2018.11.09
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
今回は痒みが続くウェスティの症例です。
【症例】
ウェスティ 11歳6ヶ月 男の子(去勢手術済)
【経過】
〇アポキルを1年以上毎日服用したが治らない
〇食事療法を行ったが改善しなかった
〇昨年春から徐々に悪化、初診時(2018年8月)が一番悪い状態
それでは、初診時の状態です。
まずは体の正面です。
前胸部です。
前肢の足先です。
脇全体と、右脇の拡大です。
内股です。
それでは、初診時から約8週間後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
ボロボロとした部分が取れ、皮膚の黒ずみもだいぶ綺麗になっています。
痒みもだいぶ引いたそうです。
このような症例には当院が開発したスキンケアとサプリメントが非常に有効です。
当院で開発したスキンケア&サプリメントは以下のオンラインショップでお買い求め頂けます。
【症例報告作成者】 看護士 長尾
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【獣医師の解説】
アポキルを1日1回1年継続しての現状のため、相当な難治性に入ります。
ウェスティの脂漏症はアポキルがでる以前から治療が難しく、当院でも苦戦してきた過去がありますが最近はアプローチ方法を変えることで随分改善できるようになっています。
こういった症例の治療を成功させるポイントの1つは、「痒みを抑えるために痒み止め内服を使う」という認識をやめることかと思います。
仮に「痒みを抑える」という視点でアプローチすると、古くからあるのは「ステロイド」であり、今はアポキルという副作用が非常に少ない選択肢があります。
ステロイドが長期使用で副作用がでやすいことを考えると、今の皮膚科がアポキル一辺倒になるのはやむを得ないのかなと思います。
そしてこのステロイドやアポキル以外で痒みを抑えるとしたら同じく古くからある「抗ヒスタミン剤」や「免疫抑制剤」があります。
しかし抗ヒスタミン剤による痒みの軽減効果はかなり限定的で、実際このウェスティの症例も「アポキル+抗ヒスタミン剤」だったので重症例で明らかな改善は期待できません。
免疫抑制剤についてはアポキル登場以前はよくつかわれていたようですが、飲みにくさや痒みを直接的に止める作用が弱い&効果がでるまで時間がかかるなどの理由もあり、アポキルの登場により敬遠されがちで、当院に転院されるわんちゃんで免疫抑制剤を使っている症例はほとんど見かけなくなりました。
今回の症例は最も使えるアポキルで改善しないというのがスタートラインとなっています。
ではどうすればいいのか?
ここで「痒みを止める内服薬」という視点をメインにしないようにします。
次に目を向けるのは「重度の脂漏」です。
なぜこんなにひどい脂漏が起きているのか?、脂漏をどう抑えるか?を考えます。
原因が2つあるのですが、この原因は初診時にわかります。
抑える方法はアポキルではなく、別の方法を2つ使います。
そう、今回はステロイドもアポキルも使わず治療プランを組み立てています。
※厳密には初診時に胃腸炎+発熱があり新しい治療プランのスタートは2週目からとなりました。
それでもたった2ヵ月でここまで改善できるので、痒み治療はアポキルだけではなく、症例に合わせたアプローチが必要ということです。
以下まとめ。
今回の症例の大きなポイントの1つは、内服治療にアポキルもステロイドも使わずここまで改善する治療プランが存在することです。
2つめのポイントは、初診時に脂漏症の原因が2つわかり、それに対して治療プランを組み立てることができることですね。
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