2018.07.30
チワワの痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
当院では「初診時の診極め」として診た瞬間の判断を最優先に治療しています。
基本的には初診時の想定範囲内で治療結果がでるのですが、まれに後から方向性の変更や追加をしなければいけない時もあります。
今回は当院では非常にめずらしいのですが、治療の途中で「初診時に組み立てた治療方針に1つ加える必要があった症例」です。
【症例】
チワワ 1歳10カ月(初診時) 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇生後半年くらいからフケをみとめ、近医にて脂漏症と言われる
〇1カ月前から痒み(&傷)にて他院にて治療開始
〇傷防止のためエリザベスカラーが外せていない
〇痒みは「喉」を1日中かく
〇耳の外の毛がベタベタ
〇身体のフケ
初診時の状態からみてみましょう。
声を出して掻く&傷だらけになるという理由でエリザベスカラーをつけています。
続いて耳(右耳を後方から)です。
続いいて頚部、軽度にみえて強い痒みで傷になりやすい部位です。
続いて、胸です。
それでは初診時から約10か月後の状態と比較してみましょう。
「劇的」という比較ではないのですが、痒みの緩和ができ、エリザベスカラーを外すこともできるようになっています。
掻くことは掻くのですが、以前は掻き壊して傷になっていたレベルが緩和でき、今はもう傷になるような痒みはありません。
今回は初診時に「心因性」と判断してアポキル&心因性のダブル治療で臨んだのですが、前半で3カ月で明確な改善が認めらませんでした。
初診時から3カ月の時点である病変を目にすることができたので、治療方針を1つ加えることにしました。
この1つ加えた治療から徐々に改善しています。
3カ月目にみつけた病変はかすかなもので、初診時での判定は正直難しいものでしたが、それでも初診時に想定内にすることが難しいというわけではなかったため今後の反省材料にしたいと思います。
わかりやすい「心因性」というものだけに目を奪われて、全体を診ることに注意不足があったかもしれません。
今回の症例の簡単な解説です。
参考までに今回の症例でも初診時からアポキルを使用しましたが、アポキルによる痒みの改善は非常に乏しいものでした。
もちろん心因性という診断をしたためアポキルが効かないのはある程度想定範囲内でした。
ただ心因性のアプローチに反応がなかったのは初診時の想定外でしたので、今回の症例のポイントは「アポキルも効かない、心因性治療にも反応がない」という3カ月の時点でどう対応するかだっただと思います。
ここでのプランニングは大きく分けて2つです。
①心因性ではないのかもしれない
②心因性以外に何かかくれているかもしれない
僕の判断は②です。
心因性と「もう1つ」が見過ごされていたがゆえに心因性の治療結果がでなかっただけです。
今回の症例では心因性に加えて途中に気づいた追加疾患の計2点の治療を加えることで改善ができたいう症例です。
今回は非常に難しい症例で、個人的にも非常にいい経験になりました。
長くかかりましたが、当初の目標を達成することができて本当によかったです。
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