2022.07.12
こんにちは。キャバリアの皮膚病にも力を入れている四季の森どうぶつクリニックです。
今回は、色々な薬を続けても改善しなかったキャバリアの症例をご紹介します。
【症例】
キャバリア 6歳7ヶ月 女の子(避妊済)
【経過】
〇1歳前から6年以上続く痒み
〇アポキル、サイトポイント(注射)、インタードッグ(注射)、アレルギー療法食(アミノ酸まで分解)を続けたが改善しない
〇舐めだしたら止まらない、傷になるまで掻く
それでは初診時の様子をご覧ください。
まずは顎から首の写真です。
皮膚の赤みと脱毛が見られます。
こちらは胸から下の写真と前肢の写真になります。
脇や手を舐めることもあり、こちらも赤みや脱毛が見られます。
続いてお腹全体の写真と、腹部のアップの写真です。
全体的に薄毛でお腹にはほとんど毛がありません。
最後に後肢の写真です。
こちらも地肌が見えるほど毛が薄くなっています。
それでは約3ヶ月後の写真を比較してみましょう。
いかがでしょうか
まず、毛量が格段に増えています。写真では分かりづらいかもしれませんが毛並みも良くなりました。舐めたり掻くことが減ってきたこともあり、赤みも落ち着いています。
今回はアポキルやサイトポイントが効かない理由、アレルギー療法食を辞めた方がいい理由を説明し、「見落とされている遺伝的要素」に対しての積極的な治療を行いました。
当院でもアポキルは処方していますが、現在は「3日に1回の服用」と非常に少ない投薬量でコントロールできるようになりました。
アポキルもサイトポイントも痒みに対しては非常に高い効果を示すため、効かない場合は「基礎疾患の診落とし」「食事療法の間違い」を疑う必要があります。
今回はポイントをまとめましたので参考にしてみてください。
【今回の症例の考えるべきポイント】
ポイント① アポキルが効かない理由
→隠れている体質異常を診落としている。
具体的には「毛並み異常」で、治療後は毛並みが抜群によくなっている。
ポイント② サイトポイントが効かない理由
→上記①と同じく、アポキルが効かないときは基本的にサイトポイントも効きません。
ポイント③ 痒みだけではないこと
→「後肢で掻く」「舐める&噛む」が必ずしも痒みから起きているわけではありません。
また痒み相応の掻く・舐める・噛むではなく、痒み以上に過剰な掻痒行動がでてしまう子もいます。
こういった「癖・行動」に着目したアプローチが不足すると、難治性になってしまいます。
ポイント④ 食事療法の間違い
→「よかれ」と思って選んだアレルギー療法食が体質に合っておらず、悪化要因になっていることが多いです。
特にアレルギー対応をうたった「加水分解」「アミノ酸」「グレインフリー」「グルテンフリー」といった食事は悪化要因になる事が多いため、当院では推奨していません。
ポイント⑤ 選択するお薬の間違い
→アポキルを使うことが間違いということではなく、アポキルが効かない隠れた要因に対して治療することが重要になります。そうすることで少ないアポキルで痒みをコントロールすることができるようになります。
ポイント⑥ 毛並みの異常に気付くこと
→治療後の毛並みと比較しなければ難しいかもしれませんが、初診時「毛並みが悪い」と気付くことができなければ治療はうまくいきません。皮膚病があるから毛並みが悪いわけではなく、「毛並みが悪いから皮膚が悪い」という逆の視点が必要です。これに気付けなければずっと治らないでしょう。
この疾患は当院でしか診断・治療ができないため、「うちの子の毛並みは悪いかも」と感じた方は、是非当院までご相談ください。きっと劇的によくなります。
尚、関東にお住まいの方は、東京サテライトにて当院獣医師が初診をさせていただき、継続治療をオンライン診療で行う遠隔診療も行っています。
※症状によってはできないこともございます。
詳しくは東京サテライトのご案内をご覧下さい。
インスタグラムでも症例や動画を配信しています。
ブログと違う症例もありますので、ぜひご覧ください。
【症例報告制作者】 看護師 森
投稿者: