2018.01.19
柴犬のアトピーやアレルギーなど、痒みと伴う皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
柴犬の痒みトラブルは非常に多いですね。
痒みを抑えることができる「アポキル」が発売されて、一定の症例はこのアポキルによってかなりの改善を認めていると思われます。
しかしアポキルが高い効果を示す症例と、そうでない症例がいますが、その違いはどこにあるのでしょうか?
これはアポキルだけに限ったものではなく、ステロイドや免疫抑制剤などの痒みに関するお薬全般にいえることです。
「服用しているのによくならない」
当院を受診しているわんちゃんのスタートラインはここです。
今日はそんな「痒み止めの効果がでない」という柴犬についてです。
【症例】
柴犬 1歳10カ月 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇生後5か月から続く痒み
〇口・耳・目、わき、お腹、四肢端なめる&かむ、腕をかむ、膝をかむ
〇動物病院からの食事療法を約1年(2種類)継続するも改善なし
〇抗生物質を1年間継続中
〇痒み止めとしてステロイドを1年間(約200日くらい?)服用
〇痒みのコントロールができていない
〇季節性はなく、1年通してずっと痒い
それでは初診時の状態です。
6日前に初診のために当院を受診されたので、治療後の写真はまだありません。
初診時の検査では、ニキビダニ陰性、マラセチアわずかに検出、膿皮症なしでした。
診断は一瞬です。
いや、実は看護師が受けた電話の問診メモをみるだけでわかりました。
※先入観はときに痛い目をみるので本当はよくありません。
あとは当日パッとみて&お話聞いて確信へ、各種検査は似ている疾患を除外するために実施します。
簡単な特徴としては、
〇柴犬
〇若い発症
〇季節性のない痒み
〇痒み止め(一般的にはアポキルとステロイド)が効かない
〇寄生虫(ニキビダニ、疥癬)ではない ※なさそうでも可
この条件であれば「柴犬のあるある」かもしれませんが、シンプルなアトピーであればアポキルなりステロイドが効きますし、季節性もあると思いますのでそのグループには入らないちょっと難しいタイプに分類できます。
おもしろいのは、飼い主さまからの主訴には決して入ってこないあることに関する情報を聞き出すことで、この病気の診断に近づくことができます。
今回も一通り飼主さまのお話を聞いて、簡単な顕微鏡検査をして、改めて飼主さまに質問をしてみました。
「お近くで柴犬のわんちゃん見る機会もあると思いますが、他の柴ちゃんとこの子で何が違うと思いますか?」
飼主さまはこの質問に的確に、かつ僕の期待通りの答えを返してくださいました。
病気の原因はそこだったんですね。
ただ、飼主さまはそれを僕に伝えることはできなかったのです。
認識できていることと、今の病気と関係していると思うことは別で、獣医師に伝える症状には入っていませんでした。
診断には検査だけでなく、飼い主様から必要な情報を聞き出す質問ができることも重要と思います。
参考までにこの子はアトピーの範疇でいいと思います。
問題はなぜこの子のアトピーにステロイドが効かないのか?ですね。
仮にアポキルでも同様ですが、効くはずのものが効かないのは「効かない理由」があるのです。
効かない理由の診断をつけて治療さえすれば、この症例のアトピー部分には他の症例同様にアポキルやステロイドが効くようになります。
この症例に必要なのは痒みを抑える治療ではなく、アトピーにステロイド(同様にアポキルも)が効かないある疾患を治療してアポキルが効くようにすることです。
3か月後にはアポキル(ないしステロイド)を毎日飲まなくても痒みがコントロールできるようになると思います。
次回は今回紹介した症例とまったく同じような柴犬で、「アポキルを服用しているのにまったくよくならない」という症例の改善経過を紹介します。
おもしろいは東京で開催した遠隔診療での症例です。
要するにメールと写真で目途をつけ、実際に診るのは1回だけで診断・治療方針を組み立てるという医療です。
また、当院では動物病院向けにこのような今の皮膚科で不足している大事なことについて、個別で皮膚科セミナーを開催していますので、ご希望の方はHPからお問い合わせください。
投稿者: