2018.09.11
アポキルが適応となるアトピーや脂漏症・マラセチア性皮膚炎など痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚病治療専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
日本でアポキルが発売されて3年目の夏ですね。
飲みやすく、即効性があり、長期的な副作用が非常に少ないということで「痒い皮膚病=アポキル」という方程式が成り立つようになりました。
当院でも「まず無難にアポキル」の選択肢はありだと思っています。
しかし今までのブログで何度も書いてきたように、「どんな痒い皮膚病にもアポキルが効くわけではない」というのはあるため、アポキルは選択肢の一つにしかすぎません。
今日紹介するのは長期間アポキルを服用していたが、別のお薬に変更することによって改善した症例の紹介です。
【症例】
ペキニーズ 7歳 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇発症は通年性だが、梅雨~夏の季節性の悪化も認める
〇全身がべったり、臭いが強い
〇舐める・掻くといった痒み症状
それでは初診時ではなく、当院で1年半治療している状態を紹介します。
治療内容は1カ月に1回の院内薬浴と、アポキル1日1回投与を基本としています。
続いて、お腹とその拡大です。
同じくお腹の陰部周囲の拡大です。
続いて、右後ろ足の膝周囲の拡大と、やや内股の写真です。
続いて、右後足の足首付近です。
この時点まで1年半、内服治療はアポキルでしたがこの時点からアポキル1日1回を中止し、別の投薬治療に変更しました。
それ以外の食事療法、院内薬浴などの条件は一切かえていません。
投薬治療のみを変更して6か月後の状態と比較してみます。
皮膚コンディションの改善が明らかに認められました。
赤み・色素沈着ともに大きな改善が認められます。
また脂漏・臭いについてもかなり改善があり、飼主さまからも「明らかに臭いがへった」と評価していただけました。
さらに投薬治療を切り替えた半年前がちょうど2月の真冬で、6か月後の比較後の写真が8月の最も悪くなる季節であることを考えるとかなりの改善と評価できます。
今回のポイントですが、「痒い皮膚病=アポキル」ではないことを改めて実感することができました。
思い返せばこの症例が初診で来院したときがアポキルの発売時期で、初診から3週目からアポキルを使い始めました。
そのときはほぼすべての皮膚疾患をアポキルがカバーできると思っており、この症例でも同様に効果的だろうと判断していました。
しかしアポキルが発売されて2年を越えて今思うことは、「アポキルは脂漏症には部分的な効果しか示さない」です。
アポキルによって痒み症状は緩和できるとは思いますが、脂漏症にはもっと効果的なお薬があります。
それでもアポキルでもいいのですが、治療の選択肢として把握しておくことは重要だと思います。
今回の治療内容の変更については提携病院にメールで配信予定です。
投稿者:
2018.09.06
シーズーのアトピー・マラセチア性皮膚炎・脂漏症など、痒い皮膚病の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
シーズーの皮膚病は本当に治しにくい場合があります。
あのアポキルでしっかりコントロールできる症例もいますが、そうでない症例も相当数いるかと思います。
今日はそんな「アポキルでは抑えきれないだろう」というシーズーの皮膚病症例です。
【症例】
シーズー 8歳
【経過】
〇3年前から皮膚トラブルで、通年性(季節による改善はほぼなし)
〇外用ステロイドスプレーによる改善なし
〇痒み(四肢なめる・内股舐める)がひどいため、常時エリザベスカラーを装着している
それでは初診時の状態、まずは正面から。
続いて、胸部~わき。
同じく左わきの拡大。
続いて、内股です。
病変部の確認と、治療成績向上を兼ねて毛をカットしました。
続いて、右わき(毛カット後)です。
続いて、内股です。
毛をカットしたあと、そのまま院内薬浴を実施しましたので、その実施直後の状態を紹介します。
まずは胸部。
続いて、左前腕です。
同じく左前腕の内側です。
同じく左前腕の外側です。
続いて、内股です。
続いて、右後足の膝~スネあたりの写真です。
今回はここまでです。
とういうのも、つい昨日来院されたため、2回目の診察はまだ先です。
このタイプ、一見シーズーの典型症例にみえるかもしれませんが、ちょっとイレギュラーです。
そのためシンプルななアポキル&シャンプーでは抑えきれないものがあります。
初診時にどの部位を、どう評価するのか?
