症例別

【柴犬の皮膚科専門外来】外科手術を要する治療方針

2014.02.18

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

柴犬の皮膚病と一言にいっても、その診断名・治療方針はさまざまです。

今回は皮膚科疾患の中ではそう多くありませんが、外科手術を行い改善させた症例を紹介します。

【症例】

 柴犬 9歳 男の子

【病歴】

 〇1歳未満から発症、顔周囲から全身へ拡大
 〇夏が最も悪くなり、冬には改善していた
 〇当院受診前の冬は改善なく、悪い状態のまま
 〇過去に4つの動物病院を受診したが、改善なく当院受診

初診時の状態を見てみましょう。

まずは全体、常にエリザベスカラーを装着していました。

続いて、顔の正面、左右からです。

続いて、背側全体と頚部、胸背部、腰背部の拡大です。

続いて、右からの側面です。

続いて、胸部全体と左脇の拡大です。

続いて、右前肢外側から。

最後に右後肢外側から。

それでは約3ヶ月後の状態と比較してみましょう。


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非常に長期に渡り重度の皮膚病があったことと、この疾患特有の毛根への強いダメージがあったため、一部(目・肢端)に再生が不十分なところもありますが、エリザベスカラーも完全にはずすことができ、90%以上の部位で柴犬らしい綺麗な毛並みが再生しています。

一見、柴犬に多く認められる典型的な犬アトピー性皮膚炎の重症化のようにみえます。ただ純粋な犬アトピー性皮膚炎だけではこのような状態にはなりにくいため、何か別の基礎疾患があると考えました。

実際にこの基礎疾患に外科的アプローチをしたのは初診時から6週間後ですが、そこから格段に治療成績が向上していったことを考慮するとやはり外科手術がターニングポイントになったと思われます。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【柴犬の皮膚科専門外来】柴を診極める

2014.02.16

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

3年ほど前から『皮膚を丁寧に診る』だけではなく『犬種別に診る』皮膚科診療を意識するようになりました。

まずその犬種の体質をよく知ること、個人的に最重要犬種として挙げたのがシーズー・フレンチブルドッグ、そして柴犬です。

シーズーは当院のメディカルスキンケアで3~4年前からほぼ治療法を確立することができ、フレンチブルドッグもその延長のスキンケアで多くを改善できるようになりました。

そして最後に、何か掴みかけた感触程度ですがこの1年で柴犬を診れるようになった気がしています。

そこで柴犬の皮膚病をまとめようと連続で症例報告を作成しています。

【症例】

 柴犬 10歳 男の子

【病歴】

 〇約5年前から強い痒みを伴う皮膚病
 〇1件目動物病院はステロイドを使わない方針で当初インターフェロン、食事療法、免疫抑制剤(2年間)、抗真菌剤を使用するが改善せず、最終的にステロイドを試すも内服をやめるとすぐに強い痒みが再発する
 〇2件目動物病院ではアレルギー検査とホルモン検査を受け、ステロイドと精神安定を期待したサプリメント
   時に抗生物質、抗ヒスタミン剤、甲状腺ホルモン剤、外用薬なども使用するが改善なし
 〇最終的にエリザベスカラーを常時装着しなければいけない状態まで悪化

初診時の状態をみてみましょう。

まずは顔の左側から。

続いて、下顎~頚部。

続いて、身体の右側から。

胸部、右側から。

続いて、右前肢の肩~上腕。

同じく右前肢の手根~肢端。

続いて、頚部~前胸部。

続いて、腹部全体。

それでは3カ月半後の状態と比較してみましょう。


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短期間で非常に綺麗に改善することができました。

エリザベスカラーも外し、わんちゃんらしい日常生活を送ることもできるようになりました。

強い痒みから解放されたのか、思い返せばイライラしていたのもなくなり、穏やかになったと喜んでいただけました。

さて、過去の治療と何が違うのか?

診断名、治療内容については来院された方にのみお話していますので、ここでは詳しく解説できませんが、皮膚病で困っている柴犬の飼主さまは気になると思いますので、それぞれのお薬について少し説明をしておきたいと思います。

①インターフェロン
 これは犬アトピー性皮膚炎の治療の選択肢ですので、アトピーと診断して使用したのだと思います。アトピー治療としての改善率も極端に高いわけではないのでインターフェロン単独での治療は中々難しいのが現状です。そのためインターフェロンで改善がないからインターフェロンが効かなかったと判定することはできず、治療の優先順位を間違えたがゆえに効果あるべきものも効果を示せなかったということも考えられます。決して効果を期待できないないわけではないので、個人的には多剤との併用などは十分に生かせるのではないかと考えています。

②免疫抑制剤
 動物用免疫抑制剤は同じく犬アトピー性皮膚炎に非常に効果があり、症状の改善に役に立つと思います。ネックは非常に高額な医療費がかかることでしょうか。このお薬を2年間毎日服用させ続けた飼主さまの努力にはまさに血のにじむ想いだったと思われます。

③抗ヒスタミン剤
 同じく犬アトピー性皮膚炎に使用します。単独での使用では痒みを抑える作用が弱いため、個人的には予防的な抗アレルギー剤と考え、ステロイドやインターフェロンとよく併用するようにしています。

④抗生物質
 皮膚炎の原因に細菌が関与していることが多いため、皮膚科診療では非常に重要で、当院でもよく使用します。

⑤甲状腺ホルモン剤
 甲状腺機能低下症が皮膚機能低下を引き起こし、難治性皮膚疾患の原因となるため甲状腺機能低下症の症例には生涯投与が必要になります。当院でもよく診断する疾患の一つです。

⑥抗真菌剤
 マラセチア性皮膚炎や糸状菌が関与した真菌性皮膚疾患に使用します。当院でもよく使用する薬剤の一つです。

⑦サプリメント
 今回は抗不安効果のあるサプリメントですが、当院でも心因性の痒みに対してよく使用します。

⑧ステロイド
 ステロイドは極力使わない、脱ステロイドという言葉がありますが、個人的にはステロイドは「使うべき」か「使ってはいけない」のどちらかで極力使わないや脱ステロイドという考え方ではステロイドを必要とする皮膚疾患を治すことは難しいと考えています。

⑨食事療法
 これも非常に重要ですね。当院でも食事療法だけで治るとはいいませんが、治療成績が向上するのでおすすめしています。

皮膚科診療で登場する大半の治療法が登場したと思います。

おそらく2件の動物病院では柴犬に多いアレルギー性皮膚炎(特に犬アトピー性皮膚炎)を疑って治療したと思われます。

参考までに当院で使用した薬は最大で4種類、改善を確認しながら少しずつ減らしていきました。

この治療の選択の違い「診極める」で、病態を的確に把握し、適切な診断名と治療法を選択すれば極めて稀な疾患を除き、特別な魔法の薬などなく治すことができると考えています。

最も陥り易いミスは「豊かな経験に基づいた先入観」です。

確かに豊かな経験は診療における重要な武器の一つですが、先入観は紙一重で引き返せない迷走に入ることすらあります。

僕もどうしても一瞬の診た目である程度絞り込んでしまいます。

診極めの中に豊かな経験は非常に重要だと思いますが、同時に先入観を捨て常に「もう一人の獣医師」を自分の中に作り出し、自分を疑うことを忘れないことも重要かと思います。

四季の森どうぶつクリニック
獣医師  平川将人

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

【愛知県の柴犬の皮膚科専門外来】脱エリザベスカラー

2014.02.14

こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。

難治性になりやすい柴犬の皮膚病治療についてまとめるために、しばらく柴犬だけで複数の治療症例を紹介していきます。

【症例】

 柴犬 9歳 男の子

【病歴】

 〇3歳から顔の痒み&脱毛
 〇抗生物質と痒み止めで一時的に改善するものの、やめるとすぐに痒がってしまう
 〇治療と再発の繰り返しで、「内服が身体によくない」という理由で休薬し、年々悪化
 〇痒みが強く、傷をつくってしまうため5年間エリザベスカラーを常に装着している

