2021.01.16
アトピー・アレルギーなど痒い皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回はイタリアン・グレーハウンド(通称イタグレ)の皮膚病治療です。
特徴的な見た目で有名なイタグレですが、数が多くないのでトイプードル・チワワ・ダックス・柴などの犬種と異なり、そう頻繁に診ることはないかもしれません。
ただ、このイタグレですが皮膚が弱いです。
「アポキルが効かない」という主訴をよく聞きます。
アトピー?
アレルギー?
体質?
イタグレの皮膚が弱い根本的な理由がわかっていれば治療は簡単です。
今日はそんな症例報告です。
【症例】
イタリアングレーハウンド
【経過】
〇痒い(掻く、噛む)
〇アポキルを毎日飲んでもすっきり治らない
それでは初診時の状態です。
ここから治療後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
結果は劇的です。
何が違うかわかりますか?
大事なのは、
毛並み
です。
モコモコ&フワフワです。
飼主さまも「こんなのみたことない」と衝撃を受けていました。
イタグレって毛が少なくで、地肌が見えるのが普通だと思われているのですが・・・
本当は、
「それ、病気です」
なんですね。
治療しなければ命に関わるではないとは思うのですが、皮膚が弱い原因になります。
「毛並みがよくなる=皮膚コンディションがよくなる」
なので、治療の価値は高いです。
問題なのはこのイタグレの毛並みの異常が、「イタグレはこんなもの(正常)」と勘違いされていることです。
僕も3年前までそう思っていました(反省)。
理由は簡単、「教科書に掲載されていない」からですね。
治療法がないどころか、病名もないので「病気として認識されていない」という状態です。
今は違います。
診た瞬間に「治せる」と確信できる判断力と治療法があります。
イタリアングレーハウンドだけではなく、その他のハウンド系・ピンシャー系も同様なので、もしお困りの方がいれば当院までご相談ください。
投稿者:
2020.03.18
痒みを伴う犬の皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルを毎日服用しているのに痒い(掻く・舐める・齧る・嚙む・こする)症状が改善しないときにどうすればいいのか?と悩んでいる飼主さまも多いのではないでしょうか。
今回はそんな症例報告です。
【症例】
3歳 ジャックラッセルテリア
【経過】
〇1年前から全身が痒い
〇アポキルを毎日服用しても「少しマシ」という程度
〇掻きむしる、かじる、噛む、こするなど症状が強い
それでは初診時の状です。
続いて、頚部です。
続いて、右前腕のやや内側と外側からの2枚です。
続いて、胸部と腹部の2枚です。
最後に、右後肢の外側です。
この初診時から3か月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
続いて、胸部と腹部の2枚です。
当院に来院するまではアポキルを毎日服用していても「痒い!」という状態でしたが、3か月後には「1週間以上服用していないけど特別痒くない」というレベルまで改善しました。
もちろん掻きむしることはほぼありません。
この症例には標準医療ではアプローチできない原因が2つ隠れています。
アポキルは非常にいいお薬ですが、すべての掻痒を抑えるわけではありません。
医療にエビデンスは非常に重要かと思いますが、すべてが検査で分かるわけではありませんし、未知の疾患もあるため、エビデンスがなくても「安全性高く劇的に改善させる」という形も医療の1つかと思っています。
なんとか今年中に世界に向けて発表したいと思います。
※提携病院には詳細な症例報告を配布しています。
投稿者:
2020.02.08
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今回はイタリアングレーハウンドの症例です。
【症例】
イタリアングレーハウンド 3歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇1歳になる前から痒みが出てきた
〇アポキルを服用しても改善しない
〇へそ、腰、後肢、陰部、足先を舐める
〇頭~首を掻く
それでは、初診時の状態です。
まずは、体の正面です。
顔(右側)です。
頚部です。
体全体(右側)です。
頚部(側面)です。
右大腿部です。
足先です。
臀部です。
それでは、治療後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
口唇周囲の皮膚炎が改善されています。
続いて、頚部です。
元々皮膚炎が強かった部位ではないのですが、非常に重要な部分で、「毛並み」が改善しています。
遠目ではわかりにくいのですが、拡大することでよくわかります。
続いて、頚部の右側面の拡大です。
毛並みが非常によくなっているのが分かりますね。
続いて、右後肢側面(膝周辺)です。
膝の周囲の皮膚炎、脱毛(かじっていた)部分が非常に綺麗に改善しています。
続いて、肢端です。
かじっていたため地肌がみえていましたが、かなり綺麗に改善していますね。
続いて、左大腿部尾側(腰背部)です。
ここもかじっていたため毛が短くなって脱毛していましたが、綺麗に改善しました。
今回の症例のポイントです。
「アポキルが効かなかった」
純粋な痒みであればアポキルは非常によく効きます。
かといって掻く・こする・舐める・齧るといった掻痒症状が、すべて「痒い」から来ているとは限りません。
痒くなくても掻いたり齧ったりすることだってあります。
今回の症例では診た瞬間に「純粋な痒み」以外に2つの問題があることに気づかなければ治療がうまくいきません。
1つは「イライラしている」という心因性の問題です。
2つは「遺伝的な皮膚コンディション異常」によって起きている問題です。
この2つに同時にアプローチすればアポキルが効いてきます。
アポキルが効かないという表現ではなく、アポキルが効く痒み以外の問題点を見つければしっかり効くということです。
ということで、治療成功に必要なのは初診時にこの2つが判断できること、そして効果的な治療方針を立てれることになります。
アポキルを服用しているのに十分な効果が得られないと悩んでいる方は当院までご相談ください。
投稿者:
2019.06.03
手先・足先を舐める、腕をなめる・・など、痒み疾患に間違われやすい「癖」に対する皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
皮膚炎などはなく、同じところを舐めて続けて茶色になっているわんちゃんいませんか?
アポキル・ステロイドといった一般的な痒み止めで効果がないのも特徴の一つです。
【症例】
チャイクレ
【経過】
〇元々アトピーがあり、アポキル・抗不安薬・ヒーリングケアLFプラスで2年ほど症状はおちついていた。
〇家族構成の変動などのきっかけて再発し、同じ治療内容を続けているにも関わらず半年以上改善がない
※以前にも治療実績として紹介したことがありますが、その後の経過が順調なので再掲載です。
それでは再発時の写真です。
右腕の手首やや上の写真、そしてその拡大の2枚です。
同じ部位を繰り返し舐め続けているため、皮膚がびらんをおこしています。
ここから「癖」に対する治療として投薬治療の変更とサプリメントの変更を行いました。
もちろん治療結果はよかったのですが、投薬治療を古い内容に戻しても維持できるかもやってみました。
投薬治療を昔のレベルに戻しても一切ぶり返しなしで維持できています。
なにより被毛の茶色が一切ないため、「舐めていない」という状態です。
もちろんパーソナルケアPⅡ+だけでのアプローチではなく、投薬治療も併用していますが、以前はコントロール不能だった舐め癖の投薬内容にもどしているため、サプリメントでの維持ができている指標になると思います。
この子には腕だけなく、他の部位を噛む癖もあったのですが、現在は全身どこも噛んでいません。
かなりいい状態なので、今はアポキル・抗不安薬などの投薬治療の減薬にも取り組んでいます。
「舐め癖」「突発的な掻き壊し」「急に噛みだす」といった症状は、従来の痒み治療(アポキル・ステロイド)での反応が悪く、いい治療プランが提案できなかった症状ですが、現在はいい治療プランが提案できています。
そのうちの1つが当院が今年の4月に開発したサプリメント「パーソナルケアPⅡ+」です。
当院のオンラインショップでお買い求めいただけます。
投稿者:
2018.10.26
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今回は、バーニーズ・マウンテン・ドッグの症例です。
【症例】
バーニーズマウンテンドッグ 9歳9ヶ月 男の子(去勢手術済)
【経過】
〇眼、耳、口唇、四肢端の痒み
〇2年前からアポキル毎日服用しているかが、痒みが改善しない
〇季節性無し、年中悪い
〇エリザベスカラー使用
〇カラーが無いと出血するほど掻く
〇食事療法を行ったが改善しなかった
それでは、初診時の状態です。
まずは体の正面です。
右耳です。
右目です。
口唇(左側)とその拡大です。
足裏です。
それでは、初診時から約7週間後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
眼の周囲の赤みは無くなり、口唇と足裏もほぼ改善しました。
特に顎下は毛が生えてきたのが分かります。
掻き壊したり、手をなめすぎることもなくなったのでエリザベスカラーも外すことができました。
このような症例には当院が開発したスキンケア&サプリメントを併用すると治療成績が向上できます。
当院で開発したスキンケア&サプリメントは以下のオンラインショップでお買い求め頂けます。
【症例報告制作者】 看護士 長尾
・・・・・・・・・・
【獣医師の解説】
アポキルを毎日服用しているにも関わらず痒みが強く、エリザベスカラーを外すことができないという状態はかなり重症度が高く、今の皮膚科の治療限界ラインとも言えます。
今回の症例にはアポキル1日1回を継続処方とし、その他の治療を見直しました。
・心因性治療
・スキンケアECプラス
・食事療法
・外用療法(スキンケア含む)
すべて効果があったと思うのですが、4つそろうことに意味があり、一つなければこれだけの治療成績は達成できなかったと思います。
そのためポイントは「アポキルが効かないわけではない。アポキル以外の必要な治療をすべて、かつ同時に揃えることができればアポキルは効く」ですね。
投稿者:
2018.09.22
アトピー・アレルギーなどアポキルが効果を示す痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
痒みに対する画期的な新薬アポキル(オクラシチニブ)が発売されて3年目、当院ではアポキルが効く症例に「どうしたらアポキルを減らせるか」という治療を積極的に行っています。
今回紹介する症例は「アポキルが非常によく効く症例が、アポキルを使わなくてもよくなった」という非常に面白い症例です。
【症例】
プロットハウンド
【経過】
過去に1度紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
2018年3月16日 アポキル&アミノ酸系食事療法で改善しない①
2018年5月21日 アポキル&アミノ酸系食事療法で改善しない②
まず初期治療で改善したあと、継続治療で来院された今年7月の状態を紹介します。
基本治療は初診時から変わらず、ポキル1日1回服用を含めた継続治療をしていましたが、夏に入ってやや痒みが増えたということでした。
初診時のような皮膚の悪化はないのですが、当初の想定よりフケが残るなど皮膚コンディションに違和感があったので、ある治療を併用することを提案してみました。
「ある治療」を併用して6週間後の状態と比較してみましょう。
※Beforeは初診時ではなく、ある治療を加える直前(当院継続治療中)の状態です。
見違えるような改善です。
どのくらい改善したかというと、「アポキルを飲んでないのに痒くない」というレベルです。
過去の経過と基礎疾患のことを考えると「今後もアポキルはゼロで」となるわけではないのですが、今後はアポキルの服用量は半分(2日に1回)以下になると思います。
今回のポイントは「アポキルが効く=アポキル継続」ではないことです。
アポキルの効果が部分的(限定的)なときはもちろん、例えアポキルが効いていても、より根本的な治療法が残っている(見落としている)可能性もあるということです。
参考までにこの症例の初診時にこの追加治療のプランを提案していたか?というと、「今後の追加治療の選択肢として〇〇〇の治療がある」しっかりと伝えていました。
最初からすべて併用するという治療プランもいいのですが、どの治療がどれだけ効果を示すのか、という点ではアプローチのタイミングを分けるのは飼主さまにとってもメリットのあることだと思います。
決して「アポキルが不要になる治療薬」ではなく、すべての症例に同様に効くわけではないのですが、適応になる症例を診極めることができれば、皮膚病の根本的治療の1つになりうる治療法だと考えています。
アポキルの効果が不十分であったり、アポキルを減らすための治療に悩んでいる方はぜひ当院を受診してください。
投稿者:
2018.09.11
アポキルが適応となるアトピーや脂漏症・マラセチア性皮膚炎など痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
日本でアポキルが発売されて3年目の夏ですね。
飲みやすく、即効性があり、長期的な副作用が非常に少ないということで「痒い皮膚病=アポキル」という方程式が成り立つようになりました。
当院でも「まず無難にアポキル」の選択肢はありだと思っています。
しかし今までのブログで何度も書いてきたように、「どんな痒い皮膚病にもアポキルが効くわけではない」というのはあるため、アポキルは選択肢の一つにしかすぎません。
今日紹介するのは長期間アポキルを服用していたが、別のお薬に変更することによって改善した症例の紹介です。
【症例】
ペキニーズ 7歳 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇発症は通年性だが、梅雨~夏の季節性の悪化も認める
〇全身がべったり、臭いが強い
〇舐める・掻くといった痒み症状
それでは初診時ではなく、当院で1年半治療している状態を紹介します。
治療内容は1カ月に1回の院内薬浴と、アポキル1日1回投与を基本としています。
続いて、お腹とその拡大です。
同じくお腹の陰部周囲の拡大です。
続いて、右後ろ足の膝周囲の拡大と、やや内股の写真です。
続いて、右後足の足首付近です。
この時点まで1年半、内服治療はアポキルでしたがこの時点からアポキル1日1回を中止し、別の投薬治療に変更しました。
それ以外の食事療法、院内薬浴などの条件は一切かえていません。
投薬治療のみを変更して6か月後の状態と比較してみます。
皮膚コンディションの改善が明らかに認められました。
赤み・色素沈着ともに大きな改善が認められます。
また脂漏・臭いについてもかなり改善があり、飼主さまからも「明らかに臭いがへった」と評価していただけました。
さらに投薬治療を切り替えた半年前がちょうど2月の真冬で、6か月後の比較後の写真が8月の最も悪くなる季節であることを考えるとかなりの改善と評価できます。
今回のポイントですが、「痒い皮膚病=アポキル」ではないことを改めて実感することができました。
思い返せばこの症例が初診で来院したときがアポキルの発売時期で、初診から3週目からアポキルを使い始めました。
そのときはほぼすべての皮膚疾患をアポキルがカバーできると思っており、この症例でも同様に効果的だろうと判断していました。
しかしアポキルが発売されて2年を越えて今思うことは、「アポキルは脂漏症には部分的な効果しか示さない」です。
アポキルによって痒み症状は緩和できるとは思いますが、脂漏症にはもっと効果的なお薬があります。
それでもアポキルでもいいのですが、治療の選択肢として把握しておくことは重要だと思います。
今回の治療内容の変更については提携病院にメールで配信予定です。
投稿者:
2018.07.21
繰り返す膿皮症の根本的な治療に取り組んでいる皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
皮膚病をみるときに重要なことの1つに「正常と比較する」というのがあります。
正常が分からなければ異常所見を異常と認識できず、アプローチが止まる(診落とす)原因になるため、この「正常を正確に把握する」というのはとても重要です。
しかし教科書に「正常」が明確に記載されていないため、自分を含めて多くの先生は「正常を知らない」で診ているといっても過言ではありません。
では現実として皮膚科の基準はどうなっているかというと、正常の代わりに教科書に掲載されている典型的病変が検査や治療アプローチを始める判断基準になっています。
ただ典型的な異常所見ではなくても「何かおかしい・・・けどどうおかしいかはわからない」と思うことは多々あるはずなんです。
この「何かおかしい」をスルーしてしまえばその先は何もなく終了なのですが、この「何かおかしい」をどうおかしいのか突き詰め、この「何かおかしい」を改善させることができれば医療技術は進化します。
当院では今の皮膚科の隠れた問題の一つ「正常の認識不足」にフォーカスして、「何かおかしい」を徹底的に追及して治療技術を高めています。
今回はそんな「教科書に掲載されていない異常所見にアプローチした症例」です。
【症例】
ボルゾイ 2歳 男の子
【経過】
〇平成29年夏から発症 (初診時の時点で発症から7カ月)
〇体幹部(背中・側面・腹部)の湿疹がよくならず、次から次に新しいのができる
それでは初診時の状態をみてみましょう。
※身体が大きすぎて全体がカメラに入りませんでした。
右胸部側面と、その拡大です。
右腹部側面と、その拡大~内股にかけてです。
続いて、右後足側面です。
続いて、左胸部側面とその拡大です。
同じく右胸部側面を部分的にカットしてみました。
続いて、左腹部側面の拡大(バリカンでカット済)です。
診断名としては赤い湿疹、細菌性の膿皮症で特別な皮膚病ではありません。
それでは初診時から3か月半後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
お腹の赤い湿疹が完全に消失した点以外はわかりにくいかおしれませんが、獣医師であれば注目点がわかると思います。
皮膚の菲薄化や表皮剥離などの皮膚コンディション異常、毛並みの異常がすべて改善できています。
特に飼主さまは「毛並みがとてもよくなった」と大きな変化を実感していただけています。
表面上の診断名である膿皮症は抗生物質とスキンケアでよくなり、その後2カ月間抗生物質を服用せずとも1つも再発していません。
膿皮症を改善するだけなく、膿皮症が起きる(治りにくい)原因を治すことができた症例ともいえます。
今回はボルゾイということで、レアな犬種です。
簡単にいうと「ボルゾイの正常」がわかっていなければいけないところですが、ボルゾイはめったに診れないのでどこからどこまで異常といえるのかが判断しずらいです。
もちろん過去にたくさんのボルゾイをみていたとしても、そのボルゾイが正常とは限りません。
こういった状況で大事なのは経験値、過去の経験だけで異常所見を判断します。
今回は初診時に「教科書に掲載されていない皮膚コンディション異常あり」と判断し、皮膚組織学的検査を行いました。
もちろん病理の検査結果は予測通りで、既存の教科書で分類されたような明確な診断名はつかず、病理学的な検査所見のみとなりました。
が、ここは想定内でした。
この病理学的所見を元に、初診時の想定通りの治療を進めることにしました。
もちろん飼主さまには何がどうおかしくて、どうよくなるのかはあらかじめ伝えています。
そして3か月後、上記のように「想定通りの治療結果」がでました。
今回の皮膚科の説明です。
決して治療前・治療後の変化が大きい派手さはない皮膚病症例でしたが、その内容は医学的に興味深いものだったと思います。
1つめのポイントは、初診時に「膿皮症の治療」だけにとらわれず、隠れた問題点である「なぜ膿皮症になっているのか?」に注目しなければいけないことに気づくことです。
2つ目のポイントは一般的な顕微鏡・血液検査所見に異常がでないことは想定範囲内とし、病理組織学的検査の必要性を判断できることです。
3つ目のポイントは病理組織学的検査結果で、既存の診断枠(教科書レベル)で明確な診断名がでない可能性は想定範囲で、具体的にどんな所見が返ってくるか想定して病理組織学的検査に臨めていることです。
4つ目のポイントは病理学的診断結果で明確な診断名がでなくても「〇〇〇をすれば改善できる」と、事前に推測できていることです。
5つ目のポイントは4つ目に似ていますが、何がどうおかしくて、どう改善するか推測できていることです。
おまけとしては、ボルゾイをよく知らなくても何となく「おそらくこれは正常なボルゾイとはいえないだろうな」と捉えることができることですね。
当院ではこういった「教科書で説明できない」「既存の検査で診断できない」というレベルの皮膚科診療についての、提携している動物病院に向けたシークレットセミナーを開催しています。
ご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
投稿者:
2018.05.21
アポキルが効かない、食事療法で改善しないといった痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回の症例は2ヶ月ほどまえに一度紹介したわんちゃんの続きです。
前回の記事は、
平成30年3月16日のブログ記事 アポキル&アミノ酸系食事療法で改善しない 【四国から愛知までの通院】
初診時の治療方針で2週間後の2回目の診察時には改善していたという内容でした。
今回は「初診→2回目→3回目→今回」という状況です。
それでは初診時から約2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
続いて、右前腕とその拡大です。
続いて、左前腕とその拡大です。
非常に綺麗になりましたね。
全身の痒みの大半が著しく改善しました。
背中以外の、目周囲・口唇~下顎、頚部、胸、腕、内股、わきのフケ・皮脂(ベタベタ・ゴワゴワ・ザラザワ)が綺麗になりました。
ゼロではないのですが、見た目の改善度は90%です。
今回の症例は当院受診時にすでにアポキルを服用していた状態で痒い&皮膚炎&フケでしたので、大事なのは「アポキル以外の治療プラン」です。
よくアポキルを飲んでいるのに・・・と聞くのですが、アポキルが効いたり・効かなかったり・・・というようなことはないと思っています。
そして続けることによって効きにくくなるということもないと考えています。
アポキルが効くメカニズムは常に一定なので、効果がない?というときはアポキルが作用する部分以外の治療を組み立て直す必要があります。
そこでアポキルをやめるのか、継続するのかはそのときの判断ですが、今回は「アポキルが効くべき異常所見はある。効果があるため継続処方」としました。
今回は「アポキルは効く、ただしアポキル以外の治療が適切に限る」というような症例でした。
今回の症例もいつも通りですが、初診時に行った検査結果が出揃う前に組み立てた初診時の治療方針だけで、わずかな軌道修正もなく改善ができています。
当院では獣医師向けにこういった診極めのためのセミナーを開催しています。
希望の方は当院までお問い合わせください。
投稿者:
2018.05.19
再発を繰り返す膿皮症、治りにくい膿皮症の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
膿皮症はもっとも頻繁に診る皮膚病の1つで基本的には抗生物質とシャンプーでよくなりますが、奥の深さはピカいちで「なぜ膿皮症になるのか?」が見えないと苦労することも非常に多い疾患です。
この「なぜ膿皮症になるのか?」という観点を無視して、本当の理由を置き去りのまま治療をつづけると「抗生物質服用中は治るがやめると再発する」か「抗生物質を続けていても治らない」ということが起きます。
この目に見えない膿皮症になる理由を探すのが皮膚科診療、今日はそんな症例報告です。
【症例】
シェルティー 女の子 3歳9か月
【経過】
〇3歳まで皮膚病はなし
〇3カ月前から湿疹&フケ&円形脱毛が続く
〇抗生物質など服用するも改善なし
まずは初診時の状態から。
つづいて、頚部の湿疹とその拡大です。
続いて、腰背部とその毛をかき分けたところです。
続いて、お尻~陰部とその拡大です。
初診時から3か月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
膿皮症も奇麗になりましたが、毛並みがよくなったのがわかりますか?
膿皮症の原因にもいろいろあるのですが、このわんちゃんのタイプでは膿皮症になる明確な原因を特定でき、治療をすることができたので膿皮症にはなりにくいと思います。
現時点も抗生物質をやめて2ヵ月ほど経過しましたが、再発していません。
なお当院では膿皮症の再発を抑える治療プランとしてスキンケアECプラスを奨めることが多いのですが、今回のわんちゃんでは膿皮症の原因が異なるため、使っていません。
なんでもかんでもスキンケアとサプリメントではないので、それぞれの症例に合わせた的確な判断が重要です。
投稿者: