2018.06.02
犬の皮膚病治療におけるスキンケアに力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
犬の皮膚病におけるスキンケアとしては「シャンプー療法」が知られており、マラセチアや脂漏症などフケが多いわんちゃんには週2回のシャンプー奨められたりしていますが、シャンプーの種類やその回数だけで改善が見込める症例は多くありません。
やはりシャンプーだけにこだわるのではなく、「スキンケア」としてアプローチするのがいいと思います。
そこで当院ではシャンプー前のクレンジングとして「クレンジングオイル」を使いシャンプー療法の精度を高め、局所のデイリーケアとして「ローション」で湿疹のケアなどができるようにしてスキンケアを推奨してきました。
ただ、このスキンケアは主に湿疹タイプの膿皮症向けに開発しており、脂漏症のわんちゃんには皮脂へのなじみが不十分でやや不向きであることは実感していました。
そこで数年かけて新しく開発したのが・・・
※これは容器&印刷のイメージのための写真です。
モイストクレンジングオイルジェルです。
平成30年4月16日のブログ記事 「保湿・抗炎症・クレンジング 犬の新しいスキンケア商品」で紹介しました。
実はまだ納品前で実商品がなく処方はできませんが、試作品を通院中のわんちゃんで使ってみましたので、その経過を報告します。
【症例】
シーズー
【経過】
〇現在2週間に1回院内薬浴実施を継続中
〇アポキル継続投薬中(今回のオイルジェル使用の前後での投薬変更なし)
〇診断名はシーズーに典型的な脂漏性マラセチア性皮膚炎(硬いフケが大量にでる脂漏症)
〇脂漏の程度は過去最高クラスの「極度に強い脂漏症」
※この写真撮影の1週間前に院内薬浴を実施しています。
※写真をクリックすると大きくすることができます。
少し分かりにくいかと思いますので、毛をカットしてみましょう。
シーズーの脂漏症に多い、硬いフケを伴う脂漏が認められます。
今回はシャンプー工程を含んだ「院内薬浴」ではなく、新しいオイルジェルだけを使ってみました。
ジェルでなじませて約5分後の状態です。
皮脂がふやけて浮いてきたのがわかります。
この皮脂をコットンできれいにふき取ります。
皮脂を浮かすために揉み込んだ影響でやや赤くなっているように見えますが、これは異常ではありません。
この後、自宅では従来どおりシャンプー・外用薬などの使用はせず、いつものと変わらない条件で過ごしていただきました。
前回の院内薬浴から2週間後(ジェルの処置から1週間後)の状態をみてみましょう。
毛が伸びてきていますが、脂漏(皮脂・フケ)が少ないことがわかるかと思います。
今回はたった1回だけの処置しかできませんでしたが、この商品はシャンプーをしない日のデイリーケアとして開発しているため、もし毎日塗布を続ければもっと良くなっていたと思います!
このわんちゃんはシーズーの脂漏症が多い当院でも3%の上位に入る強い脂漏症体質をもっている症例のため、この症例の1回だけの処置でここまで改善したことを評価すると、かなり期待できる商品だと思います。
※治療内容の変更はしていません。純粋に「2週間間隔の院内薬浴の中間時点でオイルジェルを1回使った」だけです。
みているみなさまに勘違いしてほしくないのは、「脂漏症がジェルで改善する」「シャンプーよりジェルがいい」ということではありません。
ここまで硬い皮脂とフケがでる脂漏症であれば他の部位(腕・わき・頚部)の脂漏を考えても、2週間に1回のシャンプーより週1回全身のオイル&シャンプーで皮脂をしっかり取ることを優先した方がいいです。
そしてオイル&シャンプーのあとにジェルを塗布して、その後も継続して毎日ジェルを塗布するというのがよりベターです。
また投薬治療と院内薬浴よりスキンケアが効果があるという意味でもなく、あくまで「毎日のスキンケアを足すと改善効果が高まる」という意味です。
今までの犬の皮膚科のデイリースキンケアと異なる点の一つは「基材」です。
すでにクリームや乳液タイプの保湿剤がデイリースキンケアとして販売されていますが、このクリームや乳液の保湿剤は脂漏症のわんちゃんにはあまりフィットしません。
そこで試行錯誤で行き着いたのがオイルベースのスキンケア商品、「脂漏症にオイルを塗布する?」と疑問に思われるかもしれませんが、皮脂に馴染むクレンジング効果と保湿効果が同時に得られるため、デイリーケアとしては最適です。
乾燥タイプのフケがでる皮膚コンディションの保湿としても使え、シャンプー直後のドライ前であれば被毛が長いわんちゃんでも馴染みやすいため、全身塗布に使えます。
オイルベースということでべたつきを心配される方もいるかもしれませんが、シャンプー後のドライで皮膚になじむように開発したため、べたつくことはありません。
気をつけていただきたいのは、脂漏症が強くわんちゃんで被毛が長い状態で塗布すると皮脂が毛に絡んで大変になります。
局所の集中スキンケアのためには、今回のように毛をバリカンでカットする必要があります。
毛が長いわんちゃんではシャンプー後(ドライ前)の保湿として馴染ませるのがベターでしょう。
またスキンケア方法としてYoutubeに動画をUPする予定なので、完成したら紹介します。
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