柴犬の症例報告

アポキルが効かない柴犬の皮膚病の根本的解決策

2018.01.20

アトピーやアレルギーなど、柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

目が痒い、耳が痒い、口が痒い、鼻が痒い、首が痒い、ワキが痒い、腕を噛む、膝をかむ、かかとを噛む、手先・足先をなめる&噛む・・・・背中は特に問題ない、3歳までに発症する柴犬のアトピー性皮膚炎の典型例ですね。

今はアポキルというすばらしいお薬がありますので、コントロールしやすくなってきました。

ただ、今でも一定数コントロールできない難治性皮膚炎の柴犬のアトピー性皮膚炎のわんちゃんがいます。

今日はそんな「どこからどうみてもアトピーなのに、アポキルが効かない」という症例です。

【症例】

 柴犬 2歳 女の子(避妊手術済み)

【経過】

 〇生後7ヵ月後から痒みを伴う皮膚病

 〇季節性はなく1年通じて痒みがある

 〇顔、耳、口唇、わき、腕~手首、膝~かかと、四肢端

 〇16ヶ月前からアポキルを服用しているが、服用していても効いているわけではない

ここでポイント①、飼主さまのお住まいは関東圏です。

当院が提供している遠隔診療を希望するお申し込みでした。

すべての皮膚科症例が遠隔診療の適応になるわけではないため、まずはお写真をいただきました。

いつもお話している通り皮膚科は初診の診極めが大事です。

この症例でもこのお写真で判断可能です。

この時点で治療方針はほぼ確定です。

そして日時をあわせて東京品川で実際に診察を行いました。

当日のお写真を紹介します。

ここまでは送っていただいた写真、症状の通りです。

皮膚病は見た目が何より大事で全身に診断につながる重要な所見が隠されています。

痒いところをみるだけでなく、予測通りか確認することも重要です。

ここも大事なポイントですね。

この初診時から約1ヵ月後の状態です。

飼主さまからいただいた写真なのでわかりやすい比較写真ではないですが、ご了承ください。

まずは腹側の全体像。

続いて、頚部。

続いて、胸部です。

フワフワの毛並みですね。

痒みは「かきますが、気になるほどではありません」というレベルまで改善しました。

症例報告に使うフレーズとして「アポキルが効かない」というセリフをよく使用しますが、正しくは「アポキルが効く痒みではない」で、アポキルを使うべき痒みにはとてもよく効くんです。

アポキルはすべての痒みを止めるわけではないため、原因を診極めて何をターゲットにして使うかを判定していけば非常にいいお薬です。

もちろん副作用が非常に少ないので「とりあえず」で使うとこもできますが、「アポキルを使って残った痒みをどう評価すべきか」まで考えて処方するのが正しい使い方と言えます。

前回の症例同様にある治療を加えれば、今回の柴犬にも他のアトピーの柴犬同様アポキルはよく効くようになります。

大事なのは、

柴を極める

でしょうか。

柴犬の正常を知れば、柴犬の異常を知ることができます。

常に、常に柴犬の皮膚を診続けるば、いづれ正常がわかるようになり、次に異常がわかります。

正常を知らずに異常はわかりませんからね。

今回紹介した柴犬の初診では、静岡県静岡市の動物病院「あん動物病院」の大石先生と一緒に診察しています。

静岡市近隣にお住いの方で、柴犬の皮膚病にお困りの方はあん動物病院の大石先生にご相談ください。

当院ではこういった一般的に知られていない診断・治療法を含めたプライベート皮膚科セミナーを開催しています。

ご興味のある方は当院HPからお問い合わせください。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の痒み専門外来】ステロイドが効かない理由は?

2018.01.19

柴犬のアトピーやアレルギーなど、痒みと伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

柴犬の痒みトラブルは非常に多いですね。

痒みを抑えることができる「アポキル」が発売されて、一定の症例はこのアポキルによってかなりの改善を認めていると思われます。

しかしアポキルが高い効果を示す症例と、そうでない症例がいますが、その違いはどこにあるのでしょうか?

これはアポキルだけに限ったものではなく、ステロイドや免疫抑制剤などの痒みに関するお薬全般にいえることです。

「服用しているのによくならない」

当院を受診しているわんちゃんのスタートラインはここです。

今日はそんな「痒み止めの効果がでない」という柴犬についてです。

【症例】

 柴犬 1歳10カ月 女の子(避妊手術済)

【経過】

 〇生後5か月から続く痒み

 〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ

 〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし

 〇抗生物質を1年間継続中

 〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用

 〇痒みのコントロールができていない

 〇季節性はなく、1年通してずっと痒い

それでは初診時の状態です。

6日前に初診のために当院を受診されたので、治療後の写真はまだありません。

初診時の検査では、ニキビダニ陰性、マラセチアわずかに検出、膿皮症なしでした。

診断は一瞬です。

いや、実は看護師が受けた電話の問診メモをみるだけでわかりました。

※先入観はときに痛い目をみるので本当はよくありません。

あとは当日パッとみて&お話聞いて確信へ、各種検査は似ている疾患を除外するために実施します。

簡単な特徴としては、

 〇柴犬

 〇若い発症

 〇季節性のない痒み

 〇痒み止め(一般的にはアポキルとステロイド)が効かない

 〇寄生虫(ニキビダニ、疥癬)ではない ※なさそうでも可

この条件であれば「柴犬のあるある」かもしれませんが、シンプルなアトピーであればアポキルなりステロイドが効きますし、季節性もあると思いますのでそのグループには入らないちょっと難しいタイプに分類できます。

おもしろいのは、飼い主さまからの主訴には決して入ってこないあることに関する情報を聞き出すことで、この病気の診断に近づくことができます。

今回も一通り飼主さまのお話を聞いて、簡単な顕微鏡検査をして、改めて飼主さまに質問をしてみました。

「お近くで柴犬のわんちゃん見る機会もあると思いますが、他の柴ちゃんとこの子で何が違うと思いますか?」

飼主さまはこの質問に的確に、かつ僕の期待通りの答えを返してくださいました。

病気の原因はそこだったんですね。

ただ、飼主さまはそれを僕に伝えることはできなかったのです。

認識できていることと、今の病気と関係していると思うことは別で、獣医師に伝える症状には入っていませんでした。

診断には検査だけでなく、飼い主様から必要な情報を聞き出す質問ができることも重要と思います。

参考までにこの子はアトピーの範疇でいいと思います。

問題はなぜこの子のアトピーにステロイドが効かないのか?ですね。

仮にアポキルでも同様ですが、効くはずのものが効かないのは「効かない理由」があるのです。

効かない理由の診断をつけて治療さえすれば、この症例のアトピー部分には他の症例同様にアポキルやステロイドが効くようになります。

この症例に必要なのは痒みを抑える治療ではなく、アトピーにステロイド(同様にアポキルも)が効かないある疾患を治療してアポキルが効くようにすることです。

3か月後にはアポキル(ないしステロイド)を毎日飲まなくても痒みがコントロールできるようになると思います。

次回は今回紹介した症例とまったく同じような柴犬で、「アポキルを服用しているのにまったくよくならない」という症例の改善経過を紹介します。

おもしろいは東京で開催した遠隔診療での症例です。

要するにメールと写真で目途をつけ、実際に診るのは1回だけで診断・治療方針を組み立てるという医療です。

また、当院では動物病院向けにこのような今の皮膚科で不足している大事なことについて、個別で皮膚科セミナーを開催していますので、ご希望の方はHPからお問い合わせください。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の痒い皮膚病】アポキルが効かない!?どうする?

2017.12.18

柴犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

クリスマスまで1週間を切り、クリスマスが終わればもう今年もカウントダウンで新年ですね。

クリスマスの飾りつけをしながらお正月の飾り付けも選び、クリスマスプレゼントを準備しながら年賀状を書くというイベント大好き日本人の性を実感する毎日です(笑)

今日の症例報告は先日の柴犬の記事で伝えておいたわんちゃんです。

  12月16日に初診で来院されたわんちゃんをその日のうちに紹介しています。

【症例】

 柴犬 1歳 男の子

【経過】

 〇生後7ヶ月に痒み発症

 〇徐々に拡大して悪化

 〇地元動物病院にて「アトピー?アレルギー?」

 〇抗生物質と消炎剤の内服で改善なし

 〇11ヶ月からさらに悪化し、拡大

 〇四肢の痒み、顔(目・口・頬)の痒み、目の脱毛など

それでは初診時の状態です。

続いて、顔正面の拡大。

続いて、顔の左側。

同じく顔の左側。

続いて、身体側面の右側から。

続いて、右前肢の内側、とその拡大。

同じく右前肢の外側と、その拡大。

続いて、左側面。

腹部の左側とその拡大。

左後肢の側面。

同じく左後肢のかかと付近を外側から。

同じく左後肢の甲、外側から。

背中以外傷だらけで来院されました。

噛みすぎて毛もありません。

それでは10週後の状態と比較してみましょう。

※画像をクリックすると大きくみることができます。

まずは顔の正面、右、左の順番です。

続いて、左側面。

続いて、右前腕。

続いて、右後肢。

続いて、左側面。

続いて、左前肢。

続いて、左腹部とその拡大。

続いて、左後肢の側面。

非常に綺麗に改善しました。

傷ひとつなく、毛並みは100%回復です。

症状も改善し、10週間後の状態ではほぼ痒みなしです。

念のためアポキルを渡しておきましたが、治療9~10週目の2週間で服用したのは2~3回のみ、それでも痒くないという回復ぶりです。

もちろんステロイドの1度も処方していません。

今回の症例の特徴の一つは、「アポキルが効かないタイプの痒みである」ということです。

まったく効かない、絶対にきかない・・・というほどではないので、併用するのはありなのですが、「アポキルで抑えきれない」とわかった上で処方しなければ後が困ります。

再診時に「痒みがあまり改善していない」という状態を予測して、再診時に次の治療に踏み込める準備を初診時にしておく必要があります。

今回の症例でも初診時に「とりあえずアポキル」という処方をしましたが、予測どおりあまり改善なし・・・という結果でした。

想定どおりですので、再診時から初診時の時点ですでにお伝えしていた治療第2弾を併用して、最終的にはアポキルがなくてもかかない、という状況に改善したという流れです。

ブログにしてしまうと治療は一瞬にみえるかもしれませんが、柴犬の皮膚病治療は難しいと思います。

アポキル単独でかなり痒みを抑えられる症例もいるのですが、そうでない症例もそこそこいます。

そしてアポキルで痒みを抑えきれないときに次の手が中々ない、というのが今の皮膚科の現状です。

当院ではアポキルが効かないという診療が大半を占めるので、それ以外の手をいくつか持って診療に臨んでいます。

ただ、打つ手が正しくてもそのタイミングが悪ければ十分な評価ができなかったりしますし、いいタイミングで手を打っても「それがいつ効くのか?効いているのか?」を判断できないといけません。

こういった「アポキルが効かない痒み」について、個別でセミナーを開催していますので、診療提携をご希望の方はご連絡ください。

参考までに前回初診時のみを紹介した柴犬のわんちゃんと原因は一緒です。

前回紹介した柴犬のわんちゃんもアポキルを1日2回服用して改善しない皮膚病です。

3ヵ月後までには綺麗になるでしょう。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚病治療】アポキルが効かない痒い理由

2017.12.17

柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

アポキルが使えるようになって1年が経過し、症例報告のほとんどにアポキルが処方されているにもかかわらず改善がなく、タイトルが「アポキルが効かない」とワンパターンになってしまうのが最近の悩みの種です。

根本的解決にならないのですが、最後に「痒い理由」とつけて無理やり新しいタイトルにしてみました。

さて、今日紹介するのは「本日、12月16日に初診で来院された柴犬の皮膚病の症例」です。

もちろん検査結果は出揃っておらず、投薬治療もはじまったばかりです。

治療後の写真はありませんが、初診時の状態を紹介します。

【症例】

 柴犬

【経過】

 〇半年以上前から全身の痒み

 〇アポキル1日2回服用していても痒みが改善しない

 〇抗生物質1日2回服用中

 〇食材をかえて何種類も食事療法を行ったが、改善しない

それでは初診時の状態を紹介します。

まずは正面から。

続いて、顔の左側から。

続いて、顔の右側から。

続いて、頚部とその拡大。

続いて、左前腕の尾側から。

続いて、右前腕の内側とその拡大。

続いて、左前腕の内側。

続いて、胸部とその拡大。

続いて、腹部とその拡大。

続いて、身体左側と腹部側面の拡大。

最後に後ろ側と大腿尾側の拡大。

アポキル0.45mg/kgを1日2回服用していても痒みの改善がないわんちゃんです。

念のためを含め、除外しておきたい疾患の検査を行いましたが、注目すべきメインターゲット(原因)は1つと考えています。

サブの原因は2つありますが、メイン1つの治療を徹底して行えばサブの原因2種はさほど目立たなくなると思います。

その他の特別な疾患が隠れていなければ、1ヵ月後くらいから治療結果がでて、3ヵ月後にはアポキルに頼らなくていいくらい十分な結果がでると思われます。

影響を受けるとすれば、このあとくるであろう発情でしょうか。

発情ばかりはなんともできないため、万が一治療期間に重なれば「やむをえなかった」となります。

なお診断は、問診時に抱っこされている柴ちゃんを見た一瞬でほぼ判定可能です。

参考までに今回の皮膚病はスキンケアとサプリメントではさすがに改善しません。

次回の症例報告は、今回とほぼ同じ柴犬の症例報告(治療後比較あり)の予定です。

傷だらけの状態で来院されましたが、アポキルもいらないくらい綺麗に改善した症例です。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚病治療】アポキルが効かない?アトピー?アレルギー?

2017.10.02

柴犬の痒みを伴うアトピー・アレルギー性皮膚炎の治療に力を入れている皮膚病治療専門病院、四季の森どうぶつクリニックです。

今日紹介するのはここ最近の中で最も「会心」だった症例です。

【症例】

 柴犬 4歳 去勢オス

【経過】

 〇1才のころから皮膚病

 〇最初は季節性の痒み発症であったが、この2年は通年性

 〇シクロスポリンで改善なし

 〇アポキルでも改善なし

 〇シクロスポリン+アポキルの同時併用3ヶ月でも改善なし

 〇最近はステロイドでも改善なし

 〇食事療法は、低アレルゲン、アトピーフード、グレインフリーと変えるも改善なし

さて、初診時の状態です。

正面全体から。

続いて、右側面から。

続いて、顔~頚部(右)。

同じく頚部の右、拡大。

同じく右頚部、さらに拡大。

頚部、正面から。

同じく頚部正面、拡大。

続いて、前胸部。

続いて、右前肢の屈曲部(肘)。

続いて、右前腕内側。

続いて、右前肢外側。

続いて、右胸部側面。

続いて、右肩の側面拡大。

右胸部側面の拡大。

同じく右胸部側面の拡大2箇所目。

同じく右胸部側面、3箇所目。

続いて、右腹部側面。

続いて、右後肢膝~カカトの側面。

続いて、左側面。

左側面をやや斜め後ろから。

右側面の炎症部位の拡大。

右腹部側面の拡大。

続いて、右後肢側面。

かなり重度ですが、この見た目は特徴的なので診断は一瞬です。

万が一のことを考えて、似ている疾患を除外するためにいくつか検査をしますが、頭の中で答えは決まっています。

綺麗に治るまでの軌跡を描いてからゆっくり検査、説明をします。

※検査結果は確認のためで、治療方針を立てるためではありません。

それでは初診時からちょうど12週間後との比較です。

※写真をクリックすると大きくすることができます。

参考までに

 〇甲状腺機能低下症はなし

 〇ステロイドの副作用でもない

 〇疥癬でもない

 〇アポキルは効かない

 〇上記の写真で紹介した病変に、抗生物質を必要とするものはない

当院でも初診時に「アポキル」を処方しましたが効果はゼロで、飼主さまから「痒みはまったくかわらない」といわれました。

もちろん現状でアポキルがほとんど効かないだろうというのはわかってたのですが、「副作用はほとんどないし、多少効果があればOK」というつもりで処方しています。

それだけではなく2回目~7回目までの再診時もずっと「よくならない。かわらず痒い」といわれ続けており、9週間後の7回目の再診時でも「痒みはあまり変わらず、元々を10とすると今8くらい」という低調な評価でした。

ただ!改善する自信があったので「治療方針は変えません。よくなります。」と言い続けて初診時の診断は変えませんでした。

そしていよいよ12週間後の8回目の診察時、飼主さまにはじめてうれしい言葉が・・・

 「おかげさまで随分良くなりました。散歩でも『別人みたい!』と声をかえてもらえました♪」

痒みも足先をちょっとなめる、口を時々掻く・・・というくらいです。

毛並みも非常によく、ツヤツヤです。

柴犬のこのタイプの皮膚炎はときどき診る事があり、だいたいアトピー、アレルギーといわれて難治性皮膚病になっています。

「アトピーではない」「アレルギーではない」と言うことは難しいのですが、「アトピー」「アレルギー」といっていると絶対治りません。

このタイプはアポキル単独では改善しませんし、食事療法なんてほぼ無意味ですし、スキンケアで改善するわけでもありません。

あることをし続けなければ結果がでません。

結果がでるまでの数ヶ月も痒みが続くのですが、飼主さまの「痒みが改善しない」という返事に対して、自信をもって「このままでよくなります。」とブレずに継続する力が必要です。

この「痒いといわれてもブレない」というのがかなり難しいと思います。

もう1点、これが難しいといわれる理由は「教科書に掲載されていない」ということでしょうか。

また、セミナーで解説されているのも聞いたことがありません。

近い記載はわずかにあるのですが、おそらく誰も気づいていないのが現状です。

当院と皮膚科に関する診療提携を行っている病院の先生には詳しく解説する予定です。

今回の症例でも初診時の診極めで、治療方針を変更することなく改善することができました。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【犬の皮膚科】これが本当のメディカルスキンケア

2017.09.14

犬の皮膚病治療におけるスキンケアに力をいれている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

当院では以前からスキンケアに力をいれていますが、スキンケア単独で皮膚病が治るとは思っていません。

むしろスキンケアで治る皮膚病はほんのわずかな軽度なものだけであり、スキンケアに拘りすぎてはいけないとすら思っています。

ただ、スキンケアがさほど重要ではないという意味ではなく、スキンケアがなければ絶対にうまく行かない皮膚病があるため、そこを診間違わないことが重要と考えています。

今回紹介するのはそんな「スキンケアがなければ絶対にうまくいかない」という症例です。

【症例】

 犬 ミックス(柴×キャバリア)

【経過】

 ※後日記載します。

では、初診時の状態をみてみましょう。

まずは、顔から。

続いて、頚部と前胸部。

続いて、右前肢。

続いて、胸部。

続いて、腹部~内股。

続いて、右後肢。

続いて、胸の側面~肩とその拡大。

こういった症例は非常に多いですね。

当院ではこういった脂漏症の症例報告を過去に数え切れないほど紹介してきましたが、こういった症例では「院内薬浴」が非常に効果的です。

ただ、今回は飼主さまが「自宅でやります!」というので院内薬浴は行わず、自宅でがんばってもらうことにしました。

それでは初診時から約2ヵ月後くらいの状態を紹介します。

随分と改善したのがわかります。

もちろん使用したのは当院のオリジナルスキンケア商品、MedicareクレンジングオイルとMedicareシャンプーです。

※当然ですが、投薬治療も併用しています。

しかし全ての部位で十分な改善があったかといえばそうではなく、脂漏の症状が残っている部位がありました。

それは一番脂漏が重度であった胸部です。

ある程度時間が経過したにも関わらず・・・

この状態でした。

もちろん想定外ではなく、2回目の診察時には「十分にシャンプーができていない→このままでは症状が残る」ということが予測できていたので、再診のたびに飼主さまに「十分なシャンプー療法ができていません。院内薬浴を受けませんか?もっとよくなると思います。」と提案してきましたが、実施にはいたりませんでした。

しかしこのままでは改善が止まってしまうため、一定の改善があった時点で改めて「もっとよくなります。僕を信じて受けてください。」と説得し、院内薬浴を受けていただくことになりました。

その初回の薬浴が2週間前で、そして本日がその薬浴から2週間後の再診でした。

強い脂漏が残っていた胸部は・・・

非常に綺麗になりました!

拡大してみましょう。

色(皮膚炎)も改善し、皮膚もやわらかく、フケも皮脂もほとんどありません。

飼主さまからも、「随分よくなりました。元気になって、若返ったみたい。フケもへって掃除も楽になりました。」と喜んでいただけました。

今回の症例のように、スキンケアは非常に重要です。

ただし、スキンケアが正しく十分な技術で実施されれば・・・でもあります。

おそらく自宅でのスキンケアの達成レベル・完成度は高くなく、やはり熟練の技術がなければ十分な結果を出すのは難しいということです。

なお今回の症例には抗生物質を処方していません。

抗生物質を使わずに治したという意味ではなく、「このタイプの皮膚疾患に抗生物質は不要」という意味です。

また、スキンケアだけで治るわけではありません。

必ず投薬治療が適切に行われていなければ、これだけの改善は不可能でしょう。

余談ですが、初診時には静岡のあん動物病院の大石先生が見学にきていたので、初診時の治療プランの組み立て方、病変の見方について解説いたしました。

そしてその後の治療の詳細について治療内容と写真で情報を共有しています。

それではまとめです。

今回の症例の初診時に重要なことは、

・初診時に治療プランを組み立てることができること

・抗生物質が不要であることがわかること

・スキンケアだけで改善できるものではないが、スキンケアが無ければ改善できないことがわかること

です。

そしてもっと重要なこととしては、再診時に

「スキンケアが不十分であることが判断できること」

「スキンケアが不十分であることを飼主さまに伝えることができ、改善できることを実感させられること」

ですね。

当院では皮膚科のない個人動物病院向けにスキンケア商品・サプリメントの提供を主とした業務提携を行っています。

興味のある先生は問い合わせフォームからご連絡ください。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【アポキルが効かない?】柴犬の痒みを伴う皮膚病

2017.09.09

柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

柴犬の皮膚病といえば、痒みが強く、独特の体質・性格のためか治療が難しく、難治性皮膚病になりやすい犬種の1つです。

当院にも多くの柴犬が来院されており、過去にもたくさん症例報告してきましたが、中にはノーマルなアプローチでは全く改善しない特殊な症例もいます。

今回は柴犬の中でもそんなイレギュラーな症例を紹介します。

【症例】

 柴犬 2歳 男の子(去勢済み)

【経過】

〇2年前から痒みがある
〇痒みの部位:全身痒いが、最も痒みが強いのは耳
〇過去の投薬歴:減感作療法(1週間に1回の頻度で計6回の注射を行った)、内服薬は抗生剤(ラリキシン)と抗ヒスタミン剤を服用していた。

それでは、全体からみていきましょう。

柴犬の皮膚病の特徴である目の周りの脱毛や、色素沈着がほとんどありません。

この時点で「え?難治性???」と感じる先生は多いかと思います。

続いて、飼主さまが「痒みがつよい」と感じている頚部です。

そして最も痒みが強いという耳ですが、まずは後ろからみてみましょう。

後頭部。

同じく、左耳の拡大。

同じく、右耳の拡大。

実はここで治療での問題があります。

 ①アポキルで痒みは抑えられない

 ②ステロイド・抗生物質・抗真菌剤が含有された合剤点耳薬で耳の痒みは抑えられない(そもそも耳垢も、炎症もない)

一般的な痒み全般を抑えることができるアポキルがほとんど効果を示さないことがわかっています。

また、耳は赤くなく、耳垢もなく、これも一般的な治療法である点耳薬がほぼ効果なしという判定です。

さて、どうするべきか?

それでは、この初診時から1年後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると拡大してみることができます。

薄かった毛も多くなり、フワフワになっています。

肝心な痒みも大きくおさえることができ、「過去最高のコンディション」になっています。

今回の治療には3つのお薬を併用しました。

3つのうち1つは「単独服用では効果がないアポキル」ですが、残り2つが治療成績を左右する重要なものです。

この体質を初診時に判断できることが「初診時の診極め」です。

当院では皮膚科のない個人動物病院向けに、オリジナル商品の提供を含めた「初診時の診極め」に関するサポートを行っています。

業務提携にご興味のある方は専用フォームからお問い合わせください。

※比較に1年という時間がかかったのは理由があります。

初期のもっと早い時期に痒みのコントロールができましたが、飼主さまの治療縮小のリクエストにより一旦フェードアウトして、痒みの再発後に再治療に入りました。

そのため被毛の再生に時間がかかり、比較写真が1年後になっています。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【診療サポート】アポキルが効かない痒みの原因は?

2017.07.26

犬の皮膚病の中でも痒み治療に特化した動物病院【四季の森どうぶつクリニック】の平川です。

以前にも何度かブログで紹介しましたが、今年から皮膚科のない動物病院向けに、スキンケア・サプリメントなどの共同開発・研究を中心に診療提携をはじめました。

そして今年の1月に最初の取り組みとして、静岡市のあん動物病院で難治性症例の診療サポートを行い、順調にいい結果がでましたので、ここでご紹介したいと思います。

【症例】

 柴犬 4歳

【経過】 ※かかりつけ動物病院の先生からいたたいだメール内容をご紹介します。
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4歳の柴犬で、1歳くらいから全身の痒みを発症。
当院だけでなく、他院にも受診しており、過去には(当院と他院の治療内容を合わせて)
ステロイド(内服・コルタバンス)
シクロスポリン(半年以上継続)
インタードッグ(EODで半年以上)
ブラベクトによる試験的駆虫
IgE リンパ球検査済

などを経て、今はアポキルを当院で内服しています。
BIDでアポキルを飲むとある程度は効くけど、写真のレベルであり痒みは抑えきれない。
目の周りは、アポキル飲んでからましになった。
ステロイド1mg/kgの方がよく効く。
フードはアレルギーに配慮したフードを2社くらい使ったが、フードを変えて痒みが変わった実感はなし。
どの会社のフードかは、飼い主さんが記憶していない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そのときにいただいた写真を紹介します。

この4枚を送っていただきました。

投薬内容など少し追加の情報をいただいたのが、以下の通りです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ステロイドは、過去1年間で
2016年4月にEODで5㎎(0.6㎎/㎏)16日間(8回)
5月~7月に5㎎錠 頓服として10錠/月 処方
7月後半からはアポキルへ
コルタバンスは、2014年10月に1度処方したのみ
アポキルを飲み始めてから、顔周りの痒みはだいぶましで発毛も良好。
2016年10月くらいは、SIDで大丈夫と言っていたが、現状BIDでもかなりかじっているのか、発毛はみられない
10月末に一度、足裏の炎症がひどくなったため、1週間だけプレドニゾロンに変更。
10㎎3日間と5㎎4日間。
そしたら、痒みがぴたっと止まったとのこと。
現在、アポキルは3.6㎎錠 SID~BID (0.42㎎/㎏)
背中の痒みはなし
耳は先日の診察で左耳がかゆいとのことで来院。
左のみ強い発赤が出ていて、オスルニアを点耳→本日2回目の予定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この時点でほぼ答えはでてゴールまでの治療の道筋はついています。

そして平成29年1月31日、かかりつけの先生の都合と飼主さまの都合を合わせて「1回限りの現地診療」をさせていただき、方向性・処方をお伝えして当院の診療は終了としました。

そこから約5ヵ月半後の7月19日の状態を先生からいただくことができたので、ご紹介します。

状態には非常によくて、過去最高の毛並みに戻ったそうです♪

参考までにアポキルは1日1回でコントロールできているということでした。

冬に1日2回でも痒くて毛並みも悪かったのが、この真夏に1日1回で過去最高のコンディションという変化です。

最初に提案した方向性のまま、ここまでいい結果がでて本当によかったと思います。

今回は飼主さまの通院都合などもあり、若干時間がかかりましたが、スムーズにいけば2ヶ月あればここまで到達できるでしょう。

今の皮膚科の最大の悩みである「アポキルが効かない痒みをどうすればいいか?」のポイントの一つはここにあります。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】 診たことない柴犬が・・・

2017.06.22

柴犬の痒みを伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

先日待合室でまっている柴犬をみて違和感を覚えました・・・

「誰だろう?診たことあったかな?」

この違和感の原因はそのあとの診察で解決できました。

今日はそんな症例報告です。

【症例】

 柴犬 4歳 女の子(避妊手術済)

【経過】

 〇去年の夏からつづく痒みを伴う皮膚病

 〇冬もよくならず、春から脱毛が進む

 〇痒みの部位:頚部、お腹、四肢端

 〇過去の投薬歴:痒み止め

まずは顔の左側から。

続いて、頚部。

同じく、頚部のやや左から。

続いて、右前腕。

続いて、身体の左側。

同じく、左側の胸部拡大。

続いて、身体の右側。

同じく左側、腹部の拡大。

続いて、前胸部。

続いて、腹部。

続いて、内股~後肢。

続いて、左後肢の側面から。

それでは、この初診時から7週間後の状態と比較してみてみましょう。

※画像をクリックすると、拡大してみることができます。

まさに「見違えるように」とはこのことですね。

毛並みはほぼ元に戻りましたし、肝心な痒みも元の10分の1までへりました。

もちろん初診時に「まずよくなる」と思ってアプローチしましたが、たった7週間でここまでよくなるとは思いませんでした(笑)

診たのは初診と再診2回の合計3回でここまでよくなるとは・・・自分でもちょっとびっくりしました。

先週の北海道往診から1週間たっても疲れがとれない僕にはまぶしく見えるこの回復力・・・・これが世に言う「若さ」というものでしょうか(笑)

治療のポイントは特になく、診た瞬間に治療方針は決定です。

初診時から治療方針の変更はありませんでした。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【犬の皮膚科専門外来】アポキルは効く?効かない?

2017.06.19

柴犬の皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。

今日は当院のシャンプーに切り替えたという飼主さまから、「すごくよかった!私の手までしっとりツヤツヤ!人用のも出して!」って喜んでいただけました。

もちろんリップサービスもあってちょっと盛ったお言葉かもしれませんが、素直にうれしいです!

そのわんちゃんの症例報告も時期に行いたいと思います。

さて、今日の症例報告は以前紹介した柴犬の続きです。

 アポキルは効く?効かない? ~薬の使い方~

このわんちゃんにさらに1ヵ月後、つい先日の来院のときの様子です。

【症例】

 柴犬 4才 去勢雄

初診の状態については以前のブログを参考にしていただき、今回は比較のみです。

※写真をクリックすると大きくなります。

一部左右逆の写真での比較ですが、基本左右対称性の皮膚病でしたので、ご容赦ください。

以前よりさらに「フワフワになった!」とおっしゃっていただけました。

痒みも元々の10分の1、アポキルを増やすことなく痒みを抑え、きれいな毛並みになりました。

梅雨・夏を迎えますが、アポキルを1日1回より少なくしていきます。

基本は気温と湿度が高くなるこの時期には痒みがぶり返しやすく、減らすどころではないことが多いのですが、この柴犬のタイプであればアポキル以外の違う目線から診ることでアポキルを減らすことが可能となります。

このようにアポキルは服用すれば同じ結果がでるというわけではなく、症例の病態をよく把握して出すことで大きな差をつけることができます。

柴犬の痒みを伴うアトピーなどの皮膚用治療でお悩みの方は、一度当院を受診してみてください。

近日中に、別の柴犬の驚きの症例をご紹介しようと思います。

※自分でも写真みくらべてびっくりしましたので、ぜひチェックしてください。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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