初診時の状態です。

続いて、顔の正面、顔の右側を順にみていきます。

続いて、右前肢の狼爪周囲です。

それでは治療2カ月後の状態と比較してみましょう。


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5年間装着しつづけたエリザベスカラーは1月半ではずすことができました。

初診時から1年半ほど経過しましたが、それ以降エリザベスカラーをつけなければいけないと感じるほどの再発は1度もありません。

このタイプも完治ではありませんが、治療の継続により「痒みをコントロールする」という当初の目標を高いレベルで維持できています。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

トイ・プードルの皮膚病②

2013.08.25

前回紹介したのトイ・プードルの皮膚病①の続きです。

このような症例で必要なことは、全身の皮膚病変をしっかりと把握することとスキンケアをメインとした治療をすることであるため、被毛のカットを行います。

もちろん絶対条件ではありませんが、最も早く治療結果を出すためにも行うべきと考えています。

それでは初回のスキンケアで全身をカットした状態を診てみましょう。

               

続いて、肩付近の拡大です。

               

続いて、右後肢。

           

同じく右後肢の拡大像です。

           

続いて、背中を上からみた状態です。

               

同じく背中の拡大像です。

             

続いて、右前肢とその拡大像です。

          

同じく右前肢を内側からみたところです。

             

最後に、右後肢の外側面です。

              

左右対称性のため、反対側からの写真は掲載していません。

こういった症例で必要なことは、初診時に「検査⇒診断⇒治療⇒改善」までの道筋を描くことです。

次回、治療後の状態をお示しします。

 

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

トイ・プードルの皮膚病 スキンケア

2013.08.19

1年以上ぶりの症例報告となりました。

改めて、四季の森どうぶつクリニックのHPとして当院の症例報告を行っていきたいと思います。

よろしくお願いします。

今回は、少し珍しいタイプの皮膚病です。

珍しいのは皮膚病の好発犬種ではないトイプードルであることです。

もちろんトイプードルで皮膚病がないわけではないのですが、難治性になりにくいため滅多に困るような皮膚病にはなりません。

それでは初診時の状態を見てみましょう。

             

非常に強い痒みのため、自傷(自ら身体を傷つける)と出血防止のため、エリザベスカラーを常時つけていました。

          

しかも2つ、わんこもそうですが飼主さまもつらい状態ですね。

次に、両眼。

脱毛と大きなフケが認められます。

続いて、右耳。

           

続いて、左耳。

           

続いて、右前肢とその拡大。

     

続いて、左側面全体。

          

続いて、左後肢とその拡大。

続いて、右側面全体と右後肢の拡大。

トイプードルでこのような悪化をしめすタイプはそう多くありません。

初診時では必要な検査、予測できる治療の流れをお伝えしました。

もちろん最も重要なのはスキンケアです。

目標はエリザベスカラーを外した普通のわんちゃんらしい普通の生活をすることです。

1回目のスキンケアの様子は次回お伝えします。

四季の森どうぶつクリニック

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

犬の皮膚病 シーズーの脂漏性皮膚炎

2011.07.21

シーズーに多く認められる脂漏性皮膚炎についての第4回です。

   第1回 シーズーの皮膚病①

   第2回 シーズーの皮膚病②

   第3回 シーズーの皮膚病③

【症例】 

    シーズー   男の子

【症状】

    四肢端、頚部、尾、顔、四肢など、ほぼ全身の脱毛および痒み


【治療経過】

治療前

治療後(5カ月後と約1年後の両方を使用しています)

過去の数々の動物病院でさまざまな治療を受けられ、エリザベスカラーを外すことができない状態でしたが、現在はエリザベスカラーもなく、傷になるような痒みもなくいい状態を維持できています。

完治ではないため、継続した治療を行っていますが、メインとなる治療はスキンケアです。抗生物質や抗真菌剤の投与はほとんどありません。またスキンケアも「殺菌系薬用シャンプー」ではなく、皮膚バリア機能回復のスキンケアを行っています。

「皮膚機能を治す」という意味で、本当の皮膚治療につながった1例と思います。


投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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