2018.09.11
アポキルが適応となるアトピーや脂漏症・マラセチア性皮膚炎など痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
日本でアポキルが発売されて3年目の夏ですね。
飲みやすく、即効性があり、長期的な副作用が非常に少ないということで「痒い皮膚病=アポキル」という方程式が成り立つようになりました。
当院でも「まず無難にアポキル」の選択肢はありだと思っています。
しかし今までのブログで何度も書いてきたように、「どんな痒い皮膚病にもアポキルが効くわけではない」というのはあるため、アポキルは選択肢の一つにしかすぎません。
今日紹介するのは長期間アポキルを服用していたが、別のお薬に変更することによって改善した症例の紹介です。
【症例】
ペキニーズ 7歳 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇発症は通年性だが、梅雨~夏の季節性の悪化も認める
〇全身がべったり、臭いが強い
〇舐める・掻くといった痒み症状
それでは初診時ではなく、当院で1年半治療している状態を紹介します。
治療内容は1カ月に1回の院内薬浴と、アポキル1日1回投与を基本としています。
続いて、お腹とその拡大です。
同じくお腹の陰部周囲の拡大です。
続いて、右後ろ足の膝周囲の拡大と、やや内股の写真です。
続いて、右後足の足首付近です。
この時点まで1年半、内服治療はアポキルでしたがこの時点からアポキル1日1回を中止し、別の投薬治療に変更しました。
それ以外の食事療法、院内薬浴などの条件は一切かえていません。
投薬治療のみを変更して6か月後の状態と比較してみます。
皮膚コンディションの改善が明らかに認められました。
赤み・色素沈着ともに大きな改善が認められます。
また脂漏・臭いについてもかなり改善があり、飼主さまからも「明らかに臭いがへった」と評価していただけました。
さらに投薬治療を切り替えた半年前がちょうど2月の真冬で、6か月後の比較後の写真が8月の最も悪くなる季節であることを考えるとかなりの改善と評価できます。
今回のポイントですが、「痒い皮膚病=アポキル」ではないことを改めて実感することができました。
思い返せばこの症例が初診で来院したときがアポキルの発売時期で、初診から3週目からアポキルを使い始めました。
そのときはほぼすべての皮膚疾患をアポキルがカバーできると思っており、この症例でも同様に効果的だろうと判断していました。
しかしアポキルが発売されて2年を越えて今思うことは、「アポキルは脂漏症には部分的な効果しか示さない」です。
アポキルによって痒み症状は緩和できるとは思いますが、脂漏症にはもっと効果的なお薬があります。
それでもアポキルでもいいのですが、治療の選択肢として把握しておくことは重要だと思います。
今回の治療内容の変更については提携病院にメールで配信予定です。
投稿者:
2018.07.21
繰り返す膿皮症の根本的な治療に取り組んでいる皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
皮膚病をみるときに重要なことの1つに「正常と比較する」というのがあります。
正常が分からなければ異常所見を異常と認識できず、アプローチが止まる(診落とす)原因になるため、この「正常を正確に把握する」というのはとても重要です。
しかし教科書に「正常」が明確に記載されていないため、自分を含めて多くの先生は「正常を知らない」で診ているといっても過言ではありません。
では現実として皮膚科の基準はどうなっているかというと、正常の代わりに教科書に掲載されている典型的病変が検査や治療アプローチを始める判断基準になっています。
ただ典型的な異常所見ではなくても「何かおかしい・・・けどどうおかしいかはわからない」と思うことは多々あるはずなんです。
この「何かおかしい」をスルーしてしまえばその先は何もなく終了なのですが、この「何かおかしい」をどうおかしいのか突き詰め、この「何かおかしい」を改善させることができれば医療技術は進化します。
当院では今の皮膚科の隠れた問題の一つ「正常の認識不足」にフォーカスして、「何かおかしい」を徹底的に追及して治療技術を高めています。
今回はそんな「教科書に掲載されていない異常所見にアプローチした症例」です。
【症例】
ボルゾイ 2歳 男の子
【経過】
〇平成29年夏から発症 (初診時の時点で発症から7カ月)
〇体幹部(背中・側面・腹部)の湿疹がよくならず、次から次に新しいのができる
それでは初診時の状態をみてみましょう。
※身体が大きすぎて全体がカメラに入りませんでした。
右胸部側面と、その拡大です。
右腹部側面と、その拡大~内股にかけてです。
続いて、右後足側面です。
続いて、左胸部側面とその拡大です。
同じく右胸部側面を部分的にカットしてみました。
続いて、左腹部側面の拡大(バリカンでカット済)です。
診断名としては赤い湿疹、細菌性の膿皮症で特別な皮膚病ではありません。
それでは初診時から3か月半後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
お腹の赤い湿疹が完全に消失した点以外はわかりにくいかおしれませんが、獣医師であれば注目点がわかると思います。
皮膚の菲薄化や表皮剥離などの皮膚コンディション異常、毛並みの異常がすべて改善できています。
特に飼主さまは「毛並みがとてもよくなった」と大きな変化を実感していただけています。
表面上の診断名である膿皮症は抗生物質とスキンケアでよくなり、その後2カ月間抗生物質を服用せずとも1つも再発していません。
膿皮症を改善するだけなく、膿皮症が起きる(治りにくい)原因を治すことができた症例ともいえます。
今回はボルゾイということで、レアな犬種です。
簡単にいうと「ボルゾイの正常」がわかっていなければいけないところですが、ボルゾイはめったに診れないのでどこからどこまで異常といえるのかが判断しずらいです。
もちろん過去にたくさんのボルゾイをみていたとしても、そのボルゾイが正常とは限りません。
こういった状況で大事なのは経験値、過去の経験だけで異常所見を判断します。
今回は初診時に「教科書に掲載されていない皮膚コンディション異常あり」と判断し、皮膚組織学的検査を行いました。
もちろん病理の検査結果は予測通りで、既存の教科書で分類されたような明確な診断名はつかず、病理学的な検査所見のみとなりました。
が、ここは想定内でした。
この病理学的所見を元に、初診時の想定通りの治療を進めることにしました。
もちろん飼主さまには何がどうおかしくて、どうよくなるのかはあらかじめ伝えています。
そして3か月後、上記のように「想定通りの治療結果」がでました。
今回の皮膚科の説明です。
決して治療前・治療後の変化が大きい派手さはない皮膚病症例でしたが、その内容は医学的に興味深いものだったと思います。
1つめのポイントは、初診時に「膿皮症の治療」だけにとらわれず、隠れた問題点である「なぜ膿皮症になっているのか?」に注目しなければいけないことに気づくことです。
2つ目のポイントは一般的な顕微鏡・血液検査所見に異常がでないことは想定範囲内とし、病理組織学的検査の必要性を判断できることです。
3つ目のポイントは病理組織学的検査結果で、既存の診断枠(教科書レベル)で明確な診断名がでない可能性は想定範囲で、具体的にどんな所見が返ってくるか想定して病理組織学的検査に臨めていることです。
4つ目のポイントは病理学的診断結果で明確な診断名がでなくても「〇〇〇をすれば改善できる」と、事前に推測できていることです。
5つ目のポイントは4つ目に似ていますが、何がどうおかしくて、どう改善するか推測できていることです。
おまけとしては、ボルゾイをよく知らなくても何となく「おそらくこれは正常なボルゾイとはいえないだろうな」と捉えることができることですね。
当院ではこういった「教科書で説明できない」「既存の検査で診断できない」というレベルの皮膚科診療についての、提携している動物病院に向けたシークレットセミナーを開催しています。
ご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
投稿者:
2018.05.21
アポキルが効かない、食事療法で改善しないといった痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回の症例は2ヶ月ほどまえに一度紹介したわんちゃんの続きです。
前回の記事は、
平成30年3月16日のブログ記事 アポキル&アミノ酸系食事療法で改善しない 【四国から愛知までの通院】
初診時の治療方針で2週間後の2回目の診察時には改善していたという内容でした。
今回は「初診→2回目→3回目→今回」という状況です。
それでは初診時から約2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
続いて、右前腕とその拡大です。
続いて、左前腕とその拡大です。
非常に綺麗になりましたね。
全身の痒みの大半が著しく改善しました。
背中以外の、目周囲・口唇~下顎、頚部、胸、腕、内股、わきのフケ・皮脂(ベタベタ・ゴワゴワ・ザラザワ)が綺麗になりました。
ゼロではないのですが、見た目の改善度は90%です。
今回の症例は当院受診時にすでにアポキルを服用していた状態で痒い&皮膚炎&フケでしたので、大事なのは「アポキル以外の治療プラン」です。
よくアポキルを飲んでいるのに・・・と聞くのですが、アポキルが効いたり・効かなかったり・・・というようなことはないと思っています。
そして続けることによって効きにくくなるということもないと考えています。
アポキルが効くメカニズムは常に一定なので、効果がない?というときはアポキルが作用する部分以外の治療を組み立て直す必要があります。
そこでアポキルをやめるのか、継続するのかはそのときの判断ですが、今回は「アポキルが効くべき異常所見はある。効果があるため継続処方」としました。
今回は「アポキルは効く、ただしアポキル以外の治療が適切に限る」というような症例でした。
今回の症例もいつも通りですが、初診時に行った検査結果が出揃う前に組み立てた初診時の治療方針だけで、わずかな軌道修正もなく改善ができています。
当院では獣医師向けにこういった診極めのためのセミナーを開催しています。
希望の方は当院までお問い合わせください。
投稿者:
2018.05.19
再発を繰り返す膿皮症、治りにくい膿皮症の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
膿皮症はもっとも頻繁に診る皮膚病の1つで基本的には抗生物質とシャンプーでよくなりますが、奥の深さはピカいちで「なぜ膿皮症になるのか?」が見えないと苦労することも非常に多い疾患です。
この「なぜ膿皮症になるのか?」という観点を無視して、本当の理由を置き去りのまま治療をつづけると「抗生物質服用中は治るがやめると再発する」か「抗生物質を続けていても治らない」ということが起きます。
この目に見えない膿皮症になる理由を探すのが皮膚科診療、今日はそんな症例報告です。
【症例】
シェルティー 女の子 3歳9か月
【経過】
〇3歳まで皮膚病はなし
〇3カ月前から湿疹&フケ&円形脱毛が続く
〇抗生物質など服用するも改善なし
まずは初診時の状態から。
つづいて、頚部の湿疹とその拡大です。
続いて、腰背部とその毛をかき分けたところです。
続いて、お尻~陰部とその拡大です。
初診時から3か月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
膿皮症も奇麗になりましたが、毛並みがよくなったのがわかりますか?
膿皮症の原因にもいろいろあるのですが、このわんちゃんのタイプでは膿皮症になる明確な原因を特定でき、治療をすることができたので膿皮症にはなりにくいと思います。
現時点も抗生物質をやめて2ヵ月ほど経過しましたが、再発していません。
なお当院では膿皮症の再発を抑える治療プランとしてスキンケアECプラスを奨めることが多いのですが、今回のわんちゃんでは膿皮症の原因が異なるため、使っていません。
なんでもかんでもスキンケアとサプリメントではないので、それぞれの症例に合わせた的確な判断が重要です。
投稿者:
2018.03.16
犬の痒い皮膚病治療における食事療法に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院には愛知県内全域だけでなく、隣の岐阜県・三重県・静岡県からの来院もよくあります。
ここ数年は関東・関西圏からの受診も珍しくなく、特に東京・神奈川からの受診は年々増えていっています。
北海道は往診依頼があったのでカルテもありますし、以前は宮崎県からフェリーにのっての受診もありました。
そして今回はついに、四国から橋を渡って受診がありました。
※平成30年5月21日追記 この症例のさらに2ヵ月後
【症例】
プロットハウンド 2歳半 女の子
【経過】
〇1才になる前からの皮膚病
〇背中の湿疹&脱毛(全体的)
〇この1年ずっとアポキルを服用している
〇わき、お腹、目の上、耳、目、口唇、背中など身体全体が痒い
〇アポキルを服用していても痒みが強く、やめるともっと痒くなる
〇アミノ酸系の食事療法を継続している
〇2週間に1回マラセブシャンプー
それでは初診時の状態をみてみましょう。
写真はありませんが、背中にも円形の膿皮症である湿疹&虫食い脱毛が認められました。
この初診時から14日後の状態とひかくしてみましょう。
痒みが劇的に減少し、この1年で最も良い状態になったということです。
具体的には元々の痒みを10とすると、2週間で3まで改善しています。
内服薬の処方としてはアポキルのみで、今までとまったく変わらない処方です。
背中の膿皮症に関しては本来抗生物質を処方するのが定法なのですが、「あること」を考えて抗生物質をあえて処方せずに2週間すごしてもらいました。
背中の膿皮症に対して考えた「あること」とは、
①耐性菌による膿皮症の可能性を強く疑うため、処方の前に細菌培養&感受性試験を行い、感受性(効果)のある抗生物質を調べてから処方
②この症例の体質であれば、今のアミノ酸系療法食は体質に合っておらず、背中の膿皮症は別の食事療法とスキンケアECプラスとMedicareクレンジングオイル&シャンプーの4点セットで良くなるはず
の2点です。
初診時から2週間の治療の中で、内服薬の処方としてはアポキルの継続服用のみとしたのですが、アポキル以外にお渡ししたのは
〇スキンケアECプラス1回1包 1日2回服用
〇Medicareクレンジングオイル&シャンプー 週1~2回
〇病院推奨の食事療法 ※アミノ酸系療法食は即刻中止
でした。
この初診時の指示&処方により、背中の膿皮症は抗生物質を服用することなく、ほぼ完全に消失しました。
実際に2回目の診察時(初診から14日後)には、細菌培養&感受性試験の結果がでて「効果がでる抗生物質」が特定できたのですが、服用しなくてもいい状態になっていたため、結局処方はしていません。
食事管理を間違わず、このまま膿皮症のために開発したサプリメントであるスキンケアECプラスがあれば、今後も膿皮症がでることはほぼないでしょう。
ここで大事なポイントは、1年間にわたって出続けていた背中の膿皮症の原因がどこにあって、どうすれば根本的(抗生物質を使わず)に改善するかを初診時に確定できたことですね。
すわなち、アミノ酸系療法食がこのわんちゃんの体質に合っていないという判断ができたこと、体質に合う食事療法の指示ができたこと、そしてスキンケアECプラスが膿皮症に効くと判定できたことです。
続いて目のまわり、口唇~下顎、うで&わき、腹部などの皮膚炎も十分に改善しています。
もうここから悪くなることはないと思います。
参考までに今回の診断はアトピー&膿皮症です。
食物アレルギーは稀なため現在は特別食事制限を考えておらず、今後はいろいろ食べていいという方向性になっています。
このわんちゃんの膿皮症は、スキンケア&サプリメント&食事療法だけで改善するものです。
アトピーもある程度改善が期待できるとは思うのですが、投薬治療があった方が絶対的にいいと思います。
当院で推奨しているスキンケア&サプリメントは専用オンラインショップでお買い求めいただけます。
当院における膿皮症の治療成績がよい理由は「いいお薬」を使うからではなく、膿皮症ができる原因(体質)を高い精度で、かつ初診時に特定することができるためです。
今の皮膚科医療には、膿皮症を治すための抗菌薬(抗生物質や殺菌系消毒薬)はあるのですが、「膿皮症が再発する理由」を特定できる検査はありません。
しかし問診&視診である条件を満たす症例であれば、どうすればできなくなるかが大体わかるようになります。
今回はそんな典型的な症例でした。
平成30年5月21日 追記 この症例のその後
投稿者:
2018.03.13
手を舐める、足を舐める、掻き壊すなどストレスや精神的な要因から起きる心因性掻痒症の治療に力をいている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが発売されて多くのわんちゃんの痒みが簡単に緩和できるようになったのですが、アポキルがほとんど効かない痒みがあります。
その筆頭が「心因性掻痒症」、手を舐める、足を舐める、腕をかむ、膝をかむ、背中を噛む、急に掻き壊す・・・といった症状です。
特異的な症状はなく、見た目でもアトピーやアレルギーなどに見えてしまい埋もれて見逃されているケースも多々あります。
多々というより「アポキル服用して残る痒みは仕方ない」という流れができつつあるほどです。
当院では痒みではなく、「痒み動作」としてとらえて原因追及&改善を徹底しています。
それは例え一般的な治療である程度緩和できて1年維持しても、2年維持していても残る症状があれば攻め直します。
今日はそんな「一定の改善をみとめて長期間コントロールしているが、再度攻めの治療で功を奏した症例」です。
【症例】
チャイニーズクレステッドドッグ
【経過】
〇当院への初診は4年半前
〇アトピーと心因性と診断し、シクロスポリン&心因性治療(内服1種、サプリメント1種)で一定の改善をえる
〇アポキルが発売されてシクロスポリンからアポキルへ変更
〇家族構成に変化があり、アトピーの再燃はないが、心因性の再燃を認める
※なお心因性治療(内服1種、サプリメント1種)の変更はしていない
まずは4年半前の初診時の状態を紹介します。
今みても「アトピー&心因性」という症例です。
部分的に感染症もありますが、この子にとって感染症はわずかなものでほぼぶり返しはありません。
それではここ半年ほどぶり返していた状態をみてみましょう。
この腕にできる潰瘍はなめすぎによるもので、完全な心因性です。
アポキルを毎日服用しても全く改善できません。
この4年半の中で大きな治療方針の変更はシクロスポリンをアポキルに変えたのみで、心因性のぶり返しはほとんど気にならなかったため、心因性に対する内服1種&心因性サプリメントの変更はしたことがありませんでした。
久しぶりの再燃に関しても一過性のものかと思っていたので様子をみていたのですが、一向に改善がみとめられないため、再び病気に攻めてみることにしました。
そう、心因性といえば当院が開発したヒーリングケアLFプラスです。
※このわんちゃんが初診で来院された4年半前にはヒーリングケアLFプラスはなかったので、別のものを採用していました。
市販の心因性サプリメントから、当院のヒーリングケアLFプラスに変更してから約3ヵ月後の状態とひかくしてみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
切り替えてからすぐに舐め癖は消失し、それから1度も再発はなく、ついでにアポキルまで減らすことに成功できました。
今ではアポキルは3日に1回までへってますが、それでも痒みがほとんどありません。
この先は春の花粉症がでやすいため、「例え痒みがなくともこの季節に3日に1回以下まで減らす必要はないと思いますので、しばらくキープです」としているほどの改善です。
当院のヒーリングケアLFプラスは精神的な癖、心因性だけではなく、アトピーなどの免疫異常に対しても非常に有効な改善が期待できます。
アポキルの使用量を減らすことができたのはこのヒーリングケアのおかげだと思います。
当院ではお薬の足し算ばかりをするのではなく、常にそのときの状態にあわせた最良の組み合わせをつくり、優先順位をつけて投薬量が増えすぎないように工夫しています。
薬の生理整頓は非常に重要ですね。
当院で開発したヒーリングケアLFプラスは専用のオンラインショップでお買い求めいただけます。
舐め癖、掻き壊しなどストレスや精神的な要因でおきる心因性の痒みに対して非常に相性がいいです。
適切な診断の元でご利用いただければ幸いです。
投稿者:
2018.01.22
犬の皮膚病のみを行う皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回はペキニーズの症例です。
【症例】
ペキニーズ 女の子(避妊未) 6歳8ヵ月
【経過】
〇約1歳頃からずっと(良くなったり悪くなったり繰り返し)
〇全身の痒み
それでは初診時の状態をみてみましょう。
頚部
胸部とその拡大
背中とその拡大
わかりにくいため、毛をカットしたあとの状態もみてみましょう。
それでは初診時から約2か月後の状態と比較してみましょう。
毛刈り前との比較写真、毛刈り後との比較写真の両方を使います。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
痒みはほとんどなく、湿疹・フケもありません。
いつも紹介している症例に比べると重症度が軽めですが、飼主さまは「はじめてよくなった」と評価していただけました。
なお、今回の症例の診断名は細菌による膿皮症です。
そのため抗生物質が必要になるのですが、問題は抗生物質をやめた後に再発させないことです。
今回は抗生物質をやめて約1か月後の状態で撮影しています。
抗生物質をやめても再発していないのがポイントですが、今回の治療で「再発防止」に役に立ったのはサプリメント「スキンケアECプラス」です。
抗生物質は膿皮症を治しますが、膿皮症の原因を治すことはできません。
このスキンケアECプラスは膿皮症の原因にアプローチしていますので、抗生物質をやめたあとの再発防止に役立ちます。
今回の症例ではスキンケア&サプリメントが非常に役に立つタイプです。
当院のオンラインショップでお買い求めいただけます。
投稿者:
2017.09.14
犬の皮膚病治療におけるスキンケアに力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院では以前からスキンケアに力をいれていますが、スキンケア単独で皮膚病が治るとは思っていません。
むしろスキンケアで治る皮膚病はほんのわずかな軽度なものだけであり、スキンケアに拘りすぎてはいけないとすら思っています。
ただ、スキンケアがさほど重要ではないという意味ではなく、スキンケアがなければ絶対にうまく行かない皮膚病があるため、そこを診間違わないことが重要と考えています。
今回紹介するのはそんな「スキンケアがなければ絶対にうまくいかない」という症例です。
【症例】
犬 ミックス(柴×キャバリア)
【経過】
※後日記載します。
では、初診時の状態をみてみましょう。
まずは、顔から。
続いて、頚部と前胸部。
続いて、右前肢。
続いて、胸部。
続いて、腹部~内股。
続いて、右後肢。
続いて、胸の側面~肩とその拡大。
こういった症例は非常に多いですね。
当院ではこういった脂漏症の症例報告を過去に数え切れないほど紹介してきましたが、こういった症例では「院内薬浴」が非常に効果的です。
ただ、今回は飼主さまが「自宅でやります!」というので院内薬浴は行わず、自宅でがんばってもらうことにしました。
それでは初診時から約2ヵ月後くらいの状態を紹介します。
随分と改善したのがわかります。
もちろん使用したのは当院のオリジナルスキンケア商品、MedicareクレンジングオイルとMedicareシャンプーです。
※当然ですが、投薬治療も併用しています。
しかし全ての部位で十分な改善があったかといえばそうではなく、脂漏の症状が残っている部位がありました。
それは一番脂漏が重度であった胸部です。
ある程度時間が経過したにも関わらず・・・
この状態でした。
もちろん想定外ではなく、2回目の診察時には「十分にシャンプーができていない→このままでは症状が残る」ということが予測できていたので、再診のたびに飼主さまに「十分なシャンプー療法ができていません。院内薬浴を受けませんか?もっとよくなると思います。」と提案してきましたが、実施にはいたりませんでした。
しかしこのままでは改善が止まってしまうため、一定の改善があった時点で改めて「もっとよくなります。僕を信じて受けてください。」と説得し、院内薬浴を受けていただくことになりました。
その初回の薬浴が2週間前で、そして本日がその薬浴から2週間後の再診でした。
強い脂漏が残っていた胸部は・・・
非常に綺麗になりました!
拡大してみましょう。
色(皮膚炎)も改善し、皮膚もやわらかく、フケも皮脂もほとんどありません。
飼主さまからも、「随分よくなりました。元気になって、若返ったみたい。フケもへって掃除も楽になりました。」と喜んでいただけました。
今回の症例のように、スキンケアは非常に重要です。
ただし、スキンケアが正しく十分な技術で実施されれば・・・でもあります。
おそらく自宅でのスキンケアの達成レベル・完成度は高くなく、やはり熟練の技術がなければ十分な結果を出すのは難しいということです。
なお今回の症例には抗生物質を処方していません。
抗生物質を使わずに治したという意味ではなく、「このタイプの皮膚疾患に抗生物質は不要」という意味です。
また、スキンケアだけで治るわけではありません。
必ず投薬治療が適切に行われていなければ、これだけの改善は不可能でしょう。
余談ですが、初診時には静岡のあん動物病院の大石先生が見学にきていたので、初診時の治療プランの組み立て方、病変の見方について解説いたしました。
そしてその後の治療の詳細について治療内容と写真で情報を共有しています。
それではまとめです。
今回の症例の初診時に重要なことは、
・初診時に治療プランを組み立てることができること
・抗生物質が不要であることがわかること
・スキンケアだけで改善できるものではないが、スキンケアが無ければ改善できないことがわかること
です。
そしてもっと重要なこととしては、再診時に
「スキンケアが不十分であることが判断できること」
「スキンケアが不十分であることを飼主さまに伝えることができ、改善できることを実感させられること」
ですね。
当院では皮膚科のない個人動物病院向けにスキンケア商品・サプリメントの提供を主とした業務提携を行っています。
興味のある先生は問い合わせフォームからご連絡ください。
投稿者:
2017.03.25
愛知・名古屋で犬の皮膚病治療のみを行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
春になりましたが、まだ少し寒さを感じます。
一時期ストレスから口内炎・吹き出物が多発し、寝不足も重なって絶不調でしたが、今はいいスパイラルに入り絶好調です♪
今日紹介するのは脱毛症のわんちゃんです。
普段は「痒みを伴う皮膚病」を診る機会が圧倒的なのですが、今回は「痒みを伴わない脱毛症」です。
【症例】
犬 シェルティ
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは全体像です。
綺麗な毛並みで、一見脱毛症があるようにはみえません。
今回の病変は1箇所だけ・・・
この左耳の裏側の脱毛です。
脱毛している部分と、正常な被毛がある境の部位を拡大してみましょう。
白くめくれたようなフケが大量に付着しています。
診断はここで決まります。
初診時から約2ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗な毛並みが再生しました。
このタイプは「完治」といえます。
原因は非常にシンプルで、「ステロイド外用薬の塗りすぎによる副作用」です。
当院としては「脱ステロイド」を正義の御旗のように謳うことはなく、積極的にステロイドを使う方なのですが、「使いこなすこと」がとても大事だと考えています。
ステロイドを使いこなすというのは、ステロイドを使っていいシーンと使わない方がいいシーンの診極めであり、使うべきときにしっかりと使う、使ってはいけないシーンを間違えないことです。
そして「使いすぎに早く気づくこと」、ですね。
今回のわんちゃんがステロイドを使うキッカケになった皮膚病をみていないため、「使うべきだったのかどうか?」に関してはわからないのですが、使いすぎに気づかなかったのが原因だと思います。
投稿者:
2016.12.03
名古屋・愛知で犬の皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
膿皮症、とても多い病気ですね。
シンプルなんですが、とても治りにくいケースも多々あり、「膿皮症が治らない」という理由で当院を受診される方も多いです。
それらのわんちゃんの多くが「診断は間違っていない」・・・でも、治ってないという状態です。
治らないには治らないなりの理由があり、膿皮症になるにはなるなりの理由があります。
そこを追求すれば、膿皮症のほとんとがコントロール可能になります。
前回そんな「膿皮症が治らない」として甲状腺機能低下症の症例報告を行いました。
今回もその甲状腺機能低下症の続きです。
【症例】
MIX 6歳1ヵ月 男の子(去勢済み)
【経過】
〇1~2年前から発症
〇過去に2件の動物病院を受診し、抗生物質とステロイドを処方され、一時的に改善したが再発
〇夏前からさらに悪化
それでは、初診時の状態です。
つづいて、頚部です。
同じく頚部の拡大です。
つづいて、前胸部です。
同じく左の脇です。
すぐとなりの肘の内側です。
つづいて、腹部~内股です。
同じく左の内股です。
この初診時から2ヶ月後の状態を比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗になりました。
湿疹がない、痒みがないだけでなく、フワフワ&サラサラに復活です。
そしてとても元気になっています。
甲状腺機能低下症は非常に有名ですが、診断しにくいいくつかの要因があります。
〇飼主さまがほぼ気づかない
動物病院に来院されるにはそれなりの理由があると思うのですが、甲状腺機能低下症の場合は病気に直結する症状で来院されることがあまりありません。
わかりやすい例でいうと、糖尿病であれば「よく食べるのにやせる。よく水をのむ、オシッコも多い」、心臓疾患であれば「咳をする。呼吸がおかしい」、膀胱炎であれば「血尿」といったような関連性ですが、甲状腺機能低下症の場合はそういった主訴が多くないのです。
〇特徴的な症状(所見)がない、または顕著な特徴が出ないことが多い
教科書的には脱毛、表情、脂漏・・・といった特徴的な症状を書いているのですが、教科書にのるような脱毛になっている甲状腺機能低下症のわんちゃんがどれだけいるのか?と考えるとほんの一部です。
また表情についても、特徴的な表情をするのはほんのわずか、脂漏も甲状腺機能低下症以外でも多くみとめられるため、直結するような症状ではありません。
〇検査結果が必ずしも正確とは限らない
ユーサイロイドシックと呼ばれる状態があり、「本当は甲状腺は正常なのに、異常値がでる」というのが頻繁に起こります。
評価に悩む症例もなくはありません。
〇皮膚病の中で甲状腺機能低下症は多いわけではない
今回の連続報告はちょうど同じ週に来院されたように、当院では頻繁に診断する機会があるのですが、一般診療の中ではたまにみるくらいだと思いますので、「皮膚病があるから甲状腺検査しましょう」ではないと思います。
〇検査が高い
病気が少ないとしても、検査が安ければ、それこそ100円で検査できるならすべてのわんちゃんに行えば発見が遅れることも少なくなるのですが、安くない・・・いやむしろ高いほうの検査です。
検査に踏み切るには踏み切るなりの理由がなければ実施しづらいというのはなくはありません。
とはいっても甲状腺機能低下症があって皮膚病になっている場合、甲状腺を避けて改善はありませんので、どこかでラインを引いて実施しておきたい検査です。
具体的には、
毛並みが悪い
脂漏がある
皮膚病の治りが悪い、再発が多い
・・・ですが、難しいですね。
たとえば「毛並みの悪さ」、どう評価するのか?
毛の質はわんちゃんによって違いますし、そのわんちゃんの昔の状態もわかりません。
毛の数も100→10になれば判りやすいのですが、100が70や50くらいのこともあるので脱毛といいきれないことも多々あります。
ということで「普段からよく診る」につきると思います。
数多く診ていれば、病気のわんちゃんがきたときに「おかしい」という違和感を感じます。
治りの悪いさもどうようで、「この治療だったら治るべきなのになぜ治らない?」という違和感が検査のタイミングだと思います。
それでも病気は文字では表せないのが現実ですね。
まとめようにもまとまらない、「教科書では治らない」ですね。
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