2014.02.01
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
さて、今日はフレンチブルドッグの難治性皮膚疾患についてです。
「痒みが強く、なかなか治らない」と当院の皮膚科診療を受診される中でも多くを占めるのがこのフレンチブルドッグですが、今回紹介する症例はそんなフレンチブルドッグの難治性になり易い典型的な皮膚疾患の1つです。
【症例】
フレンチブルドッグ 3歳10カ月 女の子
【過去の病歴】
〇生後1歳前からお腹の湿疹の再発を繰り返す
〇2歳ごろまでは、抗生物質と痒み止めの2種類で改善していた
〇但し、内服をやめるとすぐに再発する
〇この1年は赤い湿疹だけでなく、皮膚がめくれるような脱毛が全身に広がる
〇痒みは非常に強い(頚部、ワキ、腕、お腹~お尻、顔、耳、四肢端)
※痒みがないところはない
さて、初診時の状態です。
まずは顔正面から。
つづいて、右の顔の拡大です。
これでは皮膚病のようにみえないかもしれませんが、非常に痒い部位の一つです。
細かい白いフケがあり、べたつきが認められます。
続いて、左耳です。
続いて、左半身です。
病変を分かり易くみるため、斜め後ろからみてみましょう。
斜め後ろからみると、病変の数が多いことがわかりやすくなると思います。
その一つを拡大してみましょう。
同じように右半身をみてみましょう。
続いて、四肢端ですが四肢に同じ病変が認められるため1つだけみてみましょう。
この指の間をそれぞれ拡大してみましょう。
続いて、足の裏です。
続いて、胸部(腹側)です。
続いて腹部です。
同じく、腹部の病変部がある拡大です。
左内股の拡大です。
最後に、左内股の拡大です。
これが難治性皮膚疾患のフレンチブルドッグの典型の1つです。
さて、ここから治療後の状態と比較してみましょう。
赤みが少ないのでわかりにくいかもしれませんが、毛並みが綺麗になっていることが皮膚コンディションが改善している証拠です。
続いて、左耳です。
続いて、左右から状態です。
続いて、四肢端の比較です。
続いて、胸~腹部~内股です。
この比較写真に要した治療機関はわずか6週間です。
ただ完治ではなく、今でも継続治療を行っています。
大事なことはフレンチブルドッグを知ることです。
教科書的に診断名を当てはめて、治療を選択しても治らないこともめずらしくありません。
それは「木を見て森を見ず」と同じことで、本質的なところの評価が不十分といえます。
やはりフレンチブルドッグには他犬種にはない独特の体質があるため、それにあった病変の診方、治療選択肢があります。
フレンチブルドッグの体質をよく知る
これに尽きます。
投稿者:
2013.12.19
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
随分と冷え込むようになり、コタツの中からでこれないわんこ、ヒーターの前から動かないわんこもいるのではないでしょうか?
久しぶりの症例報告ですが、今回は院内スキンケアを行わず治療したフレンチブルドッグの症例を紹介します。
【症例】
犬 フレンチ・ブルドッグ 12歳
【病歴】
〇6カ月前から痒みを伴う湿疹がでるようになり、広がっている
〇抗生物質とステロイドを毎日服用しているが、改善しない
では、初診時の状態をみてみましょう。
最も湿疹が多く認められたのが頚部です。
カットは飼主さまご自身が行ったようですが、治療のためには賢明な判断だと思います。
病変部を拡大してみましょう。
続いて、頚部の左側面です。
この湿疹が背側、大腿部などにも認められました。
この初診時から約10週間後、
続いて、頚部側面です。
湿疹は認められず、痒みも消失しました。
今回は「完治」のタイプとして治療終了としました。
フレンチ・ブルドッグに皮膚病が多く、その原因としてアレルギー体質があることはとても有名ですが、「フレンチ・ブルドッグの痒い湿疹=アレルギー」ではないため、病変部をよく診極めることが重要だと思います。
また、いい治療結果を得るためにはフレンチの体質をよく知ることも必要だと考えています。
今回はそのフレンチ・ブルドッグの皮膚を診極めることと、フレンチ・ブルドッグの体質を上手く把握できたこが迷走することなく綺麗な治療結果につながったと思います。
参考までにこのタイプの皮膚病にステロイドは禁忌です。
投稿者:
2013.09.01
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
前回、フレンチ・ブルドッグの皮膚病①として、典型的なフレンチ・ブルドッグの皮膚病の初診時の状態を掲載しました。
そして、初診時に何を伝えるのかが大事、ということも書きました。
主に以下の4点が重要と考えています。
①必要な検査
②過去の治療内容の評価
③必要となる治療
④目標
この中で①の必要な検査、これは初診時にこの病状をみて鑑別診断として何があげられるか?で変わってきます。
今回のフレンチ・ブルドッグの症例では、「内股は細菌性皮膚疾患」、「四肢&耳はアレルギー性皮膚疾患」、そして全身性疾患として「甲状腺機能低下症」を疑い、各種検査を行いました。
次に②の過去の治療内容についてですが、大きなポイントは2つあります。
「内服のステロイド」と「内股に外用のステロイド」が必要だったか?ですが、僕個人の意見としては「不適切」と判断しました。
次に③の必要な治療は、抗生物質の全身投与とスキンケアです。
次に④の目標は、「内股を綺麗に治す」、「四肢端と耳の痒みを改善する」としました。
それでは初診時から7週間後、治療開始後からは6週間後の状態と比較してみましょう。
まずは内股から。
続いて、左耳。
続いて、右前肢の指の間ですが、上段に初診時の状態、下段に治療後の状態を載せています。
続いて、左の前肢の指の間、同じく上段に初診時の状態、下段に治療後の状態を載せています。
続いて、右の後肢の指の間です。
続いて、左後肢の指の間です。
腹部は非常に綺麗になりました。
耳も多少の汚れはでますが、痒みはありません。
非常に強い痒みのあった四肢端ですが、ごく一部に炎症が残っているもののほとんど舐めないほどの改善を示しました。
治療後にかかった時間はたった6週間でしたが、四肢端は2~3週でほとんど改善することができました。
6週目までかかった理由は、過去のステロイドの影響から回復するのに若干の日数が必要だったことです。
治療のポイントは、
〇ステロイドが必要な皮膚病か?判断すること
〇フレンチの体質を知ること
〇すべての病変が同じ治療で治ると思わないこと、病変ごとへの治療が異なることが判断できること
です。
大事な「診極める」です。
投稿者:
2013.08.31
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今回の症例報告は、フレンチ・ブルドッグです。
フレンチ・ブルドッグは遺伝的に皮膚疾患が非常に多いですね。
一言に皮膚疾患と言っても痒みや脱毛など色々な症状がありますが、フレンチ・ブルドッグを悩ませる症状は圧倒的に「痒み」です。
痒みを伴う皮膚疾患で悩んでいるフレンチ・ブルドッグの飼主さまは非常に多いと思われます。
なぜ悩むか?
それは治療が難しいからです。
半分は治療を行う僕ら獣医師の責任でもありますが、残り半分の理由はフレンチ・ブルドッグが他犬種とは異なる独特の体質をもっているからだと思います。
そんなフレンチブルドッグの典型的な皮膚疾患の1つを紹介します。
【症例】
犬 フレンチ・ブルドッグ 5歳 女の子(避妊手術済)
【過去の病歴】
〇以前から「アレルギー」と言われていた
〇1歳のころから内股の湿疹(現在と同じ病状)
〇かかりつけの動物病院で抗生物質とステロイドの内服治療
〇この4年間、2カ月に1回(2週間の処方)を継続しているが改善なし
〇内股に外用薬を処方されているが、「あまり塗布しないように」と指示されている
それでは初診時の状態を見てみましょう。
フレンチ・ブルドッグの皮膚病では顔周りの皮膚炎も多いのですが、今回は軽度でした。
まずは強い症状の1つ、耳の痒みです。
続いて、この4年間で1度もよくなったことがない内股の湿疹です。
同じく内股の拡大です。
これはステロイドの副作用(特に外用薬によるもの)が認められます。
続いて、右前肢。
一見綺麗な状態に見えますが、指の間を見てみると、
真っ赤です。
続いて、左前肢です。
同じく一見綺麗に見えますが、指の間を見てみると、
全ての指の間が真っ赤になっていますね。
続いて、右の後足の指の間(真ん中)です。
続いて、右後肢の指の間(真ん中)です。
四肢の全てに痒みと炎症が認められました。
ここでは掲載していませんが、足の裏も皮膚炎があります。
こういった診療では、初診時になにを伝えるかがとても重要になります。
今回の症例では、
①必要な検査
②過去の治療内容の評価
③必要となる治療
④目標
について、予測の範囲内ではありますがお伝えしました。
投稿者: