2019.01.10
ステロイドやアポキルでよくならない柴犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の症例報告も相当数になっていますが、ほぼ「ステロイドが効かない」「アポキルが効かない」のどちらかか両方の受診ばかりになってきたのがわかります。
今回の症例も「ステロイド・アポキルで1年間投薬治療するも改善しないという症例です。
【症例】
柴犬 2歳半 男の子
【経過】
〇1歳の春から痒み
〇冬は改善するが、1年中発症する
〇顔(鼻・口)をかく
〇腕、指先をかじる
〇耳・脇・太もも・
〇アポキル・ステロイドで治療するも改善なし
それでは初診時の状態です。
まずは正面から。
続いて、前胸部です。
続いて、左前腕のやや内側の拡大です。
続いて、胸部です。
続いて、腹部です。
続いて、内股です。
続いて、右前腕の外側です。
初診時からちょうど2か月後の状態と比較してみましょう。
非常に綺麗に改善しました。
痒みもアポキルを2日に1回まで減らしてもまったく問題なしの状態です。
ここから先は「アポキル頓服(週1~2回レベル)」でのコントロール予定です。
柴犬には柴犬なりの治療方針が必要で、今回の症例も「アポキルが効かない理由」をピンポイントで治療すればここまで改善可能です。
そしてそのポイントは「初診時にわかる」です。
今回も初診時に「正直、よくなりますか?」と聞かれましたので、
「劇的によくなると思いますよ」
とお伝えできました。
遺伝体質にあった治療があればアポキルを減らすことは可能ということです。
遠隔診療(初診は要直接受診)での対応可能なため、遠方にお住いの方でも柴犬の皮膚病でお困りであれば当院までご相談ください。
投稿者:
2018.11.29
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今回は柴の症例です。
【症例】
柴 5歳3ヶ月 女の子(避妊手術未)
【経過】
〇1歳から口唇の痒み
〇今年の春から全体的に痒みがひどくなった
〇前肢の肉球をしつように舐める
〇陰部から内股にかけて舐める
〇腕・膝を噛む
〇抗ヒスタミン剤+ステロイドで痒みが抑えられず、現在エリザベスカラー着用
それでは、初診時の状態です。
まずは、体の正面です。
顔の右側です。
足裏とその拡大です。
それでは、初診時から約4週間後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
足裏を舐めなくなったので赤みが引いているのがわかります。
エリザベスカラーも外すことができました。
【症例報告制作者】 看護士 長尾
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【獣医師の解説】
顔の痒み、四肢をしつようになめる、腕・膝を噛む・・・柴犬の典型です。
この典型タイプは一般的に「柴犬だからアレルギー」、「顔と四肢端はアレルギーがでやすい」という先入観からアレルギー治療がメインになりがちですが、アレルギーという視点でアプローチすると治療失敗の原因になりやすいと考えています。
ではどうですればいいか?
