2018.02.17
犬のアトピー・アレルギーなどの痒い皮膚病治療に力をいれている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
アポキルが発売されて1年半が立ちました。
アポキルによる痒みの緩和作用と長期服用に対する安全性を考慮すると、「アポキルが皮膚科診療を変えた」と言って過言ではないと思います。
ただ高い効果と安全性がゆえに「とりあえずアポキル」という状態がつくられ、「アポキルが効かなければしょうがない」となっているシーンが多いのも否めません。
実際に当院に転院してくるわんちゃんでもすでにアポキルを服用している割合が高く、大半の初診が「アポキルを服用しているのに痒い。アポキル以外ないといわれている。」という状態で診療をスタートています。
ではアポキルが効かないときにどう診察を進めていくのか?が皮膚科の仕事ですね。
少し厳しい表現にはなるかもしれませんが、皮膚科に限らずどんな病気治療であっても治療がうまくいかないときに考えるのは、
「診断が間違っている」
だと思います。
ただ皮膚病に関しては原因が複数あることが多いため、個人的には「診断のズレ、診断不足」と考えることが多いです。
例えば、アトピー&心因性&食物有害反応という3つの組み合わせをもっている皮膚病のわんちゃんがいるとします。
アポキルはアトピーの部分にはよく効きますが、心因性や食物有害反応にはあまり効果的とはいえません。
そのため、もしアトピーによる痒みが90%で心因性と食物有害反応による皮膚炎が10%であれば、アポキル単独で十分に改善が見込めると思います。
逆にアトピーが20%で、心因性70%、食物有害反応10%という症例に対してアポキル単独でアプローチすると、「たしかに少しよくなったけど・・・十分ではない」という結果になると思います。
この心因性の割合が高いわんちゃんに「アトピー性皮膚炎がありますので、アポキルを使いましょう」と診断することは間違いではありません。
この場合は診断&治療のピースが足りないだけで、的確な診断&治療を足すことで十分に改善します。
決して「アポキルが効かない」ではなく、効く部分(アトピー)には確実に効いていて、痒みの原因が異なる部分には別の診断&治療が必要ということです。
参考までに当院の診断で多いのは、
・犬アトピー性皮膚炎
・膿皮症
・食物有害反応
・心因性掻痒症
・脂漏性マラセチア性皮膚炎
この5つです。
他に、上記の5つほど多くないが、絶対に見落とせないのが、
・内分泌疾患
・寄生虫疾患
この2点です。
以外かもしれませんが、症例が稀のため初診でまず考えないのが
・食物アレルギー
です。
初診時にはこの8つの疾患であてはまるものをピックアップし、それぞれの影響の割合を評価しながら治療プランをたてるいい結果が得られます。
難しいのは明確な診断基準がなく、客観的評価ができない食物有害反応と心因性、意外と見落とされている内分泌疾患です。
食物アレルギーも診断が難しいのですが、食物アレルギーで皮膚病治療に困るわんちゃんがほとんどいないという理由もあり、個人的には「ない(はず)」として無視しています。
アトピーにはアポキルが非常に効果的ですし、膿皮症や脂漏&マラセチアの診断&治療が簡単とまではいきませんが、
治療成績を向上させるポイントは、
①心因性の診断&治療
②食物有害反応の診断&治療
③内分泌疾患の診断&治療
の精度だと考えています。
この3つのポイントを初診で的確に評価できれば、初診の判断通りの治療成績がだせるようになります。
ただ、これら3つの病気は一般的な検査で診断できないため、昔も今もきっとこれからも、フォーカスがあたることはなさそうです。
当院が開催している皮膚科セミナーでは、①の心因性、②の食物有害反応、③の内分泌疾患など今の皮膚科で触れられていないポイントにもフォーカスをあてています。
皮膚科セミナーと診療提携をご希望の方はHPからお問い合わせください。
投稿者:四季の森どうぶつクリニック