2015.09.01
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。
今日は晴れたり大雨だったり・・・天候の急変が多い1日でしたね。
最近はかなりこまめにブログを書いていますので、ぜひ以前の記事もみてください。
さて、今日は「名前は知っているけど診断し難い&治し難い」という皮膚病です。
症例はトイ・プードルです。
痒みとして目立つ部位の一つは背中です。
少しわかり難いので、赤い枠で記します。
拡大してみましょう。
この部位だけ被毛が短くなっているのがわかると思います。
何度もかじることでその部位だけ毛が短くなっています(毛が抜けているわけではない)。
続いて、右側です。
同じように赤い枠で記します。
2箇所をそれぞれ拡大しましょう。
続いて、左側です。
少し拡大してみます。
痒い部位を記してみます。
それでは初診時から1ヵ月後です。
それぞれ画像をクリックすると拡大することができます。
痒みもほとんどなくなり、均一な毛並みにもどっています。
さて、初診時に僕が下した答えは・・・・・・・・・・・「心因性皮膚病」です。
心因性皮膚病、これは精神的な問題で痒み行動を引き起こすという皮膚病です。
アレルギーでもなく、菌でもなく、寄生虫でもなく、ホルモン疾患でもありません。
客観的な検査方法もなく、明確な診断基準もありません。
また、心因性にはホルモン疾患、寄生虫疾患、細菌性皮膚炎などのように、皮膚そのもに特徴的な診た目があるわけでもありません。
典型的な場所であればまだわかりやすいこともなるのですが、今回の症例は典型的な場所ではありませんでした。
ではどのように診断するのか?
基本的なことですが、話を聞く、わんちゃんの行動をよくみる、皮膚をよくみる・・・・・たったこれだけです。
診察室に入り話をききながら、わんちゃんの動作を見る、皮膚をみる・・・15分くらいあれば頭の中には「心因性」という言葉が最上位にきます。
あとはその他の疾患を除外しながらアプローチします。
実は心因性皮膚病を診断するために、あと一つ大事なポイントがあります。
それは検査でも、診た目でもなく・・・・・・積極的な診療をしていくとだんだんとつかめてくることです。
逆に消極的な診療ばかりしていると、なんとなく診落とされがちで「癖?」とされていたりします。
「アグレッシブに美しく」
皮膚病は初診時の診極めが最も重要で、今回も確信をもってアプローチできました。
投稿者:
2015.03.01
こんにちは、四季の森どうぶつクリニックです。
3月、暖かくなってきて春を感じさせる日々ですね!
今日は「犬にも精神的な皮膚病がある」というお話です。
あらかじめお話しておきますが、一概に「ストレスが原因です」というわけではありません。
わんこにはわんこなりに考えることもあるでしょうから、こういった皮膚病が実際にあります。
【症例】
トイプードル
【病歴】
〇今までステロイドで2~3ヶ月かけて痒みを抑えていたが、何度も再発していた
〇今回は治りが悪い
一見皮膚病があるようには見えませんね。
痒みがある部位をみてみましょう。
まずは右前肢、全体的になめるということでした。
続いて、左前肢の状態です。
赤みが少ないため皮膚病っぽさがありませんが、わんちゃんが頻繁にかじっているため被毛が短く毛並みが悪くなっています。
ここから2~3ヵ月後と比較してみましょう。
左が初診時、右が治療後
※画像をクリックすると拡大できます。
左が初診時、右が治療後
※画像をクリックすると拡大できます。
自分でかじってしまう症状が改善されたため、毛並みがとてもきれいになっています。
大事なポイントは「初診時に心因性であることに気づくこと」です。
言葉も通じない犬の心因性の皮膚病は何を根拠に診断するのか?という疑問は僕もなくはありませんが、答えは「直感」です。
今回も初診時の飼主さまとの会話で10~15分くらいでなんとなく「心因性かな?」という感じがしました。
もちろんそうではないことも考えるので、さまざまなパターンを候補に頭に描きつつ・・・ですが、「まず心因性だろう」というイメージをもって治療計画をたてます。
治療薬としては数種類選択肢があり、どのわんちゃんがどの薬に反応するかはわからないので2週間後に変えることもあるのですが、今回は最初に選んだサプリメントで著しい改善が認められました。
もちろん当院受診まで使用していたステロイドは一切服用せず、長期間のステロイドで認められた血液検査の肝臓の異常値もほぼ綺麗に改善しました。
投稿者:
2014.01.21
こんにちは、四季の森どうぶつクリニック獣医師平川です。
今回はトイプードルの脱毛症の治療症例を報告します。
トイプードルは難治性皮膚病になり易い犬種ではありませんが、近年は人気犬種として飼育頭数が多いため、皮膚病の来院数としても多くなってきています。
【症例】
プードル 12歳 女の子
【病歴】
〇2年前から背中~頚部の脱毛とフケ
初診時の状態です。
背中の被毛の薄い部分を拡大してみましょう。
カルテの条件とこの初診時の診た目でいくつかの疾患をピックアップすることができます。
あとは1つ1つ丁寧に精査すれば確定診断までそう難しくはありません。
初診時から3ヶ月後の状態と比較してみてみましょう。
100%の状態まで被毛が再生しました。
被毛の数だけでなく、トイプードルらしい美しい被毛が再生しています。
普段あまり診断名まで言及しませんが、中高齢のトイプードルでこのような被毛の減少を感じている方は意外と多いのではないかと思うので、少し解説を加えていきます。
多くの飼主さまが『年をとったから・・・』と見過ごされていることも多いかと思いますが、これは内分泌疾患(ホルモン疾患)の一つです。
犬の中高齢のホルモン疾患といえば、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進所(クッシング症候群)そして性ホルモン過剰症などを鑑別診断として挙げられます。
内分泌疾患を疑ったときに行うべき検査は、
〇一般血液検査(貧血、肝臓、腎臓・・・などなど)
〇甲状腺ホルモン測定(血液中のホルモン濃度測定)
〇副腎皮質機能検査(血液中のホルモン濃度測定)
〇超音波画像検査(副腎、甲状腺、卵巣)
〇尿検査
です。
なぜすべて必要か?
それは病気を1つ見つけただけで終わってしまうと「木を見て森を見ず」になってしまうためです。
心理学的にも陥り易いことですので非常に難しいところですが、
『(簡単に)見つかった異常所見にとらわれてしまい、その奥に隠された本質(本当の病気)を見落とす」
が起こり易いのがこの内分泌疾患です。
近いうちにそういった「木を見て森を見ず」で難治性となってしまった症例を紹介しようと思います。
投稿者:
2013.08.25
前回紹介したのトイ・プードルの皮膚病①の続きです。
このような症例で必要なことは、全身の皮膚病変をしっかりと把握することとスキンケアをメインとした治療をすることであるため、被毛のカットを行います。
もちろん絶対条件ではありませんが、最も早く治療結果を出すためにも行うべきと考えています。
それでは初回のスキンケアで全身をカットした状態を診てみましょう。
続いて、肩付近の拡大です。
続いて、右後肢。
同じく右後肢の拡大像です。
続いて、背中を上からみた状態です。
同じく背中の拡大像です。
続いて、右前肢とその拡大像です。
同じく右前肢を内側からみたところです。
最後に、右後肢の外側面です。
左右対称性のため、反対側からの写真は掲載していません。
こういった症例で必要なことは、初診時に「検査⇒診断⇒治療⇒改善」までの道筋を描くことです。
次回、治療後の状態をお示しします。
投稿者:
2013.08.19
1年以上ぶりの症例報告となりました。
改めて、四季の森どうぶつクリニックのHPとして当院の症例報告を行っていきたいと思います。
よろしくお願いします。
今回は、少し珍しいタイプの皮膚病です。
珍しいのは皮膚病の好発犬種ではないトイプードルであることです。
もちろんトイプードルで皮膚病がないわけではないのですが、難治性になりにくいため滅多に困るような皮膚病にはなりません。
それでは初診時の状態を見てみましょう。
非常に強い痒みのため、自傷(自ら身体を傷つける)と出血防止のため、エリザベスカラーを常時つけていました。
しかも2つ、わんこもそうですが飼主さまもつらい状態ですね。
次に、両眼。
脱毛と大きなフケが認められます。
続いて、右耳。
続いて、左耳。
続いて、右前肢とその拡大。
続いて、左側面全体。
続いて、左後肢とその拡大。
続いて、右側面全体と右後肢の拡大。
トイプードルでこのような悪化をしめすタイプはそう多くありません。
初診時では必要な検査、予測できる治療の流れをお伝えしました。
もちろん最も重要なのはスキンケアです。
目標はエリザベスカラーを外した普通のわんちゃんらしい普通の生活をすることです。
1回目のスキンケアの様子は次回お伝えします。
四季の森どうぶつクリニック
投稿者: