2018.04.11
柴犬のアトピー・アレルギー・脂漏症・マラセチアといった痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回の柴犬の皮膚病の症例報告ですが、いつもと違います。
いつもは「初診から2~3ヵ月後、これだけ改善しています」ですが、今回は「初診から3~4年後、治療方針を変えたら劇的によくなった」です。
初診時(3年以上前)に設定した治療方針で、確かに一定のレベルまで改善&長期コントロールできていたのですが、あるとき予測せず急激に悪化したため「これを機に治療方針を見直しましょう」と提案したという流れです。
元々採用していた治療方針は、
〇院内薬浴(4週間に1回)
〇食事療法
〇アポキル(アポキル発売前はシクロスポリン)
でした。
この治療方針であるとき急激に悪化した状態を治療前として紹介します。
この状態で治療方針を一部変更して2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
飼主さまから「今まで以上によくなった!すごくいい!」と、と評価していただけました。
加えて
「くやしい!!」
ともおっしゃったので、その理由を伺うと・・・
「お薬が効いたから、これからもこれを飲まないといけないので(笑)」
ということでした(笑)
僕からは、
「この治療成績を最初の時点で出すことができず申し訳ありませんでした」
と反省の言葉をお返ししました。
以下、僕の言い訳です。
以前から今回採用した治療法が適応になるのではないかと思っていたのですが、なにせ初診時から一定ラインまで順調によくなっていたため「これだけよくなっていれば、いらないということなのかな?」と思っていたのです。
そのため今回の悪化した皮膚をみて思ったことは
「ずっと維持できていたのに、想定外だ・・・新しい病気になったのか?」
ではなく、
「この皮膚は・・・やっぱり〇〇〇〇だ。これを機に治療を変更しなければいけない。過去の治療を否定することはやむをえない。」
でした。
そのため数年ぶりに悪化した今回に、改めて検査した項目はなく、治療方針の変更は悩みなく一瞬で決定できました。
しかし若干複雑です。
複雑な理由は、初診時にできなくはなかった・・という意味もありますが、それとは別のことです。
①初診時(3年前)は、確かにこの治療をせずに一定レベルまで改善した
②初診時には、この異常と思える決定的証拠なしだった
この2点であり、この異常は明確な白か黒の判定ができないグレーが存在し、状態によっては的確な治療がなくても改善しうることもあれば、不規則に悪化することもあるということです。
難しいですよね。
この異常はまだ教科書に掲載されていない皮膚疾患のため、今後はこの病気を色々な角度から切り込んでいこうと思います。
参考までにこの疾患に薬浴は非常に重要ですが、スキンケアやサプリメントでは根本的な解決はできません。
投薬治療が不可欠です。
ここで今の皮膚科の問題点について簡単にお話しておきます。
皮膚科の教科書が間違いというわけではなく、学術的には選ばれた情報の羅列でしかありません。
もし教科書が正しければ、今の皮膚病は全国どこでも簡単に改善するはずです。
治療が完成しない理由はパズルと一緒、「ズレているピースがないか、足りないピースはないか」の2つです。
なお治療のパズルに「枠」はないため、「ピースが足りない」と感じられるかどうかも獣医師の力量にかかっています。
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