それは心因性です。
心因性に対するアプローチをすると、エリザベスカラーが必要だった痒みもおさまってきます。
アポキルも2日に1回という控え目な量でも、痒みを抑えるには十分というレベルです。
当院ではどういった症例に心因性アプローチをするのか、どのお薬をどの程度つかうのか、何を併用するのか?・・・など、獣医師向けの心因性皮膚病セミナーを開催しています。
ご興味のある方は診療提携希望として当院までお問い合わせください。
投稿者:
2018.09.30
当院を受診できない遠方にお住いの方にメールと写真で継続する遠隔診療を提供している皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
以前にも報告した通り、今年の夏は「山口県」と「北海道」に往診に行きました。
原則として「直接診るのは1回だけ」という背水の陣で臨みますので、往診に行くからには改善の確信を持って伺っています。
もちろん今回の2件とも「いける」という確信をもって伺いました。
そしてその2件のその後ですが、まだ治療中とはいえ十分な改善が認められたようです。
1件は心因性の掻き壊し・舐め壊しのチワワちゃんで、掻き壊しを防ぐために誰かが家にいなければならず、1人では買い物にも行けないというものでした。
もちろん治療の目標は掻き壊しをなくすのは当然で、「わんちゃんが留守番して買い物ができるように」ということも目標にいれました。
まだ治療して1カ月ですが、十分に改善が認められたようで、①一番の問題だった口唇の痒みはほとんどなくなり、②短時間でも留守番ができるようになったということでした。
2件目のわんちゃんは写真を見るのがいいと思いますので、紹介させていただきます。
【症例】
柴犬
【経過】
〇アポキルを1日1回をずっと継続しているにも関わらずよくならない
〇過去には心因性の治療として抗不安薬の投与もしたことがある
〇甲状腺ホルモン剤も服用中
最初に相談メールをいただいたときのお写真がこちら。
柴犬のよくあるタイプの1つです。
もちろんこの時点で「今まで治らなかった理由」と「どうやったら治るのか」はわかるのですが、追加でいただいた昔の写真をみて確信を得ることができました。
これは「アポキルでよくならない決定的証拠写真」です。
実際に往診に伺うときには治療方針は決まっていたので、お薬をもって出発です。
そこから約1か月後。
痒みも随分と落ち着き、毛も再生してきました。
また心因性の痒みもあるため、心因性の投薬治療を追加したのですが、「改善あり」という判定でした。
今回の症例にはいくつか評価ポイントがあります。
1つは、「なぜアポキルが効かないのか?」ですね。
2つは、「なぜ心因性の治療に効果がでたのか?」です。
2つ目の理由は非常にシンプルで、「その他の治療方針がパーフェクトだから」です。
心因性の治療はその他の治療方針にわずかでもズレがあると、まったく改善しなくなることがあるため、心因性以外の皮膚トラブルの診断・治療が上手くいっているときに実施しなければ評価が難しいです。
あとは順調に回復するのを待つだけです。
年末にはフワフワ&サラサラを期待しています♪
1つめの「アポキルが効かない理由」は当院で実施している個別セミナーで紹介しています。
診療提携をご希望される動物病院はお問い合わせください。
投稿者:
2018.06.25
アトピー・アレルギー・掻きすぎ・掻き壊し・舐め壊しなど柴犬の痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
【症例】
柴犬 12歳 男の子(去勢済)
【経過】
〇6歳まで異常なし
〇6年前から痒みを伴う皮膚病
〇季節性はなく通年性
〇わきをかく、内股をなめる、四肢端を舐める
〇過去4年間漢方薬を継続するも改善なし
〇夜中でも痒みで起きることがある
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは左の脇~胸の側面とその拡大です。
続いて内股とその拡大(右、左)です。
柴犬といえばアトピー・アレルギーを疑うのが一般的ですが、このタイプは少し違いますね。
どう違うかというと、
〇6歳以降の発症
〇季節性のない痒み
〇目、口は異常なし
典型的なアトピーの特徴を揃えていないこのタイプの診断は、わんちゃんの皮膚をみずに外観だけど、飼主さまのお話を聞きだけで確定診断に近づくことができます。
それでは初診時からわずか8日後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
まずは左の脇~胸です。
同じく左脇~胸の拡大です。
続いて、内股とその拡大です。
写真でみるポイントは、赤み・じゅくじゅく・ガサガサといった感じがなくなっているところです。
また治療開始からわずか8日にも関わらず、色素沈着(赤黒い)のが少なくなっているのがわかると思います。
痒みはほとんどなくなり、夜中に起きることもありません。
しつこくなめるのもなくなっています。
こういったタイプは投薬治療とともに、ヒーリングケアLFプラスを使うのがおすすめです。
皮膚がゴワゴワしてるためスキンケアが気になる方も多いとは思うのですが、スキンケアメインで取り組むとうまくいかない原因になるでしょう。
ヒーリングケアLFプラスを使うことで、アポキルを含めたお薬の使用頻度や量を減らすことが十分に期待できます。
ヒーリングケアLFプラスは当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
医療に万能はありませんが、サプリメントには医療ではカバーできない部分をサポートすることができます。
的確な診断と治療併用の元で使っていただけば体質改善、再発防止、お薬の減量に役立つサプリメントです。
投稿者:
2018.06.14
柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の痒みに対するアポキルの使用ですが、とてもよく効く、ある程度効く、わずかしか効かないとバラバラです。
今回はアポキルが全く効かないという症例報告です。
【症例】
柴犬 2歳10か月 男の子
【経過】
〇約1歳のころから痒みを伴う皮膚病
〇3件の動物病院で治療も改善なし
〇アポキルを10カ月継続するも明らかな改善なし
〇痒みは「泣き叫ぶほど」という強い痒み
〇夜中も散歩中でもひめいをあげるほど痒い
〇痒いの部位は、目・鼻・手首・下顎・耳・内股
〇アレルギー検査済
〇食事療法継続中
それでは初診時の状態を紹介します。
見た目は非常に綺麗ですね。
これは「治療後」ではなく、当院を受診された当日の写真なので「治療前」の写真です。
初診から11日後に2回目の診察にきていただきましたが、痒みはほぼなくなりました。
なおアポキルの服用をやめても痒みのぶり返しはなく、おちろん泣き叫ぶこともなくなりました。
※治療前の時点で見た目の皮膚病変が乏しかったため、写真はありません。
このタイプの診断は初診の一瞬です。
診察室でお話して5分か10分後には確定できるタイプです
元々大した痒みではなかった?と思われるかもしれませんが、今回は過去3件の動物病院で治療して、その上で「大阪」から約3時間かけて来院されています。
それぐらい痒かったということです。
このタイプには当院のヒーリングケアLFプラスが有効です。
当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
的確な診断とともにご使用いただければこれほど「実感できる」有効なサプリメントはありません。
投稿者:
2018.06.03
柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
痒みを抑える画期的な新薬「アポキル」が発売されて2年が経ちます。
副作用が非常に少なく、さまざまなシーンで使いやすい非常にいいお薬で、特に従来の治療では改善しにくかった典型的なアトピーの柴犬ではかなり効果を発揮します。
ただ柴犬の痒い皮膚病は独特で、原因が違うのに見た目が一緒ということが多いため、柴犬のアトピーだからアポキルが効くだろうと処方したのにまったく改善しないこともあります。
アポキルを使って改善しない場合にどう考えるか、今の皮膚科の課題の一つだと思います。
今日紹介する症例は「アポキルを1日2回服用しているのに改善しない柴犬の痒い皮膚病」です。
【症例】
柴犬 1歳半 男の子
【経過】
〇2ヵ月前(春)から口周り、お尻周りが痒い
〇他院にてアポキル1日2回2週間、3週目から1日1回を2週間の合計1カ月服用したが改善なし
〇口唇もお尻周りも血が出るまで痒がる
〇傷防止のためにエリザベスカラーを装着している
それでは初診時の状態です。
まずは口唇です。
診断と治療方針はこの初診時の一瞬で決まります。
初診時からわずか12日後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
まだ毛は生えていませんが、皮膚炎はかなり改善しました。
飼主さまから「すごくいい!びっくりした!」と喜んでいただけました。
エリザベスカラーもはずして、まったく掻かないそうです。
たしかに柴犬の皮膚病はどの症例も似ているのですが、本当は少しづつ違います。
原因の違いがほんのわずかでも見た目に反映されていますので、よく見ればアポキルが効かない理由をみつけることができます。
なお当院でもアポキルは1日1回で継続投与としています。
治療の差はアポキル以外のところにあります。
大事なのはアポキルを出すことではなく、アポキルが効く痒みと効かない痒みを見分けられること、そしてアポキルが効かない痒みをどう評価してどうアプローチするかの方法を初診時に把握できることです。
当院と診療提携をしている病院には解説メールをお送りします。
診療提携をご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
投稿者:
2018.05.26
柴犬のアトピーやアレルギーなど痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
皮膚病の難しいところの一つ、「見た目」をどう評価するか?です。
皮膚病は目で見えるからわかりやすいという側面もありますが、目で見えてしまうがゆえに難しいところがあります。
「目で見えるから難しい」の理由ですが、皮膚の変化のバリエーションには限りがあり、原因が異なっても見た目が一緒になることが多々あるということです。
特に柴犬で顕著ですが、原因が1つで程度が軽度であれば、その原因の特徴を見た目で分類することもしやすいのですが、複数の原因が重なり合って重症化すると、それぞれの特徴が消えて同じような皮膚病にみえてしまいことがあるのです。
例えばA疾患、B疾患、C疾患、D疾患と4つの病気の原因があるわんちゃんがいるといて、病状を分析(予測)するとA疾患25%、B疾患50%、C疾患15%、D疾患10%のという配分だったとします。
すると見た目はB疾患とA疾患の重症化というようにはみえますが、C疾患とD疾患まではわかりません。
疾患AとBに対する治療である程度緩和したときに、ようやく疾患CとDの特徴がみえることもあります。
もちろん予測できるところもあるので、ある程度想定はしますが、あとから「実は〇〇〇という病気もありそう」となることもあります。
今日はそんな複雑な要因が重なっている病気です。
【症例】
柴犬 9歳 男の子
【経過】
〇初発は生後4歳から
〇7歳(2年前)のとき、頚部の皮膚炎から悪化
〇この2年のうち一時期だけ無治療で改善したが、基本は通年発症
〇食事療法は色々したが、よくならず
それでは初診時の状態をみてみましょう。
続いて、頚部です。
続いて、胸部です。
続いて、腹部です。
続いて、右側面です。
右側面の胸部拡大です。
同じく右側面の腹部拡大です。
続いて、右後肢のカカト付近です。
それでは初診時から3カ月半後の状態と比較してみましょう。
短期間のうちに劇的に改善しましたが、部分的にまだ残っていますね。
この残っているところが「今までの継続」でよくなるのか、別のアプローチが必要になるのかの判断が大事で、個人的には異なるアプローチが必要と考えています。
ここが前半でお話した別の要因があとから見えてくるという点です。
まだ改善の余地ものこっているので、飼主さまと相談しながら追加アプローチのタイミングは決めていこうと思います。
柴犬の皮膚病が重症化すると原因が異なれど、見た目は一緒になりやすく、見た目の判断が難しくなります。
アポキルが発売されてから、痒みに対してはアポキル一辺倒のような風潮があるのですが、こういった症例に対して画一的な治療ではうまくいかないため、病状に合わせた治療方針の変更が必要です。
※アポキルはとても使いやすい便利なお薬で、困ったら「とりあえずアポキル」でもいいのがメリットです。
アポキルを飲んでいるのに良くならない、柴犬の皮膚病で慢性・重症化して治療に困っている方はぜひ当院までご相談ください。
柴犬のこういった重症化であればほぼ改善します。
投稿者:
2018.03.24
柴犬のアトピー・アレルギーなど、ステロイドやアポキルが効かない痒みの皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、愛知県四季の森どうぶつクリニックです。
今日は、今年の1月に初診で来院された直後に1回目のブログを掲載し、6週間後の比較を2月のブログで紹介した症例の続きです。
1月19日UP 柴犬の皮膚科専門外来 ~ステロイドが効かない理由~
2月27日UP 柴犬の皮膚科専門外来 ~ステロイドが効かない~ 再診
ステロイドで抑え切れなかった痒みをステロイドを使わずに抑えたという症例報告です。
たった6週間で劇的に(元々の痒み10痒として、4まで)改善したという症例報告でしたが、逆にいうと「まだ4残っている」ということで、これも初診時の想定どおりでしたので、これまた初診時に予め伝えていた「新しい手」を打つことにしました、というところで止まっていた症例です。
前回2月27日にUPしたときに次の1手をうった再診が本日でしたので、早速報告します。
残る痒みは脇をかく、腕・手首・膝・スネ・四肢端を噛むという症状でしたが、追加治療により「ほぼ痒みなし」というレベルまで改善しました。
前回の時点でかなり綺麗に改善していたため、治療前の写真は掲載していません。
ポイントはアポキルに6週間でのこってしまった痒みをどう抑えたのか?ですね。
もちろんこれは「初診時に決まっていたこと」を追加治療として採用することで解決しました。
それが「心因性掻痒症」です。
初診時の時点で、「初期治療である程度改善できると思います。ただ腕や四肢を噛む症状が残ると思うのですが、それは心因性です。その残った痒みには心因性のアプローチをしましょう」と伝えていたので、前回の治療追加とさせていただきました。
想定どおりほぼ痒みが皆無になりましたので、次はアポキルを2日に1回(または3日に1回)へ減らすことにしています。
おそらく2日に1回でも十分にコントロールできる皮膚コンディションだと思います。
アポキルを服用して抑えきれない痒みに心因性を疑うのですが、このときに最も役に立つのが当院で開発したヒーリングケアLFプラスです。
こちらの商品は以下のオンラインショップでお買い求めいただけます。
アポキルを使いながら併用することで残った痒みを緩和させる、アポキルの服用量(服用回数)を減らすなど、併用の相性が非常にいいですね。
もちろん診断が確実で、心因性以外の治療がそろっていることがなにより重要です。
心因性以外の治療方針にズレがあると、「そもそも・・・」となってしまいますので的確な診断がなにより重要です。
柴犬でも十分使えますが、個人的にもっと高い精度で相性がいいと思うのがトイプードル、シーズー、ヨーキーなどの小型犬です。
その他、猫の「お腹の毛が薄い」「腕をなめる」など、部分的な脱毛の原因である心因性に非常に相性がいいため、とてもお勧めです。
初診時に使わなかった理由は、心因性の痒みの割合が全体の半分以下で最優先ではないと判断できたことと、あえてアポキルで改善しない痒みを残すことで、心因性の痒みがあることを飼主さまに実感していただきたかったからです。
こうすることで、痒みの原因が複数あることが確実に伝わり、今後の痒みの再燃時にどの痒みがどの治療でよくなるか、獣医師も飼主さまも把握して対策を取れるためです。
痒みはとりあえず抑えればいいというものではなく、原因を細かく分析して将来の治療に生かすことも重要だと考えています。
投稿者:
2018.03.22
アトピー・アレルギー疾患が多いといわれる柴犬の痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが発売されてそろそろ2年が経とうとしています。
アポキルの発売半年ごから「アポキルが効かない」というわんちゃんの問い合わせが多くなり、最近では新しい初診のわんちゃんのほとんどが「アポキルを服用しているのに痒い」という状態です。
あらかじめ伝えておきますが、アポキルは非常にいいお薬です。
いいお薬すぎて、効く効かない関係なく「とりあえずアポキル飲んでおこうか」でもいいと思うくらいです。
もちろんアポキルがよく効く痒みと、効かない痒みがあるため区別して治療すべきなのですが、安全性の高さから「こまったらアポキル」というプランができるのがアポキルのいいところだと思っています。
そのため当院にはアポキルを服用しているのに痒みが改善しないというわんちゃんばかりが来院するので、アポキルが効く痒みとアポキルが効かない痒みをだいたい区別できるようになりました。
もちろんアポキルが効かないときにどうしたらいいのかも大体把握できるようになりました。
たまには外しますが、たまにです。
今日紹介する症例もそんな「アポキルが効かない」という柴犬の皮膚病のわんちゃんです。
【症例】
柴犬 5歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇1歳すぎてから痒み発症
〇毎年明確な季節性があり、2月~5月の花粉の時期だけ
〇夏は一切発症しない
〇昨年(平成29年)、初めて秋に春と同様の目ヤニの症状がでる さらに身体のべたつきあり
〇基本は涙目、目ヤニ、目の痒み
〇平成29年11月からアポキルを1日2回服用しつづける(1日2回を4か月)も、今年の2月に例年どおりの目の痒み発症
〇今はわき、お腹の痒み
〇飼主さま曰く「今年はアポキルを服用しているので、花粉症を乗り切れると思っていた。いつも通り発症しているのでアポキルの効果を実感できていない」
〇エリザベスカラーと洋服で傷防止
それでは初診時の状態です。
3月17日が初診です。
まずは全体像です。
続いて、顔。
続いて、頚部とその拡大。
続いて、胸部とその拡大です。
右脇の拡大です。
胸部中央の拡大です。
左わきの拡大です。
続いて、腹部とその拡大です。
この症例で何を考えるか?
考えるポイントは
①明確な季節性がありアトピーを疑うにも関わらずアポキルが効かない理由は?
②今の痒みをコントロールするために必要な治療は?
この2つですね。
ただ痒みをコントロールするためには目の痒みと身体の痒みの原因と治療を変えた方がいいです。
今回は関東圏からの受診でしたので、次の再診は遠隔診療になります。
そのため診断と方向性はこの初診で確定しなければいけません。
あとは微調整のみ、毎年6月にはかゆみがなくなるため、今日からの治療結果をどう判断するかの問題はなきにしもあらずですが、おそらく飼い主様が「今までと違う!」と実感できる結果をだせると確信しています。
このタイプの皮膚病は当院と診療提携を行っている病院※であれば対応することが可能です。
※診療提携病院
京都市 よこた動物診療室
静岡市 あん動物病院
投稿者:
2018.02.27
柴犬のアトピー・アレルギーなど、痒い皮膚病でステロイドやアポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
僕に花粉症はないのですが、くしゃみや目の痒みを訴えるわんちゃんが来るようになったので、春の訪れを感じる今日このごろです。
一般的に冬は皮膚病が少なくなるため、病院もゆっくりとした時間が流れるのですが、この冬は溜まっている症例報告をたくさんやる時期でもあります。
それでは今日の症例報告は、今年の1月中旬に初診で来院されたわんちゃんで、以前のブログで初診の写真を紹介したわんちゃんのその後です。
1月19日にUPしたブログ → 【柴犬の痒み専門外来】ステロイドが効かない理由
【症例】
柴犬 1歳10ヶ月 女の子(避妊済み)
【経過】
〇生後5か月から続く痒み
〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ
〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし
〇抗生物質を1年間継続中
〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用
〇痒みのコントロールができていない
〇季節性はなく、1年通してずっと痒い
それでは改めて初診時の写真を紹介します。
一見重度な感じはしませんが、痒いものは痒いのです。
100件どころか数百件の動物病院を超えて当院を受診するほど痒いのです。
普通の柴犬に見えた方がほとんどだと思います。
もし散歩でこのわんちゃんに出会っても、まさか県を越えて通院するほどの痒い皮膚病で悩んでいる柴犬には見えないと思います。
そんな見た目ですが、明らかに異常です。
前回のブログで書いたように診断は一瞬です。
それでは初診から6週間後の状態との比較です。
※写真をクリックすると大きく見ることができます。
いつも当院が紹介している重症からの改善ほどの大きな差がみえないかもしれませんが、非常に大きな改善が認められています。
痒みは元々10として、今は4くらいです。
写真をよくみたらわかると思いますが、毛並みもよくなり、フワフワになってきました。
飼主さまもこんなに毛並みがよくなったのは初めてと実感していただけました。
治療はステロイドではなく、2つのお薬を使いましたが1つはアポキルです。
アポキルがステロイドを上回ることはないと考えていますので、アポキル単独で効いたとは考えられません。
次は初回の治療方針で残った4の痒みですが、もちろん初期治療で痒みが残るのは想定範囲内であり、これも予定通り次の手をうつことにしました。
次の目標は4の痒みがある程度(完全ではない)緩和できること、もう少し先はアポキルを若干減らしても大きなぶり返しがないこと、です。
そのころにちょうどアトピーの痒みが出やすくなる花粉の多き季節、梅雨、夏・・・となるため、若干季節による悪化があるかもしれませんが、以前のように「効かない!」となることはもうないと考えています。
ここ最近の口癖の1つですが、「柴犬の正常を知れば異常がわかる」につきます。
ただ僕もこの柴犬の正常を把握するのに獣医師になって約10年かかったので、今は昔の自分を思い出しては反省する毎日です。
投稿者: