵ月後を目標に改善を目指していきます。
症例はパグ、初診時の状態をみてみましょう。
顔を左側から。
「
下顎~頚部です。
胸部です。
右前肢とその拡大です。
両後肢です。
甲の部分の拡大です。
左の後肢を外側から。
獣医師としては初診時に何を考えるか?
大きく2つ、診極めることが重要です。
1つは、初診時に鑑別診断としてどのような病名・病態を候補にし、優先すべき検査が何かを判断することです。
2つ目は同時に治療方針が何か、検査結果の如何にかかわらず初診時に想定できていることです。
検査結果が予測不可能な結果であることはほぼないため、検査結果で初診時の想定した治療内容が考え直されるようなことはほぼほぼありません。
1ヶ月後には臨床症状(痒み・フケ)の改善と皮膚機能の正常化が認められ、3ヵ月後にはパグらしい雰囲気になっていると思います。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者:
2014.10.31
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。
秋もまだ半ばですが、もう冬が目の前に来たような肌寒さを感じますね。
当院では仕事のピークが春の4~5月と、秋の10月の2回あるのですが、今年もその2度目のピークがちょうど終わりようやく一安心です。
この先は来春まで穏やかな日々が続くと思うのですが、前回のブログに書いたように次のシーズンに向けて新しい取り組みをしているので、有意義な半年にしたいと思います。
そんな最近の僕を元気にしてくれたのはノーベル賞を受賞した天野氏のあるインタビューで「どれだけ失敗しても、寝て朝おきると新しいアイデアが浮かび、「今日はうまくいきそう」と思ってやっていた」という内容の言葉です。
レベルは違いますが、以前できなかったことをできるようにするために・・・のエネルギーになりますね!
では今日はパグの症例報告です。
【症例】
パグ 5歳 女の子(避妊手術済)
【病歴】
〇2年前からワキ、お腹の赤みと痒み
〇冬より夏が悪化しやすい
〇今年の6月からさらに悪化し、今が最も悪い
〇背中には皮膚病はでない
〇抗生物質+抗真菌剤を服用し、改善がないためさらに抗生物質を1種類追加併用するも改善なし
それでは初診時の状態です。
この状態は来院そのままの状態で、バリカンでカットなどは行っていません。
初診時から3ヶ月弱の治療後との比較をみてみましょう。
※すべてクリックすると画像を大きくしてみることができます。
このタイプもパグに多い難治性皮膚疾患の一つですね。
院内薬浴を併用することで著しい改善が認められます。
投稿者:
2014.01.17
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
難治性の皮膚疾患に陥り易い代表犬種としてフレンチブルドッグ、柴犬、シーズーが挙げられますが、それ以外にも難治性になりやすい犬種がいます。
その一つがパグ、このパグという犬種も独特の体質をもっているため、犬種に合わせた視点をもたなければいい治療成績を引き出すことができません。
【症例】
パグ 5歳 女の子
【過去の病歴】
〇10カ月前から皮膚病
〇過去に3件の動物病院を受診し、改善なし
〇ワキ、耳、お腹、顔、足先の痒み
それでは初診時の状態を見てみましょう。
まずは顔の左側、その拡大です。
続いて、顔の左側です。
続いて、左耳です。
続いて、両前肢です。
左右ともに同じ病変が認められるため、左前肢の上腕~ワキと、手首のあたりを拡大してみます。
ワキの部分を内側からみてみます。
続いて、腹部です。
10カ月改善が認められなかったこの初診時の状態から6週間後と比較してみましょう。
まずは顔から。
※画像をクリックすると拡大します。
※画像をクリックすると拡大します。
続いて、左耳です。
続いて、左前肢です。
続いて、腹部です。
全身に脂漏を伴う慢性皮膚炎がありましたが、ほぼ綺麗に改善することができました。
パグの場合は遺伝的にこのような脂漏性皮膚炎が発症しやすい体質があると考えられるため再発がないとは言えませんが、完治に近い治療ができたと思います。
たった6週間という短い治療期間を可能にしたことも、初診時に改善までの道筋をほぼ正確に描くことができたからだと考えています。
治療しながら迷走してしまうと、数カ月単位の時間のロスが生まれてしまうこともあるため、初診時に病変をしっかりと診極めることが重要です。
また治療には院内のスキンケアを併用したことがもっとも効果的だったと思います。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者:
