2018.03.22
アトピー・アレルギー疾患が多いといわれる柴犬の痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが発売されてそろそろ2年が経とうとしています。
アポキルの発売半年ごから「アポキルが効かない」というわんちゃんの問い合わせが多くなり、最近では新しい初診のわんちゃんのほとんどが「アポキルを服用しているのに痒い」という状態です。
あらかじめ伝えておきますが、アポキルは非常にいいお薬です。
いいお薬すぎて、効く効かない関係なく「とりあえずアポキル飲んでおこうか」でもいいと思うくらいです。
もちろんアポキルがよく効く痒みと、効かない痒みがあるため区別して治療すべきなのですが、安全性の高さから「こまったらアポキル」というプランができるのがアポキルのいいところだと思っています。
そのため当院にはアポキルを服用しているのに痒みが改善しないというわんちゃんばかりが来院するので、アポキルが効く痒みとアポキルが効かない痒みをだいたい区別できるようになりました。
もちろんアポキルが効かないときにどうしたらいいのかも大体把握できるようになりました。
たまには外しますが、たまにです。
今日紹介する症例もそんな「アポキルが効かない」という柴犬の皮膚病のわんちゃんです。
【症例】
柴犬 5歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇1歳すぎてから痒み発症
〇毎年明確な季節性があり、2月~5月の花粉の時期だけ
〇夏は一切発症しない
〇昨年(平成29年)、初めて秋に春と同様の目ヤニの症状がでる さらに身体のべたつきあり
〇基本は涙目、目ヤニ、目の痒み
〇平成29年11月からアポキルを1日2回服用しつづける(1日2回を4か月)も、今年の2月に例年どおりの目の痒み発症
〇今はわき、お腹の痒み
〇飼主さま曰く「今年はアポキルを服用しているので、花粉症を乗り切れると思っていた。いつも通り発症しているのでアポキルの効果を実感できていない」
〇エリザベスカラーと洋服で傷防止
それでは初診時の状態です。
3月17日が初診です。
まずは全体像です。
続いて、顔。
続いて、頚部とその拡大。
続いて、胸部とその拡大です。
右脇の拡大です。
胸部中央の拡大です。
左わきの拡大です。
続いて、腹部とその拡大です。
この症例で何を考えるか?
考えるポイントは
①明確な季節性がありアトピーを疑うにも関わらずアポキルが効かない理由は?
②今の痒みをコントロールするために必要な治療は?
この2つですね。
ただ痒みをコントロールするためには目の痒みと身体の痒みの原因と治療を変えた方がいいです。
今回は関東圏からの受診でしたので、次の再診は遠隔診療になります。
そのため診断と方向性はこの初診で確定しなければいけません。
あとは微調整のみ、毎年6月にはかゆみがなくなるため、今日からの治療結果をどう判断するかの問題はなきにしもあらずですが、おそらく飼い主様が「今までと違う!」と実感できる結果をだせると確信しています。
このタイプの皮膚病は当院と診療提携を行っている病院※であれば対応することが可能です。
※診療提携病院
京都市 よこた動物診療室
静岡市 あん動物病院
投稿者:
2018.03.15
柴犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病だけでなく、アポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが発売されたことで柴犬の皮膚病の治療は随分と楽になったと思うのですが、アポキルはどんな痒みにも効くわけではありません。
「効く」と思って使ったのに効かない、1日2回服用しているのに効かない・・・柴犬の皮膚病のあるあるではないでしょうか。
今日紹介する症例も、柴犬のよくあるアトピーにもかかわらず1日に2回アポキルを服用しているのに痒みがとれないというわんちゃんです。
【症例】
柴犬 10カ月 女の子
【経過】
〇生後4か月のころからずっと痒い!
〇腕を掻く&噛む、口唇を掻く、目を腕で掻く、お腹の側面を後ろ脚で掻く
〇アレルギー対応療法食を色々試すも、何を食べても改善しない
〇アポキルを1日2回服用しているにも関わらず痒い
それでは初診時の状態を紹介します。
まずは正面から。
続いて、顔を色々な角度からみてみましょう。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、胸部とその拡大です。
続いて、腹部です。
続いて、体幹の左側面とその拡大です。
続いて、左前腕(やや後ろから)とその拡大です。
続いて、右前腕の内側とその拡大です。
同じく右前腕の外~尾側の拡大です。
それでは初診時から2か月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
元々の痒みを10として、今は0~1程度です。
掻き壊して毛並みが悪くなっていた部位も随分と生えそろってきました。
顔・腕などの赤みもほぼなくなりました。
アポキルは1日2回だったものが、「ここ1週間飲んでないけど、痒くない」という改善です。
診断はいつものように一瞬で、柴犬にアポキルが効かないパターンの典型症例ですね。
柴犬の正常をしれば、この治療が可能です。
柴犬の痒い皮膚病でお悩みの方は、当院を受診してください。
投稿者:
2018.02.27
柴犬のアトピー・アレルギーなど、痒い皮膚病でステロイドやアポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
僕に花粉症はないのですが、くしゃみや目の痒みを訴えるわんちゃんが来るようになったので、春の訪れを感じる今日このごろです。
一般的に冬は皮膚病が少なくなるため、病院もゆっくりとした時間が流れるのですが、この冬は溜まっている症例報告をたくさんやる時期でもあります。
それでは今日の症例報告は、今年の1月中旬に初診で来院されたわんちゃんで、以前のブログで初診の写真を紹介したわんちゃんのその後です。
1月19日にUPしたブログ → 【柴犬の痒み専門外来】ステロイドが効かない理由
【症例】
柴犬 1歳10ヶ月 女の子(避妊済み)
【経過】
〇生後5か月から続く痒み
〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ
〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし
〇抗生物質を1年間継続中
〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用
〇痒みのコントロールができていない
〇季節性はなく、1年通してずっと痒い
それでは改めて初診時の写真を紹介します。
一見重度な感じはしませんが、痒いものは痒いのです。
100件どころか数百件の動物病院を超えて当院を受診するほど痒いのです。
普通の柴犬に見えた方がほとんどだと思います。
もし散歩でこのわんちゃんに出会っても、まさか県を越えて通院するほどの痒い皮膚病で悩んでいる柴犬には見えないと思います。
そんな見た目ですが、明らかに異常です。
前回のブログで書いたように診断は一瞬です。
それでは初診から6週間後の状態との比較です。
※写真をクリックすると大きく見ることができます。
いつも当院が紹介している重症からの改善ほどの大きな差がみえないかもしれませんが、非常に大きな改善が認められています。
痒みは元々10として、今は4くらいです。
写真をよくみたらわかると思いますが、毛並みもよくなり、フワフワになってきました。
飼主さまもこんなに毛並みがよくなったのは初めてと実感していただけました。
治療はステロイドではなく、2つのお薬を使いましたが1つはアポキルです。
アポキルがステロイドを上回ることはないと考えていますので、アポキル単独で効いたとは考えられません。
次は初回の治療方針で残った4の痒みですが、もちろん初期治療で痒みが残るのは想定範囲内であり、これも予定通り次の手をうつことにしました。
次の目標は4の痒みがある程度(完全ではない)緩和できること、もう少し先はアポキルを若干減らしても大きなぶり返しがないこと、です。
そのころにちょうどアトピーの痒みが出やすくなる花粉の多き季節、梅雨、夏・・・となるため、若干季節による悪化があるかもしれませんが、以前のように「効かない!」となることはもうないと考えています。
ここ最近の口癖の1つですが、「柴犬の正常を知れば異常がわかる」につきます。
ただ僕もこの柴犬の正常を把握するのに獣医師になって約10年かかったので、今は昔の自分を思い出しては反省する毎日です。
投稿者:
2018.02.23
柴犬のアトピーやアレルギー、アポキルが効かない痒い難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
一般的に動物病院の皮膚科で治療が難しい犬種の筆頭に上がってくる一つが柴犬ですね。
その独特の体質からシーズーやフレンチより扱いづらく、治療難易度としては最高クラスと思います。
わかりやすい例えが良くも悪くもアポキルの反応で、アポキルが非常に効く症例もいるのですが、全然効かない症例もいます。
もちろんアポキルが万能ではなく効かない痒みがあるのはわかるのですが、このアポキルが効く症例と効かない症例の区別がつかないケースがあるから困るのだと思います。
だれしも
「なぜ効かない?」
と考えるのだと思うのですが、本当の意味でアポキルが気かない痒みであるわけではないですし、アポキルが効く柴犬と見た目の違いが全くないわけではありません。
柴犬の正常を知っていれば、アポキルが効かない痒みを呈している柴犬を事前に把握することができます。
「この症例には効きが悪い」
そして効くための治療手段を把握していれば「時期にアポキルが効くようになりますよ」と伝えることができるので、効かないアポキルを使い続けることにも何の後ろめたさも感じることはありません。
当院でも「最初は効きが悪いようにみえるかもしれませんが、1~2ヵ月後には効いてきますよ。」と伝えて治療開始しています。
今回はそんな「アポキルが全然効かない!」という柴犬の皮膚病です。
【症例】
柴犬 4歳半 男の子(去勢済み)
【経過】
〇1才半から続く皮膚の痒み
〇顔(目・口・耳)、お腹、腕、四肢・・・・背中以外すべてが痒い
〇アレルギーといわれ、食事をかえても、おやつを変えても改善しない
〇1年前からアポキル1日2回服用しても痒い
柴犬でよくある「アポキルが効かない」という典型的な症例です。
診断は診察室でチラッとみた一瞬、アポキルが効かない理由と効くための治療方針の確定もほぼ一瞬です。
それでは初診時の状態です。
まずは全体、一見重度な感じはしません。
続いて、顔の左側で、目の回りも口周りもあちこち痒いです。
本来この顔周りの痒みにはアポキルが効果を示しやすいのですが、効きにくい柴犬もちょくちょくいます。
こういったタイプにはちょっとアプローチを変えると簡単に痒みのコントロールが可能になります。
続いて、右前腕で、柴犬に多い「腕を噛む」という症状が強くでいているため毛並みが悪くなっています。
このタイプの痒みにアポキルは効きにくいですね。
同じく右前腕の外側面です。
続いて、左前腕の内側。
続いて、胸部です。
胸を後ろ足で掻くというアトピーでよく認められる症状です。
腕とことなり、この部位の痒みにはアポキルが非常に効くことが多いのですが、柴犬では効きにくいことがありますね。
続いて、腹部とその拡大です。
お腹が真っ黒になっています。
診療で診る大事なポイントは痒くて黒くなってしまったお腹ではありません。
別のところに診断のヒントが隠されています。
最後に右胸部の側面の拡大です。
掻きすぎて傷になっています。
それでは治療後5ヶ月半後の状態と比較します。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
初診の治療スタートの時点でアポキルを1日2回服用している影響もあってか、見た目が重度でないため当院の症例方向の中では差の小さなものかもしれませんが、大分きれいになりました。
比較写真が約5ヵ月半と長期になったのは途中で悪化したためです。
悪化の理由は簡単で、初診から1~2ヶ月で順調によくなったのですが、飼主さま判断で投薬治療が減ったためです。
これは「のど元過ぎれば熱くない」という心理的にもやむをえないことで、よくなると「薬がなくても良くなったんじゃないか?」「いくつかあるお薬のうち、〇〇はもういらないんじゃないか?」と考えてしまうためかと思います。
投薬治療を無理強いすることはできないため希望に合わせるのですが、やはりおまかせ治療がベストであってそのおまかせからズレると振り出しに戻ってしまうことがあります。
という理由で比較写真が5ヵ月半になっています。
おまかせであれば3ヶ月でこの状態だったと思います。
肝心のアポキルですが、受診前は1日2回服用でも痒かったのですが、今は1日半に1回(痒みが強いときは1日1回)でコントロールしています。
もちろん1日1回の方が効きはいいのですが、お薬は少ないにこしたことはないので1.5日が許容範囲であればそれも選択肢の1つかと思っています。
もし柴犬の痒い皮膚病治療でアポキルが効かない場合は、最低限2つの病気のことを考えるのがいいと思います。
治療は2つの病気以外のあるため、かなり多くの種類を駆使しますが、それぞれが重要な働きをします。
「痒い=アポキル」ではありません。
なお今回の症例はスキンケアやサプリメントメインではさすがによくなりません。
ヒーリングケアLFプラスは適応ですが、単独使用では改善は難しいでしょう。
投稿者:
2018.01.20
アトピーやアレルギーなど、柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
目が痒い、耳が痒い、口が痒い、鼻が痒い、首が痒い、ワキが痒い、腕を噛む、膝をかむ、かかとを噛む、手先・足先をなめる&噛む・・・・背中は特に問題ない、3歳までに発症する柴犬のアトピー性皮膚炎の典型例ですね。
今はアポキルというすばらしいお薬がありますので、コントロールしやすくなってきました。
ただ、今でも一定数コントロールできない難治性皮膚炎の柴犬のアトピー性皮膚炎のわんちゃんがいます。
今日はそんな「どこからどうみてもアトピーなのに、アポキルが効かない」という症例です。
【症例】
柴犬 2歳 女の子(避妊手術済み)
【経過】
〇生後7ヵ月後から痒みを伴う皮膚病
〇季節性はなく1年通じて痒みがある
〇顔、耳、口唇、わき、腕~手首、膝~かかと、四肢端
〇16ヶ月前からアポキルを服用しているが、服用していても効いているわけではない
ここでポイント①、飼主さまのお住まいは関東圏です。
当院が提供している遠隔診療を希望するお申し込みでした。
すべての皮膚科症例が遠隔診療の適応になるわけではないため、まずはお写真をいただきました。
いつもお話している通り皮膚科は初診の診極めが大事です。
この症例でもこのお写真で判断可能です。
この時点で治療方針はほぼ確定です。
そして日時をあわせて東京品川で実際に診察を行いました。
当日のお写真を紹介します。
ここまでは送っていただいた写真、症状の通りです。
皮膚病は見た目が何より大事で全身に診断につながる重要な所見が隠されています。
痒いところをみるだけでなく、予測通りか確認することも重要です。
ここも大事なポイントですね。
この初診時から約1ヵ月後の状態です。
飼主さまからいただいた写真なのでわかりやすい比較写真ではないですが、ご了承ください。
まずは腹側の全体像。
続いて、頚部。
続いて、胸部です。
フワフワの毛並みですね。
痒みは「かきますが、気になるほどではありません」というレベルまで改善しました。
症例報告に使うフレーズとして「アポキルが効かない」というセリフをよく使用しますが、正しくは「アポキルが効く痒みではない」で、アポキルを使うべき痒みにはとてもよく効くんです。
アポキルはすべての痒みを止めるわけではないため、原因を診極めて何をターゲットにして使うかを判定していけば非常にいいお薬です。
もちろん副作用が非常に少ないので「とりあえず」で使うとこもできますが、「アポキルを使って残った痒みをどう評価すべきか」まで考えて処方するのが正しい使い方と言えます。
前回の症例同様にある治療を加えれば、今回の柴犬にも他のアトピーの柴犬同様アポキルはよく効くようになります。
大事なのは、
柴を極める
でしょうか。
柴犬の正常を知れば、柴犬の異常を知ることができます。
常に、常に柴犬の皮膚を診続けるば、いづれ正常がわかるようになり、次に異常がわかります。
正常を知らずに異常はわかりませんからね。
今回紹介した柴犬の初診では、静岡県静岡市の動物病院「あん動物病院」の大石先生と一緒に診察しています。
静岡市近隣にお住いの方で、柴犬の皮膚病にお困りの方はあん動物病院の大石先生にご相談ください。
当院ではこういった一般的に知られていない診断・治療法を含めたプライベート皮膚科セミナーを開催しています。
ご興味のある方は当院HPからお問い合わせください。
投稿者:
2018.01.19
柴犬のアトピーやアレルギーなど、痒みと伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の痒みトラブルは非常に多いですね。
痒みを抑えることができる「アポキル」が発売されて、一定の症例はこのアポキルによってかなりの改善を認めていると思われます。
しかしアポキルが高い効果を示す症例と、そうでない症例がいますが、その違いはどこにあるのでしょうか?
これはアポキルだけに限ったものではなく、ステロイドや免疫抑制剤などの痒みに関するお薬全般にいえることです。
「服用しているのによくならない」
当院を受診しているわんちゃんのスタートラインはここです。
今日はそんな「痒み止めの効果がでない」という柴犬についてです。
【症例】
柴犬 1歳10カ月 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇生後5か月から続く痒み
〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ
〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし
〇抗生物質を1年間継続中
〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用
〇痒みのコントロールができていない
〇季節性はなく、1年通してずっと痒い
それでは初診時の状態です。
6日前に初診のために当院を受診されたので、治療後の写真はまだありません。
初診時の検査では、ニキビダニ陰性、マラセチアわずかに検出、膿皮症なしでした。
診断は一瞬です。
いや、実は看護師が受けた電話の問診メモをみるだけでわかりました。
※先入観はときに痛い目をみるので本当はよくありません。
あとは当日パッとみて&お話聞いて確信へ、各種検査は似ている疾患を除外するために実施します。
簡単な特徴としては、
〇柴犬
〇若い発症
〇季節性のない痒み
〇痒み止め(一般的にはアポキルとステロイド)が効かない
〇寄生虫(ニキビダニ、疥癬)ではない ※なさそうでも可
この条件であれば「柴犬のあるある」かもしれませんが、シンプルなアトピーであればアポキルなりステロイドが効きますし、季節性もあると思いますのでそのグループには入らないちょっと難しいタイプに分類できます。
おもしろいのは、飼い主さまからの主訴には決して入ってこないあることに関する情報を聞き出すことで、この病気の診断に近づくことができます。
今回も一通り飼主さまのお話を聞いて、簡単な顕微鏡検査をして、改めて飼主さまに質問をしてみました。
「お近くで柴犬のわんちゃん見る機会もあると思いますが、他の柴ちゃんとこの子で何が違うと思いますか?」
飼主さまはこの質問に的確に、かつ僕の期待通りの答えを返してくださいました。
病気の原因はそこだったんですね。
ただ、飼主さまはそれを僕に伝えることはできなかったのです。
認識できていることと、今の病気と関係していると思うことは別で、獣医師に伝える症状には入っていませんでした。
診断には検査だけでなく、飼い主様から必要な情報を聞き出す質問ができることも重要と思います。
参考までにこの子はアトピーの範疇でいいと思います。
問題はなぜこの子のアトピーにステロイドが効かないのか?ですね。
仮にアポキルでも同様ですが、効くはずのものが効かないのは「効かない理由」があるのです。
効かない理由の診断をつけて治療さえすれば、この症例のアトピー部分には他の症例同様にアポキルやステロイドが効くようになります。
この症例に必要なのは痒みを抑える治療ではなく、アトピーにステロイド(同様にアポキルも)が効かないある疾患を治療してアポキルが効くようにすることです。
3か月後にはアポキル(ないしステロイド)を毎日飲まなくても痒みがコントロールできるようになると思います。
次回は今回紹介した症例とまったく同じような柴犬で、「アポキルを服用しているのにまったくよくならない」という症例の改善経過を紹介します。
おもしろいは東京で開催した遠隔診療での症例です。
要するにメールと写真で目途をつけ、実際に診るのは1回だけで診断・治療方針を組み立てるという医療です。
また、当院では動物病院向けにこのような今の皮膚科で不足している大事なことについて、個別で皮膚科セミナーを開催していますので、ご希望の方はHPからお問い合わせください。
投稿者:
2017.12.18
柴犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
クリスマスまで1週間を切り、クリスマスが終わればもう今年もカウントダウンで新年ですね。
クリスマスの飾りつけをしながらお正月の飾り付けも選び、クリスマスプレゼントを準備しながら年賀状を書くというイベント大好き日本人の性を実感する毎日です(笑)
今日の症例報告は先日の柴犬の記事で伝えておいたわんちゃんです。
12月16日に初診で来院されたわんちゃんをその日のうちに紹介しています。
【症例】
柴犬 1歳 男の子
【経過】
〇生後7ヶ月に痒み発症
〇徐々に拡大して悪化
〇地元動物病院にて「アトピー?アレルギー?」
〇抗生物質と消炎剤の内服で改善なし
〇11ヶ月からさらに悪化し、拡大
〇四肢の痒み、顔(目・口・頬)の痒み、目の脱毛など
それでは初診時の状態です。
続いて、顔正面の拡大。
続いて、顔の左側。
同じく顔の左側。
続いて、身体側面の右側から。
続いて、右前肢の内側、とその拡大。
同じく右前肢の外側と、その拡大。
続いて、左側面。
腹部の左側とその拡大。
左後肢の側面。
同じく左後肢のかかと付近を外側から。
同じく左後肢の甲、外側から。
背中以外傷だらけで来院されました。
噛みすぎて毛もありません。
それでは10週後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくみることができます。
まずは顔の正面、右、左の順番です。
続いて、左側面。
続いて、右前腕。
続いて、右後肢。
続いて、左側面。
続いて、左前肢。
続いて、左腹部とその拡大。
続いて、左後肢の側面。
非常に綺麗に改善しました。
傷ひとつなく、毛並みは100%回復です。
症状も改善し、10週間後の状態ではほぼ痒みなしです。
念のためアポキルを渡しておきましたが、治療9~10週目の2週間で服用したのは2~3回のみ、それでも痒くないという回復ぶりです。
もちろんステロイドの1度も処方していません。
今回の症例の特徴の一つは、「アポキルが効かないタイプの痒みである」ということです。
まったく効かない、絶対にきかない・・・というほどではないので、併用するのはありなのですが、「アポキルで抑えきれない」とわかった上で処方しなければ後が困ります。
再診時に「痒みがあまり改善していない」という状態を予測して、再診時に次の治療に踏み込める準備を初診時にしておく必要があります。
今回の症例でも初診時に「とりあえずアポキル」という処方をしましたが、予測どおりあまり改善なし・・・という結果でした。
想定どおりですので、再診時から初診時の時点ですでにお伝えしていた治療第2弾を併用して、最終的にはアポキルがなくてもかかない、という状況に改善したという流れです。
ブログにしてしまうと治療は一瞬にみえるかもしれませんが、柴犬の皮膚病治療は難しいと思います。
アポキル単独でかなり痒みを抑えられる症例もいるのですが、そうでない症例もそこそこいます。
そしてアポキルで痒みを抑えきれないときに次の手が中々ない、というのが今の皮膚科の現状です。
当院ではアポキルが効かないという診療が大半を占めるので、それ以外の手をいくつか持って診療に臨んでいます。
ただ、打つ手が正しくてもそのタイミングが悪ければ十分な評価ができなかったりしますし、いいタイミングで手を打っても「それがいつ効くのか?効いているのか?」を判断できないといけません。
こういった「アポキルが効かない痒み」について、個別でセミナーを開催していますので、診療提携をご希望の方はご連絡ください。
参考までに前回初診時のみを紹介した柴犬のわんちゃんと原因は一緒です。
前回紹介した柴犬のわんちゃんもアポキルを1日2回服用して改善しない皮膚病です。
3ヵ月後までには綺麗になるでしょう。
投稿者:
2017.12.17
柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが使えるようになって1年が経過し、症例報告のほとんどにアポキルが処方されているにもかかわらず改善がなく、タイトルが「アポキルが効かない」とワンパターンになってしまうのが最近の悩みの種です。
根本的解決にならないのですが、最後に「痒い理由」とつけて無理やり新しいタイトルにしてみました。
さて、今日紹介するのは「本日、12月16日に初診で来院された柴犬の皮膚病の症例」です。
もちろん検査結果は出揃っておらず、投薬治療もはじまったばかりです。
治療後の写真はありませんが、初診時の状態を紹介します。
【症例】
柴犬
【経過】
〇半年以上前から全身の痒み
〇アポキル1日2回服用していても痒みが改善しない
〇抗生物質1日2回服用中
〇食材をかえて何種類も食事療法を行ったが、改善しない
それでは初診時の状態を紹介します。
まずは正面から。
続いて、顔の左側から。
続いて、顔の右側から。
続いて、頚部とその拡大。
続いて、左前腕の尾側から。
続いて、右前腕の内側とその拡大。
続いて、左前腕の内側。
続いて、胸部とその拡大。
続いて、腹部とその拡大。
続いて、身体左側と腹部側面の拡大。
最後に後ろ側と大腿尾側の拡大。
アポキル0.45mg/kgを1日2回服用していても痒みの改善がないわんちゃんです。
念のためを含め、除外しておきたい疾患の検査を行いましたが、注目すべきメインターゲット(原因)は1つと考えています。
サブの原因は2つありますが、メイン1つの治療を徹底して行えばサブの原因2種はさほど目立たなくなると思います。
その他の特別な疾患が隠れていなければ、1ヵ月後くらいから治療結果がでて、3ヵ月後にはアポキルに頼らなくていいくらい十分な結果がでると思われます。
影響を受けるとすれば、このあとくるであろう発情でしょうか。
発情ばかりはなんともできないため、万が一治療期間に重なれば「やむをえなかった」となります。
なお診断は、問診時に抱っこされている柴ちゃんを見た一瞬でほぼ判定可能です。
参考までに今回の皮膚病はスキンケアとサプリメントではさすがに改善しません。
次回の症例報告は、今回とほぼ同じ柴犬の症例報告(治療後比較あり)の予定です。
傷だらけの状態で来院されましたが、アポキルもいらないくらい綺麗に改善した症例です。
投稿者:
2017.10.02
柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚病治療専門病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日紹介するのはここ最近の中で最も「会心」だった症例です。
【症例】
柴犬 4歳 去勢オス
【経過】
〇1才のころから皮膚病
〇最初は季節性の痒み発症であったが、この2年は通年性
〇シクロスポリンで改善なし
〇アポキルでも改善なし
〇シクロスポリン+アポキルの同時併用3ヶ月でも改善なし
〇最近はステロイドでも改善なし
〇食事療法は、低アレルゲン、アトピーフード、グレインフリーと変えるも改善なし
さて、初診時の状態です。
正面全体から。
続いて、右側面から。
続いて、顔~頚部(右)。
同じく頚部の右、拡大。
同じく右頚部、さらに拡大。
頚部、正面から。
同じく頚部正面、拡大。
続いて、前胸部。
続いて、右前肢の屈曲部(肘)。
続いて、右前腕内側。
続いて、右前肢外側。
続いて、右胸部側面。
続いて、右肩の側面拡大。
右胸部側面の拡大。
同じく右胸部側面の拡大2箇所目。
同じく右胸部側面、3箇所目。
続いて、右腹部側面。
続いて、右後肢膝~カカトの側面。
続いて、左側面。
左側面をやや斜め後ろから。
右側面の炎症部位の拡大。
右腹部側面の拡大。
続いて、右後肢側面。
かなり重度ですが、この見た目は特徴的なので診断は一瞬です。
万が一のことを考えて、似ている疾患を除外するためにいくつか検査をしますが、頭の中で答えは決まっています。
綺麗に治るまでの軌跡を描いてからゆっくり検査、説明をします。
※検査結果は確認のためで、治療方針を立てるためではありません。
それでは初診時からちょうど12週間後との比較です。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
参考までに
〇甲状腺機能低下症はなし
〇ステロイドの副作用でもない
〇疥癬でもない
〇アポキルは効かない
〇上記の写真で紹介した病変に、抗生物質を必要とするものはない
当院でも初診時に「アポキル」を処方しましたが効果はゼロで、飼主さまから「痒みはまったくかわらない」といわれました。
もちろん現状でアポキルがほとんど効かないだろうというのはわかってたのですが、「副作用はほとんどないし、多少効果があればOK」というつもりで処方しています。
それだけではなく2回目~7回目までの再診時もずっと「よくならない。かわらず痒い」といわれ続けており、9週間後の7回目の再診時でも「痒みはあまり変わらず、元々を10とすると今8くらい」という低調な評価でした。
ただ!改善する自信があったので「治療方針は変えません。よくなります。」と言い続けて初診時の診断は変えませんでした。
そしていよいよ12週間後の8回目の診察時、飼主さまにはじめてうれしい言葉が・・・
「おかげさまで随分良くなりました。散歩でも『別人みたい!』と声をかえてもらえました♪」
痒みも足先をちょっとなめる、口を時々掻く・・・というくらいです。
毛並みも非常によく、ツヤツヤです。
柴犬のこのタイプの皮膚炎はときどき診る事があり、だいたいアトピー、アレルギーといわれて難治性皮膚病になっています。
「アトピーではない」「アレルギーではない」と言うことは難しいのですが、「アトピー」「アレルギー」といっていると絶対治りません。
このタイプはアポキル単独では改善しませんし、食事療法なんてほぼ無意味ですし、スキンケアで改善するわけでもありません。
あることをし続けなければ結果がでません。
結果がでるまでの数ヶ月も痒みが続くのですが、飼主さまの「痒みが改善しない」という返事に対して、自信をもって「このままでよくなります。」とブレずに継続する力が必要です。
この「痒いといわれてもブレない」というのがかなり難しいと思います。
もう1点、これが難しいといわれる理由は「教科書に掲載されていない」ということでしょうか。
また、セミナーで解説されているのも聞いたことがありません。
近い記載はわずかにあるのですが、おそらく誰も気づいていないのが現状です。
当院と皮膚科に関する診療提携を行っている病院の先生には詳しく解説する予定です。
今回の症例でも初診時の診極めで、治療方針を変更することなく改善することができました。
投稿者:
2017.09.14
犬の皮膚病治療におけるスキンケアに力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院では以前からスキンケアに力をいれていますが、スキンケア単独で皮膚病が治るとは思っていません。
むしろスキンケアで治る皮膚病はほんのわずかな軽度なものだけであり、スキンケアに拘りすぎてはいけないとすら思っています。
ただ、スキンケアがさほど重要ではないという意味ではなく、スキンケアがなければ絶対にうまく行かない皮膚病があるため、そこを診間違わないことが重要と考えています。
今回紹介するのはそんな「スキンケアがなければ絶対にうまくいかない」という症例です。
【症例】
犬 ミックス(柴×キャバリア)
【経過】
※後日記載します。
では、初診時の状態をみてみましょう。
まずは、顔から。
続いて、頚部と前胸部。
続いて、右前肢。
続いて、胸部。
続いて、腹部~内股。
続いて、右後肢。
続いて、胸の側面~肩とその拡大。
こういった症例は非常に多いですね。
当院ではこういった脂漏症の症例報告を過去に数え切れないほど紹介してきましたが、こういった症例では「院内薬浴」が非常に効果的です。
ただ、今回は飼主さまが「自宅でやります!」というので院内薬浴は行わず、自宅でがんばってもらうことにしました。
それでは初診時から約2ヵ月後くらいの状態を紹介します。
随分と改善したのがわかります。
もちろん使用したのは当院のオリジナルスキンケア商品、MedicareクレンジングオイルとMedicareシャンプーです。
※当然ですが、投薬治療も併用しています。
しかし全ての部位で十分な改善があったかといえばそうではなく、脂漏の症状が残っている部位がありました。
それは一番脂漏が重度であった胸部です。
ある程度時間が経過したにも関わらず・・・
この状態でした。
もちろん想定外ではなく、2回目の診察時には「十分にシャンプーができていない→このままでは症状が残る」ということが予測できていたので、再診のたびに飼主さまに「十分なシャンプー療法ができていません。院内薬浴を受けませんか?もっとよくなると思います。」と提案してきましたが、実施にはいたりませんでした。
しかしこのままでは改善が止まってしまうため、一定の改善があった時点で改めて「もっとよくなります。僕を信じて受けてください。」と説得し、院内薬浴を受けていただくことになりました。
その初回の薬浴が2週間前で、そして本日がその薬浴から2週間後の再診でした。
強い脂漏が残っていた胸部は・・・
非常に綺麗になりました!
拡大してみましょう。
色(皮膚炎)も改善し、皮膚もやわらかく、フケも皮脂もほとんどありません。
飼主さまからも、「随分よくなりました。元気になって、若返ったみたい。フケもへって掃除も楽になりました。」と喜んでいただけました。
今回の症例のように、スキンケアは非常に重要です。
ただし、スキンケアが正しく十分な技術で実施されれば・・・でもあります。
おそらく自宅でのスキンケアの達成レベル・完成度は高くなく、やはり熟練の技術がなければ十分な結果を出すのは難しいということです。
なお今回の症例には抗生物質を処方していません。
抗生物質を使わずに治したという意味ではなく、「このタイプの皮膚疾患に抗生物質は不要」という意味です。
また、スキンケアだけで治るわけではありません。
必ず投薬治療が適切に行われていなければ、これだけの改善は不可能でしょう。
余談ですが、初診時には静岡のあん動物病院の大石先生が見学にきていたので、初診時の治療プランの組み立て方、病変の見方について解説いたしました。
そしてその後の治療の詳細について治療内容と写真で情報を共有しています。
それではまとめです。
今回の症例の初診時に重要なことは、
・初診時に治療プランを組み立てることができること
・抗生物質が不要であることがわかること
・スキンケアだけで改善できるものではないが、スキンケアが無ければ改善できないことがわかること
です。
そしてもっと重要なこととしては、再診時に
「スキンケアが不十分であることが判断できること」
「スキンケアが不十分であることを飼主さまに伝えることができ、改善できることを実感させられること」
ですね。
当院では皮膚科のない個人動物病院向けにスキンケア商品・サプリメントの提供を主とした業務提携を行っています。
興味のある先生は問い合わせフォームからご連絡ください。
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