2018.09.30
当院を受診できない遠方にお住いの方にメールと写真で継続する遠隔診療を提供している皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
以前にも報告した通り、今年の夏は「山口県」と「北海道」に往診に行きました。
原則として「直接診るのは1回だけ」という背水の陣で臨みますので、往診に行くからには改善の確信を持って伺っています。
もちろん今回の2件とも「いける」という確信をもって伺いました。
そしてその2件のその後ですが、まだ治療中とはいえ十分な改善が認められたようです。
1件は心因性の掻き壊し・舐め壊しのチワワちゃんで、掻き壊しを防ぐために誰かが家にいなければならず、1人では買い物にも行けないというものでした。
もちろん治療の目標は掻き壊しをなくすのは当然で、「わんちゃんが留守番して買い物ができるように」ということも目標にいれました。
まだ治療して1カ月ですが、十分に改善が認められたようで、①一番の問題だった口唇の痒みはほとんどなくなり、②短時間でも留守番ができるようになったということでした。
2件目のわんちゃんは写真を見るのがいいと思いますので、紹介させていただきます。
【症例】
柴犬
【経過】
〇アポキルを1日1回をずっと継続しているにも関わらずよくならない
〇過去には心因性の治療として抗不安薬の投与もしたことがある
〇甲状腺ホルモン剤も服用中
最初に相談メールをいただいたときのお写真がこちら。
柴犬のよくあるタイプの1つです。
もちろんこの時点で「今まで治らなかった理由」と「どうやったら治るのか」はわかるのですが、追加でいただいた昔の写真をみて確信を得ることができました。
これは「アポキルでよくならない決定的証拠写真」です。
実際に往診に伺うときには治療方針は決まっていたので、お薬をもって出発です。
そこから約1か月後。
痒みも随分と落ち着き、毛も再生してきました。
また心因性の痒みもあるため、心因性の投薬治療を追加したのですが、「改善あり」という判定でした。
今回の症例にはいくつか評価ポイントがあります。
1つは、「なぜアポキルが効かないのか?」ですね。
2つは、「なぜ心因性の治療に効果がでたのか?」です。
2つ目の理由は非常にシンプルで、「その他の治療方針がパーフェクトだから」です。
心因性の治療はその他の治療方針にわずかでもズレがあると、まったく改善しなくなることがあるため、心因性以外の皮膚トラブルの診断・治療が上手くいっているときに実施しなければ評価が難しいです。
あとは順調に回復するのを待つだけです。
年末にはフワフワ&サラサラを期待しています♪
1つめの「アポキルが効かない理由」は当院で実施している個別セミナーで紹介しています。
診療提携をご希望される動物病院はお問い合わせください。
投稿者:
2018.06.25
アトピー・アレルギー・掻きすぎ・掻き壊し・舐め壊しなど柴犬の痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
【症例】
柴犬 12歳 男の子(去勢済)
【経過】
〇6歳まで異常なし
〇6年前から痒みを伴う皮膚病
〇季節性はなく通年性
〇わきをかく、内股をなめる、四肢端を舐める
〇過去4年間漢方薬を継続するも改善なし
〇夜中でも痒みで起きることがある
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは左の脇~胸の側面とその拡大です。
続いて内股とその拡大(右、左)です。
柴犬といえばアトピー・アレルギーを疑うのが一般的ですが、このタイプは少し違いますね。
どう違うかというと、
〇6歳以降の発症
〇季節性のない痒み
〇目、口は異常なし
典型的なアトピーの特徴を揃えていないこのタイプの診断は、わんちゃんの皮膚をみずに外観だけど、飼主さまのお話を聞きだけで確定診断に近づくことができます。
それでは初診時からわずか8日後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
まずは左の脇~胸です。
同じく左脇~胸の拡大です。
続いて、内股とその拡大です。
写真でみるポイントは、赤み・じゅくじゅく・ガサガサといった感じがなくなっているところです。
また治療開始からわずか8日にも関わらず、色素沈着(赤黒い)のが少なくなっているのがわかると思います。
痒みはほとんどなくなり、夜中に起きることもありません。
しつこくなめるのもなくなっています。
こういったタイプは投薬治療とともに、ヒーリングケアLFプラスを使うのがおすすめです。
皮膚がゴワゴワしてるためスキンケアが気になる方も多いとは思うのですが、スキンケアメインで取り組むとうまくいかない原因になるでしょう。
ヒーリングケアLFプラスを使うことで、アポキルを含めたお薬の使用頻度や量を減らすことが十分に期待できます。
ヒーリングケアLFプラスは当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
医療に万能はありませんが、サプリメントには医療ではカバーできない部分をサポートすることができます。
的確な診断と治療併用の元で使っていただけば体質改善、再発防止、お薬の減量に役立つサプリメントです。
投稿者:
2018.06.14
柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない難治性皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の痒みに対するアポキルの使用ですが、とてもよく効く、ある程度効く、わずかしか効かないとバラバラです。
今回はアポキルが全く効かないという症例報告です。
【症例】
柴犬 2歳10か月 男の子
【経過】
〇約1歳のころから痒みを伴う皮膚病
〇3件の動物病院で治療も改善なし
〇アポキルを10カ月継続するも明らかな改善なし
〇痒みは「泣き叫ぶほど」という強い痒み
〇夜中も散歩中でもひめいをあげるほど痒い
〇痒いの部位は、目・鼻・手首・下顎・耳・内股
〇アレルギー検査済
〇食事療法継続中
それでは初診時の状態を紹介します。
見た目は非常に綺麗ですね。
これは「治療後」ではなく、当院を受診された当日の写真なので「治療前」の写真です。
初診から11日後に2回目の診察にきていただきましたが、痒みはほぼなくなりました。
なおアポキルの服用をやめても痒みのぶり返しはなく、おちろん泣き叫ぶこともなくなりました。
※治療前の時点で見た目の皮膚病変が乏しかったため、写真はありません。
このタイプの診断は初診の一瞬です。
診察室でお話して5分か10分後には確定できるタイプです
元々大した痒みではなかった?と思われるかもしれませんが、今回は過去3件の動物病院で治療して、その上で「大阪」から約3時間かけて来院されています。
それぐらい痒かったということです。
このタイプには当院のヒーリングケアLFプラスが有効です。
当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
的確な診断とともにご使用いただければこれほど「実感できる」有効なサプリメントはありません。
投稿者:
2018.06.08
柴犬のアトピー・アレルギーなど痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の皮膚病が重度になるとよく見かける脂漏症ですが、なかなかの難治性で当院でも苦労することがあります。
最近ですが、この脂漏症にある新しい治療を組み込んだところ、劇的に改善する症例がいるのがわかりました。
「脂漏症すべてにこの新しい治療法が効く」ではないのですが、今まで足りなかった治療のピースが揃った感じがします。
従来から言われていた脂漏の原因、治療法とはまったくかぶらない新しい病態です。
【症例】
柴犬 10歳4か月 去勢雄
この症例は5月12日に一度ブログで紹介していますので、先に以前のブログを読んでみてください。
この症例のさらに4週間後、初診時から7週間後の状態を紹介します。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
まずは頚部。
続いて、腹部(臍周囲)です。
続いて、内股です。
皮脂は10分の1以下、硬い皮膚は柔らかくなり、軟らかい毛が生え揃っています。
なお抗脂漏効果のあるとされるステロイドやシクロスポリンの内服は使っていません。
もちろん良くなることは十分に想定していたのですが、ここまで短期間で見違えるほど脂漏を抑えるとは思っていませんでした。
併用して行ったある治療法が奏功したのだと思います。