2013.10.30
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師の平川です。
前回のパグの慢性脂漏性皮膚炎の続きです。
初診時から3カ月後の状態と比較して見ていきましょう。
まずは頚部から。
重度の脂漏がなくなり、皮膚機能がほぼ正常にもどってきているのがわかると思います。
それに伴い被毛の再生も認められました。
続いて右前肢です。
この右前肢も重度の脂漏が認められ、硬い痂皮が大量に付着していましたが、サラサラの皮膚に改善しました。
この右前肢を拡大してみましょう。
硬くザラザラとした皮膚が柔らかくなっています。
続いて同様の状態だった左前肢です。
同じく拡大してみてみましょう。
拡大するのは左前腕の内側面です。皮脂が多く分泌され、慢性的な炎症により硬くなる部位でもあります。
右前肢と同様に皮膚のコンディションが改善し、サラサラになっています。
皮膚のコンディションがよくなると、被毛も見違えるように美しくなります。
続いて腹側全体をみてみましょう。
まだ被毛が完全に再生していない部位もありますが。皮膚はきれいになっています。
拡大してみてみましょう。
まずは胸部の拡大。
部分的に残っていますが、見違える皮膚機能再生が認められます。
続いて、後肢です。
この部位はほぼ綺麗に改善しました。
続いて、大腿部~会陰です。
この部位もまだ病変部が残っていますが、順調に改善しています。
続いて、尾の比較です。
ここは非常に綺麗に改善しました。
全体としては8~90%改善したというところです。
一部被毛の再生がない部位もありますが、これは極めて重度の炎症が慢性的に続いたため、被毛再生が起こらないほど不可逆的なダメージを受けたものだと思います。
軽症のうちにこの治療ができていれば、本来の状態に戻ったと思われます。
大事なことはこの治療後までのストーリーを、初診時に描くことです。
考えられる原因、必要な検査、必要な治療、どこまで改善できるか、を診極めることですね。
四季の森どうぶつクリニック 平川
投稿者:
2013.10.29
こんんちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師の平川です。
当院では難治性皮膚疾患として筆頭にあげられるフレンチ・ブルドッグ、柴、シーズーが多く来院していますが、パグも難治性になりやすい犬種の1つです。
前の3犬種との違いは飼育頭数の違いで、決して「パグの皮膚病はフレンチ・柴・シーズーよりも治しやすい」というものではありません。
では、今回の症例を紹介します。
【症例】
5歳 パグ 女の子
【過去の病歴】
〇4歳まで皮膚病なく、1年前から痒みを伴う皮膚病
〇かかりつけで「アトピー?」と診断され、ステロイド含有スプレーなどで改善なし
それでは初診時の状態をみていきましょう。
それでは各病変を、まずは頚部から。
頚部の拡大です。
前胸部の拡大。
続いて、右前肢。
若干わかりにくいかと思いますので、角度を変えて拡大してみます。
まずは肘の内側から。
続いて、右前腕の外側から。
続いて、左前肢も同様の病変が認められます。
内側からみてみましょう。
続いて、腹側の全体をみてみましょう。
胸部を拡大してみます。
続いて、両後肢をみてみましょう。
続いて、後ろから大腿部~会陰を見てみましょう。
最後に尾をみてみましょう。
背中以外、ほぼ全身の皮膚病が認められました。
このように全身に重度の慢性皮膚疾患が認められる場合でも、初診時に「なぜこのような状態になってしまったのか?」「どのように治すのか」「治療後どこまで改善できるか」のストーリーを描くことが重要です。
検査も治療も「少しずつやっていきましょう」ではないと考えています。
まずはカルテをよくみて、
「5歳の女の子のパグ」、「1年前まで皮膚病はなし」、「この1年で悪化・拡大」
とあります。
続いて皮膚病変をよく確認します。
「頚部、腹側、四肢の脂漏が重度で、背側に病変は少ない」
カルテの情報と、パッとみた症例の皮膚病変だけでも十分すぎるほどストーリーを描くことができます。
続いて検査について考えていきますが、一般的な皮膚科領域での検査は
一般皮膚検査:細菌、マラセチア、ダニなどを顕微鏡での病原体確認
細菌培養検査
内分泌ホルモン検査
アレルギー検査
超音波画像検査
が挙げられますが、この中で行うべき検査をピックアップします。
そしてでてくるであろう結果を予測して治療計画を立てます。
今回も予想範囲内(というよりも予測通り)の検査結果となり、治療も順調な改善を示しました。
次回この治療後の状態を紹介します。
投稿者: