柴犬の症例報告

【一瞬の診極め】アポキルが効かない柴犬の皮膚病治療

2018.02.23

柴犬のアトピーやアレルギー、アポキルが効かない痒い難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

一般的に動物病院の皮膚科で治療が難しい犬種の筆頭に上がってくる一つが柴犬ですね。

その独特の体質からシーズーやフレンチより扱いづらく、治療難易度としては最高クラスと思います。

わかりやすい例えが良くも悪くもアポキルの反応で、アポキルが非常に効く症例もいるのですが、全然効かない症例もいます。

もちろんアポキルが万能ではなく効かない痒みがあるのはわかるのですが、このアポキルが効く症例と効かない症例の区別がつかないケースがあるから困るのだと思います。

だれしも

「なぜ効かない?」

と考えるのだと思うのですが、本当の意味でアポキルが気かない痒みであるわけではないですし、アポキルが効く柴犬と見た目の違いが全くないわけではありません。

柴犬の正常を知っていれば、アポキルが効かない痒みを呈している柴犬を事前に把握することができます。

「この症例には効きが悪い」

そして効くための治療手段を把握していれば「時期にアポキルが効くようになりますよ」と伝えることができるので、効かないアポキルを使い続けることにも何の後ろめたさも感じることはありません。

当院でも「最初は効きが悪いようにみえるかもしれませんが、1~2ヵ月後には効いてきますよ。」と伝えて治療開始しています。

今回はそんな「アポキルが全然効かない!」という柴犬の皮膚病です。

【症例】

 柴犬 4歳半 男の子(去勢済み)

【経過】

 〇1才半から続く皮膚の痒み

 〇顔(目・口・耳)、お腹、腕、四肢・・・・背中以外すべてが痒い

 〇アレルギーといわれ、食事をかえても、おやつを変えても改善しない

 〇1年前からアポキル1日2回服用しても痒い

柴犬でよくある「アポキルが効かない」という典型的な症例です。

診断は診察室でチラッとみた一瞬、アポキルが効かない理由と効くための治療方針の確定もほぼ一瞬です。

それでは初診時の状態です。

まずは全体、一見重度な感じはしません。

続いて、顔の左側で、目の回りも口周りもあちこち痒いです。

本来この顔周りの痒みにはアポキルが効果を示しやすいのですが、効きにくい柴犬もちょくちょくいます。

こういったタイプにはちょっとアプローチを変えると簡単に痒みのコントロールが可能になります。

続いて、右前腕で、柴犬に多い「腕を噛む」という症状が強くでいているため毛並みが悪くなっています。

このタイプの痒みにアポキルは効きにくいですね。

同じく右前腕の外側面です。

続いて、左前腕の内側。

続いて、胸部です。

胸を後ろ足で掻くというアトピーでよく認められる症状です。

腕とことなり、この部位の痒みにはアポキルが非常に効くことが多いのですが、柴犬では効きにくいことがありますね。

続いて、腹部とその拡大です。

お腹が真っ黒になっています。

診療で診る大事なポイントは痒くて黒くなってしまったお腹ではありません。

別のところに診断のヒントが隠されています。

最後に右胸部の側面の拡大です。

掻きすぎて傷になっています。

それでは治療後5ヶ月半後の状態と比較します。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

初診の治療スタートの時点でアポキルを1日2回服用している影響もあってか、見た目が重度でないため当院の症例方向の中では差の小さなものかもしれませんが、大分きれいになりました。

比較写真が約5ヵ月半と長期になったのは途中で悪化したためです。

悪化の理由は簡単で、初診から1~2ヶ月で順調によくなったのですが、飼主さま判断で投薬治療が減ったためです。

これは「のど元過ぎれば熱くない」という心理的にもやむをえないことで、よくなると「薬がなくても良くなったんじゃないか?」「いくつかあるお薬のうち、〇〇はもういらないんじゃないか?」と考えてしまうためかと思います。

投薬治療を無理強いすることはできないため希望に合わせるのですが、やはりおまかせ治療がベストであってそのおまかせからズレると振り出しに戻ってしまうことがあります。

という理由で比較写真が5ヵ月半になっています。

おまかせであれば3ヶ月でこの状態だったと思います。

肝心のアポキルですが、受診前は1日2回服用でも痒かったのですが、今は1日半に1回(痒みが強いときは1日1回)でコントロールしています。

もちろん1日1回の方が効きはいいのですが、お薬は少ないにこしたことはないので1.5日が許容範囲であればそれも選択肢の1つかと思っています。

もし柴犬の痒い皮膚病治療でアポキルが効かない場合は、最低限2つの病気のことを考えるのがいいと思います。

治療は2つの病気以外のあるため、かなり多くの種類を駆使しますが、それぞれが重要な働きをします。

「痒い=アポキル」ではありません。

なお今回の症例はスキンケアやサプリメントメインではさすがによくなりません。

ヒーリングケアLFプラスは適応ですが、単独使用では改善は難しいでしょう。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の痒み専門外来】ステロイドが効かない理由は?

2018.01.19

柴犬のアトピーやアレルギーなど、痒みと伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

柴犬の痒みトラブルは非常に多いですね。

痒みを抑えることができる「アポキル」が発売されて、一定の症例はこのアポキルによってかなりの改善を認めていると思われます。

しかしアポキルが高い効果を示す症例と、そうでない症例がいますが、その違いはどこにあるのでしょうか?

これはアポキルだけに限ったものではなく、ステロイドや免疫抑制剤などの痒みに関するお薬全般にいえることです。

「服用しているのによくならない」

当院を受診しているわんちゃんのスタートラインはここです。

今日はそんな「痒み止めの効果がでない」という柴犬についてです。

【症例】

 柴犬 1歳10カ月 女の子(避妊手術済)

【経過】

 〇生後5か月から続く痒み

 〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ

 〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし

 〇抗生物質を1年間継続中

 〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用

 〇痒みのコントロールができていない

 〇季節性はなく、1年通してずっと痒い

それでは初診時の状態です。

6日前に初診のために当院を受診されたので、治療後の写真はまだありません。

初診時の検査では、ニキビダニ陰性、マラセチアわずかに検出、膿皮症なしでした。

診断は一瞬です。

いや、実は看護師が受けた電話の問診メモをみるだけでわかりました。

※先入観はときに痛い目をみるので本当はよくありません。

あとは当日パッとみて&お話聞いて確信へ、各種検査は似ている疾患を除外するために実施します。

簡単な特徴としては、

 〇柴犬

 〇若い発症

 〇季節性のない痒み

 〇痒み止め(一般的にはアポキルとステロイド)が効かない

 〇寄生虫(ニキビダニ、疥癬)ではない ※なさそうでも可

この条件であれば「柴犬のあるある」かもしれませんが、シンプルなアトピーであればアポキルなりステロイドが効きますし、季節性もあると思いますのでそのグループには入らないちょっと難しいタイプに分類できます。

おもしろいのは、飼い主さまからの主訴には決して入ってこないあることに関する情報を聞き出すことで、この病気の診断に近づくことができます。

今回も一通り飼主さまのお話を聞いて、簡単な顕微鏡検査をして、改めて飼主さまに質問をしてみました。

「お近くで柴犬のわんちゃん見る機会もあると思いますが、他の柴ちゃんとこの子で何が違うと思いますか?」

飼主さまはこの質問に的確に、かつ僕の期待通りの答えを返してくださいました。

病気の原因はそこだったんですね。

ただ、飼主さまはそれを僕に伝えることはできなかったのです。

認識できていることと、今の病気と関係していると思うことは別で、獣医師に伝える症状には入っていませんでした。

診断には検査だけでなく、飼い主様から必要な情報を聞き出す質問ができることも重要と思います。

参考までにこの子はアトピーの範疇でいいと思います。

問題はなぜこの子のアトピーにステロイドが効かないのか?ですね。

仮にアポキルでも同様ですが、効くはずのものが効かないのは「効かない理由」があるのです。

効かない理由の診断をつけて治療さえすれば、この症例のアトピー部分には他の症例同様にアポキルやステロイドが効くようになります。

この症例に必要なのは痒みを抑える治療ではなく、アトピーにステロイド(同様にアポキルも)が効かないある疾患を治療してアポキルが効くようにすることです。

3か月後にはアポキル(ないしステロイド)を毎日飲まなくても痒みがコントロールできるようになると思います。

次回は今回紹介した症例とまったく同じような柴犬で、「アポキルを服用しているのにまったくよくならない」という症例の改善経過を紹介します。

おもしろいは東京で開催した遠隔診療での症例です。

要するにメールと写真で目途をつけ、実際に診るのは1回だけで診断・治療方針を組み立てるという医療です。

また、当院では動物病院向けにこのような今の皮膚科で不足している大事なことについて、個別で皮膚科セミナーを開催していますので、ご希望の方はHPからお問い合わせください。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の痒い皮膚病】アポキルが効かない!?どうする?

2017.12.18

柴犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

クリスマスまで1週間を切り、クリスマスが終わればもう今年もカウントダウンで新年ですね。

クリスマスの飾りつけをしながらお正月の飾り付けも選び、クリスマスプレゼントを準備しながら年賀状を書くというイベント大好き日本人の性を実感する毎日です(笑)

今日の症例報告は先日の柴犬の記事で伝えておいたわんちゃんです。

  12月16日に初診で来院されたわんちゃんをその日のうちに紹介しています。

【症例】

 柴犬 1歳 男の子

【経過】

 〇生後7ヶ月に痒み発症

 〇徐々に拡大して悪化

 〇地元動物病院にて「アトピー?アレルギー?」

 〇抗生物質と消炎剤の内服で改善なし

 〇11ヶ月からさらに悪化し、拡大

 〇四肢の痒み、顔(目・口・頬)の痒み、目の脱毛など

それでは初診時の状態です。

続いて、顔正面の拡大。

続いて、顔の左側。

同じく顔の左側。

続いて、身体側面の右側から。

続いて、右前肢の内側、とその拡大。

同じく右前肢の外側と、その拡大。

続いて、左側面。

腹部の左側とその拡大。

左後肢の側面。

同じく左後肢のかかと付近を外側から。

同じく左後肢の甲、外側から。

背中以外傷だらけで来院されました。

噛みすぎて毛もありません。

それでは10週後の状態と比較してみましょう。

※画像をクリックすると大きくみることができます。

まずは顔の正面、右、左の順番です。

続いて、左側面。

続いて、右前腕。

続いて、右後肢。

続いて、左側面。

続いて、左前肢。

続いて、左腹部とその拡大。

続いて、左後肢の側面。

非常に綺麗に改善しました。

傷ひとつなく、毛並みは100%回復です。

症状も改善し、10週間後の状態ではほぼ痒みなしです。

念のためアポキルを渡しておきましたが、治療9~10週目の2週間で服用したのは2~3回のみ、それでも痒くないという回復ぶりです。

もちろんステロイドの1度も処方していません。

今回の症例の特徴の一つは、「アポキルが効かないタイプの痒みである」ということです。

まったく効かない、絶対にきかない・・・というほどではないので、併用するのはありなのですが、「アポキルで抑えきれない」とわかった上で処方しなければ後が困ります。

再診時に「痒みがあまり改善していない」という状態を予測して、再診時に次の治療に踏み込める準備を初診時にしておく必要があります。

今回の症例でも初診時に「とりあえずアポキル」という処方をしましたが、予測どおりあまり改善なし・・・という結果でした。

想定どおりですので、再診時から初診時の時点ですでにお伝えしていた治療第2弾を併用して、最終的にはアポキルがなくてもかかない、という状況に改善したという流れです。

ブログにしてしまうと治療は一瞬にみえるかもしれませんが、柴犬の皮膚病治療は難しいと思います。

アポキル単独でかなり痒みを抑えられる症例もいるのですが、そうでない症例もそこそこいます。

そしてアポキルで痒みを抑えきれないときに次の手が中々ない、というのが今の皮膚科の現状です。

当院ではアポキルが効かないという診療が大半を占めるので、それ以外の手をいくつか持って診療に臨んでいます。

ただ、打つ手が正しくてもそのタイミングが悪ければ十分な評価ができなかったりしますし、いいタイミングで手を打っても「それがいつ効くのか?効いているのか?」を判断できないといけません。

こういった「アポキルが効かない痒み」について、個別でセミナーを開催していますので、診療提携をご希望の方はご連絡ください。

参考までに前回初診時のみを紹介した柴犬のわんちゃんと原因は一緒です。

前回紹介した柴犬のわんちゃんもアポキルを1日2回服用して改善しない皮膚病です。

3ヵ月後までには綺麗になるでしょう。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚病治療】アポキルが効かない?アトピー?アレルギー?

2017.10.02

柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚病治療専門病院、四季の森どうぶつクリニックです。

今日紹介するのはここ最近の中で最も「会心」だった症例です。

【症例】

 柴犬 4歳 去勢オス

【経過】

 〇1才のころから皮膚病

 〇最初は季節性の痒み発症であったが、この2年は通年性

 〇シクロスポリンで改善なし

 〇アポキルでも改善なし

 〇シクロスポリン+アポキルの同時併用3ヶ月でも改善なし

 〇最近はステロイドでも改善なし

 〇食事療法は、低アレルゲン、アトピーフード、グレインフリーと変えるも改善なし

さて、初診時の状態です。

正面全体から。

続いて、右側面から。

続いて、顔~頚部(右)。

同じく頚部の右、拡大。

同じく右頚部、さらに拡大。

頚部、正面から。

同じく頚部正面、拡大。

続いて、前胸部。

続いて、右前肢の屈曲部(肘)。

続いて、右前腕内側。

続いて、右前肢外側。

続いて、右胸部側面。

続いて、右肩の側面拡大。

右胸部側面の拡大。

同じく右胸部側面の拡大2箇所目。

同じく右胸部側面、3箇所目。

続いて、右腹部側面。

続いて、右後肢膝~カカトの側面。

続いて、左側面。

左側面をやや斜め後ろから。

右側面の炎症部位の拡大。

右腹部側面の拡大。

続いて、右後肢側面。

かなり重度ですが、この見た目は特徴的なので診断は一瞬です。

万が一のことを考えて、似ている疾患を除外するためにいくつか検査をしますが、頭の中で答えは決まっています。

綺麗に治るまでの軌跡を描いてからゆっくり検査、説明をします。

※検査結果は確認のためで、治療方針を立てるためではありません。

それでは初診時からちょうど12週間後との比較です。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

参考までに

 〇甲状腺機能低下症はなし

 〇ステロイドの副作用でもない

 〇疥癬でもない

 〇アポキルは効かない

 〇上記の写真で紹介した病変に、抗生物質を必要とするものはない

当院でも初診時に「アポキル」を処方しましたが効果はゼロで、飼主さまから「痒みはまったくかわらない」といわれました。

もちろん現状でアポキルがほとんど効かないだろうというのはわかってたのですが、「副作用はほとんどないし、多少効果があればOK」というつもりで処方しています。

それだけではなく2回目~7回目までの再診時もずっと「よくならない。かわらず痒い」といわれ続けており、9週間後の7回目の再診時でも「痒みはあまり変わらず、元々を10とすると今8くらい」という低調な評価でした。

ただ!改善する自信があったので「治療方針は変えません。よくなります。」と言い続けて初診時の診断は変えませんでした。

そしていよいよ12週間後の8回目の診察時、飼主さまにはじめてうれしい言葉が・・・

 「おかげさまで随分良くなりました。散歩でも『別人みたい!』と声をかえてもらえました♪」

痒みも足先をちょっとなめる、口を時々掻く・・・というくらいです。

毛並みも非常によく、ツヤツヤです。

柴犬のこのタイプの皮膚炎はときどき診る事があり、だいたいアトピー、アレルギーといわれて難治性皮膚病になっています。

「アトピーではない」「アレルギーではない」と言うことは難しいのですが、「アトピー」「アレルギー」といっていると絶対治りません。

このタイプはアポキル単独では改善しませんし、食事療法なんてほぼ無意味ですし、スキンケアで改善するわけでもありません。

あることをし続けなければ結果がでません。

結果がでるまでの数ヶ月も痒みが続くのですが、飼主さまの「痒みが改善しない」という返事に対して、自信をもって「このままでよくなります。」とブレずに継続する力が必要です。

この「痒いといわれてもブレない」というのがかなり難しいと思います。

もう1点、これが難しいといわれる理由は「教科書に掲載されていない」ということでしょうか。

また、セミナーで解説されているのも聞いたことがありません。

近い記載はわずかにあるのですが、おそらく誰も気づいていないのが現状です。

当院と皮膚科に関する診療提携を行っている病院の先生には詳しく解説する予定です。

今回の症例でも初診時の診極めで、治療方針を変更することなく改善することができました。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】 診たことない柴犬が・・・

2017.06.22

柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

先日待合室でまっている柴犬をみて違和感を覚えました・・・

「誰だろう?診たことあったかな?」

この違和感の原因はそのあとの診察で解決できました。

今日はそんな症例報告です。

【症例】

 柴犬 4歳 女の子(避妊手術済)

【経過】

 〇去年の夏からつづく痒みを伴う皮膚病

 〇冬もよくならず、春から脱毛が進む

 〇痒みの部位:頚部、お腹、四肢端

 〇過去の投薬歴:痒み止め

まずは顔の左側から。

続いて、頚部。

同じく、頚部のやや左から。

続いて、右前腕。

続いて、身体の左側。

同じく、左側の胸部拡大。

続いて、身体の右側。

同じく左側、腹部の拡大。

続いて、前胸部。

続いて、腹部。

続いて、内股~後肢。

続いて、左後肢の側面から。

それでは、この初診時から7週間後の状態と比較してみてみましょう。

※画像をクリックすると、拡大してみることができます。

まさに「見違えるように」とはこのことですね。

毛並みはほぼ元に戻りましたし、肝心な痒みも元の10分の1までへりました。

もちろん初診時に「まずよくなる」と思ってアプローチしましたが、たった7週間でここまでよくなるとは思いませんでした(笑)

診たのは初診と再診2回の合計3回でここまでよくなるとは・・・自分でもちょっとびっくりしました。

先週の北海道往診から1週間たっても疲れがとれない僕にはまぶしく見えるこの回復力・・・・これが世に言う「若さ」というものでしょうか(笑)

治療のポイントは特になく、診た瞬間に治療方針は決定です。

初診時から治療方針の変更はありませんでした。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【名古屋・愛知の皮膚科専門外来】柴犬のスキンケア療法

2014.02.18

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

柴犬の難治性皮膚疾患(当院受診前に治療歴があり改善しなかった症例)をまとめるために、さまざまなタイプの症例を紹介しています。

今回紹介する症例は今までの治療症例とは少し異質なものですが、「これだけ重症の皮膚病でも治る余地がある」と思っていただきたくて紹介します。

【症例】

 柴犬 7歳 女の子(避妊手術済)

【過去の病歴】

 〇4年前から通年性(1年中)の皮膚病
 〇現在が最も悪い状態
 〇最初の2年は近医(A動物病院)にてステロイドを使用しながら痒みを抑えていた
 〇2年前に漢方療法を行う皮膚科動物病院(B動物病院)へ転院し、抗生物質・甲状腺モルモン剤・漢方薬など2年間服用
 〇偽妊娠になりやすいことから、同じB動物病院で避妊手術(卵巣摘出)を受ける
 〇B動物病院で漢方成分の入ったシャンプー(商品名なし)を使用

それでは初診時の状態をみてみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。

まずは、顔の左側から。

同じく目の下、頬の拡大です。

同じく左側、口唇~頚部にかけての拡大です。

続いて、頚部左側です。

続いて、頚部~左前肢肩付近です。

続いて、頚部。

同じく頚部の拡大です。

続いて、頚部~前胸部です、

続いて、右前肢内側、拡大をあわせています。

続いて、身体右側、ワキ~胸部側面です。

続いて、腹側全体です。

同じく、腹側の胸部拡大です。

続いて、右後肢の足首~甲の拡大です。

最後に尾側、会陰部周囲です。

この初診時から2カ月半後の状態と比較してみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

初診時は過去に例がないほど重度の皮膚の肥厚、脂漏が認められました。

そしていつも通り初診時に数パターンの診断・治療方針を想定しましたが、最優先で疑ったのは「アトピー+ホルモン異常」でした。

ただ、でてきた検査結果は「アトピーはない、甲状腺も異常なし、クッシングの可能性も低い」という想定と異なるもので若干違和感を感じましたが、スキンケア療法に非常にいい反応がありました。

通常柴犬の皮膚病に院内で行うスキンケアを行うことはありませんが、今回の症例は初診時に「原因のいかんに関わらずスキンケアを併用しなければ改善はないだろう。むしろ原因のいかんに関わらずスキンケアでかなり改善させることができる。」と判断したため、改善に関しては当然の結果だと考えています。

ただ想定と異なる検査結果に感じた違和感が本当なのかを確認するために、いくつか詳しい検査を追加で受けていただいた結果、確信に近い検査結果を得ることができました。

しかし今回当院が下した診断は本来起こるべきではないことを前提にした診断名であるため、当院での診断をより確実に確定するために大学病院を受診することになっています。

今回の症例は治療を行いながら複雑な心境でした。

考えられる原因が原因なだけに、なぜこの子がこんなつらい思いをしなければいけないのか、と診察のたびに胸が痛みました。

そして「獣医師として代わりに責任持って診断・治療する」と思いました。

もちろん当院を受診される全ての診察に全力を!という想いを込めていますが、この子のスキンケア時には全スタッフがいつも以上に想いをこめていたと思います。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】外科手術を要する治療方針

2014.02.18

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

柴犬の皮膚病と一言にいっても、その診断名・治療方針はさまざまです。

今回は皮膚科疾患の中ではそう多くありませんが、外科手術を行い改善させた症例を紹介します。

【症例】

 柴犬 9歳 男の子

【病歴】

 〇1歳未満から発症、顔周囲から全身へ拡大
 〇夏が最も悪くなり、冬には改善していた
 〇当院受診前の冬は改善なく、悪い状態のまま
 〇過去に4つの動物病院を受診したが、改善なく当院受診

初診時の状態を見てみましょう。

まずは全体、常にエリザベスカラーを装着していました。

続いて、顔の正面、左右からです。

続いて、背側全体と頚部、胸背部、腰背部の拡大です。

続いて、右からの側面です。

続いて、胸部全体と左脇の拡大です。

続いて、右前肢外側から。

最後に右後肢外側から。

それでは約3ヶ月後の状態と比較してみましょう。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

非常に長期に渡り重度の皮膚病があったことと、この疾患特有の毛根への強いダメージがあったため、一部(目・肢端)に再生が不十分なところもありますが、エリザベスカラーも完全にはずすことができ、90%以上の部位で柴犬らしい綺麗な毛並みが再生しています。

一見、柴犬に多く認められる典型的な犬アトピー性皮膚炎の重症化のようにみえます。ただ純粋な犬アトピー性皮膚炎だけではこのような状態にはなりにくいため、何か別の基礎疾患があると考えました。

実際にこの基礎疾患に外科的アプローチをしたのは初診時から6週間後ですが、そこから格段に治療成績が向上していったことを考慮するとやはり外科手術がターニングポイントになったと思われます。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】柴犬を知る

2014.02.17

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

今日の柴犬の皮膚科症例です。

【症例】

 柴犬 2歳 女の子

【病歴】

 〇生後6カ月の頃から前肢の外側をよく噛むようになり、被毛が薄くなっていった。
 〇近医にて抗生物質と痒み止め(ステロイド)を処方され、あまり効いていないように見えたが痒みがあったため約1年間継続して服用
 〇1年経過し、セカンドオピニオンで2件目の動物病院を受診したところ、肝臓数値が高くなっていたためステロイドを中止
 〇痒みが強く、アレルギー検査・外用ステロイドスプレー、療法食、手作り食を試すも改善なく悪化

それでは初診時の状態を見てみましょう。

まずは全体から。

続いて、顔。

わかりにくいかもしれませんが、毛穴を中心とした脱毛、毛穴~鼻上にかけて皮膚炎がみとめられます。

続いて、左前肢の外側から。

ここもわかりにくかもしれませんが、被毛が薄く、短くなり、地肌が見えています。

続いて、右前肢。

これはちょっとわかりやすいと思いますが、左前肢と同じく被毛が短くなっています。

わかりやすいように黄色の線で噛んでいるところを示してみます。

続いて、左後肢です。

これも柴犬の被毛を見慣れていないと、病変としてみえないかもしれませんが、膝の周囲を噛んで被毛が短くなっています。

脱毛しているわけではありません。

黄色い線で噛んでいる範囲を示してみます。

上の写真と見比べてみるとわかるかと思います。

続いて、右後肢です。

ここも左後肢と同じく脱毛ではなく、噛んで被毛が短くなっています。

黄色の線で囲ってみます。

今回の症例は初診時におそらく「〇〇〇による皮膚病」と仮診断し、初診時の診断に沿って治療を行いましたが、中々いい治療結果には結び付きませんでした。

通常であれば1~3ヶ月後にはほぼ綺麗になっているのですが、今回は5カ月を超えた時点でも悪化が認められました。

自分自身の中でも「自分の治療の限界なのか?」と悩みましたが、色々な治療法をさせていただく機会をいただくことができましたので、色々な攻め方をして、最終的にこの悪化後に変更した治療内容でいい結果を出すことができました。

上記の悪化したときから2カ月半後の状態と比べて見てみましょう。


※画像をクリックすると拡大します。


※画像をクリックすると拡大できます。


画像をクリックすると拡大できます。


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※画像をクリックすると拡大できます。


※画像をクリックすると拡大できます。

痒がらないわけではありませんが、傷をつけるようなこともなく、被毛も綺麗に再生してきました。

この時点で初診時から8カ月経過していました。

正直、自分自身の未熟さを認め、大学病院を紹介するべきか・・・と悩みましたが、結果がついてきていない中でも新しい治療の選択肢を受け入れてくださった飼主さまの対応に本当に感謝しています。

「ここでは治らない」と判定されていてもおかしくない状況でしたので、最も頑張ってくださった飼主さまのおかげという以外ありません。

ただ診断名としては最後まで変更なく、今でもその診断として間違っていないと思っています。

それでも後半の2カ月半の治療の選択肢をもっと早くに提示することがでいなかった自分の非力・未熟なところは反省すべきで、今後に生かしていきたいと思います。

今回の症例を8カ月間治療させていただけたことで、、「柴犬の皮膚病を診る」という点においても新しい世界へ入ったような気がしました。

何度もお話しておきますが、チャンスを与えてくださった飼主さまに感謝しております。


当院の皮膚科専門外来を受診された飼主さまには、初診時にそのわんちゃんの皮膚病と同じように見える治療症例の写真を複数お見せするようにしています。

年間を通すと柴犬だけで何十頭と初診を診させて頂き、そのほぼすべてを画像データで残していますので、この数年は例外なく「うちの子とそっくり・・・」と思える症例を、しかも複数例お見せできています。

ここで症例報告をご覧になっている柴犬の飼主さまもきっと「うちの子と一緒」と思っている治療症例がいるのではないでしょうか。

そしてここの多くの治療症例をみながら「ほとんど同じに見える」、「柴犬には柴犬特有の同じ病気になりやすいのではないか?」、または「柴犬の皮膚病に特別効果のある薬があるのではないか?」と思う方もいるのではないでしょうか?

しかし答えは違います。

今回の症例を含め最近の6症例だけをピックアップしても、診断名と治療内容が一緒の症例は2症例のみです。他の4症例はそれぞれ異なる診断と治療を行っています。

このあとさらに2~3症例は紹介しようと考えていますが、それぞれ診断名・治療内容が少しずつ異なります。

柴犬を診るのが非常に難しい理由が少しずつ伝わってきているでしょうか?

また最後にまとめさせていただきます。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】教科書的治療では治らない

2014.02.07

こんにんちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

今日は、「よく診る柴犬の皮膚病」に見えて、実は非常に高いテクニックが必要とされた症例を紹介します。

キーワードは「アグレッシブに美しく」です♪

【症例】

 柴犬 6歳 男の子

【過去の病歴】

 〇2歳から痒みを伴う皮膚病で通院
 〇1件目の動物病院では「アトピー」として抗生物質、ステロイド、免疫抑制剤、インターフェロン注射・・・も改善せず
 〇2件目の動物病院では抗生物質、ステロイド、院内薬浴、食事療法を継続するも改善せず
 〇症状は全身の痒み、特に顔(目・口唇・頬)、お腹を舐める、胸の側面を後肢で掻く、四肢端(指間と足裏)を舐める

それでは初診時の状態からみてみましょう。

まずは顔からです。

続いて、上腕部分を正面からみてみましょう。

同じく右前肢上腕の拡大です。

続いて、右側面から胸部と腹部の拡大と合わせてみてみましょう。

同じ右側面からの胸部です。

同じく右側面からの腹部です。

続いて、左胸部側面からです。

最後に腹部、そしてその局所の拡大です。

それでは上記の初診時から約3カ月半後の状態を比較してみましょう。

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現在さらに半年経過しましたが、「ほとんど痒がらない。一番ベスト!」と言っていただけています。

さて、気になるのは

①なぜ治らなかったのか?
②なぜ綺麗になったのか?

ですね。

まず①の過去の治療で治らなかった理由から説明してみましょう。

一番の大きな理由はニキビダニ症を見落としていたことです。

たしかに僕も1度や2度の皮膚顕微鏡検査でニキビダニを発見できずに、診断に苦慮した苦い経験もあるので難しいこともありますが、先入観で診てしまうと「陥りがち」なところに本当に陥ってしまいます。

なぜならこの僕も一目見て「柴犬に典型的に認められるアレルギー性皮膚炎」と判断できるほどの典型パターンだったからです。

過去の治療をみても、前2件の動物病院の先生が明らかに柴犬のアレルギー性皮膚疾患と診断したと想像することができます。

そして肝心なことは、この「ニキビダニ症」にステロイドは禁忌(使ってはいけない)とされているのです。

続いて②のなぜ綺麗になったのか?

すべては伝えられませんが、やはりポイントとしては

1.柴犬の遺伝的特徴を含め、柴の皮膚病をよく知ること
2.この皮膚疾患をすべて1つにくくらず、2つあることを把握すること
3.教科書的にならず、唯一無二の目の前の症例(病態)に合った治療方針をつくること

です。

この教科書的ではない治療テクニックは、定期的に開催している臨床セミナーで「このような皮膚疾患をどのように考えるか」というところを、個人的な見解ではありますが解説させていただきました。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師 平川将人

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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