2018.09.03
ポメラニアンの脱毛・脂漏などの皮膚病治療に力を入れている皮膚科専門動物病院、四季の森どうぶつクリニックです。
ポメラニアンの脱毛というと毛周期停止(アロペシアX)が有名で、当院を受診されるポメラニアンも脱毛症(毛周期停止・アロペシアX)が多いのですが、その他の皮膚病もないわけではありません。
【症例】
ポメラニアン 1歳8カ月 女の子(不妊手術済)
【経過】
〇生後4か月のころから身体・四肢を掻く&噛むといった痒み症状を呈する
〇平成29年6月から当院受診5月までアポキル(オクラシチニブ)を毎日服用するも十分な改善はない
〇アポキルを1日2回服用を3カ月続けたが、1日1回と比較して痒みの軽減はない(今は1日1回)
〇過去の服用は、抗生物質として「メトロニダゾール・アモキシシリン・ドキシサイクリン・オフロキサシン・ホスホマイシン・エンロフロキサシン」、ステロイド、抗ヒスタミン剤
〇食事療法はアミノ酸系など2種類(おやつはなし)
〇外用ステロイドでの改善なし
〇季節性はなし
〇傷だらけになってしまうため、エリザベスカラーを常に装着している
それでは初診時の状態です。
まずは正面から。
続いて、右前腕と手先です。
続いて、左前腕とその拡大です。
続いて、胸部・腹部の順番です。
続いて、側面とその拡大です。
続いて、左後肢の側面(膝~カカト)です。
最後に、後ろからです。
それでは初診時から3カ月半の状態と比較してみましょう。
改善点を列挙していきます。
①エリザベスカラーを完全に外すことができました(初診時から2カ月半の時点)
②毛並みがよくなりました
③フケ・皮脂が劇的に減少しました
痒みがないというわけではありません。
かじったりもありますが、何よりエリザベスカラーがないという生活を取り戻すことができたのは大きなことだと思います。
今回のポメラニアンの症例はややイレギュラーな皮膚病で、途中治療初期には嘔吐・下痢・低血糖・高CRP値の問題点もでたりもしましたが、初診時から治療方針の変更はなく、順調に改善したと判断しています。
参考までに今回の3カ月半にアポキル(オクラシチニブ)は1度も使っていません。
使ってはいけないという意味ではなく、アポキルで改善は難しいと判断しています。
今の皮膚科では「掻く」「舐める」「噛む・かじる」といった痒み症状にアポキルという流れが定着しつつあり、いいこともあればそうでないこともあるように思います。
アポキルが効く皮膚病と、効きにくい皮膚病を診極めて処方することができればもっと皮膚病の治療成績は高くなると考えています。
今回の症例で改めて考えたことですが、
①エリザベスカラーを使うメリットはほぼない
やむを得ず装着する場合は、「あとで外せる」と判断できる場合に限り一時的につけてもいいと思っています。
②アポキルは魔法のような万能薬ではない
アポキルが抑えられる痒み症状は全体の一部です。
「痒い=アポキル」ではないので、アポキルを処方するときは「アポキルが効くのか効かないのか」の判断と「もしアポキルが効かなかったら」のプランニングをして処方する必要があると思います。
③病気の原因は1つではない
アトピー、膿皮症、食物アレルギー・・・・など有名な病気はさまざまありますが、病気が複数まざっていることも多いので、治療が1つにならないように組み合わせてアプローチする必要があります。
パズルのピースのように、1枚でも足りない・ズレあると完成しないので、「枠のないパズル」という感覚があってもいいと思います。
うまくいかないときは「足りない」か「ズレがある」です。
参考までに今回の症例でも院内薬浴(スキンケア)とヒーリングケアLFプラスを使っています。
ただ、今回の症例を検査なく、投薬治療もなく改善させるのは99%不可能だと思います。
的確な投薬治療をしながらスキンケア&サプリメントを併用するのが大事です。
一応当院で使っているスキンケア商品・サプリメントの紹介をしますが、適切な医療提供がなければ難しいことも多々あることをご理解ください。
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