2016.10.02
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
看護師の協力を得れるようになってから症例報告が随分と楽になっています♪
今回は今まで掲載しなかったような症例も紹介しようと思います。
症例はチワワちゃん、耳の脱毛です。
元々通院されていたわんちゃんなので、初診ではありませんが「トラブルに気づいた最初の診察のとき」を紹介します。
特徴は耳の脱毛、特に辺縁でフケを伴って束になって抜け落ちます。
めずらしい皮膚病ではなく、結構よくあります。
診たことない先生はいないと思います。
進行すると激しい症状がでることもあるのですが、多くのわんちゃんで無症状ですし、「これが原因!」と特定することも困難なため、個人的には「攻め込みにくい皮膚病の一つ」でした・・・(苦笑)
長年しっくりくる「上手な治し方」を掴みきれていなかったのですが、最近は発症の原因を推測できるようになったり、治療成績も随分と高くなりなんとなく掴めた気がしています。
では、治療後と比較してみましょう。
おおよそ2~3ヶ月で改善が認められます。
最近治療したわんちゃんはみな予測どおりに改善したので、知り合いの先生にもコツを伝えてみました。
投稿者:
2016.09.16
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
四六時中お話している「初診時の診極め」ですが、実は現代医学で重要視される「根拠」とは正反対にあるものです。
日常の診療でよくあるパターンですが、診た瞬間「きっとこうだろうな」という経験からの判断に対して、初診時には検査結果が出揃っていないこともあるため客観的な根拠がないこともあります。。
もちろん初診時に顕微鏡検査や一部の血液検査、画像診断などでの総合評価が加わっての判断のため、後日出揃う検査結果をみて想定外の「こんな結果がでるとは・・・」ということはほぼ皆無です。
しかし時に出揃った検査結果が予想通りではなく、診断名に悩むこともあります。
それは「診極め」に問題がある・・・という意味ではなく、「診極め」と「根拠となるべき検査結果」がリンクしないときです。
今日はそんな症例報告です。
【症例】
9歳 紀州犬 男の子(去勢済み)
【病歴】
〇3ヶ月前からお腹の脱毛、背中の脱毛と広がってきた
初診時の状態、症状は背中のみになっています。
診た目の診断面は「感染症」、この判断で間違いではないですが、ポイントは基礎疾患の評価です。
高齢期になり、フケを伴う円形脱毛症が複数・・・・・疑うべきは「内分泌疾患」です。
初診時の「診極め」は
〇感染症は内服&スキンケアで改善可能
〇基礎疾患に内分泌疾患として候補は2疾患、甲状腺疾患または副腎疾患のどちらかがあるはず!
です。
検査結果は・・・・
〇一般&生化学検査は甲状腺疾患・副腎疾患の両方を示唆
〇エコーは副腎疾患の可能性を残す
〇ホルモン測定では、副腎検査が正常値、甲状腺検査のみの異常値
副腎疾患の検査精度はあまり高くなく、正直なところ検査結果より自分の判断が正しいことの方が圧倒的に多いのですが・・・
実際の治療レベルとしては、
〇甲状腺疾患の治療薬は、万が一副腎疾患だったとしても副作用はまずないだろう
〇副腎疾患の治療薬は、万が一副腎疾患でなければ使うべきではないし、副作用が起きたら大変
のため、自分の判断は一旦保留としました。
ということで、初期治療は「まず甲状腺疾患の投薬治療を試験的に開始、ただし副腎疾患であれば改善しないためあくまで試験的治療である」としました。
しかし初診時から6ヶ月後、感染は完全に治ったにもかかわらず、被毛の再生は若干あるものの、十分とはいえませんでした。
そこで飼主さまとよくよく相談して、検査結果上では副腎疾患を確定する結果はなかったのですが、投薬治療を副腎疾患へシフトすることにしました。
それから2ヶ月・・・・
※クリックすると拡大することができます。
フワフワにもどってきました!
この時代の医療は難しいですね。
個人的に重要視している経験は根拠にならず、必要な根拠は検査結果(データ)です。
しかし検査の正確さは100%に遠く及びません。
そのため最後の最後の判断は検査結果に頼りきらずに、たとえ検査結果がそろわなくても、検査結果を否定する医療であっても経験を優先すべきと日々感じています。
時代はAI(人工知能)にシフトする方向でもう変わることはありませんが、AIがこの難問をどうクリアするのか見物ですね♪
投稿者:
2016.05.17
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
昨日非常にうれしい連絡がありました♪
GWの東京遠隔診療で診察したシーズーのわんちゃんの飼主さまから、
「痒みは気にならない程度です。(以前は寝ていても突然起きてガシガシ噛んだり舐めたり、足でボリボリ掻いてました)今はないです。
炎症は赤い所はないです。(以前赤く(かさぶたの様なフケ?)腫れぼったかった足の関節(踵?)が薄いピンク色程度になりました。(かさぶたなし)
シャンプーして4日目ですが、匂いは気になりません。
べたつきも気になりません。(毛並みもいい状態)
フケはほとんど落ちなくなり、目の上、喉 お腹 手足 フケかさぶたほとんどない状態です」
というご連絡をいただきました。
事前の問診で「2次医療施設で長期間、さまざまな治療を受けてきました」という経過があったため、少し心配でしたが、予測通りのいい反応が10日間という非常に短期間で得られたことで本当に一安心です。
ですが、何度もお話するように、すべてが遠隔診療の対象になるわけではありません。
その疾患の一つに、ポメラニアンやトイプードルに多い脱毛症「アロペシアX(毛周期停止)」という疾患があります。
当院のブログでも何度も取り上げてきた疾患ですが、今日は少し前にも紹介したわんちゃんのその後を紹介しようと思います。
以前の紹介記事 ⇒ ポメラニアンの脱毛症「毛周期停止」「アロペシアX」の治療
まずは初診時の写真を改めてご紹介します。
初診時から約2.5ヶ月後をみてみましょう。
本来あるべき毛並みの80~90%は改善したと評価できます。
それに伴い湿疹もほぼ消失し、皮膚コンディションそのものが改善したということも言えると思います。
ポメラニアンやトイプードルに多い「アロペシアX」「毛周期停止」という脱毛症ですが、必ずしも同様の治療成績がだせるわけではありません。
「やってみないとわからない」というものですが、この2~3年は以前よりも随分と治療成績があがってきました。
しかし同時に「それでも改善しないわんちゃんもいる」のは事実で、事前に予測することもできません。
そのため最近は新しい治療に取り組み始めました。
おそらくいい反応が得られるのではないか・・・と予想しています。
1~3ヵ月後にまたお知らせができるように取り組んでみようと思います。
投稿者:
2016.04.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
寒くなったり、雨上がりに夏のような暑さを感じたり、風が強かったり・・・季節の変わり目を実感しますね。
今日はベネッセの犬の気持ちの雑誌に掲載されたわんちゃんの症例報告です。
【症例】 ポメラニアン
【経過】 全身の脱毛で治療を行うも改善がない
去年の2月に途中経過を掲載しましたので、その続きです。
この脱毛症は「毛周期停止」といい、かつては「アロペシアX」とよばれていたり、ポメラニアンに特に多いため「ポメハゲ」ともいわれていた非常に有名な脱毛症です。
積極的な治療をしなければ改善しないことが多く、いかに適切に診断し、積極的な治療をするかが治療のポイントになります。
初診時の状態をみてみましょう。
まずは顔を正面から。
続いて、脱毛がでやすい頚部です。
続いて胸部。
続いて、この脱毛症の特徴的な胸部~頚部の脱毛です。
最後に大腿部、尾側からみた写真です。
それでは治療後の写真です。
まずは頚部。
続いて、胸部。
続いて側面。
最後に大腿部です。
フワフワの美しい被毛が再生しました。
そしてタイトルにあるとおり、ベネッセの犬の気持ちの雑誌5月号に掲載されています。
獣医師として来院された飼主さまのリクエストに応えることは当然でもありますが、「飼主さまの笑顔」につながる仕事ができたことは何より獣医師冥利につきるなと改めて感じることができました。
投稿者:
2016.03.28
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今日はFNSうたの春まつりをみながらブログを書いています。
この時期ですので卒業に関連した内容なのですが、みなさまは卒業式に何か思い出は残っていますか?
僕は卒業式の日に女の子に第2ボタンを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もらわれたこともないので、いい思い出は何もないです(笑)
さ、そんなさみしい思い出話は早々にやめて、数ヶ月お休みしていた症例報告にきりかえましょう。
日々同じような診察をしているようで、新しい発見が次から次にみつかるのが診療最前線なのですが、つい先日も新しい発見がありました。
今回紹介するのははるか昔から有名な病気、「ポメハゲ」「アロペシアX」「毛周期停止」の名前で呼ばれる脱毛症の治療です。
まずは初診時の正面・・・は向いていませんが、実はこの脱毛症は「かわいい子に多い」というのが定説になっています。
バンザイの姿勢で、胸のあたりをみてみましょう。
大きな湿疹がたくさん認められます。
続いて、腹部です。
同じく大きな湿疹が数多く認められます。
続いて、側面。
この疾患に特有の脱毛が認められますね。
この湿疹が全身に無数にあります。
最後に背中を上からです。
重度ではありませんが、典型的なアロペシアXです。
その診断を下して治療開始からわずか4週間後をみてみましょう。
まずは胸とお腹です。
湿疹は非常に綺麗になっています。
胸の辺りはすでに新しい被毛が再生しており、数ヵ月後にはフワフワになっているのが予想できます。
続いて、側面です。
アロペシアで脱毛が進行しやすい頚部の側面を拡大してみます。
同じくアロペシアXで脱毛が早期から認められる胸部側面です。
当院の治療の中で湿疹が治るのは当然として、「治し難い脱毛症」で早くも被毛の再生が認められています。
個人的にはこんなに早くの再生があるのは初めてなので、ちょっと驚きました。
多くの疾患で「おおよそ〇ヶ月でよくなるでしょう」が予測できる中で、この脱毛症だけは被毛の再生時期を予測することが難しいです。
中には半年以上かかることもあります。
今回のポメちゃんはかなり早い時期での再生が認められたと思います。
このアロペシアXの脱毛症の治療にはさまざまな考え方があり、「命に関わらないため治療の必要性はない」とされがちですが、個人的には病気の1つとして積極的な治療は選択肢の1つだと思います。
その理由は今回の症例の膿皮症です。
この膿皮症、おそらくアロペシアが原因で起きています。
ポメラニアンは本来ではそうそう難治性の膿皮症になることはないのですが、「アロペシアがゆえに膿皮症が治らない」となる症例が少なくありません。
従来では「アロペシアは毛が生えないだけ」とされていましたが、「皮膚コンディションが低下する病気」として捉えて治療が必要だと思います。
投稿者:
2015.11.07
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
あっ・・・・・という間に1週間が経ちました。
明日は下町ロケット、前回以上に手に汗握る展開になりそうで麻衣子先生と一緒に楽しみにしています!
さて、今日はいつもの症例とはちょっと違った雰囲気の症例を紹介します。
症例はミニチュアダックスフンド、痒みを主訴に来院されました。
もちろん痒みの治療を行って、100%とはいえなくもそこそこのレベルまで改善しました・・・・が、
比較的短期間で再発する、または当初の予想以上の治療継続が必要という状態が続きました。
そこで元々気になっていた「脱毛症」を再評価することに・・・
この脱毛症、受診当初から認められたのですが、飼主さまからの主訴になかった(こういうものと思っていたそうです)ので痒みの治療を最優先にして、脱毛症は後からやりましょうという流れにしていました。
しかし再発頻度も気になったため、脱毛症が関係しているのでは?と疑い、脱毛症の治療を始めました。
その前後を紹介します。
え?脱毛症??
そんな感じがしますよね。
でもこれは初診時の時点で主訴になくても「脱毛がある」と把握しておかなければいけません。
もちろんこの脱毛症は「美容上の問題で、治療の必要はない」といわれていますが、それは教科書上の話です。
証明はされていませんが、この脱毛症はただ毛が少なくなるだけで美容状の問題だけではなく、皮膚コンディションの低下を引き起こすものと考えていて、理論上のそうですがいずれそれを実証されるレポートがでると確信しています。
では、治療後の状態をみてみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
一見「首から毛が生えた」「耳の飾り毛が増えた」だけ・・に見えますが、重要なのはそこではありません。
この治療により全身の皮膚コンディションが改善し、痒みの治療成績が改善し、ほとんど投薬治療が必要いらないレベルに到達しました。
何がいいたいのかというと、
「現在の動物医療ではこの脱毛症が『美容上の問題であり、治療するかしないかは飼主の希望に沿う』と定義されていることにより、疾患としての治療の意味が過小評価され皮膚病全体の治療成績低下の要因になっている。」
ということです。
あともう一つは、
本当は「被毛を含めた皮膚に影響を及ぼす疾患であり、皮膚コンディションの低下および脱毛を引き起こす疾患」であるにも関わらず、脱毛症という名前にまどわされ「毛が抜けるだけの病気」と獣医師が誤解していることです。
そのため想像以上に見落とされている可能性が高いです。
はい、僕も過去10年間ほとんどアプローチしていませんでした。
そしてたくさん見過ごしていたと思います。
中には明らかな脱毛症が認められず、皮膚コンディションの低下・毛質の変化だけという症例もかなりいます。
教科書的な診断名の「脱毛」という命名がよくないのだと思います。
脱毛であり、美容上の問題であり、治療はしなくてもQOL(生活の質)には影響ない・・・・・
教科書にそうかかれてしまうと軽視されるのも仕方ないで、今後の改善を期待しましょう。
「教科書では病気は治らない」というのが僕の口癖なのですが、やはり本を読むだけでなく、皮膚をよく診ること・・・これに尽きます。
投稿者:
2015.10.23
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
秋が深まっているのですが、晴れた日の日中の車の中はまだまだ暑さも感じますね。
では今日は当院の症例報告にはあまり出てこない「脱毛症」についてです。
脱毛症と一言にいっても原因はさまざまなのですが、一般的に治療成績がでにくい脱毛症として「毛周期停止(少し前までアロペシアX)」という病気があります。
今回はそのアロペシアXの中でもさらに「治療反応が悪い」と評されているトイプードルのアロペシアの症例を紹介します。
地肌も見えますし、横から背中のラインがすけてみえるほど被毛が薄いのがわかります。
治療開始から2ヵ月後です。
非常に綺麗な被毛が再生してきました。
まだ局所ですが、まずこれでうまくいくと思います。
治療成績がでにくいアロペシアXですが、最近はかなり治療成績が高くなってきました。
選択肢としてはかなり積極的な治療と、やや消極的な治療の2パターンあるのですが、ある組み合わせの相性がいいことに最近気づきました。
根拠はないんですけど、いけそうな感触です。
半年後にはいい結果がだせていると思います。
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