2017.12.11
フレンチブルドッグの痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院では関東(東京・神奈川・千葉・埼玉)にお住まいの方に向けて定期的に皮膚科診療を開催し、継続治療のための遠隔診療を提供しています。
基本的に直接診るのは1回だけで、あとはメールと写真だけで改善に導く診療です。
当院の診察を受ける方の多くが「色々治療しているのによくならない」など、かなり難治性皮膚病の症例ばかりになるのですが、たった1回の診察で改善まで導けるのか?というのは疑問があるかと思います。
特に最近はアポキルという新しい痒みを抑える非常にいいお薬がでたことで、一般的には治療成績が出しやすくなっています。
その分、「アポキルが効かないときにどうするのか?」という問題もでてきています。
アポキルが発売されてまだ1年少しですが、すでに当院受診の大半の患者さんが「アポキルを服用しているのに痒い」という状態です。
今回は症例はそんな「アポキルでよくならない」だけでなく、「アポキルの副作用で服用できない?」という驚きのわんちゃんの治療を紹介します。
もちろん関東にお住まいのわんちゃんで、診察は初回の1回きりだけです。
この初回に1回の診察だけで改善までの軌跡を描かなければいけません・・・しかも、アポキルなしで。
【症例】
フレンチブルドッグ 5歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇生後1歳まえからの痒みを伴う皮膚病
〇1年前少し前からアポキルを1日1回1年間継続して服用していた
〇1年間アポキルを毎日服用しても、痒みは元々10として7~8までしか減らなかった
〇1年間アポキルを毎日服用して血液検査をしたところ、肝臓の数値が高くなっていた。
〇アポキル休薬により肝臓の数値は改善へ
それでは初診時の状態です。
※診察室ではないため、室内が暗くいつもよりみえにくいかと思いますがご容赦ください。
この初診時に治療新を立てて、検査結果をみずに投薬治療をスタートさせました。
5週間後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくみることができます。
黒さはありますが、痒みはかなり緩和され、みためも随分とよくなったと思います。
今回の診療では、
〇実際の診療は1回だけ
〇検査も初回の1回だけ
〇肝臓数値の異常の原因がアポキルかどうかの判定はできないが、「アポキルを使わずに治療」
この3つの制限付で治療開始となりました。
アポキルは使いやすいお薬のため、痒み治療の選択肢として処方できない(使えない)というのはかなりのハンデがあるのは否めませんが、以前はアポキルなしで治療方針をくみたてていましたので、イメージできなかったわけではありません。
今回の診察に至る前の過去通院中に、大半の各種検査を実施済みでしたので、初診当日に追加検査したのは培養検査だけでした。
なお治療で選択した内服薬は3つ、
①抗生物質
②過去に服用したことがあるお薬
③今までに服用したことがない薬
でした。
このタイプの皮膚病は抗生物質単独で治るわけではないため、②と③がポイントになります。
ただ②のお薬は過去に継続して服用したにも関わらず改善がなかったというお薬です。
そう、ここでいいたいのは先日のブログでも書いた「パズル」です。
皮膚病を治すときに必要なのは決まったピースもなく、枠もないパズルを完成させるようなものです。
今回のわんちゃんが過去の治療でうまくいかなかった理由は、ピースの選択ミスではなく、ピースが足りなかったのです。
ピースが足りないことに気づいて、適切なタイミングでピースを出すことができればうまくいったでしょう。
もちろんアポキルを使っても同様で、同じように改善することは可能です。
過去に1年間アポキルを服用して痒みが10→7か8程度までしか改善しなかったアポキルでしたが、足りないピースを足せば今回と同様の結果が得られたでしょう。
なおスキンケア&サプリメントは今回の症例でも併用しています。
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