2016.11.29
皮膚病治療を専門に行う動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
11月は残り2日ありますが、当院の診療日はもう終わりましたので気持ちでは今年もいよいよあと1ヶ月、そろそろ1年を振り返るような時期になりました。
社会人になると1年はあっという間ですね!
今日の治療症例ですが、めずらしく「診断名」も紹介しようと思います。
【症例】
マルチーズ 7歳 男の子(去勢手術済み)
【症歴】
〇最初の発症は1年前、背中に湿疹
〇過去に6件の動物病院を受診するも改善なし
〇シャンプーして数日で油っぽくなる
それでは初診時の状態です。
まずは正面から。
続いて頚部の背側やや左から。
続いて、背中の拡大。
それでは、治療後との比較です。
湿疹が治っただけでなく、毛並みもよくなり、油っぽさもなくなりました。
以前はシャンプーして数日でべったりとしていたのですが、以前のようにサラサラをキープできるようになったということです。
肝心の診断名は、「甲状腺機能低下症による膿皮症」です。
教科書で甲状腺機能低下症について調べると
「膿皮症になりやすい」
と書かれています。
また、膿皮症について調べると
「甲状腺機能低下症が原因になっていることも」
と書かれています。
油っぽいため脂漏について調べると、
「甲状腺機能低下症が原因になっていることも」
と書かれています。
膿皮症の診断は間違いではありません。
抗生物質を使うことも正しいです。
耐性菌を疑って培養検査を行うことも正しいです。
スキンケアも重要ですので、シャンプー療法も適切な判断です。
・・・しかしこれだけでは治らないのも事実です。
1つ1つが正しいことと実際に治ることは別ですので、すべてにアプローチしなければいい結果は得られません。
足りないアプローチはひとつ、「なぜ膿皮症になったのか?」を考えることです。
「木をみて森をみず」という言葉があるように、目の前にみつけたわかりやすい診断名でとどまらず、全体を見渡すことが重要です。
うまく行かなければ1歩、2歩ひいて・・・ときにはスタートラインまで戻って全体を見渡し、仕切りなおすことも重要です。
と、書いてみると簡単なようにみえるかもしれませんが、1件1件診療の背景は異なりますので正直難しいこともあります!
それは膿皮症が100件来院しても、甲状腺機能低下症を併発しているわんちゃんはおそらく1件いるかどうか・・・ですので、全頭に疑いをかけるわけにはいかないのが現状です。
治りにくい場合や、脂漏、毛並み・・・などさまざまなことを考慮して疑っていく病気です。
ただ、問診と視診で10分あれば第一候補に入る疾患でもあるので、特徴を掴めば診断は限りなく早くなります。
ということで次回の症例報告も同じ甲状腺機能低下症の予定です。
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