監修・執筆:四季の森どうぶつクリニック 院長 平川 将人
犬の皮膚病に特化した診療を行う獣医師。症状だけを診るのではなく、「なぜその子に皮膚病が起こるのか」を重視し、食事・体質・被毛・行動まで含めて一頭ずつ診療している。自身が皮膚病の愛犬と向き合ってきた経験も、診療の原点となっている。(→院長紹介)
公開日:2026年8月26日 / 更新日:2026年8月26日
「フードはもう10種類くらい試しました」
「アレルギー検査もしました」
「療法食も続けました」
「おやつもやめました」
皮膚病の診察では、このようなご相談をよくいただきます。できることは一通り試したものの、改善してもまた繰り返してしまい、「次はどのフードなら合うのだろう」と悩まれている飼い主さまも少なくありません。
しかし、多くの場合、原因はフードの銘柄だけでは説明できません。私が診察で見ているのは、その食事がその子の体質、特に腸内環境に合っているかどうかです。
この記事では、食物アレルギーと混同されやすい「食物有害反応」を中心に、犬の皮膚病を食事からどのように考えるのかを説明します。
食事を、治療の一部として考えます
四季の森どうぶつクリニックは、犬の皮膚病に特化した診療を行っています。そして、食事を治療の大切な一部として考えています。
皮膚病になると、
- 皮膚病だからアレルギー用フードを選ぶ
- 「皮膚」「スキンケア」と書かれたフードを選ぶ
- アレルギー検査で数値が高かった食材を避ける
- 「人の食べ物は身体に悪い」と考えてフードだけを与える
このような基準で食事を選ばれている方は少なくありません。
しかし、当院では、このような基準だけで食生活のアドバイスをすることはありません。
診察では、フードの銘柄だけではなく、おやつやトッピング、人の食べ物、食べ方まで含めて確認します。そして、多くの皮膚病を診てきた経験をもとに、腸内環境が乱れやすい食事や原材料、皮膚トラブルが続きやすい食生活になっていないかを評価します。
同じフードを食べていても、皮膚トラブルが起こらない犬もいれば、繰り返す犬もいます。当院が重視しているのは、「どのフードを食べているか」ではなく、「その食事が、その子の体質や腸内環境に合っているか」です。その視点から食生活全体を見直し、その子に合わせた具体的なアドバイスを行っています。
今の食事療法の課題
皮膚病の食事療法では、「食物アレルギー=原因となるタンパク質を変更する」という考え方が中心になることが少なくありません。
もちろん、この方法で改善する犬もいます。
しかし、当院では、次のようなケースを数多く経験しています。
- タンパク質を変更しても改善しない
- 同じタンパク質でも、メーカーを変更すると改善する
- ドッグフードでは症状が出るが、同じ食材を手作りで与えると問題ない
- おやつやトッピング、デンタルケア用品を見直しただけで改善する
このような経験から、当院では「タンパク質(食材)」だけでは説明できない要素があると考えています。
食事による皮膚トラブル=食物アレルギーでしょうか?
人では、
- 牛乳を飲むとおなかを壊す
- 肉に偏った食生活で便秘になる
- 甘いものや加工食品が続くと、体調や肌の調子が悪くなると感じる
- 開封後時間が経った食品で体調を崩す
このようなことは珍しくありません。
しかし、これらを一般的に「食物アレルギー」と呼ぶ人は少ないでしょう。
つまり、食べ物による体の不調には、食物アレルギー以外の要因も存在します。
犬でも同じように、「食べ物による皮膚トラブル=すべて食物アレルギー」と考えるのは少し単純化しすぎかもしれません。
そのため現在の獣医皮膚科学では、「食物アレルギー」より広い概念として、「食物有害反応(Cutaneous Adverse Food Reaction:CAFR)」という考え方が用いられています。
食物有害反応とは、食物や食品添加物の摂取によって起こる皮膚症状の総称であり、食物アレルギーだけでなく、食物不耐性なども含まれます。
当院では、この考え方を参考にしながら、「アレルギーかどうか」だけではなく、その子の食生活全体を評価することが重要だと考えています。
参考文献
- Olivry T, Mueller RS. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals. BMC Veterinary Research. 2017.
- WSAVA Global Nutrition Guidelines
一般的な食事療法との違い
| 一般的な食事療法 | 四季の森どうぶつクリニック |
|---|---|
| アレルゲン(タンパク質)を変更する | メーカー・製造コンセプトも見直す |
| 食物アレルギーを中心に考える | 食物有害反応(CAFR)の考え方も取り入れる |
| フードを中心に評価する | フード・おやつ・トッピング・デンタルケアまで評価する |
| 食材を重視する | 食生活全体を重視する |
| 手作り食は補助的 | 手作り食も選択肢の一つとして検討する |
※加工方法や酸化などが皮膚病に与える影響については、現時点で十分な科学的根拠が確立されているわけではありません。当院では、臨床経験も踏まえ、一つの可能性として診療に取り入れています。
当院でご相談いただけること
当院では、その子の体質や生活環境、現在の食生活を総合的に評価し、食事療法をご提案しています。
例えば、
- 食物アレルギー対策が必要か
- 除去食・加水分解食は必要か
- おすすめのドッグフード
- フリーズドライフードについて
- グレインフリー・グルテンフリーについて
- 生食について
- おやつ、トッピング、デンタルケア用品の選び方
- 手作り食の始め方
- 手作り食を続けるための工夫
一頭一頭の生活環境や体質は異なります。
そのため当院では、「何を食べるか」だけではなく、「その子に合った食生活とは何か」という視点で、食事療法をご提案しています。
食事について、よくいただく質問
- アレルギー対応食に替えたのに、治らないのはなぜですか?
- そもそも食物アレルギーではなかった可能性があります。皮膚トラブルを「食物アレルギー」だけで説明できない犬も少なくありません。そのため近年は、「食物アレルギー」より広い概念である食物有害反応(CAFR)という考え方が用いられています。その場合は、避ける食材を探すだけではなく、食事全体やおなかの状態を見直すことが改善につながる場合があります。
- 食物有害反応とは、何ですか?
- 人でも、
- 牛乳でおなかを壊す
- 肉に偏ると便秘になる
- 甘いものや加工食品が続くと肌の調子が悪くなると感じる
- アレルギー検査をすれば、原因のフードがわかりますか?
- それだけでは、わからないことが多いです。検査は判断材料になりますが、答えそのものではありません。検査で反応が出なくても、食物有害反応が関わっていることもあります。検査の結果と、実際の症状や食事の記録を重ねて見ていくことが大切です。
- 手作り食のほうが、いいのでしょうか?
- 体質に合えば、よい選択肢の一つです。ただ、自己流だと栄養が偏りやすいので、長く続けるときはバランスの確認が欠かせません。市販のフードが合う犬もいます。どちらが正しいというより、皮膚とおなかの状態に合うかどうかで考えます。
- 療法食は、ずっと続けないといけませんか?
- 状態によります。ずっと必要な場合もあれば、整ってきたら見直せる場合もあります。「一度始めたら一生」と決めつけず、皮膚と便の変化を見ながら判断します。見直すときは、自己判断で切り替えず、診察で状態を確認しながら進めます。
- おやつは、あげてはいけませんか?
- 禁止ではありません。ただ、皮膚の状態や食事を見直すときは、フードだけでなく、おやつや人の食べ物も含めて、何をどれくらい食べているかを確認します。フードに気をつけていても、おやつが毎日同じように入っていることがあります。一週間ほど、口にしたものを全部書き出してみてください。そのうえで、その子の皮膚や便の状態と合わせて考えていきます。
- 新しいフードは、何日くらい続ければ判断できますか?
- 一概には言えません。何を確認したいかによって、見るべき期間が変わるからです。便の変化のように数日で見えてくるものもあれば、皮膚や被毛の生え替わりには数か月単位の時間がかかります。大切なのは、日数を決めることよりも、変えた日とその後の変化を記録しておくことです。具体的な期間は、診察でその子の状態に合わせて説明します。
- サプリメントは必要ですか?
- 必ず必要なものではありません。サプリメントは、あくまで補助です。その子の食事全体と体質を見たうえで、役立つと判断した場合に選択肢として考えることがあります。足すことを考える前に、見直したいのは毎日の食事そのものです。
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参考情報(外部)
会社情報
| 会社名 | 四季の森どうぶつクリニック メディカルスキンケアセンター |
|---|---|
| 住所 | 〒470-1154 愛知県豊明市新栄町1丁目179 |
| 代表者 | 院長 平川 将人 |
| 電話番号 | 0562-85-2215 |
| 診療内容 | 犬の皮膚病治療(皮膚科)・メディカルスキンケア療法 |


























