2014.02.07
こんにんちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
今日は、「よく診る柴犬の皮膚病」に見えて、実は非常に高いテクニックが必要とされた症例を紹介します。
キーワードは「アグレッシブに美しく」です♪
【症例】
柴犬 6歳 男の子
【過去の病歴】
〇2歳から痒みを伴う皮膚病で通院
〇1件目の動物病院では「アトピー」として抗生物質、ステロイド、免疫抑制剤、インターフェロン注射・・・も改善せず
〇2件目の動物病院では抗生物質、ステロイド、院内薬浴、食事療法を継続するも改善せず
〇症状は全身の痒み、特に顔(目・口唇・頬)、お腹を舐める、胸の側面を後肢で掻く、四肢端(指間と足裏)を舐める
それでは初診時の状態からみてみましょう。
まずは顔からです。
続いて、上腕部分を正面からみてみましょう。
同じく右前肢上腕の拡大です。
続いて、右側面から胸部と腹部の拡大と合わせてみてみましょう。
同じ右側面からの胸部です。
同じく右側面からの腹部です。
続いて、左胸部側面からです。
最後に腹部、そしてその局所の拡大です。
それでは上記の初診時から約3カ月半後の状態を比較してみましょう。
※すべて画像をクリックすると拡大することができます。
現在さらに半年経過しましたが、「ほとんど痒がらない。一番ベスト!」と言っていただけています。
さて、気になるのは
①なぜ治らなかったのか?
②なぜ綺麗になったのか?
ですね。
まず①の過去の治療で治らなかった理由から説明してみましょう。
一番の大きな理由はニキビダニ症を見落としていたことです。
たしかに僕も1度や2度の皮膚顕微鏡検査でニキビダニを発見できずに、診断に苦慮した苦い経験もあるので難しいこともありますが、先入観で診てしまうと「陥りがち」なところに本当に陥ってしまいます。
なぜならこの僕も一目見て「柴犬に典型的に認められるアレルギー性皮膚炎」と判断できるほどの典型パターンだったからです。
過去の治療をみても、前2件の動物病院の先生が明らかに柴犬のアレルギー性皮膚疾患と診断したと想像することができます。
そして肝心なことは、この「ニキビダニ症」にステロイドは禁忌(使ってはいけない)とされているのです。
続いて②のなぜ綺麗になったのか?
すべては伝えられませんが、やはりポイントとしては
1.柴犬の遺伝的特徴を含め、柴の皮膚病をよく知ること
2.この皮膚疾患をすべて1つにくくらず、2つあることを把握すること
3.教科書的にならず、唯一無二の目の前の症例(病態)に合った治療方針をつくること
です。
この教科書的ではない治療テクニックは、定期的に開催している臨床セミナーで「このような皮膚疾患をどのように考えるか」というところを、個人的な見解ではありますが解説させていただきました。
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