そしてどの治療方針を選ぶのか?
この一番大事なポイントは提携動物病院にメールでお知らせします。
この症例は初診時の「診た目」に特徴があるので、「アポキル&シャンプーではない」理由がわかるタイプです。
提携をご希望の方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
投稿者:
2018.09.03
ポメラニアンの脱毛・脂漏などの皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ポメラニアンの脱毛というと毛周期停止(アロペシアX)が有名で、当院を受診されるポメラニアンも脱毛症(毛周期停止・アロペシアX)が多いのですが、その他の皮膚病もないわけではありません。
【症例】
ポメラニアン 1歳8カ月 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇生後4か月のころから身体・四肢を掻く&噛むといった痒み症状を呈する
〇平成29年6月から当院受診5月までアポキル(オクラシチニブ)を毎日服用するも十分な改善はない
〇アポキルを1日2回服用を3カ月続けたが、1日1回と比較して痒みの軽減はない(今は1日1回)
〇過去の服用は、抗生物質として「メトロニダゾール・アモキシシリン・ドキシサイクリン・オフロキサシン・ホスホマイシン・エンロフロキサシン」、ステロイド、抗ヒスタミン剤
〇食事療法はアミノ酸系など2種類(おやつはなし)
〇外用ステロイドでの改善なし
〇季節性はなし
〇傷だらけになってしまうため、エリザベスカラーを常に装着している
それでは初診時の状態です。
まずは正面から。
続いて、右前腕と手先です。
続いて、左前腕とその拡大です。
続いて、胸部・腹部の順番です。
続いて、側面とその拡大です。
続いて、左後肢の側面(膝~カカト)です。
最後に、後ろからです。
それでは初診時から3カ月半の状態と比較してみましょう。
改善点を列挙していきます。
①エリザベスカラーを完全に外すことができました(初診時から2カ月半の時点)
②毛並みがよくなりました
③フケ・皮脂が劇的に減少しました
痒みがないというわけではありません。
かじったりもありますが、何よりエリザベスカラーがないという生活を取り戻すことができたのは大きなことだと思います。
今回のポメラニアンの症例はややイレギュラーな皮膚病で、途中治療初期には嘔吐・下痢・低血糖・高CRP値の問題点もでたりもしましたが、初診時から治療方針の変更はなく、順調に改善したと判断しています。
参考までに今回の3カ月半にアポキル(オクラシチニブ)は1度も使っていません。
使ってはいけないという意味ではなく、アポキルで改善は難しいと判断しています。
今の皮膚科では「掻く」「舐める」「噛む・かじる」といった痒み症状にアポキルという流れが定着しつつあり、いいこともあればそうでないこともあるように思います。
アポキルが効く皮膚病と、効きにくい皮膚病を診極めて処方することができればもっと皮膚病の治療成績は高くなると考えています。
今回の症例で改めて考えたことですが、
①エリザベスカラーを使うメリットはほぼない
やむを得ず装着する場合は、「あとで外せる」と判断できる場合に限り一時的につけてもいいと思っています。
②アポキルは魔法のような万能薬ではない
アポキルが抑えられる痒み症状は全体の一部です。
「痒い=アポキル」ではないので、アポキルを処方するときは「アポキルが効くのか効かないのか」の判断と「もしアポキルが効かなかったら」のプランニングをして処方する必要があると思います。
③病気の原因は1つではない
アトピー、膿皮症、食物アレルギー・・・・など有名な病気はさまざまありますが、病気が複数まざっていることも多いので、治療が1つにならないように組み合わせてアプローチする必要があります。
パズルのピースのように、1枚でも足りない・ズレあると完成しないので、「枠のないパズル」という感覚があってもいいと思います。
うまくいかないときは「足りない」か「ズレがある」です。
参考までに今回の症例でも院内薬浴(スキンケア)とヒーリングケアLFプラスを使っています。
ただ、今回の症例を検査なく、投薬治療もなく改善させるのは99%不可能だと思います。
的確な投薬治療をしながらスキンケア&サプリメントを併用するのが大事です。
一応当院で使っているスキンケア商品・サプリメントの紹介をしますが、適切な医療提供がなければ難しいことも多々あることをご理解ください。
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2018.09.02
犬の細菌性膿皮症治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
この症例集では当院で改善した症例のうち、個人的に印象的だった症例を選んで掲載しています。
もちろん重症度で選ぶこともありますが、治療の内容に「特別な意味」があるものも掲載するようにしています。
今回紹介する症例の重症度は特別なものではないのですが、治療内容に特別な意味があるので紹介することにしています。
【症例】
チワワ 4歳 男の子(去勢済)
【経過】
〇1年前の夏にも湿疹があり、内服・シャンプーで改善
〇今年も8月頭(3週間前)から湿疹が再発
〇かかりつけ動物病院にて抗生物質処方されて服用するも悪化傾向
それでは初診時の状態からですが、長毛で皮膚病変がわかりにくかったため、病変部評価と治療を兼ねて全身のカットさせていただきました。
まずは身体側面とその拡大です。
続いて、腹部です。
続いて、背中です。
重度の皮膚炎、見た目から「膿皮症」の診断ですね。
この初診時と比較するのは2回目の診察時(初診日から9日後)の状態です。
湿疹はほぼ・・・ではなく、完全にゼロになりました。
シャンプーは1回のみ、9日前の初診時に院内薬浴を行っただけで、自宅でのシャンプーはなしと指示しています。
なので1回洗って次の湿疹がゼロという結果です。
膿皮症は犬の皮膚病で最も多く、当院でも数えきれないほどみていますが、このタイプは特別で、当院でも年に1~2回しか遭遇しない特別な膿皮症です。
一般的な膿皮症と同じアプローチでも治らないとまでは言い切れませんが、普通にアプローチすると数カ月かかると思います。
しかし逆転の発想で、ある特殊な条件を満たせばおどろくほどの短期間で劇的によくなります。
飼主さまには過去の治療症例で「同等」と判断できる症例の治療前・治療後をお見せして、今回の特殊な条件の治療に了承を得て行いました。
もちろん副作用が出るようなハイリスクの治療ではなく、むしろ「それで治るの?」という治療内容です。
その条件は3つ、この3つが揃えば普通の膿皮症以上の速さで治ります。
大事なのは初診時にこの条件3つで治療のイメージが描けることだと思います。
※初診時の検査結果は2回目の再診時にお伝えしましたが、治療方針は初診時の予測通りのままです。
当院と診療提携を結んでいる先生にはこのあと治療内容についてお知らせをします。
診療提携については専用フォームからお問い合わせください。
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2018.08.10
犬猫の心因性・精神的・不安などによる皮膚疾患の治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回は以前にも紹介した猫の続きです。
※本当は犬の皮膚病しか受付していないのですが、開業当初にきた患者さんの猫だけは継続してみています。
あらためて初診時の状態です。
続いて、背中と拡大です。
治療から半年以上たっていますが、以前よりさらによくなりました。
ヒーリングケアLFプラスを継続していただいているので、非常に良い状態です。
犬の皮膚病の場合はアトピー&心因性&食物有害反応&ホルモン異常・・・と色々重なるので治療が難しくなったり、ヒーリングケアLFプラス単独での改善効果を実感しにくくなるのですが、猫は心因性単独の場合が多いため「よく効く!」と実感できる症例が多いです。
猫の舐めすぎ脱毛には非常にお勧めで、当院のオンラインショップからご購入できます。
投稿者:
2018.08.10
夏になると悪化しやすいフレンチブルドッグの膿皮症・アトピー・手舐めの治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今年の夏は暑いですね。
ブルドッグ犬種は気温・湿度での悪化がありますので、この時期上手に乗り切りたいところですね。
【症例】
フレンチブルドッグ 1歳5ヶ月 男の子
【経過】
〇半年前から全身の湿疹が消えない
〇顔の痒み、手を舐める
それでは初診時の状態です。
それでは初診時から4週間後の状態と比較してみましょう。
非常に綺麗になりました。
湿疹はなく、顔の皺の皮膚炎もなく、手舐め・足舐めもほぼありません。
体質的には再発しやすいため、こういった症例では再発予防のためにスキンケア&サプリメントが非常に有効です。
身体の湿疹(膿皮症) → スキンケアECプラス
アトピーの体質改善 → スキンケアECプラス
手舐め・足舐めの改善 → ヒーリングケアLFプラス
顔の皺のケア → Medicareローション
全身のスキンケア →Medicareオイル&シャンプー&ジェル
当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
適切な診断・医療とともに併用いただければ非常に効果的と思います。
1点注意があります。
食べているドッグフードが合っていないといつまでたっても治りません。
「よかれ」と思って、「アレルギー検査の結果をみて選んだ食事」に限って皮膚病の原因になっていることが圧倒的に多いので注意が必要です。
診断(アレルギー検査)が合っているのであれば、その食事療法で劇的に改善しているはずです。
治っていないということは、診断(検査結果)そのものに皮膚病との関連がないと考えてもいいと思います。
投稿者:
2018.08.04
シーズーの脂漏症・マラセチア性皮膚炎・ニキビダニ(毛包虫・アカラス)といった皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
シーズーの皮膚病は非常にシンプルですが、負のスパイラルが回りだすと非常に重症化して何をどうすればいいのか優先事項がわからなくなることがあるため難治性になりやすい傾向があります。
シーズーの皮膚病はこれを把握すれば10中8,9うまくいきます。
〇膿皮症
〇マラセチア性皮膚炎
〇脂漏症
〇アトピー
〇食物有害反応
〇心因性掻痒症
〇内分泌疾患
〇毛包虫(アカラス、ニキビダニ)
平均で4~5つありますので、治療成功の秘訣は1つも漏らさず診断して、優先順位を間違わないことです。
当院でのシーズーの皮膚病改善率が100%なのはこの診断と優先順位の診極めだと思います。
【症例】
シーズー 4歳 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇今までずっとアトピーと言われていた
〇食事療法している
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは正面から。
続いて、顔の左側です。
続いて、顔の左側です。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、前胸部です。
続いて、右前肢です。
続いて、左前肢と腕、肢端の拡大です。
続いて、胸部です。
続いて、腹部です。
続いて、右後肢と左後肢です。
続いて、側面とその拡大です。
それでは初診時から6週間後の状態と比較してみましょう。
痒みは皆無に近く、非常に元気になって体調も絶好調になったそうです。
診断は、毛包虫(ニキビダニ、アカラス)、脂漏性マラセチア性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、食物有害反応です。
このタイプに心因性は含まれていません。
こういった症例では治療に順番があり、毛包虫からアプローチして、マラセチアとアトピー対策を次に行います。
食物有害反応に対する食事療法は初回からでもいいと思います。
今回のポイントは、
①初診時に毛包虫(ニキビダニ、アカラス)を確実に見つけること
②併発疾患であるアトピー・脂漏・マラセチアより毛包虫に対しるアプローチを先に行うこと
③初期の毛包虫に対する治療から途中でアトピー・脂漏・マラセチアよりの治療にシフトすること
④初診時ないし2回目に毛のカットと薬浴を行うこと
だと思います。
投薬治療が必須の症例ですが、スキンケア&ECは非常に重要だと思います。
投稿者:
2018.07.21
繰り返す膿皮症の根本的な治療に取り組んでいる皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
皮膚病をみるときに重要なことの1つに「正常と比較する」というのがあります。
正常が分からなければ異常所見を異常と認識できず、アプローチが止まる(診落とす)原因になるため、この「正常を正確に把握する」というのはとても重要です。
しかし教科書に「正常」が明確に記載されていないため、自分を含めて多くの先生は「正常を知らない」で診ているといっても過言ではありません。
では現実として皮膚科の基準はどうなっているかというと、正常の代わりに教科書に掲載されている典型的病変が検査や治療アプローチを始める判断基準になっています。
ただ典型的な異常所見ではなくても「何かおかしい・・・けどどうおかしいかはわからない」と思うことは多々あるはずなんです。
この「何かおかしい」をスルーしてしまえばその先は何もなく終了なのですが、この「何かおかしい」をどうおかしいのか突き詰め、この「何かおかしい」を改善させることができれば医療技術は進化します。
当院では今の皮膚科の隠れた問題の一つ「正常の認識不足」にフォーカスして、「何かおかしい」を徹底的に追及して治療技術を高めています。
今回はそんな「教科書に掲載されていない異常所見にアプローチした症例」です。
【症例】
ボルゾイ 2歳 男の子
【経過】
〇平成29年夏から発症 (初診時の時点で発症から7カ月)
〇体幹部(背中・側面・腹部)の湿疹がよくならず、次から次に新しいのができる
それでは初診時の状態をみてみましょう。
※身体が大きすぎて全体がカメラに入りませんでした。
右胸部側面と、その拡大です。
右腹部側面と、その拡大~内股にかけてです。
続いて、右後足側面です。
続いて、左胸部側面とその拡大です。
同じく右胸部側面を部分的にカットしてみました。
続いて、左腹部側面の拡大(バリカンでカット済)です。
診断名としては赤い湿疹、細菌性の膿皮症で特別な皮膚病ではありません。
それでは初診時から3か月半後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
お腹の赤い湿疹が完全に消失した点以外はわかりにくいかおしれませんが、獣医師であれば注目点がわかると思います。
皮膚の菲薄化や表皮剥離などの皮膚コンディション異常、毛並みの異常がすべて改善できています。
特に飼主さまは「毛並みがとてもよくなった」と大きな変化を実感していただけています。
表面上の診断名である膿皮症は抗生物質とスキンケアでよくなり、その後2カ月間抗生物質を服用せずとも1つも再発していません。
膿皮症を改善するだけなく、膿皮症が起きる(治りにくい)原因を治すことができた症例ともいえます。
今回はボルゾイということで、レアな犬種です。
簡単にいうと「ボルゾイの正常」がわかっていなければいけないところですが、ボルゾイはめったに診れないのでどこからどこまで異常といえるのかが判断しずらいです。
もちろん過去にたくさんのボルゾイをみていたとしても、そのボルゾイが正常とは限りません。
こういった状況で大事なのは経験値、過去の経験だけで異常所見を判断します。
今回は初診時に「教科書に掲載されていない皮膚コンディション異常あり」と判断し、皮膚組織学的検査を行いました。
もちろん病理の検査結果は予測通りで、既存の教科書で分類されたような明確な診断名はつかず、病理学的な検査所見のみとなりました。
が、ここは想定内でした。
この病理学的所見を元に、初診時の想定通りの治療を進めることにしました。
もちろん飼主さまには何がどうおかしくて、どうよくなるのかはあらかじめ伝えています。
そして3か月後、上記のように「想定通りの治療結果」がでました。
今回の皮膚科の説明です。
決して治療前・治療後の変化が大きい派手さはない皮膚病症例でしたが、その内容は医学的に興味深いものだったと思います。
1つめのポイントは、初診時に「膿皮症の治療」だけにとらわれず、隠れた問題点である「なぜ膿皮症になっているのか?」に注目しなければいけないことに気づくことです。
2つ目のポイントは一般的な顕微鏡・血液検査所見に異常がでないことは想定範囲内とし、病理組織学的検査の必要性を判断できることです。
3つ目のポイントは病理組織学的検査結果で、既存の診断枠(教科書レベル)で明確な診断名がでない可能性は想定範囲で、具体的にどんな所見が返ってくるか想定して病理組織学的検査に臨めていることです。
4つ目のポイントは病理学的診断結果で明確な診断名がでなくても「〇〇〇をすれば改善できる」と、事前に推測できていることです。
5つ目のポイントは4つ目に似ていますが、何がどうおかしくて、どう改善するか推測できていることです。
おまけとしては、ボルゾイをよく知らなくても何となく「おそらくこれは正常なボルゾイとはいえないだろうな」と捉えることができることですね。
当院ではこういった「教科書で説明できない」「既存の検査で診断できない」というレベルの皮膚科診療についての、提携している動物病院に向けたシークレットセミナーを開催しています。
ご希望の方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
投稿者:
2018.07.19
トイプードルのアトピー・マラセチア・脂漏性皮膚炎などの痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
トイプードルは遺伝的にアトピーと脂漏がセットで起きやすい傾向があります。
この脂漏に対してどうアプローチするのか、そして脂漏が起きている理由がアレルギーなのかどうか?が治療成功のポイントだと思います。
【症例】
トイプードル 12歳 女の子(避妊手術済)
【経過】
〇5歳まではまったく異常がなかった
〇4年前から痒み
〇お腹をかく&なめる、四肢端をなめるなど
〇全身がベタベタして、シャンプー後もべたつく
それでは初診時の状態です。
まずは頚部とその拡大です。
続いて、腹部とその拡大です。
続いて、背中とその拡大です。
初診時と1週間後に院内薬浴を実施し、初診時から3週間後の状態と比較してみます。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
痒み・皮膚炎・ベタツキ・フケほとんど抑えることができました。
飼主さまからは「劇的によくなった。掻いているのをみたことがない。」という改善です。
こういったタイプの脂漏性マラセチア性皮膚炎の場合によく陥ってしまう落とし穴について解説します。
落とし穴①「こまめにシャンプーするしかない」
たしかにシャンプーすると脂っぽいのは和らぐのですが、それは一瞬だけです。
2~3日で元にもどりますし、シャンプーし続けたらよくなるものでもないため「エンドレス」です。
改善を実感することは難しいと思います。
どうして皮脂が多いのか?に向き合う必要性があります。
落とし穴②アポキルが効かなければ他に方法がない
今の皮膚科の課題の1つだと思いますが、「痒み=アポキル」という依存のようなものがあります。
毎回書いている通りアポキルは非常に使いやすいので「とりあえずアポキル」でも問題はないのですが、アポキルで改善がなければどうするのか?を考えながら処方する必要があります。
もちろんアポキルで改善がないときに、「アポキルが効かないのか?」「アポキル以外のアプローチが足りないから効かないようにみえるのか」の2つを区別できなければいけません。
前者(アポキルが効かない)であればアポキルは不要ですし、後者であればアポキルを使いながら別の治療プランを足していけばいいのです。
この2点の落とし穴に落ちないためには次の視点を持つ必要があります。
視点①なぜ脂っぽくなるのか?
脂漏の原因が簡単にわかれば誰も苦労しないのですが、特異体質でない限りだいたいわかります。
発症年齢などを考えて、アトピーなどの免疫異常を考えます。
ここで「アレルギー」と考えてしまうと迷走の原因になるため、アレルギーという概念に縛られない方がいいです。
もちろん内服治療としてアポキルはありですし、場合によってステロイド系もOKですし、シクロスポリンという手もあります。
視点②アトピー・免疫異常の改善には?
症状を抑えるために①の投薬治療は非常に有効ですが、将来的には投薬治療を減らすための他のアプローチを併用します。
具体的には免疫異常の根本である腸管免疫に注目し、当院が開発したサプリメント「スキンケアECプラス」が非常にいいです。
長期的にみると投薬治療が随分とへります。
当院で治療している脂漏症のほとんどが1年単位で皮脂がでにくく、投薬治療がへるという結果につながっています。
症状を緩和させる投薬治療も有効ですが、体質改善のためのサプリメントも同時進行で併用していくことが改善の実感には重要だと思います。
今回紹介したわんちゃんのケアには適切な診断治療と、当院で開発したスキンケア&サプリメントが非常に有効です。
投稿者:
2018.07.07
アトピー・脂漏・膿皮症などになりやすいパグの皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
【症例】
パグ 2歳 女の子
【経過】
〇1年前から顔、頭、背中から腰に湿疹
〇最近はお腹にも湿疹拡大
〇赤いブツブツ・湿疹が消えたことは1度もない
それでは初診時の状態をみてみましょう。
まずは正面から。
続いて、頭部(上から)です。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、前胸部です。
続いて、胸部と脇の拡大です。
続いて、胸~内股まです。
続いて、身体の側面(やや後方から)です。
毛並みが薄く、小さな円形脱毛が無数にあるためムラになっているのが特徴です。
続いて背中とその拡大です。
同じく小さな円形脱毛が複数あるのがわかると思います。
最後に後ろからです。
それでは初診時からわずか4週間後の状態と比較してみましょう。
赤い湿疹・ブツブツが完全に消えただけでなく、毛並みもよくなり黒光りするような回復です。
犬の皮膚病で最も多い細菌性膿皮症ですが、アプローチには3つのポイントがあります。
①膿皮症の原因は?
②どうやって治す?
③再発を防ぐには?
簡単なようで、ものすごく難しいです。
②は抗生物質とシャンプーと比較的簡単ですが、①と③の答えにたどり着くのはそう簡単ではありません。
人でいうと、「なぜ風邪をひいたのか?なぜ花粉症になるのか?」であり、「2度と風邪をひかないためには?」というテーマに近いものを感じます。
ただ年齢、経過、犬種、診た目からある程度の予測はできますので適切なアプローチは可能です。
その一つが当院のスキンケアECプラスです。
繰り返す膿皮症の再発防止のために開発したサプリメントです。
当院のオンラインショップからお買い求めいただけます。
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