2017.01.26
難治性皮膚疾患を中心に犬の皮膚病治療のみを行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
今回はちょっと変わった皮膚病の治療症例です。
「ちょっと変わった」というのは稀な皮膚病という意味ではありません。
当院で紹介している症例の多くは慢性化によって重症化していることが多く、診断名にかかわらず同じような見た目の雰囲気になっていることも否めないのですが、今回は比較的早期に来院されたため、部分的な病変しかでておらず、「一見軽い皮膚病、でも判定しにくい皮膚病」という症例です。
【症例】
ウェスティ 8歳2ヵ月 女の子(避妊済み)
【症歴】
〇肉球が白くなってきた(すべての肢)
〇鼻の上に大量のフケが付着するようになった
〇耳にもフケの付着が目立つ
〇背中など数箇所に円形のフケの付着を認める
〇かかりつけ動物病院での治療に反応せず
それでは初診時の状態をみてみましょう。
一見わかりにくいですが、よくみてください。
まずは全体像。
続いて、鼻の上です。
同じく鼻の上の拡大です。
続いて、右耳の内側です。
病変は耳のふちに付着したかさぶたのようなフケです。
フケが付着している部位の拡大です。
続いて、肉球です。
この初診時から6週間後の状態と比較してみましょう。
※画像をクリックすると大きくすることができます。
非常に綺麗になりました。
今回は診た瞬間に「おっ・・・・・そうきたか・・・・」と思うようなタイプで、初診時のプランニングをどうするか少し考えました。
鼻の上の大量のフケ、耳たぶの辺縁に付着してるフケ、肉球がすべて白く&堅くなる・・・・・・重症ではないのですが1つ1つが特徴的なタイプです。
教科書的にはステロイドや免疫抑制剤を必要とする免疫系を疑うため、確定診断には皮膚組織検査(皮膚組織をとって、検査センターへ送る)を必要とする雰囲気なのですが、耳・鼻の上、肉球にしか病変がないため、あえて初診時の検査を見送ってみました。
明確な診断名をつける必要性については色々な価値観もあるかと思うのですが、個人的には「リスクのある積極的治療を長期間要するか?」を重要視しています。
副作用がでるかも?・・・と心配な治療のためには最初の時点でその診断名をつけておきたいところですが、副作用がほとんどない簡単な対症療法で改善が見込めるようであれば「とりあえず治療」という選択肢はあると考えています。
今回は結果論ですが、非常に軽い治療でスムーズな改善を導くことができたと思います。
今回の症例でのポイントは、よくある感染症ではなく、免疫性皮膚疾患にもかかわらず、「確定診断がなくても使いやすい、安全性の高い処方のみでよくなった」というところに尽きると思います。
体質にあったお薬を組み合わせると、短期間でもこれだけの治療成績がでるということですね。
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