2018.04.06
アトピー・食物アレルギーなど、痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回紹介するのは個人的に非常におもしろい症例です。
【症例】
ミニチュアダックスフンド 9歳 男の子(去勢済み)
何がおもしろいかというと、「1歳のころから当院をかかりつけにしている地元の患者さま」で、当院のスタンダードな治療でよくできなかった症例です。
1~5才のころは皮膚病などなく、6~7歳ころ(今から2~3年前)から発症しました。
胴体部分の膿皮症と、四肢端の脂漏性皮膚炎で、見た目は「よくある皮膚炎」です。
ただ、予想以上に治療の反応が悪く、抗生物質(培養検査済み)でも膿皮症がきれいに改善せず、アポキルを使っても四肢の皮膚炎&痒みが改善しない・・・
甲状腺機能低下症もなく、副腎皮質機能亢進症の疑いも低く、アレルギー対策の食事療法に変更してもパッとせず1年経過してしまいました。
皮膚病2年目のころには、飼主さまの来院がほぼなくなり、今年3年目の春に「暖かくなって今まで以上にひどくなった」ということで再来院されました。
それが先月3月上旬です。
そのときの状態を紹介します。
まずは顔正面から。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、右前肢
足先、腕(内側)、上腕(脇)の順番です。
続いて、左前肢。
足先、手首内側、上腕(脇)の順番です。
続いて、胸です。
続いて、後肢です。
同じく内股の拡大です。
同じく右後肢の足先、足首、甲の拡大です。
同じく左後肢です。
こういったタイプは典型的な皮膚炎の1つかと思います。
2年前の時点でもほぼ同様の見た目で、もちろんそのときの当院のスタンダードである治療を当てはめたのですが・・・飼主さまの納得できる治療成績ではありませんでした。
そんな経過もあり、昨年はほとんど治療の機会を得ることができずでしたが、今年は
「うちの全力で治療すればきっとよくなります。もう一度全部やらせてください」
とお願いして全力治療に望みました。
投薬は
・アポキル
・抗生物質
・スキンケアECプラス
・院内薬浴(Medicareオイル&シャンプー)
・外用薬(点耳薬)
・食事療法
そこから4週間後の状態と比較します。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
痒みはほぼありません。
飼主さまもシャンプーも外用薬(点耳薬)も使わずでも最高にいい!とおっしゃっていただけました。
抗生物質は2週間で完全休薬とし、ECプラスで膿皮症の再発防止ができています。
2年前との明らかな違いは「食事療法」だけです。
それ以外のスキンケアやアポキルの処方、抗生物質の処方などは一緒です。
もちろん2年前も確かに食事療法をしたのですが、そのときはベストと確信できる食事を選ぶことができていなかったので、うまく行かなかったのだと思います。
今回は投薬治療を変えなくとも、食事療法で成功する自信がありましたのでベストな結果をだすことができました。
やはり食事療法は非常に重要ですね!
当院では皮膚科診療提携を通じて、こういった症例に対して初診時に的確に治療方針を完成させるための皮膚科セミナーを開催しています。
ご興味のある先生は当院までお問い合わせください。
投稿者:
2018.03.12
ミニチュアダックスフンドのアトピー・アレルギー・膿皮症などの痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ミニチュアダックスフンドの皮膚病にはあまり知られていない特徴があります。
「あまり知られていない」であって、まったく記載がないわけではないのですが、ほとんどフォーカスが当たらないため治療成績が悪い原因になっています。
当院を受診されるほぼすべての症例が過去になんらかの治療を受けているので、初診時には処方されてきた薬のことをお聞きするのですが、多くが「間違いではない」と思っています。
抗生物質を使う、アポキルを使う、食事療法をする、シャンプーする・・・・・確かに1点1点は間違いではありません。
こんなときは、わずかなズレと足りないピースを探すことが重要です。
よくあるのですが、ある1点だけ気づいていないがゆえに、その他の治療が問題にも関わらずまったく治療結果がでないという症例を数多くみています。
今回紹介するミニチュアダックスの皮膚病の症例も、そんな1例です。
【症例】
ミニチュアダックスフンド
【経過】
〇過去に当院で治療して改善歴(見た目は完治レベル)あり
〇再発時に、飼主さまの体調不良などもあり、通院しやすい地元動物病院へ受診したが改善しない
それでは再発して治らないという状況で久しぶり(1年2カ月ぶり)に来院されたときの状態を紹介します。
一見特徴がない皮膚病にみえますが、これがこのタイプの特徴を表しています。
過去に治療を成功させているという実績を除いて、仮に今日は初診だとしても診断は一瞬です。
当院で治療を再開させて2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
モコモコ&フワフワ、痒みもほぼコントロールできています。
予測通りかつ、ほぼパーフェクトな改善といえます。
抗生物質を使うことは正しい治療プランです。
痒みのためにアポキルを併用してもいいと思います。
実際に当院でもアポキルは併用しました。
しかしアポキルはなくてもこの治療は成功するので、「痒みはないにこしたことはないよね」という意味で処方しています。
実際2ヵ月立つ前に痒みはなくなったので、アポキルの継続投与はありません。
シャンプーも大事ですが、いくらシャンプーをしても、種類を変えてもこの皮膚病は治りません。
膿皮膚症があるため食事療法も正しいアプローチの1つですが、「そこじゃない」という皮膚疾患です。
ただ、今後の再発を減らすために食事療法は当院でも提案させていただきました。
当院では皮膚科のない個人動物病院に向けた診療サポートを行っています。
4月に新しい病院に説明に行く予定があるのですが、ご興味のある先生はお問い合わせください。
なお当院で使用しているスキンケア商品&サプリメントは、専用オンラインショップでお求めいただけます。
診断治療が適切であることは重要かと思いますが、症例によっては投薬治療がなくても十分改善する症例もいます。
当院を受診して、ベストな処方を受けることが何より改善に近いものだと思っていますが、遠方にお住いの方のお役にたてるのではないかと思っています。
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2018.02.19
ミニチュアダックスフンドのアトピー・アレルギーなど、フケや痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ダックスフンドは飼育頭数を考慮すると、皮膚病が特別多い犬種ではないのですが、柴犬・シーズー・フレンチブルドッグ系と比較するとかなりさまざまなタイプの皮膚病がでるため、広い範囲で疾患をみるようにしなければ難しいと感じることがあります。
【症例】
ミニチュアダックス 14歳 女の子
【経過】
〇1年半前からフケと脱毛と痒みを伴う皮膚病
〇かかりつけ動物病院で治療するも改善せず、当院を紹介されて受診
それでは初診時の状態を紹介します。
まずは正面から。
続いて、頚部。
続いて、胸部。
続いて、腹部と臍付近の拡大。
続いて内股とその拡大です。
続いて、右側面と拡大です。
続いて、背中とその拡大です。
続いて、左側面とその拡大です。
最後に尾です。
それでは初診時から治療約3ヶ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
フケはなくなり、毛並みも非常にきえいになりました。
当院の治療報告の中では3ヶ月という長い時間がかかりましたが、高齢なのと原因を考えるともっとかかるかと思っていたため十分な成績かと考えています。
今回の治療方針では、やはり投薬治療が必要なタイプですが、皮膚表面のフケを伴う皮膚炎にはスキンケアが必須です。
特に当院のクレンジングオイルが非常に重要で、このオイルの併用がなければ短期間での改善は見込めなかったと思います。
基礎疾患の的確な診断&治療とともにスキンケア、またはサプリメントを併用することで治療成績は大きく向上します。
当院の開発したスキンケア&サプリメントはオンラインショップでお買い求めいただけます。
スターターセットをご購入の方にだけ、後日当院から無料相談メールをお送りしています。
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2018.01.11
ミニチュアダックスの皮膚病治療に力を入れ、多くの症例報告を紹介している皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
あまりにも寒く、挨拶の代わりの一言目が「寒いですね」よりも、独り言の「寒い!」が増えたような気がしています。
まだまだ正月ボケが抜けていない状況ですが、今年もしっかりと症例報告を行っていきたいと思います。
【症例】
ミニチュアダックスフンド 女の子 9歳
【経過】
〇1歳過ぎから皮膚トラブル(膿皮症)
〇1歳以降ずっと改善しない慢性的な皮膚病
〇季節性の悪化はない
それでは初診時の状態です。
まずは全体像。
続いて、顔の正面、左から、右からと続きます。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、胸部と腹部です。
続いて、内股~後ろ足の拡大です。
続いて、右側面とその拡大です。
続いて、背中とその拡大です。
続いて、尾の根元と肛門周りです。
この初診時から9週間後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくみることができます。
まだ目の周りの毛が生えていませんが、かなりよくなりました。
この一つまえの状態では目の周りももっと改善していたのですが、よくなったことで「治った!」と治療がおろそかになってしまい、目だけややぶり返してしまいました。
おろそかになるくらい改善したという意味ではいいのですが、改善と完治は違うため、継続が重要です。
今回のような症例では投薬治療も必要ですが、同時にスキンケアも重要になってきます。
特に当院のクレンジングオイルとシャンプーが非常にいい組み合わせだと思います。
投薬治療の内容がただしくても、この適切なスキンケアがなければこれだけの改善はなかったと思います。
当院のスキンケア商品は以下のオンラインショップからお買い求めいただけます。
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2017.03.10
犬の皮膚病の中でも比較的難治性になりやすい脂漏性マラセチア性皮膚炎の治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
マラセチアと脂漏を伴う皮膚炎といえばシーズーが最も有名で、人気犬種の中ではトイプードル・チワワなどでもよく来院があります。
もちろん独特の体質としてコッカーやウェスティなどでもありますし、柴犬でもめずらしくありません。
そして今回紹介するのはミニチュアダックスフンドですが、ダックスでも珍しくはありません。
【症例】
ミニチュアダックスフンド 7歳 男の子(去勢済み)
【病歴】
〇1才のころからフケ・乾燥、痒みを伴う皮膚トラブル(軽度)
〇昨年の夏から悪化
初診時の状態を紹介します。
顔の側面、左からです。
頭部の拡大です。
続いて、顔の右側から。
続いて、頚部です。
同じく頚部の拡大です。
続いて、腹部全体像。
続いて、前胸部~わきにかけて。
続いて、右前腕です。
同じく、右前腕の拡大です。
同じく、右前肢端の拡大です。
続いて、後肢です。
続いて、右側面。
続いて、右後肢の側面です。
それでは、約1ヶ月後の状態との比較です。
※画像をクリックすると大きく見ることができます。
]
まだ1ヶ月という非常に短期間ですが、見違えるほど綺麗に改善しています。
飼主さまも「夜にぐっすり眠れるようになった」と喜んでいただけました。
ただ、治療はまだ前半であり、本当の治療はここから新しくはじめます。
どういうことかというと、ここまで前半の治療は「重度の皮膚炎、脂漏を抑える」という治療でしたが、これからは「皮膚コンディションを改善させる」という、より根本的なところへアプローチします。
「???」と思われるかもしれませんが、ここが「木をみて森をみず」にならない一つ上の医療を目指すポイントです。
脂漏性マラセチア性皮膚炎という診断名に間違いはありませんが、大事なのは「なぜなるのか?」「なぜこれほど悪化するのか?」を考えていくことが医療だと思います。
「診断名が原因をあらわしているとは限らない」、「症状の改善方法と、根本的な治療が同じとは限らない」とは今までの症例報告で伝えてきたとおりであり、今回のミニチュアダックスフンドの脂漏性マラセチア性皮膚炎でも「ある疾患」が隠れています。
今回の症例もこの「ある疾患」に気づかなければ、比較写真の「随分よくなりましたね~」の途中で終わってしまいます。
症状の改善がみとめられたら、治療も次のステップへ移ります。
半年後くらいが楽しみです。
また、今回の治療症例には院内薬浴を行いました。
スキンケアだけで改善するほど甘くありませんが、「スキンケアなくして改善なし」があてはまる症例でもあります。
非常に多くの方にご利用いただいていますが、必ず適切な医療(診断&治療)とともに併用してほしいと思います。
遠方にお住まいで当院に継続的な通院ができない場合でも、メールと写真で継続治療が可能な場合もありますので、一度ご相談ください。
投稿者:
2017.02.05
ダックスフンドのアトピー・アレルギー性皮膚炎、湿疹や脱毛疾患の治療に力を入れている動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今日は、以前紹介したことのあるミニチュア・ダックスフンドの慢性皮膚疾患のその後の経過を紹介します。
以前の記事 ⇒ 【ダックスの皮膚病治療】治療の差は?隠された問題は?
上記の記事では、初診時からわずか2週間で皮膚炎・痒みといった問題点が改善されたところまで紹介しました。
ただ同時に「隠された問題点」があり、別次元でもっとよくなることをお伝えしました。
初診時から2週間で実施しなかったアプローチを3週目から行い、予測どおりの改善を導き出すことができましたので、改めて紹介します。
新しいアプローチから約2ヵ月半後、初診時から3ヵ月後の状態をみてみましょう。
左側にある比較写真は初診時ではなく、初診時からよくなった2週間後の状態との比較です。
※1枚だけ初診時との比較になっています。
※画像をクリックすると大きくみることができます。
まずは頚部から。
つづいて、胸部です。
続いて、腹部。
続いて、右前腕、そして左前腕です。
続いて、後肢です。
※この後肢のみ、初診時との比較です。
続いて、左耳、そして右耳です。
非常に毛並みが綺麗になりましたね!
それでは振り返って、「初診時に何を診極める必要があったのか?」・・・
1つ目は、何より重症なのは主症状でもある「痒み」の改善、すなわち表面上の皮膚炎のコントロールです。
フケ・皮脂、湿疹、炎症、皮膚の肥厚などの改善が急務です。
これらの症状を最短で改善するには何を行えばいいのか?、検査結果のいかんにかかわらず初診時に把握しておかなければいけません。
2つ目は「皮膚炎以外に何が隠れているのか?」です。
ただ、この「皮膚炎以外の隠された疾患」ですが、この疾患への治療なく2週間の治療結果はでたのですから、結果としても「基礎疾患へのアプローチはなくとも改善は可能」ということになります。
それでもこの基礎疾患があったがためにここまで重症化したのも事実のため、初期の治療で症状が緩和でき次第、次の治療にシフトしていくのがベストでしょう。
初診時にこの隠された疾患を診極めつつ、あとから追加しても十分に改善するという診通しをたてておくのも重要なポイントだったと思います。
今回の症例でも初診時、再診時に院内で薬浴を行いました。
スキンケア、体質管理のサプリメントも重要なケアと考えています。
投稿者:
2017.01.21
ミニチュアダックスのアトピー・アレルギー・膿皮症の治療に力を入れて、体質に合わせた治療を行う皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院を受診されるわんちゃんのほとんどが「痒み」を主訴に来院されます。
もちろん治療の評価ポイントは「痒みが改善されたか?」が最重要ポイントになってくるのですが、当院の皮膚科診療はそれだけでは終わりません。
問題は「なぜ難治性皮膚病になるのか?」「なぜ皮膚が弱いのか?」ですので、もっと先まで踏み込む必要があります。
今回紹介する難治性皮膚病のミニチュアダックスは、そんな「なぜ治りにくかったのか?」まで踏み込んで劇的に改善した治療症例です。
【症例】
M・ダックス 11歳10ヶ月 女の子(避妊済み)
【症歴】
〇5年前から痒みを伴う皮膚病発症
〇過去に3件の動物病院を受診するも改善なし
それでは初診時の状態です。
まずは全体像から。
続いて、頚部です。
続いて、身体側面です。
同じく側面の拡大です。
続いて、背中全体です。
続いて、腹部全体です。
続いて、左前肢端です。
同じく左前肢端の指の間です。
続いて、尾とその拡大です。
続いて、大腿部尾側からです。
ミニチュアダックスフンドの皮膚病では典型的なタイプ・・・にみえますので、一見珍しくはみえませんが、ここまで重症化するダックスは多くはありません。
初診時の写真として、身体全体を紹介しましたが、痒み・皮膚炎が認められるのは一部で四肢端・下腹部・太ももくらいでした。
上にはその他の部位として、頚部、背中、側面も詳しく掲載しましたが、特別な痒みは認められませんでしたし、飼主さまから特別気になる症状はない部位でした。。
しかし初診時にこうして写真を残しているには理由があり、初診時に「ここが大事!」と認識して記録に残しています。
今回は第一段階としてまず痒みの改善を導き、第二段階として「皮膚をよくする」という2段階で治療を行いました。
治療後の比較です。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
頚部
側面。
側面の拡大。
腹部。
続いて、左前肢端。
同じく左前肢の指間。
続いて、尾とその拡大。
続いて、大腿部尾側。
四肢端の痒み・皮膚炎・フケの改善はもちろん、全身の毛並みが非常によくなりましたね。
スムースダックスがロングヘアダックスになったような劇的な改善といえます。
今回の表面上の診断名は「犬アトピー性皮膚炎」と「膿皮症」です。
そのための初期の治療はこの2疾患に対する投薬治療がメインです。
ですが、同時に「なぜここまで犬アトピー性皮膚炎が治り難く、重度になっていたのか?」の原因も考えなければいけませんし、そのヒントは身体全体に現れています。
飼主さまの主訴にある痒みだけではない、隠された病気こそが重症化の要因になっていますので、その部分にアプローチすることで、アトピーの治療成績もよくなりますし、膿皮症の再発もへります。
実際にこの症例では膿皮症の再発が劇的に減っています。
このまま継続治療をしていればもう初診時のような悪化になることはないでしょう。
治療は症状を改善するだけなく、なぜこうなったのか?再発させないためには?と考えてこそだと思います。
投稿者:
2017.01.06
こんにちは、皮膚病治療のみを専門に行っている愛知県の動物病院・四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今年最初の症例報告です。
【症例】
ミニチュア・ダックスフンド 5歳 女の子(未避妊)
【症歴】
〇2年前から痒みを伴う皮膚病発症
〇過去の投薬治療は、アトピカ、アポキルなど
それでは初診時の状態をみてみましょう。
初診時に薬浴を行い、投薬治療を併用しながら2週間後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると画像が大きくなります。
痒みと赤みはほぼ消失、フケが多くゴワゴワした皮膚はすべて綺麗に改善しました。
特別な疾患ではありませんし、むしろ「典型的な・・・」でありつつ重度でもない皮膚炎ですが、今回のわんちゃんには2点ポイントがあります。
まず1点目は、「過去の投薬治療で改善できなかった理由は?」ですね。
そして2点目は「これでいいのか?」です。
たった2週間で非常に綺麗になりました。
症状もほぼ消失しています。
一見問題ありません。
ただい、このわんちゃんでは隠れた問題が1つあります。
これに気づくか気づかないかは皮膚科診療では非常に大きな差を生みます。
なぜこのわんちゃんは皮膚が弱いのか?の原因の一つなんですが、それをこれからアプローチしていきます。
よくお話していますが、「診断名と、治療法がリンクしないことがある」ということの一つですね。
今回のわんちゃんでも、初診時に「あ、〇〇〇があるから、今後〇〇〇が必要だな」と判定していたのですが、改善のための優先順位では高くなったため、後から実施することにしました。
数ヵ月後、また掲載できればいいなと考えています。
投稿者:
2016.11.13
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
ハロウィンが終わり、世間はクリスマスモードに切り替わっていますね♪
当院もクリスマスモード・・・というような趣向はないのですが、年内にある程度症例報告を積み重ねていこうと思います。
【症例】
ミニチュアダックスフンド 12歳 女の子(避妊手術済み)
【病歴】
〇1年前から一度もよくなっていない
〇皮膚病が治らないため、乳腺腫瘍の手術を受けることができない
初診時の状態です。
初診時から3週間後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗になりました。
3週間かかったというよりも、再診時(初診から1週間の時点)でかなり改善があり、治療終了もみえてきたため、「かかりつけ動物病院へ手術の相談に行きましょう」と伝えておきました。
ということで、この3週間後の写真から5日後に無事手術までたどり着くことができました。
よかったですね!
投稿者:
2015.11.07
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
あっ・・・・・という間に1週間が経ちました。
明日は下町ロケット、前回以上に手に汗握る展開になりそうで麻衣子先生と一緒に楽しみにしています!
さて、今日はいつもの症例とはちょっと違った雰囲気の症例を紹介します。
症例はミニチュアダックスフンド、痒みを主訴に来院されました。
もちろん痒みの治療を行って、100%とはいえなくもそこそこのレベルまで改善しました・・・・が、
比較的短期間で再発する、または当初の予想以上の治療継続が必要という状態が続きました。
そこで元々気になっていた「脱毛症」を再評価することに・・・
この脱毛症、受診当初から認められたのですが、飼主さまからの主訴になかった(こういうものと思っていたそうです)ので痒みの治療を最優先にして、脱毛症は後からやりましょうという流れにしていました。
しかし再発頻度も気になったため、脱毛症が関係しているのでは?と疑い、脱毛症の治療を始めました。
その前後を紹介します。
え?脱毛症??
そんな感じがしますよね。
でもこれは初診時の時点で主訴になくても「脱毛がある」と把握しておかなければいけません。
もちろんこの脱毛症は「美容上の問題で、治療の必要はない」といわれていますが、それは教科書上の話です。
証明はされていませんが、この脱毛症はただ毛が少なくなるだけで美容状の問題だけではなく、皮膚コンディションの低下を引き起こすものと考えていて、理論上のそうですがいずれそれを実証されるレポートがでると確信しています。
では、治療後の状態をみてみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
一見「首から毛が生えた」「耳の飾り毛が増えた」だけ・・に見えますが、重要なのはそこではありません。
この治療により全身の皮膚コンディションが改善し、痒みの治療成績が改善し、ほとんど投薬治療が必要いらないレベルに到達しました。
何がいいたいのかというと、
「現在の動物医療ではこの脱毛症が『美容上の問題であり、治療するかしないかは飼主の希望に沿う』と定義されていることにより、疾患としての治療の意味が過小評価され皮膚病全体の治療成績低下の要因になっている。」
ということです。
あともう一つは、
本当は「被毛を含めた皮膚に影響を及ぼす疾患であり、皮膚コンディションの低下および脱毛を引き起こす疾患」であるにも関わらず、脱毛症という名前にまどわされ「毛が抜けるだけの病気」と獣医師が誤解していることです。
そのため想像以上に見落とされている可能性が高いです。
はい、僕も過去10年間ほとんどアプローチしていませんでした。
そしてたくさん見過ごしていたと思います。
中には明らかな脱毛症が認められず、皮膚コンディションの低下・毛質の変化だけという症例もかなりいます。
教科書的な診断名の「脱毛」という命名がよくないのだと思います。
脱毛であり、美容上の問題であり、治療はしなくてもQOL(生活の質)には影響ない・・・・・
教科書にそうかかれてしまうと軽視されるのも仕方ないで、今後の改善を期待しましょう。
「教科書では病気は治らない」というのが僕の口癖なのですが、やはり本を読むだけでなく、皮膚をよく診ること・・・これに尽きます。
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