2016.11.14
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
晴れていると暖かく過ごしやすい1日ですが、日中に陽が当たらないと夜には寒さを感じますね。
さて、今日紹介するのは関西からの受診のわんちゃんです。
【症例】
シーズー 14歳 女の子(避妊手術済み)
初診時の状態をみてみましょう。
シーズーで治り難い特徴である、脂漏とマラセチアの典型症例です。
初診時に検査と処方、そして院内薬浴を行い24日後に再診に来ていただきました。
その比較を紹介します。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
シーズーの皮膚病に多く認められる臭い、フケ、脂っぽさ、痒みの全てにおいて劇的な改善が認められました。
一般的に「脂漏性マラセチア性皮膚炎」といわれているシーズーの皮膚病の典型で、教科書的には「シャンプーをこまめに(3日に1回)」、マラセチア対策に抗真菌剤の内服と抗真菌剤入りシャンプー」と書かれていますが・・・・・・・そもそもそれで治れば苦労しないわけで、まったく異なるアプローチをします。
それでもこの典型的なタイプであれば「改善しなかった例がない」レベルまで治療成績が高くなっています。
薬を飲んでもよくならない、シャンプーしても数日後には臭いと大量のフケが・・・・でお困りの方は当院までご相談ください。
投稿者:
2014.10.13
☆シーズーの難治性皮膚病症例報告☆
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック院長平川です。
当院を受診するわんちゃんで圧倒的に多いのがフレンチ・ブルドッグ、柴犬、そしてシーズーです。
それぞれ独特の体質があり、犬種によって診療スタイルを変えているのですが「シーズー=〇〇〇」という型にはまった診療をしているわけではありません。
確かにシーズーが10件来院したら7~8件は典型的な病態であることは事実ですが、時にそうでない疾患もあります。
今回はそんな「シーズーだからといってすべてが同じとは限らない」という症例報告です。
【症例】
シーズー
【経過】
〇数年前から内股・四肢を中心に痒みを伴う皮膚病。
〇梅雨~夏が最も悪化し、冬はそれほど悪くない
〇今年の冬から頭、首など全身の悪化
初診時の状態と、病変部を正確に把握するためと治療のために全身カット後の状態をみてみましょう。
まずは全体から。
正面からみると一見重症の皮膚疾患にはみえませんね。
右腕をみてみましょう。
同じく右前腕の拡大。
そして右前肢甲の拡大。
続いて、左前肢とその拡大。
続いて、背中の全体。
頭部の背側面。
胸部背側の脱毛部位の拡大です(被毛をカットしたわけではありません)。
最後に内股。
病変部を正確に評価するためと、治療のため全身のカットを行いました。
ここから5週間後の状態を比較してみましょう。
実はこのシーズー、非常に複雑な病態(病気の原因)をもっています。
まずは数年前から抱えている慢性、再発性の皮膚病です。
もちろんその時点で診ていたわけではないので予測に過ぎませんが、おそらく当院でよく紹介している脂漏性マラセチア性皮膚炎が内股・四肢を中心に認められたのだと思います。
またアトピー性皮膚炎が悪化因子としてあってもおかしくありません。
脂漏性マラセチア性皮膚炎や、アトピーがあると梅雨~夏が最も悪化しますので、去年まではそうだったのだと思います。
では当院を受診するきっかけになった今年の冬から悪化したこの皮膚病はというと、顕著な悪化が頭部・頚部・背中に認められました。
これは非常に特徴的な病変(見た目)なのですが、毛包虫(ニキビダニ)という病気です。
・・・と、ここまでは当院を受診する前の病院で診断がついていました。
にもかかわらずなぜ当院を受診するほどの難治性になってしまった理由はなぜなのか?も問題なのですが、もう一つ考えるべきことがあります。
『なぜ毛包虫が発症したのか?』
治療も大事ですが、個人的に今回の症例で重要なポイントの1つはここです。
これもおそらくですが、去年までは毛包虫はなかったと思われます。
シーズーは毛包虫の好発犬種であることはよくしられていますが、中高齢から発症についてはそれまでなかった基礎疾患があるのでは?と考えた方がいいでしょう。
甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症(クッシング)の有無はチェックしていきます。
※ここから先は専門用語が頻繁にでてくるため、ご注意ください。
まず甲状腺機能低下症の判定のために甲状腺ホルモン濃度を測定します。
同時に副腎皮質機能亢進症(クッシング)の評価のために、腹部超音波画像検査で副腎サイズ測定と尿検査「尿コルチゾール/クレアチニン比」を測定します。
また甲状腺機能はユーサイロイドで誤診が多くなるため、超音波画像で甲状腺も一緒にみておくとよりベターだと思います。
※甲状腺を超音波で評価するにはリニアプローブが必要になります。
ACTH刺激試験について、これは好みで別れるとは思いますが、個人的には偽陽性・偽陰性も多く、信頼性が低い検査であるため、画像と尿検査の結果をみてからの方がいいと思います。
※同時にしても悪いことではありませんが、そう急ぐ必要性はないです。「急ぐ必要性はない」という理由はこの後の説明で伝わると思います。
「尿コルチゾール/尿クレアチニン比測定」は回り道のような気もするかもしれませんが、もし尿コルチゾール/尿クレアチニン比でクッシングを否定することができれば判定に悩む検査を行う必要性もなくなります(ACTHの疑陽性を排除できる)し、甲状腺の数値の信頼性も高くなります。
※甲状腺機能が正常であってもクッシングがあることで甲状腺ホルモン濃度が下がることが多いため。
もちろん診た目が皮膚の石灰化や脱毛症など、「いかにもクッシング」であれば初診時にACTH刺激試験から入りますが、今回のような「いかにもクッシング・・・とまではいかない症例」では初診時でなくてもいいと思っています。
現に今回の症例では
①甲状腺ホルモン濃度が明らかに低かったためユーサイロイドの可能性を考えつつも投薬治療開始
②尿コルチゾール/尿クレアチニン比が8を超えていたためACTH刺激試験を実施
③ACTHのPost値は13と明らかに正常値であったが、信頼性は低いためLDDS試験を実施
④LDDS試験では4時間後、8時間後ともに抑制されていなかったため副腎皮質機能亢進症と診断
となったのですが、この④のLDDSの検査結果が出揃い『副腎皮質機能亢進症』と確定できたのは、この治療後を撮影した5週間後でもあります。
要するに副腎皮質機能亢進症の判定ができなくともここまでの治療結果はだせるため、初診時にACTHが最優先だったか?というと個人的には皮膚コンディションをある程度改善してからの方が誤診につながらなくていいのでは?と思っています。
※ここまで悪化した皮膚コンディションでは、体調もベストではないため、初診時にACTH刺激試験を行っても検査結果に影響がでることも考慮して。
そして今回の症例に限らずACTH刺激試験を行う時の注意点ですが、ACTH刺激試験でクッシングを否定することは非常難しいため「クッシングかどうか?」のための検査として用いては誤診につながると思います。
あくまで「さまざな条件(症状・皮膚所見・一般血液検査・尿検査)でクッシングが疑わしいため、確定のためにACTH刺激試験を行い、異常値であればもちろん確定。もし正常値であればLDDS試験を行い偽陰性を拾う。」と考えていた方がいいと思います。
LDDS試験もまた先生によって見解が分かれるのですが、ACTH刺激試験の黒だけがクッシングであれば絶対治せない症例がでてくると思います。
それを「クッシングとは言えない『クッシング風の皮膚病』で内分泌疾患としては認められない」であればそれは学術的・教科書的であって医療ではない・・・と思っています。
クッシングの診断では今でも悩むことが多いため、5年後には違うことを話しているかもしれませんけどね(苦笑)
・・・で、一つ残っていることがありますよね?
そう、内股の皮膚病です。
実はこれはまだ改善していません。(多少は改善しています。)
理由はこの内股はニキビダニでもクッシングでもなく、元々あった脂漏性マラセチア性皮膚炎(または+アトピー)だからです。
※さらなる悪化の要因にはなっていますが、クッシングになる以前から認められています。
そこで必要になってくるのが・・・・・・・もちろん当院の薬浴です。
ところでこの5週間で薬浴していないか?といえば実は2回実施しています。
でもそれは毛包虫対策の薬浴で、脂漏性マラセチア性皮膚炎のための薬浴ではありません。
薬浴内容は診断名や皮膚コンディションで異なるため、それぞれに適した薬浴内容となっています。
この5週目の撮影後に行った3回目の薬浴は毛包虫対策の薬浴ではなく脂漏性マラセチア性皮膚炎のための薬浴としました。
おそらく次回には随分と改善しているでしょう。
最後まで読んでくださった方、お疲れ様でした。
投稿者:
2014.01.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
今日は、ここ最近の中でも最も「必ず美しく治す」と強く意識した症例の1例です。
【症例】
シーズー 5歳10カ月 女の子
【病歴】
〇~2歳までは皮膚病なし
〇3年前から痒みを伴う皮膚病を発症し、年々悪化している
〇2年前からは皮膚科のある動物病院で『漢方』を含めた4種類の内服を継続しているが、改善なし
それでは初診時の状態を見てみましょう。
まずは正面から。
続いて、右側面。
続いて、頚部とその拡大2枚です。
続いて、顔・頚部を右側面から見てみます。
続いて胸~前胸部、ワキです。
続いて、右胸側面です。
続いて、右前肢です。
この右前肢の被毛をカットして、皮膚の状態を詳しく見てみましょう。
続いて、腹部を診てみましょう。
続いて、右後肢を外側(3枚)、内側1枚)見てみましょう。
この右後肢の被毛をカットして皮膚の状態を詳しくみてみましょう。
それでは初診時から約7カ月後の状態を比較してみましょう。
まずは右側面全体から。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、右顔~頚部とその拡大です。
続いて、右胸側面の比較をみてみましょう。
続いて、胸部~前胸部、ワキの比較です。
続いて、右前腕の比較です。
皮膚が正常機能を取り戻した結果、非常に綺麗な被毛になっていることを証明するために、飼主さまの許可を得てカットさせていただけたので、あえてこの写真の状態からバリカンでカットした後の皮膚コンディションの比較もご覧ください。
続いて、腹部の比較です。
続いて、右後肢の比較をご覧ください。
この右後肢も飼主さまにご協力いただきバリカンで被毛をカットし、皮膚のコンディションの比較をみてみましょう。
非常に綺麗になりました。
被毛が再生した、というレベルではなく皮膚そのものが正常な機能を取り戻し、美しい被毛をつくりだしています。
飼主さまも「被毛が長くなるのが早くなった」といいますから、いかに過去の状態が異常だったのか、そして皮膚が正常に戻ろうとする力をうしなっていなかったかがわかると思います。
当院のスキンケアは本来備わっている「皮膚を正常に保とうとする力」で足りない部分をサポートしているだけです。
7カ月間、欠かすことなく週1回の院内薬浴(スキンケア)を受けていただきました。
色々な意味で大変だったと思うのですが、僕からも「徹底的に綺麗に治したいので、週1回を続けさせてください。」とお願いし、ここまで到達することができたと考えています。このレベルまで治療ができたのも飼主さまのご協力があってこそですので、本当に感謝の気持ちで一杯です。
シーズーは難治性の皮膚病になりやすいと言われており、この症例がまさに典型的な症状といえます。
〇脂漏症
〇アレルギー
〇遺伝、体質
〇マラセチア
〇シーズーだから
〇治らない
〇シャンプーしかない
当院に来院される飼主さまの多くがこういった説明で諦めていた時期もあったと聞きます。
しかし、ここまで重症でも改善させる方法はあります。今のところ当院の薬浴(スキンケア)で継続治療して改善がなかったこのタイプのシーズーはいません。きっとこれからもこのタイプで改善できない症例はいないと思っています。
※シーズーの皮膚病がすべてこのタイプではありません。
投稿者:
2013.09.30
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの獣医師平川です。
あの暑い夏はどこへ?というくらい涼しくなってきましたね。
アトピーや脂漏のわんちゃんにとっては少し過ごしやすい季節になりつつあるかと思います。
では、ここ数回紹介しているシーズーの脂漏性マラセチア性皮膚炎の第4回目です。
初回のスキンケアから3週間後(スキンケア3回実施)の状態を、初回との比較でみていきましょう。
部分的に被毛をバリカンでカットした部分もございます。
目的は被毛があることで皮膚のコンディションを正確に比較できないこともあるかと思い、飼主さまから了承を得たうえで
カットしてわかりやすいようにしてみました。
(※治療上は必ずしも必要としない状況で、カットの目的にご理解いただいた飼主さまに感謝します。)
まずは頚部から。
同じく、頚部の拡大。
続いて、右からみた状態です。
同じく、右からの肩付近の拡大です。
続いて、仰向けの胸部です。
同じく胸部の中心の拡大です。
同じく、左脇です。
続いて、右前肢です。
同じく、右前肢の肘付近の拡大です。
同じく、右前肢肘付近の側面からの拡大です。
続いて、右後肢の内側からです。
同じく右後肢の内側からの拡大です。
同じく右後肢、仰向けからです。
すべて、自宅シャンプー後から3~4日経過後の皮膚状態です。
院内でのシャンプーで皮脂や痂皮を除去したあとではありません。
この状態が継続して維持できるレベルまで改善しました。
このタイプのシーズーに認められる症状である「痒み」、「臭い」、「フケ」、「ベタつき」はほぼありません。
この後は綺麗に被毛が再生していくだけですので、一旦終了とし次回は別の症例報告を行いたいと思います。
四季の森どうぶつクリニック
投稿者:
2013.09.17
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
夏のうだるような暑さもなくなり、夜には虫の音も聞こえ、心地よい秋になりましたね。
どうしても梅雨~夏にかけて治療成績が落ちやすい皮膚疾患も、少しずつ落ち着いてくる季節になると思います。
さて、典型的なシーズーの難治性皮膚病である『脂漏性マラセチア性皮膚炎』として、初診時の状態、全身カットの状態と紹介してきました。
当院に来院する前に受診した2件の動物病院では、「シーズーの脂漏症は治らない」ということで頻繁にシャンプーするようにと指示されていたようですが、もちろんこのタイプはシャンプーしても1~2日後にはベタつき、臭い、フケが戻ってきてしまいます。
また、痒みも非常に強く、飼主さまの中にはノイローゼになってしまう方もいらっしゃいます。
当院にはこういったシーズーの症例が非常に多いのですが、その理由は治療のコンセプトにあります。
従来の医療は皮膚表面を綺麗にするためにシャンプーを頻繁に行い、菌(細菌やマラセチア)を減らすために抗生物質や抗真菌剤を服用し、シャンプーにも抗菌剤を含有させたタイプを使用することが主流でした。
決して間違っている治療ではありませんが、何かが足りないのです。
それが皮膚機能改善のためのスキンケア、このタイプの皮膚病では皮膚機能そのものを改善しないことには根本的には改善しません。
逆にこの皮膚機能を改善させると、劇的に改善します。
今回はまだ治療中ですが、経過を紹介します。
忙しい診療中のことが多いので、各部位全ての撮影ができていないのですが、大事な部分をピックアップして比較して行きます。
まずは、最も治療が難しいと考えられている頚部の脂漏性皮膚炎から。
綺麗になっていますね!
同じく頚部の拡大。
黒の斑点をターゲットに拡大して撮影したのですが、綺麗になるとどの黒い斑点だったかわからなくなってしまったので、黒の斑点の周辺を含めて掲載しました。
画像の中心点は異なるのですが、綺麗になっているのがわかると思います。
続いて、頚部の側面です。
参考までにこの部位の拡大は、
この状態が全体的に広がっていたことを考えると、非常に綺麗になっていますね。
続いて、右前肢。この部位も非常に痒みが強く、治りにくいです。
同じく、拡大してみてみましょう。
同じく、右前肢の側面から。
非常に綺麗になっています。
参考情報ですが、この比較写真は初回のスキンケアから1週間後です。
病院でのスキンケアから3日後に一度自宅でシャンプーしていただき、この写真は7日目のシャンプー前の状態です。
若干フケがあるのて、シャンプー前であることがわかった方もいらっしゃるかもしれませんが、シャンプーして4日も経過したにも関わらず、ベタつきがほとんど認められません。
もちろん臭い、痒みも激減しています。
この治療を1カ月も続けると「今までのは何だったのか?」と思うほどの皮膚機能の改善が認められると思います。
たった1回のスキンケア、たった1週間での改善を考えると、「皮膚が正常に戻ろうとする機能が残っていた」とも考えられますね。
メディカルスキンケアは、この「正常な皮膚機能を回復するためのケア」でもあります。
「シーズーだから・・・」に間違いはありませんが、諦める必要はないと思います。
近いうちに「ほぼ完治」レベルまで到達すると思いますので、他の部位を含めて綺麗になったところをお見せできると思います。
投稿者:
2013.09.13
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
前回の記事で難治性皮膚疾患として非常に有名なシーズーの脂漏性皮膚炎の初診時の状態を紹介しました。
そしてこのような症例で最も重要で、治療の上で必須なのがスキンケアであるところまでお話しました。
そこで当院ではメディカルスキンケアとして、自宅ではなしえないクオリティのスキンケアを行っています。
このスキンケアを効率よく行うために、そして病変を詳細に把握するために一度全身カット行います。
これは初回のメディカルスキンケア時に行った全身カット後の病変部です。
まずは全体。
続いて、頚部の全体像。
同じく、頚部の拡大。
続いて、右前肢の全体と、前腕~肘の拡大。
同じく、右前肢の外側面の拡大。
続いて、右側面全体。
同じく右側面の拡大(肩付近)。
同じく、右側面拡大(腹側部)。
続いて、腹側胸部。
同じく、腹側胸部の拡大。
続いて、右後肢の内側から。
同じく右後肢膝付近の拡大。
同じく右後肢踵~甲の部分の拡大。
全身のカットを行うと非常にわかりやすく見ることができます。
次回、まだ治療途中ですがメディカルスキンケアの効果をお示しします。
投稿者:
2013.09.12
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです♪
前回、典型的なフレンチ・ブルドッグの難治性皮膚病の治療を治療前、治療後で紹介しました。
4年間治らなかった皮膚病がたった6週間で綺麗になりました。
ただ、当院に特殊な治療薬があるわけではありません。
大事なことは全体を診て、詳細を診て、「診極める」ことです。
その「全体を診る」中で重要なファクターが、「犬種」です。
前回紹介したフレンチ・ブルドッグも難治性になりやすいのですが、今回紹介するシーズーもはるか昔から難治性になりやすい代表的な犬種です。
たしかにシーズーは独特で、他の犬種にはない体質があり、治療は難しいです。
当院でも4年前までは随分と苦労しましたが、今は随分と早く治すことができるようになりました。
まずは症例を紹介します。
【症例】
10歳 去勢雄 シーズー
【過去の病歴】
〇5~6年前から皮膚が赤くなり、痒みを伴う
〇冬より夏が悪化しやすいが、基本的に1年通して痒みがある
〇この2年で全身のフケ・ベタつきがさらに悪化して、2件の動物病院を受診したが「脂漏性だから仕方がない」と言われている
〇治療はシャンプーをこまめにするように指示されているが、シャンプーしても2日経つと元に戻ってしまう
それでは初診時の状態を見てみましょう。
全体から。
続いて顔、フケが多いのが特徴の一つです。
同じく顔の拡大です。
被毛に付着した白いのがフケ、その奥に見える皮膚にも大量のフケが認められます。
続いて、シーズーでもっとも治りにくい部位の一つ、頚部の脂漏性皮膚炎。
同じく頚部の拡大です。
同じく頚部、角度を変えて右側面から。
同じく、頚部右側面からの拡大。
続いて、胸部~脇窩(わき)。
同じく脇の拡大。
続いて、右前肢の全体。
同じく右前肢、上腕(肘より上)の拡大。
最後に、指の間の脂漏です。
まさにシーズーの難治性皮膚炎の典型例です。
これに苦労しているのは獣医師の先生方は全国にたくさんいると思いますが、もっと苦労されているのはその飼主さまです。
これを治療してこその皮膚科診療、「アグレッシブに美しく」治していきます。
必要なことは?
もちろんメディカルスキンケア、院内で治療するのがベストです。
次回は病変部確認を兼ねて、全身のカットの状態をお見せします。
投稿者:
2011.07.21
シーズーに多く認められる脂漏性皮膚炎についての第4回です。
第1回 シーズーの皮膚病①
第2回 シーズーの皮膚病②
第3回 シーズーの皮膚病③
【症例】
シーズー 男の子
【症状】
四肢端、頚部、尾、顔、四肢など、ほぼ全身の脱毛および痒み
【治療経過】
治療前
治療後(5カ月後と約1年後の両方を使用しています)
過去の数々の動物病院でさまざまな治療を受けられ、エリザベスカラーを外すことができない状態でしたが、現在はエリザベスカラーもなく、傷になるような痒みもなくいい状態を維持できています。
完治ではないため、継続した治療を行っていますが、メインとなる治療はスキンケアです。抗生物質や抗真菌剤の投与はほとんどありません。またスキンケアも「殺菌系薬用シャンプー」ではなく、皮膚バリア機能回復のスキンケアを行っています。
「皮膚機能を治す」という意味で、本当の皮膚治療につながった1例と思います。
投稿者: