柴犬の症例報告

アポキルが効かない柴犬の痒い皮膚病治療

2018.06.03

柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

痒みを抑える画期的な新薬「アポキル」が発売されて2年が経ちます。

副作用が非常に少なく、さまざまなシーンで使いやすい非常にいいお薬で、特に従来の治療では改善しにくかった典型的なアトピーの柴犬ではかなり効果を発揮します。

ただ柴犬の痒い皮膚病は独特で、原因が違うのに見た目が一緒ということが多いため、柴犬のアトピーだからアポキルが効くだろうと処方したのにまったく改善しないこともあります。

アポキルを使って改善しない場合にどう考えるか、今の皮膚科の課題の一つだと思います。

今日紹介する症例は「アポキルを1日2回服用しているのに改善しない柴犬の痒い皮膚病」です。

【症例】

 柴犬 1歳半 男の子

【経過】

 〇2ヵ月前(春)から口周り、お尻周りが痒い

 〇他院にてアポキル1日2回2週間、3週目から1日1回を2週間の合計1カ月服用したが改善なし

 〇口唇もお尻周りも血が出るまで痒がる

 〇傷防止のためにエリザベスカラーを装着している

それでは初診時の状態です。

まずは口唇です。

診断と治療方針はこの初診時の一瞬で決まります。

初診時からわずか12日後の状態と比較してみましょう。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

まだ毛は生えていませんが、皮膚炎はかなり改善しました。

飼主さまから「すごくいい!びっくりした!」と喜んでいただけました。

エリザベスカラーもはずして、まったく掻かないそうです。

たしかに柴犬の皮膚病はどの症例も似ているのですが、本当は少しづつ違います。

原因の違いがほんのわずかでも見た目に反映されていますので、よく見ればアポキルが効かない理由をみつけることができます。

なお当院でもアポキルは1日1回で継続投与としています。

治療の差はアポキル以外のところにあります。

大事なのはアポキルを出すことではなく、アポキルが効く痒みと効かない痒みを見分けられること、そしてアポキルが効かない痒みをどう評価してどうアプローチするかの方法を初診時に把握できることです。

当院と診療提携をしている病院には解説メールをお送りします。

診療提携をご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

毎日アポキルを服用していても改善しない柴犬の皮膚病

2018.05.28

柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

先日の柴犬の皮膚病ブログでは「原因が異なれど見た目が一緒になりやすいため、原因を分けるのが難しいこともある」ということをかきましたが、今回は見た目が特徴的なので診断&治療方針決定が非常に簡単という症例です。

ただ、柴犬の痒みに対して「アポキルを3ヶ月以上毎日服用しつづけているにもかかわらず良くならない」という症例のため、スタート時点での治療難易度はそれなりに高めです。

【症例】

 柴犬 3歳4ヶ月 男の子

【経過】

 〇1歳半のころに耳の痒み

 〇2歳半から腕やスネの脱毛(痒みはなさそう)

 〇胸の毛並みもわるくなってフケも多い(今はマシな方)

 〇痒みは、耳を掻く&振る、お腹を掻く、腕~手首をかむ
  ※目・口は痒みほぼなし、四肢端は多少なめることはあるかも?

 〇抗生物質とステロイドの併用でも改善なし

 〇アミノ酸系療法食でも改善はなかった

それでは初診時の状態です。

続いて耳ですが、後ろからみてみましょう。

続いて、右耳を後ろからみたところです。

同じく右耳の後ろから、拡大です。

同じく右耳、横からなど角度を変えてみてみましょう。

続いて、腹部全体と、胸の拡大・臍の拡大です。

続いて、お腹と右内股の拡大です。

続いて、右後肢の内股~膝の内側です。

この初診時からちょうど2ヵ月後の状態と比較してみましょう。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

続いて、腹部より下です。

ここは赤みの改善もありますが、なにより毛並みがかわっています。

以下の写真は臍周りです。

続いて、お腹~内股です。

この上の写真では少しわかりにくいかもしれませんが、右内股の赤みがほぼなくなっています。

最後にこの内股でわかりやすい写真、右後肢の内側(膝の内側)ですが、非常に毛並みがよくなっているところに注目してください。

痒みは「たま~~にかゆい」くらいで、アポキルも毎日から減らして現在は週3日の服用ですが、痒みのぶり返しはありません。

以下、今回の症例の簡単な考察です。

今回は12月~3月までアポキルを毎日服用していても痒い柴犬の皮膚病でしたが、本来であれば12~3月は皮膚病の治療成績が最も悪化しにくく、むしろ4~5月にかけて悪化するのが普通です。

その4~5月にかけてアポキルを減らしても痒みはあまりないという改善なので、写真の見栄え異常に劇的な改善効果があったといえます。

治療の成功のために注目すべき点はいくつかあるのですが、

①目・口・四肢端に強い病変がない

②耳の重症度が高い

③アポキルが効いていない

この3点を考えると「柴犬に良く認められるシンプルなアトピーではない」というのがわかります。

シンプルなアトピーではなく、アポキルが効かない・・・・・非常に難しそうにみえますが、この病気の原因はこの初診時でほぼ判定できます。

初診時の検査結果がは1週間後くらいに出揃いましたが、初診時の確信があったため検査結果が出揃うまえに治療方針を決めて治療開始させていただきました。

初診時の治療方針からの変更はありません。

なお当院と診療提携を結んでいる先生には簡単な治療解説メールをお送りする予定です。

今回は初診時に飼主様から「柴犬のコンクールに出してあげたい」という願いを聞いており、「きっとでれますよ!」とお約束していたので、順調に改善して一安心です。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の脂漏症】見た目は一緒でも原因は異なるものが複数ある

2018.05.26

柴犬のアトピーやアレルギーなど痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

皮膚病の難しいところの一つ、「見た目」をどう評価するか?です。

皮膚病は目で見えるからわかりやすいという側面もありますが、目で見えてしまうがゆえに難しいところがあります。

「目で見えるから難しい」の理由ですが、皮膚の変化のバリエーションには限りがあり、原因が異なっても見た目が一緒になることが多々あるということです。

特に柴犬で顕著ですが、原因が1つで程度が軽度であれば、その原因の特徴を見た目で分類することもしやすいのですが、複数の原因が重なり合って重症化すると、それぞれの特徴が消えて同じような皮膚病にみえてしまいことがあるのです。

例えばA疾患、B疾患、C疾患、D疾患と4つの病気の原因があるわんちゃんがいるといて、病状を分析(予測)するとA疾患25%、B疾患50%、C疾患15%、D疾患10%のという配分だったとします。

すると見た目はB疾患とA疾患の重症化というようにはみえますが、C疾患とD疾患まではわかりません。

疾患AとBに対する治療である程度緩和したときに、ようやく疾患CとDの特徴がみえることもあります。

もちろん予測できるところもあるので、ある程度想定はしますが、あとから「実は〇〇〇という病気もありそう」となることもあります。

今日はそんな複雑な要因が重なっている病気です。

【症例】

 柴犬 9歳 男の子

【経過】

 〇初発は生後4歳から

 〇7歳(2年前)のとき、頚部の皮膚炎から悪化

 〇この2年のうち一時期だけ無治療で改善したが、基本は通年発症

 〇食事療法は色々したが、よくならず

それでは初診時の状態をみてみましょう。

続いて、頚部です。

続いて、胸部です。

続いて、腹部です。

続いて、右側面です。

右側面の胸部拡大です。

同じく右側面の腹部拡大です。

続いて、右後肢のカカト付近です。

それでは初診時から3カ月半後の状態と比較してみましょう。

短期間のうちに劇的に改善しましたが、部分的にまだ残っていますね。

この残っているところが「今までの継続」でよくなるのか、別のアプローチが必要になるのかの判断が大事で、個人的には異なるアプローチが必要と考えています。

ここが前半でお話した別の要因があとから見えてくるという点です。

まだ改善の余地ものこっているので、飼主さまと相談しながら追加アプローチのタイミングは決めていこうと思います。

柴犬の皮膚病が重症化すると原因が異なれど、見た目は一緒になりやすく、見た目の判断が難しくなります。

アポキルが発売されてから、痒みに対してはアポキル一辺倒のような風潮があるのですが、こういった症例に対して画一的な治療ではうまくいかないため、病状に合わせた治療方針の変更が必要です。

※アポキルはとても使いやすい便利なお薬で、困ったら「とりあえずアポキル」でもいいのがメリットです。

アポキルを飲んでいるのに良くならない、柴犬の皮膚病で慢性・重症化して治療に困っている方はぜひ当院までご相談ください。

柴犬のこういった重症化であればほぼ改善します。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚病治療】7年間難治性を3週間で改善へ

2018.05.12

柴犬のアトピー・アレルギーなど強い痒みを示す難治性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

柴犬の皮膚病は非常に多いですね。

アポキルが使えるようになって簡単にいい治療結果がだせるようになった症例もいますが、それは一部のわんちゃんで、基本的には柴犬ならではの難治性がいるのはあまりかわっていないと思います。

その理由はアポキルが効かないのではなく、アポキルが効果を示す痒み以外の部分に対して十分な治療アプローチがされていないからです。

今日はそんなアポキル以外の治療が必要な柴犬の症例報告です

なお、この症例が初診時で来院された日は、以前のブログで紹介した京都市山科区のマックスドッグ&キャットクリニックの羽立先生と後輩の山崎先生が見学に来院されたときの初診です。

両名の先生にはどの部位をどう評価したら病気を診断できるか、どう治療すればいいのかを説明させていただきました。

【症例】

 柴犬 10歳 男の子(去勢済み)

【経過)

 〇3才から続く痒み

 〇季節性はない

 〇今までよくなったことはない

 〇春になると花粉症のような症状もでる

 〇最初のころは前足の裏をよくなめていた

 〇痒みは腹側面、わき、頚部、下顎、耳、胸、カカト、腕をなめる、前肢をなめる、背中をかむ、口唇をかく (眼は異常なし)

それでは初診時の状態を紹介します。

まずは正面から。

続いて、頚部とその拡大です。

続いて、右前腕正面からと内側からです。

続いて、前胸部です。

続いて、胸部と脇の拡大です。

続いて、胸の拡大、臍付近の拡大、内股の拡大です。

続いて、身体側面とその拡大です。

続いて、わきを右側面から、そしてその拡大です。

続いて、右側面の腹部とその拡大です。

続いて、右後肢の付け根~膝付近です。

続いて、右後肢の側面です。

続いて、右内股と左内股です。

この初診時からわずか3週間後の状態とひくらべてみましょう。

なお初診時に薬浴のため一度全身のカットを行いました。

※写真をクリックすると大きくみることができます。

まずは頚部、ゴワゴワはほとんどとれ、皮膚がやわらかくなり、毛も再生しています。

胸部ですが、強い脂漏がみとめられましたが、かなり強い改善であることがあります。

胸~わきも皮膚の硬さがなくなり、毛の再生もかなりのスピードで解決しています。

胸~お腹も皮膚のかたさはなくなり、今まで生えていなかった毛が密に再生しているのがわかります。

わき~胸部側面ですが、初診時にはゴワゴワだった皮膚がほぼ正常にもどっています。

腹部の皮膚の硬さも正常にもどっていのがわかります。

内股も初診時には真っ黒でしたが、かなりピンクにもどっているのがわかります。

肝心な痒みですが、耳をちょっとかくくらいで、身体全体の痒みはほぼ消失しています。

なお抗生物質は服用しておりません。

特に胸のあたりは4~5年ぶりに密な毛が生えてきたというこです。

この初診の診察を見学していただいた羽立先生には当院から各種検査結果と治療方針の解説をおくっています。

まだたった3週間ですが、初診時の治療方針でこのままいい治療結果がでていますので2~3ヵ月後には見違えるほどの柴犬にもどっていることでしょう。

大事なことは、初診時に各種検査結果がなくとも診た瞬間に皮膚病の原因がわかるタイプですので、同時に治療方針を決定できる診断力をつけることです。

また追って紹介する予定です。

【追記】

    平成30年6月8日 初診時から7週間後の治療経過 

想像以上の速さで劇的に改善しています。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

3年ぶりの急激な悪化で治療方針変更 2ヶ月後に・・・

2018.04.11

柴犬のアトピー・アレルギー・脂漏症・マラセチアといった痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

今回の柴犬の皮膚病の症例報告ですが、いつもと違います。

いつもは「初診から2~3ヵ月後、これだけ改善しています」ですが、今回は「初診から3~4年後、治療方針を変えたら劇的によくなった」です。

初診時(3年以上前)に設定した治療方針で、確かに一定のレベルまで改善&長期コントロールできていたのですが、あるとき予測せず急激に悪化したため「これを機に治療方針を見直しましょう」と提案したという流れです。

元々採用していた治療方針は、

 〇院内薬浴(4週間に1回)
 〇食事療法
 〇アポキル(アポキル発売前はシクロスポリン)

でした。

この治療方針であるとき急激に悪化した状態を治療前として紹介します。

この状態で治療方針を一部変更して2ヵ月後の状態と比較してみましょう。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

飼主さまから「今まで以上によくなった!すごくいい!」と、と評価していただけました。

加えて

「くやしい!!」

ともおっしゃったので、その理由を伺うと・・・

「お薬が効いたから、これからもこれを飲まないといけないので(笑)」

ということでした(笑)

僕からは、

「この治療成績を最初の時点で出すことができず申し訳ありませんでした」

と反省の言葉をお返ししました。

以下、僕の言い訳です。

以前から今回採用した治療法が適応になるのではないかと思っていたのですが、なにせ初診時から一定ラインまで順調によくなっていたため「これだけよくなっていれば、いらないということなのかな?」と思っていたのです。

そのため今回の悪化した皮膚をみて思ったことは

「ずっと維持できていたのに、想定外だ・・・新しい病気になったのか?」

ではなく、

「この皮膚は・・・やっぱり〇〇〇〇だ。これを機に治療を変更しなければいけない。過去の治療を否定することはやむをえない。」

でした。

そのため数年ぶりに悪化した今回に、改めて検査した項目はなく、治療方針の変更は悩みなく一瞬で決定できました。

しかし若干複雑です。

複雑な理由は、初診時にできなくはなかった・・という意味もありますが、それとは別のことです。

 ①初診時(3年前)は、確かにこの治療をせずに一定レベルまで改善した

 ②初診時には、この異常と思える決定的証拠なしだった

この2点であり、この異常は明確な白か黒の判定ができないグレーが存在し、状態によっては的確な治療がなくても改善しうることもあれば、不規則に悪化することもあるということです。

難しいですよね。

この異常はまだ教科書に掲載されていない皮膚疾患のため、今後はこの病気を色々な角度から切り込んでいこうと思います。

参考までにこの疾患に薬浴は非常に重要ですが、スキンケアやサプリメントでは根本的な解決はできません。

投薬治療が不可欠です。

ここで今の皮膚科の問題点について簡単にお話しておきます。

皮膚科の教科書が間違いというわけではなく、学術的には選ばれた情報の羅列でしかありません。

もし教科書が正しければ、今の皮膚病は全国どこでも簡単に改善するはずです。

治療が完成しない理由はパズルと一緒、「ズレているピースがないか、足りないピースはないか」の2つです。

なお治療のパズルに「枠」はないため、「ピースが足りない」と感じられるかどうかも獣医師の力量にかかっています。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【初診時の診極め】アポキルが効かない痒みの原因は?

2018.03.24

柴犬のアトピー・アレルギーなど、ステロイドやアポキルが効かない痒みの皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、愛知県四季の森どうぶつクリニックです。

今日は、今年の1月に初診で来院された直後に1回目のブログを掲載し、6週間後の比較を2月のブログで紹介した症例の続きです。

 1月19日UP 柴犬の皮膚科専門外来 ~ステロイドが効かない理由~

 2月27日UP   柴犬の皮膚科専門外来 ~ステロイドが効かない~ 再診

ステロイドで抑え切れなかった痒みをステロイドを使わずに抑えたという症例報告です。

たった6週間で劇的に(元々の痒み10痒として、4まで)改善したという症例報告でしたが、逆にいうと「まだ4残っている」ということで、これも初診時の想定どおりでしたので、これまた初診時に予め伝えていた「新しい手」を打つことにしました、というところで止まっていた症例です。

前回2月27日にUPしたときに次の1手をうった再診が本日でしたので、早速報告します。

残る痒みは脇をかく、腕・手首・膝・スネ・四肢端を噛むという症状でしたが、追加治療により「ほぼ痒みなし」というレベルまで改善しました。

前回の時点でかなり綺麗に改善していたため、治療前の写真は掲載していません。

ポイントはアポキルに6週間でのこってしまった痒みをどう抑えたのか?ですね。

もちろんこれは「初診時に決まっていたこと」を追加治療として採用することで解決しました。

それが「心因性掻痒症」です。

初診時の時点で、「初期治療である程度改善できると思います。ただ腕や四肢を噛む症状が残ると思うのですが、それは心因性です。その残った痒みには心因性のアプローチをしましょう」と伝えていたので、前回の治療追加とさせていただきました。

想定どおりほぼ痒みが皆無になりましたので、次はアポキルを2日に1回(または3日に1回)へ減らすことにしています。

おそらく2日に1回でも十分にコントロールできる皮膚コンディションだと思います。

アポキルを服用して抑えきれない痒みに心因性を疑うのですが、このときに最も役に立つのが当院で開発したヒーリングケアLFプラスです。

こちらの商品は以下のオンラインショップでお買い求めいただけます。

アポキルを使いながら併用することで残った痒みを緩和させる、アポキルの服用量(服用回数)を減らすなど、併用の相性が非常にいいですね。

もちろん診断が確実で、心因性以外の治療がそろっていることがなにより重要です。

心因性以外の治療方針にズレがあると、「そもそも・・・」となってしまいますので的確な診断がなにより重要です。

柴犬でも十分使えますが、個人的にもっと高い精度で相性がいいと思うのがトイプードル、シーズー、ヨーキーなどの小型犬です。

その他、猫の「お腹の毛が薄い」「腕をなめる」など、部分的な脱毛の原因である心因性に非常に相性がいいため、とてもお勧めです。

初診時に使わなかった理由は、心因性の痒みの割合が全体の半分以下で最優先ではないと判断できたことと、あえてアポキルで改善しない痒みを残すことで、心因性の痒みがあることを飼主さまに実感していただきたかったからです。

こうすることで、痒みの原因が複数あることが確実に伝わり、今後の痒みの再燃時にどの痒みがどの治療でよくなるか、獣医師も飼主さまも把握して対策を取れるためです。

痒みはとりあえず抑えればいいというものではなく、原因を細かく分析して将来の治療に生かすことも重要だと考えています。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

1日2回のアポキルが効かない柴犬の皮膚病

2018.03.22

アトピー・アレルギー疾患が多いといわれる柴犬の痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

アポキルが発売されてそろそろ2年が経とうとしています。

アポキルの発売半年ごから「アポキルが効かない」というわんちゃんの問い合わせが多くなり、最近では新しい初診のわんちゃんのほとんどが「アポキルを服用しているのに痒い」という状態です。

あらかじめ伝えておきますが、アポキルは非常にいいお薬です。

いいお薬すぎて、効く効かない関係なく「とりあえずアポキル飲んでおこうか」でもいいと思うくらいです。

もちろんアポキルがよく効く痒みと、効かない痒みがあるため区別して治療すべきなのですが、安全性の高さから「こまったらアポキル」というプランができるのがアポキルのいいところだと思っています。

そのため当院にはアポキルを服用しているのに痒みが改善しないというわんちゃんばかりが来院するので、アポキルが効く痒みとアポキルが効かない痒みをだいたい区別できるようになりました。

もちろんアポキルが効かないときにどうしたらいいのかも大体把握できるようになりました。

たまには外しますが、たまにです。

今日紹介する症例もそんな「アポキルが効かない」という柴犬の皮膚病のわんちゃんです。

【症例】

 柴犬 5歳 女の子(避妊手術済)

【経過】

 〇1歳すぎてから痒み発症

 〇毎年明確な季節性があり、2月~5月の花粉の時期だけ

 〇夏は一切発症しない

 〇昨年(平成29年)、初めて秋に春と同様の目ヤニの症状がでる さらに身体のべたつきあり

 〇基本は涙目、目ヤニ、目の痒み

 〇平成29年11月からアポキルを1日2回服用しつづける(1日2回を4か月)も、今年の2月に例年どおりの目の痒み発症

 〇今はわき、お腹の痒み

 〇飼主さま曰く「今年はアポキルを服用しているので、花粉症を乗り切れると思っていた。いつも通り発症しているのでアポキルの効果を実感できていない」

 〇エリザベスカラーと洋服で傷防止

それでは初診時の状態です。

3月17日が初診です。

まずは全体像です。

続いて、顔。

続いて、頚部とその拡大。

続いて、胸部とその拡大です。

右脇の拡大です。

胸部中央の拡大です。

左わきの拡大です。

続いて、腹部とその拡大です。

この症例で何を考えるか?

考えるポイントは

①明確な季節性がありアトピーを疑うにも関わらずアポキルが効かない理由は?

②今の痒みをコントロールするために必要な治療は?

この2つですね。

ただ痒みをコントロールするためには目の痒みと身体の痒みの原因と治療を変えた方がいいです。

今回は関東圏からの受診でしたので、次の再診は遠隔診療になります。

そのため診断と方向性はこの初診で確定しなければいけません。

あとは微調整のみ、毎年6月にはかゆみがなくなるため、今日からの治療結果をどう判断するかの問題はなきにしもあらずですが、おそらく飼い主様が「今までと違う!」と実感できる結果をだせると確信しています。

このタイプの皮膚病は当院と診療提携を行っている病院※であれば対応することが可能です。

※診療提携病院

 京都市 よこた動物診療室

 静岡市 あん動物病院

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

アポキルが効かない柴犬の痒い皮膚病の症例

2018.03.15

柴犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病だけでなく、アポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

アポキルが発売されたことで柴犬の皮膚病の治療は随分と楽になったと思うのですが、アポキルはどんな痒みにも効くわけではありません。

「効く」と思って使ったのに効かない、1日2回服用しているのに効かない・・・柴犬の皮膚病のあるあるではないでしょうか。

今日紹介する症例も、柴犬のよくあるアトピーにもかかわらず1日に2回アポキルを服用しているのに痒みがとれないというわんちゃんです。

【症例】

 柴犬 10カ月 女の子

【経過】

 〇生後4か月のころからずっと痒い!

 〇腕を掻く&噛む、口唇を掻く、目を腕で掻く、お腹の側面を後ろ脚で掻く

 〇アレルギー対応療法食を色々試すも、何を食べても改善しない

 〇アポキルを1日2回服用しているにも関わらず痒い

それでは初診時の状態を紹介します。

まずは正面から。

続いて、顔を色々な角度からみてみましょう。

続いて、頚部とその拡大です。

続いて、胸部とその拡大です。

続いて、腹部です。

続いて、体幹の左側面とその拡大です。

続いて、左前腕(やや後ろから)とその拡大です。

続いて、右前腕の内側とその拡大です。

同じく右前腕の外~尾側の拡大です。

それでは初診時から2か月後の状態と比較してみましょう。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

元々の痒みを10として、今は0~1程度です。

掻き壊して毛並みが悪くなっていた部位も随分と生えそろってきました。

顔・腕などの赤みもほぼなくなりました。

アポキルは1日2回だったものが、「ここ1週間飲んでないけど、痒くない」という改善です。

診断はいつものように一瞬で、柴犬にアポキルが効かないパターンの典型症例ですね。

柴犬の正常をしれば、この治療が可能です。

柴犬の痒い皮膚病でお悩みの方は、当院を受診してください。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の痒み専門外来】ステロイドが効かない~再診~

2018.02.27

柴犬のアトピー・アレルギーなど、痒い皮膚病でステロイドやアポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

僕に花粉症はないのですが、くしゃみや目の痒みを訴えるわんちゃんが来るようになったので、春の訪れを感じる今日このごろです。

一般的に冬は皮膚病が少なくなるため、病院もゆっくりとした時間が流れるのですが、この冬は溜まっている症例報告をたくさんやる時期でもあります。

それでは今日の症例報告は、今年の1月中旬に初診で来院されたわんちゃんで、以前のブログで初診の写真を紹介したわんちゃんのその後です。

  1月19日にUPしたブログ → 【柴犬の痒み専門外来】ステロイドが効かない理由

【症例】

 柴犬 1歳10ヶ月 女の子(避妊済み)

【経過】

 〇生後5か月から続く痒み

 〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ

 〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし

 〇抗生物質を1年間継続中

 〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用

 〇痒みのコントロールができていない

 〇季節性はなく、1年通してずっと痒い

それでは改めて初診時の写真を紹介します。

一見重度な感じはしませんが、痒いものは痒いのです。

100件どころか数百件の動物病院を超えて当院を受診するほど痒いのです。

普通の柴犬に見えた方がほとんどだと思います。

もし散歩でこのわんちゃんに出会っても、まさか県を越えて通院するほどの痒い皮膚病で悩んでいる柴犬には見えないと思います。

そんな見た目ですが、明らかに異常です。

前回のブログで書いたように診断は一瞬です。

それでは初診から6週間後の状態との比較です。

※写真をクリックすると大きく見ることができます。

いつも当院が紹介している重症からの改善ほどの大きな差がみえないかもしれませんが、非常に大きな改善が認められています。

痒みは元々10として、今は4くらいです。

写真をよくみたらわかると思いますが、毛並みもよくなり、フワフワになってきました。

飼主さまもこんなに毛並みがよくなったのは初めてと実感していただけました。

治療はステロイドではなく、2つのお薬を使いましたが1つはアポキルです。

アポキルがステロイドを上回ることはないと考えていますので、アポキル単独で効いたとは考えられません。

次は初回の治療方針で残った4の痒みですが、もちろん初期治療で痒みが残るのは想定範囲内であり、これも予定通り次の手をうつことにしました。

次の目標は4の痒みがある程度(完全ではない)緩和できること、もう少し先はアポキルを若干減らしても大きなぶり返しがないこと、です。

そのころにちょうどアトピーの痒みが出やすくなる花粉の多き季節、梅雨、夏・・・となるため、若干季節による悪化があるかもしれませんが、以前のように「効かない!」となることはもうないと考えています。

ここ最近の口癖の1つですが、「柴犬の正常を知れば異常がわかる」につきます。

ただ僕もこの柴犬の正常を把握するのに獣医師になって約10年かかったので、今は昔の自分を思い出しては反省する毎日です。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【一瞬の診極め】アポキルが効かない柴犬の皮膚病治療

2018.02.23

柴犬のアトピーやアレルギー、アポキルが効かない痒い難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

一般的に動物病院の皮膚科で治療が難しい犬種の筆頭に上がってくる一つが柴犬ですね。

その独特の体質からシーズーやフレンチより扱いづらく、治療難易度としては最高クラスと思います。

わかりやすい例えが良くも悪くもアポキルの反応で、アポキルが非常に効く症例もいるのですが、全然効かない症例もいます。

もちろんアポキルが万能ではなく効かない痒みがあるのはわかるのですが、このアポキルが効く症例と効かない症例の区別がつかないケースがあるから困るのだと思います。

だれしも

「なぜ効かない?」

と考えるのだと思うのですが、本当の意味でアポキルが気かない痒みであるわけではないですし、アポキルが効く柴犬と見た目の違いが全くないわけではありません。

柴犬の正常を知っていれば、アポキルが効かない痒みを呈している柴犬を事前に把握することができます。

「この症例には効きが悪い」

そして効くための治療手段を把握していれば「時期にアポキルが効くようになりますよ」と伝えることができるので、効かないアポキルを使い続けることにも何の後ろめたさも感じることはありません。

当院でも「最初は効きが悪いようにみえるかもしれませんが、1~2ヵ月後には効いてきますよ。」と伝えて治療開始しています。

今回はそんな「アポキルが全然効かない!」という柴犬の皮膚病です。

【症例】

 柴犬 4歳半 男の子(去勢済み)

【経過】

 〇1才半から続く皮膚の痒み

 〇顔(目・口・耳)、お腹、腕、四肢・・・・背中以外すべてが痒い

 〇アレルギーといわれ、食事をかえても、おやつを変えても改善しない

 〇1年前からアポキル1日2回服用しても痒い

柴犬でよくある「アポキルが効かない」という典型的な症例です。

診断は診察室でチラッとみた一瞬、アポキルが効かない理由と効くための治療方針の確定もほぼ一瞬です。

それでは初診時の状態です。

まずは全体、一見重度な感じはしません。

続いて、顔の左側で、目の回りも口周りもあちこち痒いです。

本来この顔周りの痒みにはアポキルが効果を示しやすいのですが、効きにくい柴犬もちょくちょくいます。

こういったタイプにはちょっとアプローチを変えると簡単に痒みのコントロールが可能になります。

続いて、右前腕で、柴犬に多い「腕を噛む」という症状が強くでいているため毛並みが悪くなっています。

このタイプの痒みにアポキルは効きにくいですね。

同じく右前腕の外側面です。

続いて、左前腕の内側。

続いて、胸部です。

胸を後ろ足で掻くというアトピーでよく認められる症状です。

腕とことなり、この部位の痒みにはアポキルが非常に効くことが多いのですが、柴犬では効きにくいことがありますね。

続いて、腹部とその拡大です。

お腹が真っ黒になっています。

診療で診る大事なポイントは痒くて黒くなってしまったお腹ではありません。

別のところに診断のヒントが隠されています。

最後に右胸部の側面の拡大です。

掻きすぎて傷になっています。

それでは治療後5ヶ月半後の状態と比較します。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

初診の治療スタートの時点でアポキルを1日2回服用している影響もあってか、見た目が重度でないため当院の症例方向の中では差の小さなものかもしれませんが、大分きれいになりました。

比較写真が約5ヵ月半と長期になったのは途中で悪化したためです。

悪化の理由は簡単で、初診から1~2ヶ月で順調によくなったのですが、飼主さま判断で投薬治療が減ったためです。

これは「のど元過ぎれば熱くない」という心理的にもやむをえないことで、よくなると「薬がなくても良くなったんじゃないか?」「いくつかあるお薬のうち、〇〇はもういらないんじゃないか?」と考えてしまうためかと思います。

投薬治療を無理強いすることはできないため希望に合わせるのですが、やはりおまかせ治療がベストであってそのおまかせからズレると振り出しに戻ってしまうことがあります。

という理由で比較写真が5ヵ月半になっています。

おまかせであれば3ヶ月でこの状態だったと思います。

肝心のアポキルですが、受診前は1日2回服用でも痒かったのですが、今は1日半に1回(痒みが強いときは1日1回)でコントロールしています。

もちろん1日1回の方が効きはいいのですが、お薬は少ないにこしたことはないので1.5日が許容範囲であればそれも選択肢の1つかと思っています。

もし柴犬の痒い皮膚病治療でアポキルが効かない場合は、最低限2つの病気のことを考えるのがいいと思います。

治療は2つの病気以外のあるため、かなり多くの種類を駆使しますが、それぞれが重要な働きをします。

「痒い=アポキル」ではありません。

なお今回の症例はスキンケアやサプリメントメインではさすがによくなりません。

ヒーリングケアLFプラスは適応ですが、単独使用では改善は難しいでしょう。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

最新記事

SEARCH

カテゴリ分類

Contact完全予約制・ご相談はお気軽に

Contact当院は犬の皮膚病だけに特化した
動物病院です。

  • 0562-85-2215 tel
  • 0562-85-2215 tel
  • サテライト
  • サテライト
  • 初診申し込みフォーム初診申し込みフォーム
  • 東京サテライトクリニック東京サテライトクリニック
  • 全国発送対応クリニック開発スキンケア&サプリメント shop全国発送対応クリニック開発スキンケア&サプリメント shop
pagetop