2018.06.07
フレンチブルドッグのアトピー・アレルギー、脂漏、舐め癖(手舐め・足舐め)など痒い皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
医療は奥が深いです。
日々疑問が湧き出ますし、新しい発見があります。
今回の新しい発見はある改善症例から得られた発見なのですが、「もしこれが効くなら、これから他のわんちゃんの治療がもっと大変になるかも」という治療内容で、また悩みと苦労が増えた気がしています。
【症例】
フレンチブルドッグ 約4歳 男の子(去勢済み)
【経過】
〇発症は1歳から
〇お腹&背中に赤い湿疹
〇顔、四肢端、耳の痒み(季節性ない)
初診は1年以上前だったのですが、このときは抗生物質とアポキルですぐによくなりました。
それから約9ヵ月後、再発?で来院されましたので、この再発?時点を基準に紹介します。
まずは全体から。
続いて、頚部とその拡大です。
続いて、前胸部とその拡大です。
続いて、右前腕とその部分的な拡大です。
続いて、左前肢とその部分的な拡大です。
続いて、腹部とその拡大です。
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この初診時から約6ヵ月後の状態と比較してみましょう。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
頚部の皮膚炎、腕の皮膚炎、四肢端の痒み、お腹の湿疹・・・フレンチブルドッグのこのタイプの皮膚病は非常に多いです。
見た目の第一印象では典型的なタイプの1つにみえたので、いつものアプローチで2~3ヶ月で十分綺麗になると判断していました。
が、結果的には6ヶ月もかかってしまいました。
当院で6ヶ月というのは異例な長さで、正直にいうと苦戦しました。
ただ、診断と治療方針は初診時から一切変更せず、改善が十分でない途中の診察でも「(初診時の)診断は撤回しない」と何度もアピールしてました(笑)
撤回しない診断はというと、「心因性掻痒症」です。
もちろん心因性だけでこの全身の皮膚病の説明はできないため、心因性の解説の前に心因性以外の診断名を列挙しておきます。
診断①アトピー性皮膚炎
診断②膿皮症
診断③食物有害反応
診断④脂漏性皮膚炎
そして、最後の診断⑤が「心因性掻痒症」です。
この心因性、当院ではかなりの症例数と治療実績数があるため、自信をもってアプローチしたのですが、治療の序盤の結果はかんばしくありませんでした。
6ヵ月かけて徐々によくなったというのではなく、月1回の再診のたびに投薬治療内容を見直しつづけ、ようやく明らかに改善したのは最後の1ヶ月でした。
※もちろんアポキルは最初から1日1回でスタートしていますが、この腕~手先、足先の皮膚炎はアポキルでまったく改善しませんでした。
その微調整とは「投薬量の変更」なのですが、なんと最初に処方したときの3.5倍量です。
たしかに最初の投薬量はかなり少なめで、一般的な教科書に掲載されている量の最下限よりわずかに下回る量でした。
ただ、その最下限以下で処方したにも理由があり、その量で効果を示す症例も稀ではないくらい普通にいるのです。
体質によって薬の合う合わないということがあるのと、多い量より少なく効くにこしたことはないので、少なめから処方したのですが、初回の投薬内容ではまったく改善が認められませんでした。
そこで増量、薬の種類変更・・・と序所に変化を加えてみたのですが、どれもスッキリせず平行線。
最終的には3.5倍量まで増やしたときに、急によくなりました。
3.5倍量で劇的に改善するのではれば、2.5倍量でもそれなりに・・・せめて半分くらい効いてくれてもよさそうなのですが、2.5倍量ではまったく改善しませんでした。
飼主さまには「スイマセン・・・適量にたどりつくまで随分時間がかかってしまいました。よくここまで信じて通院してくださってありがとうございます。」とお伝えいたしました。
結果的には心因性の診断はあっていましたし、治療結果もよかったのですが、今後の悩みも増えます。
教科書に掲載されている推奨量は1~2の範囲であり、今回のような3以上の投薬量というのは一般的な投薬範囲を超えています。
ただ今回の結果から心因性の治療に必要な投薬量は1~3.5まで範囲があるかもしれない、ともいえます。
効果のある投薬量はわんちゃん次第で、2でまったく効かなくて3以上に増やせば効く症例がいるということであれば、少なめからの投薬治療であれば効果が出るのに相当なステップを踏まなければいけません。
高用量からの処方は副作用の観点から避けねばいけませんし、かといって低用量で処方して改善がなければ「効かない薬」や「心因性が原因ではない」という烙印を押されかねないため心因性のアプローチはますます難しくなります。
ここをどう解決するか、アプローチ開始時点で丁寧なインフォームドをして、こまめに再診を設定して増量していくことくらいでしょうか。
当院のように遠方からの来院が多い場合はまた悩みが増えてしまいました(涙)
参考までに今回のわんちゃんの心因性は腕~肢端のみで、その他の部位は心因性との関係はありません。
現に心因性のお薬を増量していく5ヶ月までに湿疹は完全に消失して再発すらなくなっていましたし、頚部~胸部の皮膚炎と脂漏症は90%改善していました。
心因性の治療だけでこの全身の皮膚炎が改善するわけではないので、総合的なアプローチが重要です。
また、こういった膿皮症、アトピー、脂漏、心因性があるわんちゃんにはスキンケア&サプリメントも非常に重要なアプローチになります。
当院で開発したスキンケア&サプリメントは以下のオンラインショップでお買い求めいただめます。
今回の症例でもそうですが、投薬治療があってこそのスキンケア&サプリメントです。
将来的な体質ケア、お薬の減量、再発防止のためのアプローチになりますので、適切な皮膚科医療とともにご利用ください。
当院では皮膚科のない動物病院開業の獣医師向けに、今回紹介したような複雑な病態を示す難治性皮膚疾患の的確なアプローチの仕方について、実際の症例を交えたプライベートセミナーを行っています。
皮膚科診療について詳しくお知りになりたい方は問い合わフォームからご連絡ください。
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