院長平川の天真爛漫ブログ

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時代が生んだすれ違いのインフォームド・コンセント

2016.10.03

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

今日は治療成績ではない、診療のスタンスについて書いてみます。

僕の診療にはいつも規則性があり、最初の10分くらいは飼い主さまから色々お話を聞きますが、途中からほとんど僕が話し続ける時間帯を作ります。

今日も一通り皮膚を診て簡単な顕微鏡検査をして、20~30分くらいかけて「診立て」、「検査について」、「予測される治療内容」について説明し、僕がある言葉を添えて、お話する順番を飼い主さまにお返ししました。

すると、こんな言葉が返ってきました。

「今までこのように具体的な(検査・治療)プランを提案してもらったことがなかった。言われたのは『検査しますか?』、『(薬を)使ってみますか?』くらいで、どうしていいかわからなかった。」

ほんと、そうだと思います。

ほとんどの飼主さまが難治性疾患の診療になったときに思うことだと思います。

魔法の薬なんてないこの医療で、高い治療成績を導くポイントの一つはここだと思っています。

今日はそんなお話です。

タイトルでも書いた「インフォームド・コンセント」という言葉をご存知ですか?

今の医療現場では特別新しい言葉でもなく、誰もが知っている言葉なのですが、端的に訳すると

「十分に知らされた上での同意」

という意味で、医療的には、

医師が医療内容を詳しく説明し、患者は納得した上で治療を進めることが重要・・・ということです。

具体的には、「なぜこの検査をするのか」、「この検査で何がわかるのか」、「結果から何が読み取れ得るのか」、「治療のメリット・デメリット」、、「長期的な見解」、を説明しながら、最終的にはどんな治療を受けるのかは患者が選んで決めるという内容です。

当たり前のようですが、この言葉が生まれたには理由があり、はるか以前は「お医者様におまかせ」という雰囲気は否めなかったのだと思います。

今の時代は違いますよね。

患者さん側に医療を選択する権利があることがある程度浸透しているため、そんな一方的なシーンはあまりないのではないかと思っています。

ですが、このインフォームド・コンセントは患者さんのためになっているのか?というと・・・個人的には疑問をもっています。

理由ですか?

それは簡単です。

 ・高度で専門的な医学を、限られた時間内で説明・理解するのは不可能

 ・人は選択肢が多すぎると決めることができない

 ・デメリット(副作用など)が強調されすぎると躊躇する

そして選択肢を出して選んでもらうということは「最終的な判断は患者側、責任も患者にあり」という側面もあります。

当然そうあるべきですし、間違っていないし、インフォームドコンセントが不必要なんて思いませんが、今のインフォームド・コンセントに問題があることは否めないと思います。

問題がなければ上のような患者さまの言葉は生まれません。

もちろんそれらの問題を含めて「インフォームド・コンセントでクリアにしましょう」なのですが、限界があります。

知識も経験もない、まったく知らない世界のことを説明されて、複数の選択肢から本当の意味で適切な判断ができる人はそういないと思います。

もしそれができれば全員が医師になれるし、それこそインターネット上ででそこそこ適切な医療が成り立つことになります。

専門性の高いサービス、特に医療サービスはそうじゃないですよね?医療はそんなに甘くない。

時代がつくったインフォームド・コンセントですが、僕はこの教科書的なものがあまり好きになれません。

足りないのは「僕だったらこう考えて、こうする」というお勧めプランではないでしょうか?

僕が創りあげた世界観を提供する、これが最高のサービスだと考えています。

これは医療だけではなく、どんなジャンルでもそうだと思います。

身近なところでは料理、同じことがいえるのではないでしょうか?

職人さんがいるお店にいって「ああして、こうして」とかはもったいないですよね?

その職人さんが行き着いた世界観を味わった方がきっと感動が得られると思います。

知らない世界をみさせてくれることに価値がある、僕はそう考えています。

十分な説明と選択肢を提案に加えて、納得した上でお勧めの選択肢を選んでもらうのもインフォーム・ドコンセントの一つではないでしょうか?

そのため僕は初診時に多くの言葉を使って情報を伝え、選択肢も出し、希望を聞き・・・・・・ですが、最後にこう言葉を添えて締めくくるようにしています。

「おまかせでよろしいですか?」

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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