2017.01.13
犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回は柴犬の痒みを伴う皮膚病の症例報告ですが、典型的ではなく少し変化のあるタイプの難治性皮膚炎の治療症例です。
【症例】
柴犬 3歳 男の子(去勢済み)
【症歴】
〇かかりつけ動物病院で、抗生物質・抗ヒスタミン剤・ステロイドを併用するも改善なく当院受診
それでは初診時の状態です。
続いて、右前腕です。
続いて、左前腕です。
同じく左前腕の外側です。
写真を撮影するのを忘れていたため、10ヵ月後とやや比較時間があいていますが、治療後の状態と比較してみましょう。
※クリックすると写真を大きくすることができます。
柴犬の典型的な皮膚病に見えなくもないのですが、少しだけ違うタイプです。
柴犬ならこう!というアプローチもあるのですが、今回のような少し異なるタイプのわんちゃんにはその子に合わせた治療プランが必要です。
今回の柴犬には、他の柴犬では通常行わないあることを併用しています。
飼主さまにもその効果を実感していただいているので、2年近く経過した今でもこの「他の柴犬ではほとんどやらない治療」を継続しています。
こういったわずかな体質の差は検査や数値ではあらわせないため、わんちゃんの体質に合った治療方針を組み合わせるにはいかに皮膚を正確に把握できるか、だと思います。
投稿者:
2016.08.04
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今年度に入り症例をまとめる時間がほとんど作れなくなったため、新入社員に症例報告を手伝ってもらうことにしました。
写真の取り込み、フォルダー分け、写真加工、ブログへのUP作業・・・・・・・これがなくなるだけでも随分と楽!
では、早速症例報告です。
【症例】
4歳 柴犬 メス(避妊済み)
【経過】
〇3年前から痒み発症、アトピーの疑い
〇口唇、お腹、四肢端、耳、頚部、脇の痒み
〇毛並みが悪いのがこの数年続いている
〇過去の治療は抗生物質、痒みに応じたステロイド
それでは初診時の状態です。
まずは正面から。
頚部、とその拡大。
続いて胸部。
続いて腹部。
続いて大腿部を後ろから。
最後に尾を側面から。
初診時に3つの異なる問題点と対策をあげて、3ヶ月というプランを作って・・・3ヵ月後と比較してみましょう。
※写真をクリックすると拡大してみることができます。
すべて初診時の想定通り、綺麗になりました。
ポイントは3つのトラブルを初診時に診極めることです。
「腹部の皮膚炎」
「顔・頚部・四肢端・耳の痒み」
「毛並みの悪さ」
この3つの異常に気づくこと、3つの異常の原因が異なること、それぞれに治療が必要であること・・・・・そして何よりこれらを初診時に診て瞬間的に頭の中で判断できることです。
※判断は瞬間ですが、説明には1時間近くかけてます。
こういった診察ではよく「治療は検査結果がでてからですよね?」と聞かれますが、実はほとんど初診時から治療スタートです。
検査は必須ですが、検査結果で治療方針がブレることはほとんどありません。
1週間後、2週間後、4週間後、2ヵ月後・・・で多少変更することはあっても、それは初診時に想定している範囲内ばかりです。
近いうちに「検査結果で治療方針に悩む症例」を紹介しようと思いますが、基本は初診時にほぼ治療方針は決定できます。
当院には遠方から通院される方もめずらしくないのですが、今回はまた一段と遠くからの通院で、なんと静岡県(東京より)からの受診でした。
今でも継続的に通っていただいています。
ご夫婦での通院だったのですが、3ヶ月の時点で奥様から「すばらしい!先生の言うとおりちょうど3ヶ月でした!」、「こんなにフワフワになったのは3年ぶり!」と言っていただけてうれしかったです。
さらにご主人には
「先生がうれしそうに見てくれるから、その笑顔をみるためにこっちも診せにきたくなる」
とおしゃっていただけました。
あまりにのうれしさに言葉を失い、一瞬おくれて「ありがとうございます」としか言葉がでませんでした。
心では泣いてました(笑)
時代はモノもサービスも「ネットから」が常識になりつつあり、今後その流れが止まることもないのですが、本当は顔をみて話をして提供するのが一番なんだろうな~と心から思います。
ということで、僕はネットを使って色々サービス提供をしていますが、サービスを受ける側の顧客としてはできるだけネットは使わないように心がけています(笑)
投稿者:
2014.02.18
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
柴犬の難治性皮膚疾患(当院受診前に治療歴があり改善しなかった症例)をまとめるために、さまざまなタイプの症例を紹介しています。
今回紹介する症例は今までの治療症例とは少し異質なものですが、「これだけ重症の皮膚病でも治る余地がある」と思っていただきたくて紹介します。
【症例】
柴犬 7歳 女の子(避妊手術済)
【過去の病歴】
〇4年前から通年性(1年中)の皮膚病
〇現在が最も悪い状態
〇最初の2年は近医(A動物病院)にてステロイドを使用しながら痒みを抑えていた
〇2年前に漢方療法を行う皮膚科動物病院(B動物病院)へ転院し、抗生物質・甲状腺モルモン剤・漢方薬など2年間服用
〇偽妊娠になりやすいことから、同じB動物病院で避妊手術(卵巣摘出)を受ける
〇B動物病院で漢方成分の入ったシャンプー(商品名なし)を使用
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは、顔の左側から。
同じく目の下、頬の拡大です。
同じく左側、口唇~頚部にかけての拡大です。
続いて、頚部左側です。
続いて、頚部~左前肢肩付近です。
続いて、頚部。
同じく頚部の拡大です。
続いて、頚部~前胸部です、
続いて、右前肢内側、拡大をあわせています。
続いて、身体右側、ワキ~胸部側面です。
続いて、腹側全体です。
同じく、腹側の胸部拡大です。
続いて、右後肢の足首~甲の拡大です。
最後に尾側、会陰部周囲です。
この初診時から2カ月半後の状態と比較してみましょう。
初診時は過去に例がないほど重度の皮膚の肥厚、脂漏が認められました。
そしていつも通り初診時に数パターンの診断・治療方針を想定しましたが、最優先で疑ったのは「アトピー+ホルモン異常」でした。
ただ、でてきた検査結果は「アトピーはない、甲状腺も異常なし、クッシングの可能性も低い」という想定と異なるもので若干違和感を感じましたが、スキンケア療法に非常にいい反応がありました。
通常柴犬の皮膚病に院内で行うスキンケアを行うことはありませんが、今回の症例は初診時に「原因のいかんに関わらずスキンケアを併用しなければ改善はないだろう。むしろ原因のいかんに関わらずスキンケアでかなり改善させることができる。」と判断したため、改善に関しては当然の結果だと考えています。
ただ想定と異なる検査結果に感じた違和感が本当なのかを確認するために、いくつか詳しい検査を追加で受けていただいた結果、確信に近い検査結果を得ることができました。
しかし今回当院が下した診断は本来起こるべきではないことを前提にした診断名であるため、当院での診断をより確実に確定するために大学病院を受診することになっています。
今回の症例は治療を行いながら複雑な心境でした。
考えられる原因が原因なだけに、なぜこの子がこんなつらい思いをしなければいけないのか、と診察のたびに胸が痛みました。
そして「獣医師として代わりに責任持って診断・治療する」と思いました。
もちろん当院を受診される全ての診察に全力を!という想いを込めていますが、この子のスキンケア時には全スタッフがいつも以上に想いをこめていたと思います。
投稿者:
2014.02.07
こんにんちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
今日は、「よく診る柴犬の皮膚病」に見えて、実は非常に高いテクニックが必要とされた症例を紹介します。
キーワードは「アグレッシブに美しく」です♪
【症例】
柴犬 6歳 男の子
【過去の病歴】
〇2歳から痒みを伴う皮膚病で通院
〇1件目の動物病院では「アトピー」として抗生物質、ステロイド、免疫抑制剤、インターフェロン注射・・・も改善せず
〇2件目の動物病院では抗生物質、ステロイド、院内薬浴、食事療法を継続するも改善せず
〇症状は全身の痒み、特に顔(目・口唇・頬)、お腹を舐める、胸の側面を後肢で掻く、四肢端(指間と足裏)を舐める
それでは初診時の状態からみてみましょう。
まずは顔からです。
続いて、上腕部分を正面からみてみましょう。
同じく右前肢上腕の拡大です。
続いて、右側面から胸部と腹部の拡大と合わせてみてみましょう。
同じ右側面からの胸部です。
同じく右側面からの腹部です。
続いて、左胸部側面からです。
最後に腹部、そしてその局所の拡大です。
それでは上記の初診時から約3カ月半後の状態を比較してみましょう。
※すべて画像をクリックすると拡大することができます。
現在さらに半年経過しましたが、「ほとんど痒がらない。一番ベスト!」と言っていただけています。
さて、気になるのは
①なぜ治らなかったのか?
②なぜ綺麗になったのか?
ですね。
まず①の過去の治療で治らなかった理由から説明してみましょう。
一番の大きな理由はニキビダニ症を見落としていたことです。
たしかに僕も1度や2度の皮膚顕微鏡検査でニキビダニを発見できずに、診断に苦慮した苦い経験もあるので難しいこともありますが、先入観で診てしまうと「陥りがち」なところに本当に陥ってしまいます。
なぜならこの僕も一目見て「柴犬に典型的に認められるアレルギー性皮膚炎」と判断できるほどの典型パターンだったからです。
過去の治療をみても、前2件の動物病院の先生が明らかに柴犬のアレルギー性皮膚疾患と診断したと想像することができます。
そして肝心なことは、この「ニキビダニ症」にステロイドは禁忌(使ってはいけない)とされているのです。
続いて②のなぜ綺麗になったのか?
すべては伝えられませんが、やはりポイントとしては
1.柴犬の遺伝的特徴を含め、柴の皮膚病をよく知ること
2.この皮膚疾患をすべて1つにくくらず、2つあることを把握すること
3.教科書的にならず、唯一無二の目の前の症例(病態)に合った治療方針をつくること
です。
この教科書的ではない治療テクニックは、定期的に開催している臨床セミナーで「このような皮膚疾患をどのように考えるか」というところを、個人的な見解ではありますが解説させていただきました。
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