当院の相当数の症例の中でもここまで脂漏を押さえ込めるというのはそうないため、治療法の1つに大事なポイントがあったのだと考えています。
というのももう1頭同じような症例でうまくいっている症例がいます。
その子も数年苦戦していた脂漏が新しい治療法で見違えるようによくなってきています。
次来院するときには「確信」に変わると思います。
問題は「どう証明するか」なのですが、予測通りの治療結果がだせることと、学術的な証明はまだ別問題なので、今の医学では証明は難しそうです(涙)
あと10年、20年くらいあれば証明される日くる・・・かも?とは思います。
コピー君がいたら大学にもどって研究してみたいな、なんて思ったりします(^^;
今回の治療法方ですが、当院と診療提携している先生方には解説メールをお送りします。
アポキルでもない、シクロスポリンでもない、ステロイドでもない、スキンケアでもない脂漏症の改善方法の選択肢の1つです。
当院との診療提携を希望の方は問い合わせフォームよりご連絡ください。
投稿者:
2018.06.03
柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
痒みを抑える画期的な新薬「アポキル」が発売されて2年が経ちます。
副作用が非常に少なく、さまざまなシーンで使いやすい非常にいいお薬で、特に従来の治療では改善しにくかった典型的なアトピーの柴犬ではかなり効果を発揮します。
ただ柴犬の痒い皮膚病は独特で、原因が違うのに見た目が一緒ということが多いため、柴犬のアトピーだからアポキルが効くだろうと処方したのにまったく改善しないこともあります。
アポキルを使って改善しない場合にどう考えるか、今の皮膚科の課題の一つだと思います。
今日紹介する症例は「アポキルを1日2回服用しているのに改善しない柴犬の痒い皮膚病」です。
【症例】
柴犬 1歳半 男の子
【経過】
〇2ヵ月前(春)から口周り、お尻周りが痒い
〇他院にてアポキル1日2回2週間、3週目から1日1回を2週間の合計1カ月服用したが改善なし
〇口唇もお尻周りも血が出るまで痒がる
〇傷防止のためにエリザベスカラーを装着している
それでは初診時の状態です。
まずは口唇です。
診断と治療方針はこの初診時の一瞬で決まります。
初診時からわずか12日後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
まだ毛は生えていませんが、皮膚炎はかなり改善しました。
飼主さまから「すごくいい!びっくりした!」と喜んでいただけました。
エリザベスカラーもはずして、まったく掻かないそうです。
たしかに柴犬の皮膚病はどの症例も似ているのですが、本当は少しづつ違います。
原因の違いがほんのわずかでも見た目に反映されていますので、よく見ればアポキルが効かない理由をみつけることができます。
なお当院でもアポキルは1日1回で継続投与としています。
治療の差はアポキル以外のところにあります。
大事なのはアポキルを出すことではなく、アポキルが効く痒みと効かない痒みを見分けられること、そしてアポキルが効かない痒みをどう評価してどうアプローチするかの方法を初診時に把握できることです。
当院と診療提携をしている病院には解説メールをお送りします。
診療提携をご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
投稿者:
2018.05.28
柴犬のアトピー・アレルギーや、アポキルが効かない痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
先日の柴犬の皮膚病ブログでは「原因が異なれど見た目が一緒になりやすいため、原因を分けるのが難しいこともある」ということをかきましたが、今回は見た目が特徴的なので診断&治療方針決定が非常に簡単という症例です。
ただ、柴犬の痒みに対して「アポキルを3ヶ月以上毎日服用しつづけているにもかかわらず良くならない」という症例のため、スタート時点での治療難易度はそれなりに高めです。
【症例】
柴犬 3歳4ヶ月 男の子
【経過】
〇1歳半のころに耳の痒み
〇2歳半から腕やスネの脱毛(痒みはなさそう)
〇胸の毛並みもわるくなってフケも多い(今はマシな方)
〇痒みは、耳を掻く&振る、お腹を掻く、腕~手首をかむ
※目・口は痒みほぼなし、四肢端は多少なめることはあるかも?
〇抗生物質とステロイドの併用でも改善なし
〇アミノ酸系療法食でも改善はなかった
それでは初診時の状態です。
続いて耳ですが、後ろからみてみましょう。
続いて、右耳を後ろからみたところです。
同じく右耳の後ろから、拡大です。
同じく右耳、横からなど角度を変えてみてみましょう。
続いて、腹部全体と、胸の拡大・臍の拡大です。
続いて、お腹と右内股の拡大です。
続いて、右後肢の内股~膝の内側です。
この初診時からちょうど2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
続いて、腹部より下です。
ここは赤みの改善もありますが、なにより毛並みがかわっています。
以下の写真は臍周りです。
続いて、お腹~内股です。
この上の写真では少しわかりにくいかもしれませんが、右内股の赤みがほぼなくなっています。
最後にこの内股でわかりやすい写真、右後肢の内側(膝の内側)ですが、非常に毛並みがよくなっているところに注目してください。
痒みは「たま~~にかゆい」くらいで、アポキルも毎日から減らして現在は週3日の服用ですが、痒みのぶり返しはありません。
以下、今回の症例の簡単な考察です。
今回は12月~3月までアポキルを毎日服用していても痒い柴犬の皮膚病でしたが、本来であれば12~3月は皮膚病の治療成績が最も悪化しにくく、むしろ4~5月にかけて悪化するのが普通です。
その4~5月にかけてアポキルを減らしても痒みはあまりないという改善なので、写真の見栄え異常に劇的な改善効果があったといえます。
治療の成功のために注目すべき点はいくつかあるのですが、
①目・口・四肢端に強い病変がない
②耳の重症度が高い
③アポキルが効いていない
この3点を考えると「柴犬に良く認められるシンプルなアトピーではない」というのがわかります。
シンプルなアトピーではなく、アポキルが効かない・・・・・非常に難しそうにみえますが、この病気の原因はこの初診時でほぼ判定できます。
初診時の検査結果がは1週間後くらいに出揃いましたが、初診時の確信があったため検査結果が出揃うまえに治療方針を決めて治療開始させていただきました。
初診時の治療方針からの変更はありません。
なお当院と診療提携を結んでいる先生には簡単な治療解説メールをお送りする予定です。
今回は初診時に飼主様から「柴犬のコンクールに出してあげたい」という願いを聞いており、「きっとでれますよ!」とお約束していたので、順調に改善して一安心です。
投稿者:
2018.05.26
柴犬のアトピーやアレルギーなど痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
皮膚病の難しいところの一つ、「見た目」をどう評価するか?です。
皮膚病は目で見えるからわかりやすいという側面もありますが、目で見えてしまうがゆえに難しいところがあります。
「目で見えるから難しい」の理由ですが、皮膚の変化のバリエーションには限りがあり、原因が異なっても見た目が一緒になることが多々あるということです。
特に柴犬で顕著ですが、原因が1つで程度が軽度であれば、その原因の特徴を見た目で分類することもしやすいのですが、複数の原因が重なり合って重症化すると、それぞれの特徴が消えて同じような皮膚病にみえてしまいことがあるのです。
例えばA疾患、B疾患、C疾患、D疾患と4つの病気の原因があるわんちゃんがいるといて、病状を分析(予測)するとA疾患25%、B疾患50%、C疾患15%、D疾患10%のという配分だったとします。
すると見た目はB疾患とA疾患の重症化というようにはみえますが、C疾患とD疾患まではわかりません。
疾患AとBに対する治療である程度緩和したときに、ようやく疾患CとDの特徴がみえることもあります。
もちろん予測できるところもあるので、ある程度想定はしますが、あとから「実は〇〇〇という病気もありそう」となることもあります。
今日はそんな複雑な要因が重なっている病気です。
【症例】
柴犬 9歳 男の子
【経過】
〇初発は生後4歳から
〇7歳(2年前)のとき、頚部の皮膚炎から悪化
〇この2年のうち一時期だけ無治療で改善したが、基本は通年発症
〇食事療法は色々したが、よくならず
それでは初診時の状態をみてみましょう。
続いて、頚部です。
続いて、胸部です。
続いて、腹部です。
続いて、右側面です。
右側面の胸部拡大です。
同じく右側面の腹部拡大です。
続いて、右後肢のカカト付近です。
それでは初診時から3カ月半後の状態と比較してみましょう。
短期間のうちに劇的に改善しましたが、部分的にまだ残っていますね。
この残っているところが「今までの継続」でよくなるのか、別のアプローチが必要になるのかの判断が大事で、個人的には異なるアプローチが必要と考えています。
ここが前半でお話した別の要因があとから見えてくるという点です。
まだ改善の余地ものこっているので、飼主さまと相談しながら追加アプローチのタイミングは決めていこうと思います。
柴犬の皮膚病が重症化すると原因が異なれど、見た目は一緒になりやすく、見た目の判断が難しくなります。
アポキルが発売されてから、痒みに対してはアポキル一辺倒のような風潮があるのですが、こういった症例に対して画一的な治療ではうまくいかないため、病状に合わせた治療方針の変更が必要です。
※アポキルはとても使いやすい便利なお薬で、困ったら「とりあえずアポキル」でもいいのがメリットです。
アポキルを飲んでいるのに良くならない、柴犬の皮膚病で慢性・重症化して治療に困っている方はぜひ当院までご相談ください。
柴犬のこういった重症化であればほぼ改善します。
投稿者:
2018.05.12
柴犬のアトピー・アレルギーなど強い痒みを示す難治性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の皮膚病は非常に多いですね。
アポキルが使えるようになって簡単にいい治療結果がだせるようになった症例もいますが、それは一部のわんちゃんで、基本的には柴犬ならではの難治性がいるのはあまりかわっていないと思います。
その理由はアポキルが効かないのではなく、アポキルが効果を示す痒み以外の部分に対して十分な治療アプローチがされていないからです。
今日はそんなアポキル以外の治療が必要な柴犬の症例報告です
なお、この症例が初診時で来院された日は、以前のブログで紹介した京都市山科区のマックスドッグ&キャットクリニックの羽立先生と後輩の山崎先生が見学に来院されたときの初診です。
両名の先生にはどの部位をどう評価したら病気を診断できるか、どう治療すればいいのかを説明させていただきました。
【症例】
柴犬 10歳 男の子(去勢済み)
【経過)
〇3才から続く痒み
〇季節性はない
〇今までよくなったことはない
〇春になると花粉症のような症状もでる
〇最初のころは前足の裏をよくなめていた
〇痒みは腹側面、わき、頚部、下顎、耳、胸、カカト、腕をなめる、前肢をなめる、背中をかむ、口唇をかく (眼は異常なし)
それでは初診時の状態を紹介します。
まずは正面から。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、右前腕正面からと内側からです。
続いて、前胸部です。
続いて、胸部と脇の拡大です。
続いて、胸の拡大、臍付近の拡大、内股の拡大です。
続いて、身体側面とその拡大です。
続いて、わきを右側面から、そしてその拡大です。
続いて、右側面の腹部とその拡大です。
続いて、右後肢の付け根~膝付近です。
続いて、右後肢の側面です。
続いて、右内股と左内股です。
この初診時からわずか3週間後の状態とひくらべてみましょう。
なお初診時に薬浴のため一度全身のカットを行いました。
※写真をクリックすると大きくみることができます。
まずは頚部、ゴワゴワはほとんどとれ、皮膚がやわらかくなり、毛も再生しています。
胸部ですが、強い脂漏がみとめられましたが、かなり強い改善であることがあります。
胸~わきも皮膚の硬さがなくなり、毛の再生もかなりのスピードで解決しています。
胸~お腹も皮膚のかたさはなくなり、今まで生えていなかった毛が密に再生しているのがわかります。
わき~胸部側面ですが、初診時にはゴワゴワだった皮膚がほぼ正常にもどっています。
腹部の皮膚の硬さも正常にもどっていのがわかります。
内股も初診時には真っ黒でしたが、かなりピンクにもどっているのがわかります。
肝心な痒みですが、耳をちょっとかくくらいで、身体全体の痒みはほぼ消失しています。
なお抗生物質は服用しておりません。
特に胸のあたりは4~5年ぶりに密な毛が生えてきたというこです。
この初診の診察を見学していただいた羽立先生には当院から各種検査結果と治療方針の解説をおくっています。
まだたった3週間ですが、初診時の治療方針でこのままいい治療結果がでていますので2~3ヵ月後には見違えるほどの柴犬にもどっていることでしょう。
大事なことは、初診時に各種検査結果がなくとも診た瞬間に皮膚病の原因がわかるタイプですので、同時に治療方針を決定できる診断力をつけることです。
また追って紹介する予定です。
【追記】
想像以上の速さで劇的に改善しています。
投稿者:
2018.04.11
柴犬のアトピー・アレルギー・脂漏症・マラセチアといった痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回の柴犬の皮膚病の症例報告ですが、いつもと違います。
いつもは「初診から2~3ヵ月後、これだけ改善しています」ですが、今回は「初診から3~4年後、治療方針を変えたら劇的によくなった」です。
初診時(3年以上前)に設定した治療方針で、確かに一定のレベルまで改善&長期コントロールできていたのですが、あるとき予測せず急激に悪化したため「これを機に治療方針を見直しましょう」と提案したという流れです。
元々採用していた治療方針は、
〇院内薬浴(4週間に1回)
〇食事療法
〇アポキル(アポキル発売前はシクロスポリン)
でした。
この治療方針であるとき急激に悪化した状態を治療前として紹介します。
この状態で治療方針を一部変更して2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
飼主さまから「今まで以上によくなった!すごくいい!」と、と評価していただけました。
加えて
「くやしい!!」
ともおっしゃったので、その理由を伺うと・・・
「お薬が効いたから、これからもこれを飲まないといけないので(笑)」
ということでした(笑)
僕からは、
「この治療成績を最初の時点で出すことができず申し訳ありませんでした」
と反省の言葉をお返ししました。
以下、僕の言い訳です。
以前から今回採用した治療法が適応になるのではないかと思っていたのですが、なにせ初診時から一定ラインまで順調によくなっていたため「これだけよくなっていれば、いらないということなのかな?」と思っていたのです。
そのため今回の悪化した皮膚をみて思ったことは
「ずっと維持できていたのに、想定外だ・・・新しい病気になったのか?」
ではなく、
「この皮膚は・・・やっぱり〇〇〇〇だ。これを機に治療を変更しなければいけない。過去の治療を否定することはやむをえない。」
でした。
そのため数年ぶりに悪化した今回に、改めて検査した項目はなく、治療方針の変更は悩みなく一瞬で決定できました。
しかし若干複雑です。
複雑な理由は、初診時にできなくはなかった・・という意味もありますが、それとは別のことです。
①初診時(3年前)は、確かにこの治療をせずに一定レベルまで改善した
②初診時には、この異常と思える決定的証拠なしだった
この2点であり、この異常は明確な白か黒の判定ができないグレーが存在し、状態によっては的確な治療がなくても改善しうることもあれば、不規則に悪化することもあるということです。
難しいですよね。
この異常はまだ教科書に掲載されていない皮膚疾患のため、今後はこの病気を色々な角度から切り込んでいこうと思います。
参考までにこの疾患に薬浴は非常に重要ですが、スキンケアやサプリメントでは根本的な解決はできません。
投薬治療が不可欠です。
ここで今の皮膚科の問題点について簡単にお話しておきます。
皮膚科の教科書が間違いというわけではなく、学術的には選ばれた情報の羅列でしかありません。
もし教科書が正しければ、今の皮膚病は全国どこでも簡単に改善するはずです。
治療が完成しない理由はパズルと一緒、「ズレているピースがないか、足りないピースはないか」の2つです。
なお治療のパズルに「枠」はないため、「ピースが足りない」と感じられるかどうかも獣医師の力量にかかっています。
投稿者:
2018.03.24
柴犬のアトピー・アレルギーなど、ステロイドやアポキルが効かない痒みの皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、愛知県四季の森どうぶつクリニックです。
今日は、今年の1月に初診で来院された直後に1回目のブログを掲載し、6週間後の比較を2月のブログで紹介した症例の続きです。
1月19日UP 柴犬の皮膚科専門外来 ~ステロイドが効かない理由~
2月27日UP 柴犬の皮膚科専門外来 ~ステロイドが効かない~ 再診
ステロイドで抑え切れなかった痒みをステロイドを使わずに抑えたという症例報告です。
たった6週間で劇的に(元々の痒み10痒として、4まで)改善したという症例報告でしたが、逆にいうと「まだ4残っている」ということで、これも初診時の想定どおりでしたので、これまた初診時に予め伝えていた「新しい手」を打つことにしました、というところで止まっていた症例です。
前回2月27日にUPしたときに次の1手をうった再診が本日でしたので、早速報告します。
残る痒みは脇をかく、腕・手首・膝・スネ・四肢端を噛むという症状でしたが、追加治療により「ほぼ痒みなし」というレベルまで改善しました。
前回の時点でかなり綺麗に改善していたため、治療前の写真は掲載していません。
ポイントはアポキルに6週間でのこってしまった痒みをどう抑えたのか?ですね。
もちろんこれは「初診時に決まっていたこと」を追加治療として採用することで解決しました。
それが「心因性掻痒症」です。
初診時の時点で、「初期治療である程度改善できると思います。ただ腕や四肢を噛む症状が残ると思うのですが、それは心因性です。その残った痒みには心因性のアプローチをしましょう」と伝えていたので、前回の治療追加とさせていただきました。
想定どおりほぼ痒みが皆無になりましたので、次はアポキルを2日に1回(または3日に1回)へ減らすことにしています。
おそらく2日に1回でも十分にコントロールできる皮膚コンディションだと思います。
アポキルを服用して抑えきれない痒みに心因性を疑うのですが、このときに最も役に立つのが当院で開発したヒーリングケアLFプラスです。
こちらの商品は以下のオンラインショップでお買い求めいただけます。
アポキルを使いながら併用することで残った痒みを緩和させる、アポキルの服用量(服用回数)を減らすなど、併用の相性が非常にいいですね。
もちろん診断が確実で、心因性以外の治療がそろっていることがなにより重要です。
心因性以外の治療方針にズレがあると、「そもそも・・・」となってしまいますので的確な診断がなにより重要です。
柴犬でも十分使えますが、個人的にもっと高い精度で相性がいいと思うのがトイプードル、シーズー、ヨーキーなどの小型犬です。
その他、猫の「お腹の毛が薄い」「腕をなめる」など、部分的な脱毛の原因である心因性に非常に相性がいいため、とてもお勧めです。
初診時に使わなかった理由は、心因性の痒みの割合が全体の半分以下で最優先ではないと判断できたことと、あえてアポキルで改善しない痒みを残すことで、心因性の痒みがあることを飼主さまに実感していただきたかったからです。
こうすることで、痒みの原因が複数あることが確実に伝わり、今後の痒みの再燃時にどの痒みがどの治療でよくなるか、獣医師も飼主さまも把握して対策を取れるためです。
痒みはとりあえず抑えればいいというものではなく、原因を細かく分析して将来の治療に生かすことも重要だと考えています。
投稿者: