2015.02.24
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
つい先日まで1ヶ月以上放置していたブログですが、今日2回目の更新です♪
今回は再発しやすい皮膚病の中でも最も多い、細菌性の湿疹「膿皮症」についてです。
治療すれば改善するけど、治療をやめると再発する皮膚病・・・悩んでいる方は非常に多いと思います(僕もずっと悩んでいました)。
シンプルな治療方針としては「適切な抗生物質を服用し、適切なシャンプー療法を実施する」ですが、これだけで治るのではあれば誰も困りません。
もちろん耐性菌への対策としての感受性試験だけでなく、アレルギーやホルモン疾患などの基礎疾患が存在することがあるため、
・犬アトピー性皮膚炎の管理
・食事療法
・甲状腺機能低下症などの内分泌疾患の評価および治療
なども重要です。
ですが、できうる客観的な検査法を実施してもこれらの明確な診断名に当てはまらない「皮膚病になりやすい、再発しやすい体質」ということもあります。
それが「体質だから・・・」となるのですが、明確な診断名がなければ改善方法がないわけではありません。
今回はアトピーもない、食事療法も実施して、内分泌疾患もない、シャンプーもしっかりしている・・・・・にも関わらず湿疹が再発する症例についてです。
【症例】
犬 フレンチ・ブルドッグ
【病歴】
〇痒み(顔・耳・四肢端・体幹)を伴う皮膚病
〇ステロイドを服用することで痒みを止めていた
〇ステロイドをやめると身体を傷つけるほど掻いてしまう
【初診時の状態】
上の写真は、ステロイドの副作用で被毛が少なくなっています。
上の写真の円形のフケが細菌感染を起こしている湿疹です。
このタイプにステロイドの使用は治療が難しくなるため、個人的には使用せずに治療を行います。
治療後は、
ステロイドを中止し、適切な抗生物質とシャンプー療法、食事療法で湿疹をコントロールすれば被毛もきれいに再生してきます。
ただし、今回の症例はここではおわりません。
抗生物質の服用を中止すると・・・
湿疹が再発します。
再び抗生物質を服用することで、
綺麗に改善します。
しかし、抗生物質の服用を中止すると1ヶ月たたないうちに必ず再発するのです。
湿疹ができる ⇒ 抗生物質を服用(1~1.5ヶ月) ⇒ 湿疹消失 ⇒ 抗生物質終了
⇒ 1ヶ月ただずに湿疹再発 ⇒ 抗生物質再開(1~1.5ヶ月) ⇒ 湿疹消失 ⇒ 抗生物質終了
⇒ 1ヶ月たたずに湿疹再発 ⇒ 抗生物質再開・・・・・・・・・・
最も皮膚病になりにくい冬に湿疹が少ない(ゼロではない)時期があったため、抗生物質の再投与を先送りして耐えた時期もありますが、身体に湿疹がない状態をみることはほぼできませんでした。
お恥ずかしい話ですが、今回の症例ではこの状態で1年半以上経過しました。
おそらく日数として半分を超える期間で抗生物質を服用していたと思います。
そして昨年の閃き、ここから治療方針が大きくかわりました。
あの治療症例からさらに工夫を重ね、2年目が終わろうとする今回の症例でも治療チャレンジすることに!
すると・・・
抗生物質を服用していないにもかかわらず湿疹がない!!
去年の時点はまだドキドキしていましたが、もう今年に入ってからは確信があったので、今回の症例に対しては「絶対にうまくいく!」と自信がありました。
幸い今は最も湿疹ができにくい冬という条件もあるかもしれませんが(それでも去年の冬は湿疹あり)、もう今までのように抗生物質に頼るようなことはないと思います。
昨年「この冬のうちに磨き上げてみなさまの元へお届けできるようにします」とお話しましたが、そろそろ実現しそうです。
あとほんのわずかな微調整、今治療チャレンジしている柴犬でいい結果がでれば最終決定にしたいと思っています。
ここからは少しマニアックな話になりますが・・・
そもそも細菌が原因となっておきる湿疹『膿皮症』の細菌ですが、元々皮膚の表面にいる常在菌(みんなの皮膚の上にいる菌)です。
他のわんちゃんからもらった菌が原因ではありませんし、どこからか拾ってきたものでもありませんし、皮膚病が治ったあとにも皮膚に残っていますし、皮膚病になったことがないわんちゃんの皮膚にもいます。
※まれにそうでない菌の皮膚病もありますが、非常に少ないです。
そしてこの皮膚病の現在の主流の治療が「菌を抑えるために、抗菌剤を服用する。」「菌を抑えるため殺菌剤の外用を塗布する。」となっているのですが、何か違和感を感じませんか?
そう、「なぜ菌が増えたのか?」についての対策が抜けているのです。
菌を抑える抗生物質も菌を抑える殺菌外用薬も「皮膚で菌が増えた原因」を治療しているわけではありません。
僕も過去、現在、そしてこれからの未来もこの抗菌剤と殺菌外用薬を使用し続けるため、間違った治療アプローチとは考えていませんが、「殺菌」という治療だけでは本当の意味で治療とはいえない・・・・・ずっとそう考えていました。
でも「なぜ増えたのか?」がわからず何年も経ちました。
去年から紹介しているこの閃きのアプローチですが、
〇抗菌剤のように皮膚に到達して菌を抑える効果はありません。
〇殺菌外用薬のように皮膚に直接塗布するものでもありません。
皮膚にはまったく届かないところからアプローチしています。
「なぜ増えたのか?」を説明する明確な答えが1つだけではないとは思いますが、治療結果をみると今まで足りなかったピースの1
つであると思います。
遠くて診察が受けられない飼主さまにお届けできるようにしますので、準備が出来次第このブログ、そしてホームページでご案内します。
予定は3月末か、4月中です。
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