2015.10.10
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
深まる秋の夜長に虫の音を聞きながら・・・・・といえばお洒落なはじまりですが、最近寒いので窓をしめているためあまり聞こえません(笑)
それでは先日のブログ、時には診極めの甘さも~診・誤る~の続きです。
まずは初診時の状態です。
タイトルにも「診極めの甘さ」と書きましたが、わずか1ヶ月でここまで改善しました。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
顔の痒みのコントロール、数年ぶりの顔の被毛の再生、四肢端の痒みコントロール、胸部皮膚炎の改善・・・
こうみるといつも通り初診時の判断に大きなミスはなかったようにみえなくもありませんが、問題はここからです。
初診から2ヵ月を越えたころから背中の痒みと脱毛が・・・
これは自然と毛がぬけているのではなく、痒みで噛んだり掻いたりすることで毛並みが悪くなっています。
胸の拡大です。
続いて、右大腿部の尾側と、その拡大です。
ニキビのように膿をもった湿疹がみとめられます。
確かに初診時にはなかったので、一概に初診時の判断が間違っていたとまでは思わないのですが、なにせここから苦戦しました。
初診時に3ヶ月時点で苦戦していることなんて想定していなかったため、そういった意味で「想定外」でした。
このように一見改善したようで、あとから苦戦するようなことは稀なのですが、皮膚病が常に1つの原因、病態からきているとはかぎりませんので、こういうときは「一から再スタート」です。
具体的には「過去の自己否定」、初診時に自分が下した診断すら自ら否定して捨て去ることが必要です。
それができなければ過去にとらわれたまま前にすすめません。
次回も続きます。
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2015.10.09
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
晴れた日も随分と涼しく、夜は冷えるようになりましたね。
さて、今日はいつもと違った症例報告をします。
この1~2年は「診極め」という言葉を使い、初診時にいかに治療方針・ゴールまでの軌跡を描くか・・・と書いてきました。
確かに十中八九、初診時の想定どおりにすすみますが、実はすべての症例で「診極め」ができているわけではありません。
時に「判断できない」ということもあるのはまだよしとして、中には「診誤る」ことも稀にあります。
今回はそんな「初診時に診誤った症例」を紹介します。
初診時の状態、まずはお顔から。
続いて頚部です。
続いて、胸部とその拡大です。
続いて前肢端です。
過去に数年間、何件もの動物病院でさまざまな治療を受けられていたのですが、詳細は次回に。
この初診の状態から1年。
1年間まったく改善がなかったわけではないのですが、少しずつ、少しずつ、修正に修正を重ねてさまざまなチャレンジもして・・・
結局のところ初診時に描いた軌跡とは異なるアプローチに落ち着きましたので、初診時の診立てが悪かったということになります。
自分の診極めの甘さの反省もそうですが、1年間もの長い期間治療の機会を与えてくださった飼主さまに感謝です。
次回は改善をご紹介します。
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2015.10.06
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
冬につづいて一番好きな秋になりましたね♪
今日紹介するのは、8月から診ているパグちゃんの症例です。
第1回8月26日 ⇒ パグの皮膚病 ~脂漏性皮膚炎の治療方針~
第2回9月8日 ⇒ パグの脂漏性皮膚炎 ~診断は後からついてくる~
少しタイムラグがでてきていますが、最新の状態を比較でお伝えします。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
初診時からわずか6週間ですが、痒みだけでなく皮膚コンディション、被毛ともにかなり正常に近づいています。
重要なことは、初診時にここまでの軌跡を描けるか?です。
初診時に考えることは3つ
①必要な検査は何か?
※想定できる病気は限られていますので、その評価をします。
②最速の改善方法は何か?
③想定される治療法は何か?
です。
・・・・・・②と③、同じように聞こえるかもしれませんが、実は違います。
初診時から行うべき「最速の改善方法」と、この皮膚病の治療法は違います。
もちろん「最速の改善方法」も広い意味で治療法の1つといえなくもありませんが、長期的にみるとこの初診時から行う「最速の改善方法」はもうしばらくすると必要がなくなってきます。
必要ではなくなるものとしては「病気の原因に対する治療法」とはいえないので、初診時に必要なことは「皮膚病の原因になっていたものに対する直接的治療法ではなく、起きてしまったことに対する修正方法」ともいうべきでしょうか。
以上のことから検査結果をみることもなく、初診時から積極的なアプローチをしかけます。
第2回の記事にあるように、検査結果が出揃い診断が確定に近づくころにはすでに改善が認められます。
教科書上は①と③しかありませんが、臨床で必要なことは②です。
②がなければ理論上、教科書上正しくてもうまくいかないことすらあります。
治る皮膚病と治らない皮膚病・・・・・・日本全国に同じ教科書があり、情報が浸透する時代にも関わらず難治性皮膚病が生まれる理由の一つは、教科書に②が書いていないからだと思っています。
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2015.10.05
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
10月3日(日)午後に、獣医師向けの1対1のシークレットセミナーを行いました。
5時間を越えたセミナーだったのですが、休憩はトイレタイムのみという頭フル回転のアドレナリン全開でしたので、先々週に引き続きヘトヘトになってしてしまいました・・・(苦笑)
休診日に体調を戻そうと思います。
では、少しタイムラグができてしまいましたが、先月から継続しているミニチュアダックスの治療中の症例を紹介します。
1回目 ⇒ 初診日(9月12日)に掲載したブログ
2回目 ⇒ 1週間後の再診(9月19日)に掲載したブログ
そして本日は9月26日のときの状態を掲載します。
すべての病変ではありませんが、ほぼ全体がわかるかと思います。
※写真をクリックすると拡大してみることができます。
本当に綺麗になってきています。
あとは被毛の再生でしょう。。
週1回の診察は必要ないレベルまできたので、次回は2週間後としています。
初診時に描いた通りの改善で、今のところ修正点はありません。
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2015.10.03
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
やはり普段慣れていない仕事をすると体力の消耗が大きいようで、9月23日の東京での遠隔診療後はしばらく疲労困憊で日常の診療をこなすことが精一杯でした。
しかしようやく回復してきたので、ブログも再開です。
今日は、この夏から取り組み始めた遠隔診療についてご紹介します。
遠隔診療というのは当院に通院が難しい遠方にお住まいの方に向けた当院の医療のサービスの一つです。
初診を実際の診療として行い、継続をメールと写真で行います。
通院にかかる時間がなくなるため、遠方からでも当院の医療サービスが可能になります。
もちろんメリットばかりではなく、「診る」ことに点で通常診療に比較してかなりの制限があるため、通院治療より治療成績が落ちる可能性も十分にあります。
むしろかなり危険なチャレンジで、お勧めしたいわけではありません。
ただ、それでも典型例であれば困っている飼主さまのご期待に沿いたいと考えてチャレンジしています。
今日紹介する症例は石川県にお住まいで、8月1日に初診として診察し、約7週間メールと写真のみで継続治療したトイプードルのわんちゃんです。
【症例】
犬 トイプードル 3歳10カ月 女の子
【経過】
〇2年前から痒みを伴う全身の皮膚病
〇当院受診までの治療
インターフェロン注射、 コルタバンススプレー、ステロイド錠剤、抗生物質
エピスースー、アルミデルシャンプー
それでは初診時の写真、そして毛をカットした後の状態も合わせてみてみましょう。
まずは顔。
続いて左耳。
続いて、頚部とその拡大。
わかり難いので、毛をカットした状態とその拡大です。
続いて、頚部の左側面です。
同じく頚部左側面の毛をカットした状態です。
続いて、右前肢です。
肘~上腕
左前肢の甲。
甲の拡大です。
右前肢の毛をカットしてみましょう。
続いて、胸部とその拡大です。
さて、初診時に最も大事なことは・・・・・・なんでしょうか?
検査をすることでしょうか?
検査をしないわけではありませんが、最も大事なこととは違います。
そう、「診極め」でしたね。
検査結果のいかんにかかわらず1~3ヵ月後までの軌跡を描きます。
もちろん検査は重要ですが、診るチャンスは1度きり、初診こそが最も重要です。
初診時にたてた治療計画で修正することなく迎えた7週間後の2回目の受診のときと比較しましょう。
非常に綺麗に改善しています。
完治するタイプではないので治療は継続です。
飼主さまからは、
「1ヶ月で劇的に皮膚の状態は良くなり、性格も明るくなりました
とても嬉しく思います。」
というメールをいただきました。
この数年の僕のテーマでもある「初診時の診極め」の究極の形だと思います。
※遠隔診療の問題点
すべての症例を改善させることができるというわけではありません。
やはり情報を収集する機会が非常に少ないため、修正することが難しいため、後手後手になることもあります。
ただ純粋にお役に立てるチャンスがあれば役に立ちたいという思いで行っています。
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2015.09.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
虫の音を聞きながらブログを書いているのですが、仕事のようで癒される時間にもなっているので、最近はブログを書くのがとても楽しみになっています♪
今日は1週間前に書いたブログの続きで、9月12日(土)に初診で来院されたミニチュアダックスの症例の1週間後(今日)を紹介します。
以下の写真は画像をクリックすると拡大してみることができます。
非常に綺麗に改善しています。
痒みもほとんどない!とおしゃっていただけました。
注目すべきは1枚目の写真の「尾」なのですが、「しっぽブンブン♪」でとてもご機嫌で来院してくれました。
飼主さまも痒みが劇的に改善したことにも驚かれていましたが、「とても元気になりました!」と喜んでくださいました。
次回のブログでは最近取り組んでいる「次世代遠隔診療」の結果を紹介しようと思います。
遠隔診療とは、遠方で継続診療が困難なわんちゃんに、初診のみ実際に診て、継続診療はメールと写真添付で行うというものです。
まさに「初診時の診極め」の究極の姿でもあります。
そのわんちゃんの飼主さまは石川県にお住まいで、事前にメール相談でお問い合わせがあり先月8月1日に初診として来院されました。
そして9月19日の今日が2回目の来院となりました。
10年、20年後のスタンダードになるだろう遠隔診療の実際をご紹介したいと思います。
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2015.09.18
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
ようやく晴れました!
日中やや暑く感じましたが、今年最後の夏日だったようですね。
さて、少しタイムラグが生じてしまいましたが、先日ご紹介したシーズーの症例の経過を紹介します。
初診時から2週間後の状態です。
まだ被毛の再生がないため、よくわからないかもしれませんが、肝心の痒みはほどんと改善させることができました。
元々ステロイドを服用し続けても痒みを十分に押さえきれておらず、写真のようなステロイドの副作用とも考えられる脱毛症に陥っていたのですが、当院ではステロイドを服用させずに痒みを抑えることができました。
こういった症例は診断名も重要ですが、同時進行で改善させることも大事です。
診断は治療しながら徐々にしていきます。
1~2ヵ月後くらいにほぼ確定診断ができると思います。
被毛の再生は半年後を予定しています。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者:
2015.09.12
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
台風が過ぎ去り大空が広がると夏の雰囲気もあり、、夜の肌寒さが秋の訪れを感じさせとても心地いい季節ですね♪
さて、今日は少し珍しいミニチュアダックスフンドの慢性脂漏性皮膚炎の「診極め」です。
本日9月12日が当院の初診、過去に4年間で4件の動物病院での治療歴があります。
それでは「今日」の状態をみてみましょう。
獣医師としては失格ですが、診ているだけでも胸が痛くなります。
目やにがついているのが珍しいわけではありませんし、病気で目ヤニがでていることくらい獣医師なのでわかるのですが、表情をみていると悲しい顔で泣いているようにもみえてしまいます。
獣医師としては感情を抑えて病気と向き合わないといけませんし、心の甘さは痛い目に合う要因になるため気を引き締めて望もうと思います。
必ず綺麗に改善させます。
では今後の予定です。
毎回お伝えしていますが、こういった症例をみるときは頭の中でいくつかパターンをつくります。
検査は絶対に見落としてはいけない疾患の判定と、初診時に描いたいくつかのパターンの仕分けのために行います。
仮診断は本日行った検査結果が出揃う1週間後を予定していて、次回の再診時に検査センターに提出する項目もありますし、一部の疾患の検査は「ある程度皮膚が改善してから最終判断」としているので、4~8週間後に確定に近い診断が出せると思います。
ですが治療は今日から始まっています。
次回1週間後の再診時には明確な改善がでていると思います。
1ヵ月後にはわんちゃんも元気になり、表情も変わっていると思います。
四季の森どうぶつクリニック
平川将人
投稿者:
2015.09.08
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
随分と涼しくなっているのですが、雨が続いているせいか湿疹に悩まされるわんちゃんが多いですね。
今日は湿疹の話ではありませんが、同じく気温・湿度が高い時期に悪化しやすい脂漏性皮膚炎のわんちゃんの紹介です。
8月26日に掲載したパグの脂漏性皮膚炎の症例のその後です。
【症例】
パグ 約5歳 男の子(去勢済み)
【病歴】
〇生後6ヶ月すぎからの皮膚病
〇季節性の悪化あり
〇食事療法で改善なし
〇免疫抑制剤は嘔吐する
〇アレルギー検査済み
では初診時の状態です。
前回の記事は初診のあとに作成し、このようにまとめました。
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獣医師としては初診時に何を考えるか?
大きく2つ、診極めることが重要です。
1つは、初診時に鑑別診断としてどのような病名・病態を候補にし、優先すべき検査が何かを判断することです。
2つ目は同時に治療方針が何か、検査結果の如何にかかわらず初診時に想定できていることです。
検査結果が予測不可能な結果であることはほぼないため、検査結果で初診時の想定した治療内容が考え直されるようなことはほぼほぼありません。
1ヶ月後には臨床症状(痒み・フケ)の改善と皮膚機能の正常化が認められ、3ヵ月後にはパグらしい雰囲気になっていると思います。
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この初診からわずか3週間後の状態を比較してみましょう。
画像をクリックすると拡大してみることができます。
ほとんどの痒みは改善しました。
フケ・臭いも90%以上改善しています。
皮膚もやわらかく、しっとり肌に再生しています。
あと1~2ヶ月後にはふわふわの被毛が再生していると思います。
このわんちゃんも検査結果は2回目の再診時、4回目の再診時にわけて説明し、皮膚がきれいに改善したところでようやく確定診断となりました。
大事なのは初診時に何を選択するのか?
必要な検査の選択、そして治療法の選択、ほとんどの症例で初診時に診極めことが可能です。
検査結果を想定しながら初診時から積極的な治療法を選択することができれば、わずか3週間で見間違えるほど改善することができます。
投稿者:
2015.09.07
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
最近は雨が続いていますね。
今日は先週に紹介したポメラニアンの症例の続きです。
8月31日の初診時の状態を当日紹介し「何をすべきか」とお話したので、今日2回目の再診時の状況を紹介します。
【症例】
ポメラニアン 1歳半 男の子
【病歴】
〇2ヶ月前から痒みを伴う皮膚病
〇抗生物質、ステロイド(0.5mg/kg)を継続するも改善せず
〇食事療法(アミノペプチド)継続中
まずは初診時の状態です。
痒みの強い頚部の状態です。
わかりにくいため、毛をかきわけてみましょう。
こういったときはしっかりと病変部を確認するため、そして治療のためにも毛をカットした方がいいです。
頚部のやや右側の拡大です。
続いて、右上腕~方にかけての拡大。
頚部の左側の拡大です。
続いて、頚部を右側から。
上の写真の拡大です。
続いて、左後ろ足の内側(膝の内側)。
上の写真の拡大です。
前回の記事でこう記しました。
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今日最優先で行うべき治療法は?
そして今後予測される治療方針は?
すべて初診時に判定可能です。
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そこから1週間後の今日を比較してみましょう。
写真をクリックを拡大してみることができます。
初診時に行った検査は2回目の本日お伝えしました。
きれいに改善させてから原因を伝えるというなんとも不思議な流れですが、当院ではめずらしくありません。
よく「検査してみないと原因わからないですよね?」と飼主さまからいわれますが、今回のように「原因が特定されていなくても治療法はわかる」ということは珍しくありません。
むしろ初診時に治療法がわからなければ、検査してもわからないとすら思います。
初診時には「原因を追究する」とともに、「治療法を導くこと」がとても重要です。
当院の初診を受けられる方には今回同様に、初診時に「必要な治療はこうでしょう!」とお伝えするようにしています。
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